7 市町村の規模別財政状況

 市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。以下この章において同じ。)を団体規模別(大都市、中核市、特例市、中都市、小都市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村)にグループ化を行い、財政状況を分析すると以下のとおりである。

(1) 市町村合併の進展に伴う団体規模別団体数の構成の変化

 市町村合併の進展に伴い、団体規模別の団体数の構成が大きく変わってきている。そこで、団体数や人口、決算規模について、団体規模別に比較分析してみると、次のとおりである。

ア 団体数及び人口の状況

 団体規模別の団体数の推移については、第23表のとおりである。

 また、団体規模別の団体数構成比については、第76図のとおりである。都市については、人口増や市町村合併により要件を満たした団体が、各区分に移行してきていることに伴い、割合が毎年度上昇している。一方で、町村数の割合は毎年度低下しており、平成15年度末には8割に近かった町村数は、17年度末には6割を下回る水準まで低下している。

 平成17年度末の割合は、大都市が0.8%(前年度末0.5%)、中核市が2.0%(同1.4%)、特例市が2.1%(同1.6%)、中都市が9.5%(同6.1%)、小都市が28.2%(同19.4%)、人口1万人以上の町村が30.1%(同31.9%)、人口1万人未満の町村が27.2%(同39.0%)となっている。

 次に、団体規模別の人口の推移をみると、第24表のとおりである。

 また、団体規模別の人口構成比の推移をみると、第77図のとおりである。団体数の割合と同様に、都市については毎年度上昇している一方、町村については毎年度低下しており、平成17年度には、大都市が18.1%(前年度末17.3%)、中核市が14.4%(同