諮問第86号の答申 :商業動態統計調査の変更について

府統委第35号
平成28年2月16日


総務大臣
山本 早苗 殿

統計委員会委員長
にしむら きよひこ


諮問第86号の答申
商業動態統計調査の変更について

 本委員会は、諮問第86号による商業動態統計調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。

1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
平成27年11月19日付け20151117統第2号により経済産業大臣から申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」(以下「本申請」という。)について審査した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の各要件のいずれにも適合しているため、「商業動態統計調査」(基幹統計調査。以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。

(2)理由等
本申請では、現在、経済産業省が直轄で実施している丙調査及び丁調査について、その実査及び集計に関する業務を民間事業者に委託する計画である。
これについては、経済産業省職員の実査・集計業務を軽減することによって、限られた職員を社会経済情勢の変化等に対応した調査の企画業務や集計結果の要因分析に重点的に配置することが可能となり、統計調査の結果精度を維持しつつ、安定的な作成及び提供の継続に資すると考えられる。
また、実査・集計業務に民間事業者を活用することにより、業務量に増減がある督促や疑義照会等にも機動的な対応が可能となるほか、民間委託対象調査の拡大による民間事業者の育成という効果も期待できる。
さらに、今回の変更対象となる調査の対象者数は比較的少数であり、かつ、経済産業省が直轄で実施している郵送・オンライン調査の実査・集計業務を、民間事業者に委託するにとどまることから、調査系統の変更による結果精度への影響も限定的であると考えられる。
加えて、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成26年3月25日閣議決定。以下「第2(2はローマ数字)期基本計画」という。)において、民間事業者のうち優れたノウハウやリソースを持つものの効果的かつ適正な活用が引き続き重要であるとしつつ、企画立案業務等の中核的業務を国自らが行うことが必要であること、また、民間事業者の活用に当たって、統計の品質の維持・向上、報告者の秘密保護、信頼性の確保等に留意することが求められていることを踏まえ、表のとおり対応することとしており、統計の結果精度の維持・向上等を確保するための所要の取組が行われるものと考える。
以上のことから、今回の変更については適当である。

なお、民間委託に伴い予定されている取組の対応状況等については、結果精度の維持及び回収率確保等の観点から、後述4のとおり、検証する必要がある。
表 民間事業者の活用の際の留意点に対する取組
留意点左記留意点について予定されている取組
1(1は丸の中に数字) 統計の結果精度の維持・向上 民間事業者に対して、審査や集計上のノウハウ及び留意事項を確実に引き継ぎ、督促や疑義照会等の業務量に応じた機動的な体制整備を求めるとともに、審査については、経済産業省職員が審査実施状況(履歴)を確認した上で、必要に応じて個票審査及びサマリ審査を実施するなどして、審査漏れを防止し、結果精度を維持する。
2(2は丸の中に数字) 報告者の秘密保護 再委託先を含めた民間事業者には、1(1は丸の中に数字)業務室の入室制限措置、2(2は丸の中に数字)調査票やデータ等の保管・持ち出し・運搬・処分等における強固なセキュリティ対策及びその履行状況について報告を求め、その履行が不十分と経済産業省が認める場合には、立入検査を行う。また、業務担当者の守秘義務に関する誓約書等の徴集や教育の実施を求めるなどして秘密保護の徹底を求める。
3(3は丸の中に数字) 信頼性の確保 民間委託後も調査票の提出先を引き続き経済産業省として国の調査であることを明確にするとともに、経済産業省のウェブサイトや調査依頼状等に、民間委託した旨及び民間事業者の名称・連絡先等を記載するほか、十分なセキュリティ対策を講じていることも明記し、報告者の信頼を確保する。
4(4は丸の中に数字) 民間事業者の履行能力の確認 受託者の入札に当たっては、総合評価落札方式を採用し、客観的なチェック項目を設けるとともに、仕様書で提出を求める業務計画書のほか、業務を効率的に行う方法を提案させ、それらも十分加味して慎重かつ合理的に履行能力を判断する。

2 統計委員会諮問第65号の答申(平成26年6月16日付け府統委第50号)で示された「今後の課題」への対応状況
本調査については、統計委員会諮問第65号の答申において、以下の検討課題が指摘されている。
本調査の丁調査においてコンビニエンスストアの既存店に係る商品販売額等のデータを把握しないことについては、そのニーズの高さを十分踏まえつつも、
1(1は丸の中に数字) 地域別の商品販売額等の把握を地方経済産業局単位から都道府県単位に変更することとの見合いで、報告者負担の軽減を図る必要があり、既存店における商品販売額等の項目を削るものであること、
2(2は丸の中に数字) 既存店における商品販売額等のデータとして、別途、業界団体(一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会)が作成する統計データがあり、本調査の結果と傾向がほぼ一致するなど高い相関関係にあることが確認されたこと、
3(3は丸の中に数字) 経済産業省と業界団体においてデータの把握について役割分担が整理され、業界団体において引き続き既存店に係るデータを把握し、安定的に提供されることが確認されたこと
から、やむを得ないと整理したところである。
このため、経済産業省は、将来において業界団体におけるデータの把握状況が変更されるような事情が生じた場合に、適切な対応方策を速やかに講じることができるよう、業界団体との意思疎通を今後とも引き続き継続することが必要である。
これについて、経済産業省は、平成26年5月及び平成27年2月に当該業界団体と協議を行い、双方の役割分担を確認するとともに、業界団体は1(1は丸の中に数字)引き続き既存店における商品販売額等のデータの把握を続けること、2(2は丸の中に数字)今後変更の必要がある場合には、速やかに経済産業省に連絡をすることも確認している。また、毎月、主要な個別企業から、販売動向などについて情報収集を行うとともに、今後も同様の対応を継続するとしていることから、本検討課題への対応としては、適当である。

3 オンライン調査の推進
オンライン調査については、
1(1は丸の中に数字) 報告者負担の軽減や集計業務の効率化、正確な統計作成など多くのメリットがあること
2(2は丸の中に数字) 第2(2はローマ数字)期基本計画において、統計調査の実施計画を企画する際、オンライン調査を導入している調査はオンラインによる回収率の向上方策について事前に検討することが指摘されていること
3(3は丸の中に数字) 「オンライン調査の推進に関する行動指針」(平成27年4月17日オンライン調査推進会議申合せ)において、基幹統計調査や大規模統計調査がオンライン調査の充実に優先的に取り組む調査とされていること
等を踏まえ、その推進に一層取り組むことが求められている。
本調査は、調査員調査及び郵送調査のほか、従前からオンラインによる回答も可能となっており、オンラインによる回収率(平成27年9月時点)は、調査全体で約19%となっている。これを詳細にみると、甲調査は約32%、丙調査は約50%、丁調査は約38%となっている一方で、乙調査は約6%にとどまっている。乙調査のオンラインによる回収率が低調である理由としては、調査項目が「月末従業者数」と「月間商品販売額」のみであり、報告者にとって、オンライン回答の手続を踏むよりも紙の調査票により回答する方が簡便かつ迅速に対応できる場合が多いことが考えられる。
また、調査全体としては、安定的に90%程度の回収が確保されており、経済産業省において、毎年、調査票提出促進の一環として、オンライン調査の利用促進を図るための取組についても実施されていることも鑑み、今後更なる普及への努力を期待する。

4 今後の課題
○ 調査系統の変更に関する検証等について
経済産業省は、丙調査及び丁調査に係る民間委託に伴い予定している取組の対応状況及び影響について、結果精度の維持及び回収率確保の観点から、検証を行った上で、必要に応じて、その改善を図る。