7 市町村の規模別財政状況

 市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。以下この章において同じ。)を団体規模別(大都市、中核市、特例市、中都市、小都市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村)にグループ化を行い、財政状況を分析すると以下のとおりである。

(1) 市町村合併の進行に伴う変化

 市町村合併の進行は、団体規模別の市町村の財政状況に顕著な変化をもたらしつつあると考えられる。そこで、歳入歳出決算額等の割合について、前年度との比較を念頭におきつつ、団体規模別に比較分析してみると、次のとおりである。

ア 団体数及び人口の状況

 分析の前提となる団体規模別の団体数をみると、第22表のとおりである。

 団体規模別の団体数合計に占める団体数の割合をみると、大都市が0.5%(前年度末0.4%)、中核市が1.4%(同1.1%)、特例市が1.6%(同1.2%)、中都市が6.1%(同4.4%)、小都市が19.4%(同14.8%)、人口1万人以上の町村が31.9%(同30.5%)、人口1万人未満の町村が39.0%(同47.5%)となっている。

 また、団体規模別の人口数をみると、第23表のとおりである。

 団体規模別の人口合計に占める人口の割合をみると、大都市が17.3%(前年度末17.3%)、中核市が13.5%(同13.0%)、特例市が9.3%(同8.9%)、中都市が20.8%(同18.9%)、小都市が21.5%(同20.0%)、人口1万人以上の町村が13.1%(同15.2%)、人口1万人未満の町村が4.4%(同6.6%)となっている。

 これをみると、団体数合計に占める団体数の割合については、人口1万人未満の町村が最も大きな割合を占め、以下、人口1万人以上の町村、小都市、中都市、特例市、中核市、大都市の順となっており、人口合計に占める人口の割合については、小都市が最も大きな割合を占め、以下、中都市、大都市、中核市、人口1万人以上の町村、特例市、人口1万人未満の町村の順となっている。

 団体規模別の団体数の割合について平成12年度から16年度にかけての推移をみると、第77図のとおりである。中核市、特例市及び小都市の割合が上昇の傾向にある一方、中都市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村の割合が低下の傾向にあったが、平成16年度においては中都市の割合が上昇に転じている。なお、大都市については、ほぼ同水準で推移してきたが、15年度に1団体(さいたま市)増加となったことから、15年度には割合が上昇した。

 中核市及び特例市の割合が上昇している主な要因としては、人口増又は市町村合併に伴い人口要件を満たした中都市が中核市または特例市となったこと等が挙げられる。

 中都市の割合が上昇に転じている主な要因としては、近年は中核市及び特例市への移行を背景に団体数が減少していたものの、平成16年度においては市町村合併に伴い人口が10万人以上の都市が増加したことが挙げられる。

 また、小都市の割合が上昇した主な要因については、市町村の合併の特例に関する法律(昭和40年3月29日法律第6号)(以下「旧合併特例法」という。)第5条の2の規定により、平成17年3月31日までに市町村の合併が行われる場合に限り、市となるべき普通地方公共団体の要件が、地方自治法第8条第1号の規定による人口5万人以上ではなく人口3万人以上とされたこと等によって、新しい都市が増加したこと等が挙げられる。

 町村の割合が低下している要因としては、市町村合併の進行が挙げられるが、特に平成16年度においては、人口1万人未満の町村の団体数は対前年度末比33.8%減(人口対前年度末比33.0%減)、人口1万人以上の町村の団体数は同15.8%減(同13.6%減)となっており、大きく減少している。

 なお、団体規模別の人口の割合について平成12年度から16年度にかけての推移をみると、第78図のとおりである。中核市、特例市及び小都市の割合が上昇の傾向にある一方、中都市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村の割合が低下の傾向にあったが、平成16年度においては中都市の割合が上昇に転じている。なお、大都市については、ほぼ同水準で推移してきたが、15年度に1団体(さいたま市)増加したことから、15年度には割合が上昇した。

イ 決算規模

 団体規模別の決算規模の割合をみると、歳入総額については、大都市が20.8%(前年度21.1%)、中核市が11.6%(同11.2%)、特例市が7.5%(同7.1%)、中都市が17.4%(同15.0%)、小都市が21.5%(同18.8%)、人口1万人以上の町村が13.0%(同14.6%)、人口1万人未満の町村が8.1%(同12.2%)となっている。また、歳出総額については、大都市が21.2%(同21.4%)、中核市が11.6%(同11.2%)、特例市が7.6%(同7.1%)、中都市が17.4%(同15.1%)、小都市が21.4%(同18.8%)、人口1万人以上の町村が12.9%(同14.4%)、人口1万人未満の町村が8.1%(同12.1%)となっており、歳入総額と同様の傾向を示している。

 平成15年度から16年度にかけて、中核市及び特例市の割合が上昇した主な要因としては、中核市については、団体数そのものの増減がなく、特例市についても、1団体(埼玉県草加市)の増加にとどまるものの、編入合併(中核市5件、特例市11件)により団体の決算規模そのものが大きくなった団体があることに加え、町村を編入合併した場合、従来は町村に対して都道府県が行っていた生活保護等に関する事務を市が行うこととなるため、それらの事務に要する経費が増加したこと等が挙げられる。

 また、中都市及び小都市の割合が上昇した主な要因としては、中核市及び特例市の場合と同様の要因のほか、町村同士の合併によって市となった団体については新たに市としての事務が増加したこと、合併による事務・事業の増加等によって、歳入における地方交付税、国庫支出金及び地方債、歳出における投資的経費が増加したこと等が考えられる。

 町村の割合が低下した主な要因としては、市町村合併の進行に伴う団体数の減少が挙げられる。

 団体規模別の決算規模の割合について平成12年度から16年度にかけての推移をみると、第79図のとおりである。

 団体数が増加傾向にある中核市及び特例市については上昇傾向にある一方、他の団体区分においてはおおむね低下傾向にあったが、平成15年度において小都市が、平成16年度においては中都市が、それぞれ上昇に転じている。

ウ 歳入

 団体規模別の歳入決算額の主な内訳をみると、第24表のとおりである。

 いずれも、市町村合併の進行に伴い、町村における減少額の一部が中都市及び小都市を中心とする他の団体区分にシフトしていると考えられるが、その影響を特に受けていると考えられる主なものについて、前年度と比べると、以下のとおりである。

 地方交付税については、中核市、特例市、中都市及び小都市が増加しており、大都市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村が減少している。市町村合併に伴う加算、合併した一部の町村が市となったことに伴う事務の増加等により、中核市、特例市、中都市及び小都市において増加しているものと考えられる。

 国庫支出金については、大都市、中核市、特例市、中都市及び小都市が増加しており、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村が減少している。市町村合併に伴い、町村に対して都道府県が行っていた生活保護等に関する事務を市が行うこととなったことに伴う市への国庫支出金の増加に加え、被生活保護者数の増加を背景に生活保護費負担金の総額が増加していることも相まって、大都市、中核市、特例市、中都市及び小都市において増加しているものと考えられる。

 地方債については、中都市及び小都市が増加しており、大都市、中核市、特例市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村が減少している。合併関連事業により地方債が増加していること等が、中都市及び小都市における主な増加要因となっているものと考えられる。

 また、地方債のうち合併特例事業債については、特例市、中都市、小都市及び人口1万人以上の町村が増加しており、大都市、中核市及び人口1万人未満の町村が減少している。地方債総額が減少しているにもかかわらず、特に合併関連事業が実施されたものと考えられる団体区分において大幅に増加している。

エ 歳出

(ア) 目的別歳出

 団体規模別の目的別歳出決算額の主な内訳をみると、第25表のとおりである。

 各費目とも、市町村合併の進行に伴い、町村における減少額の一部が中都市及び小都市を中心とする他の団体区分にシフトしていると考えられるが、その影響を特に受けていると考えられる主な費目について、前年度と比べると、以下のとおりである。

 議会費については、大都市が同額となっている一方、中核市、特例市、中都市及び小都市が増加しており、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村が減少している。市町村合併の進行に伴う市町村議会議員の定数(平成16年12月31日現在定数54,799名)の減少(2,338名減少、対前年同期比4.1%減)により合計額が減少する一方で、旧合併特例法第6条の規定による議会の議員の定数に関する特例の適用等によって、中核市、特例市、中都市及び小都市において増加しているものと考えられる。

 民生費については、大都市、中核市、特例市、中都市及び小都市が増加しており、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村が減少している。市町村合併に伴い、従来は町村に対して都道府県が行っていた生活保護等に関する事務を市が行うこととなったことに加え、児童手当に係る制度改正(支給対象年齢の拡大)や被生活保護者数の増加等も相まって、大都市、中核市、特例市、中都市及び小都市において増加しているものと考えられる。

 衛生費については、中核市、中都市及び小都市が増加しており、大都市、特例市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村が減少している。市町村合併に伴い、従来は町村に対して都道府県が行っていた保健衛生に関する事務を市が行うこととなったことが、中核市、中都市及び小都市における主な増加要因となっているものと考えられる。

 土木費については、特例市及び中都市が増加しており、大都市、中核市、小都市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村が減少している。小都市については、町村における減少額の一部がシフトしていると考えられるものの、打切り決算となった場合、出納整理期間中に支出される経費については新団体の翌年度歳出として扱われるところ、当該期間中に収入されることが多い国庫支出金及び地方債の財源構成比が高い土木費はその影響を大きく受けるため、減少しているものと考えられる。

(イ) 性質別歳出

 団体規模別の性質別歳出決算額の主な内訳をみると、第26表のとおりである。

 各費目とも、市町村合併の進行に伴い、町村における減少額の一部が中都市及び小都市を中心とする他の団体区分にシフトしていると考えられるが、その影響を特に受けていると考えられる主な費目について、前年度と比べると、以下のとおりである。

 人件費については、中核市、特例市、中都市及び小都市が増加しており、大都市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村が減少している。

 扶助費については、大都市、中核市、特例市、中都市及び小都市が増加しており、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村が減少している。市町村合併に伴い、従来は町村に対して都道府県が行っていた生活保護等に関する事務を市が行うこととなったことに加え、児童手当に係る制度改正(支給対象年齢の拡大)や被生活保護者数の増加等も相まって、大都市、中核市、特例市、中都市及び小都市において増加しているものと考えられる。

 公債費については、中核市、特例市、中都市及び小都市が増加しており、大都市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村が減少している。

 普通建設事業費については、特例市、中都市及び小都市が増加しており、大都市、中核市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村が減少している。

(2) 人口1人当たりの財政状況等

 団体規模別の財政状況について、人口1人当たり平均の決算額等を中心に分析してみると、次のとおりである。

ア 決算規模等[第3表第5表]

 1市町村当たり平均の歳入歳出決算額、人口(住民基本台帳登載人口)1人当たり平均の歳入歳出決算額をみると、第27表のとおりである。

 人口1人当たり平均の決算額は、歳入については、大都市が478千円、中核市が343千円、特例市が321千円、中都市が332千円、小都市が398千円、人口1万人以上の町村が394千円、人口1万人未満の町村が726千円となっており、歳出については、大都市が473千円、中核市が334千円、特例市が314千円、中都市が323千円、小都市が386千円、人口1万人以上の町村が380千円、人口1万人未満の町村が704千円となっている。

 これをみると、大都市、中核市及び特例市については他の都市と行政権能が異なることなどから人口1人当たり決算額が大きくなっているものの、その他の市町村については規模が小さな団体ほど人口1人当たり決算額が大きくなっている。

 次に、財政力指数の単純平均を団体規模別にみると、第28表のとおりである。これを財政力指数の高い順にみると、特例市(0.85)、大都市(0.82)、中都市(0.81)、中核市(0.81)、小都市(0.58)、人口1万人以上の町村(0.52)、人口1万人未満の町村(0.28)となっており、大都市及び中核市以外の市町村については規模が大きいほど財政力指数が高くなっている。

 さらに、実質収支比率は、第28表のとおりである。実質収支比率の高い順にみると、人口1万人以上の町村(5.5%)、人口1万人未満の町村(4.7%)、小都市(4.5%)、中都市(3.8%)、特例市(3.3%)、中核市(3.1%)、大都市(0.5%)となっている。

イ 歳入

 歳入決算の主な内訳は、第80図のとおりである。

 地方税の構成比の高い順にみると特例市(44.3%)、中核市(42.9%)、中都市(42.0%)、大都市(38.8%)、小都市(30.2%)、人口1万人以上の町村(27.3%)、人口1万人未満の町村(13.3%)となっており、大都市及び中核市以外の市町村については規模が小さいほど地方税の占める割合が低くなっている。

 また、地方税が歳入総額に占める割合の分布状況を団体規模別にみると、第81図のとおりであり、町村においては地方税の歳入総額に占める割合が低い団体の構成比が大きくなっている。なお、主な税目の1人当たりの額は、第82図のとおりである。

 一方、地方交付税の構成比の高い順にみると、人口1万人未満の町村(38.5%)、人口1万人以上の町村(25.9%)、小都市(22.1%)、中核市(10.5%)、中都市(10.5%)、特例市(8.6%)、大都市(6.8%)となっている。

 また、国庫支出金(交通安全対策特別交付金を除く。)の構成比の高い順にみると、大都市(13.6%)、中核市(12.5%)、特例市(11.5%)、中都市(10.5%)、小都市(9.0%)、人口1万人以上の町村(6.1%)、人口1万人未満の町村(6.0%)となっており、規模及び権能が大きいほど国庫支出金の構成比が高くなる傾向がある。

 一方、都道府県支出金の構成比の高い順にみると、人口1万人未満の町村(6.9%)、人口1万人以上の町村(5.7%)、小都市(5.2%)、中都市(4.9%)、特例市(4.1%)、中核市(2.4%)、大都市(1.4%)となっており、規模及び権能が小さいほど都道府県支出金の構成比が高くなっている。

 地方債の構成比(地方債依存度)の高い順にみると、人口1万人未満の町村(12.4%)、大都市(11.8%)、人口1万人以上の町村(11.0%)、小都市(10.8%)、特例市(10.0%)、中核市(9.8%)、中都市(9.4%)となっており、大都市及び町村の地方債依存度が高くなっている。

ウ 歳出

 目的別歳出決算額の主な内訳は、第83図のとおりである。それぞれの団体規模ごとに構成比が高い費目をみると、大都市及び中核市においては民生費、土木費、公債費の順、特例市においては民生費、土木費、教育費の順、中都市においては民生費、土木費、総務費の順、小都市及び人口1万人以上の町村においては民生費、総務費、土木費の順、人口1万人未満の町村においては総務費、公債費、民生費の順となっている。

 また、規模及び権能が大きいほど土木費の構成比が高くなる一方、規模及び権能が小さいほど総務費及び農林水産業費の構成比が高くなる傾向がある。

 性質別歳出決算額における主な費目の構成比は、第84図のとおりである。

 それぞれの団体規模ごとに構成比が高い費目をみると、大都市においては人件費、扶助費、公債費の順、中核市、特例市及び中都市においては人件費、扶助費、普通建設事業費の順、小都市においては人件費、普通建設事業費、公債費の順、人口1万人以上の町村においては人件費、普通建設事業費、物件費の順、人口1万人未満の町村においては普通建設事業費、人件費、公債費の順となっている。

 扶助費の構成比については、町村における生活保護費等を都道府県が負担していることなどから、町村が低くなっている。

エ 財政構造の弾力性

(ア) 経常収支比率

 経常収支比率は、第29表のとおりであり、経常収支比率の高い順にみると、大都市(94.7%)、小都市(91.0%)、人口1万人未満の町村(91.0%)、中都市(90.0%)、特例市(89.2%)、人口1万人以上の町村(88.3%)、中核市(86.6%)となっている。

 なお、団体規模別の分布状況をみると、第85図のとおりである。町村の経常収支比率が比較的低いのは、主として生活保護費等を都道府県が負担していること等により、経常経費に占める扶助費の割合が低いことなどによるものである。

 これを財政力指数段階別にみると、第86図のとおりであり、おおむね、同規模の団体においては、財政力指数の低いものほど経常収支比率が高く、財政構造の弾力性が乏しい傾向にある。

(イ) 公債費負担比率及び起債制限比率

 公債費負担比率は、第87図のとおりであり、公債費負担比率の高い順にみると、大都市(20.8%)、人口1万人未満の町村(20.4%)、中核市(16.6%)、小都市(16.4%)、人口1万人以上の町村(15.5%)、特例市(15.1%)、中都市(15.1%)となっている。

 起債制限比率は、第30表のとおりであり、起債制限比率の高い順にみると、大都市(15.4%)、中核市(11.1%)、特例市(10.8%)、小都市(10.7%)、中都市(10.5%)、人口1万人未満の町村(10.4%)、人口1万人以上の町村(9.2%)となっている。団体規模別の分布状況は、第88図のとおりであり、人口1万人以上の町村においては5%以上10%未満の団体の割合が、大都市、中核市、特例市、中都市、小都市及び人口1万人未満の町村においては10%以上15%未満の団体の割合が大きい傾向にある。

 次に、起債制限比率を財政力指数段階別にみると、第89図のとおりであり、財政力指数が低いほど起債制限比率が高い傾向にある。

オ 将来にわたる実質的な財政負担

 将来にわたる実質的な財政負担の標準財政規模に対する比率は、第90図のとおりであり、高い順にみると、大都市(360.9%)、中核市(203.8%)、特例市(199.5%)、小都市(198.9%)、人口1万人未満の町村(197.4%)、中都市(188.1%)、人口1万人以上の町村(167.0%)となっている。

 なお、これを団体規模別の分布状況でみると、第91図のとおりである。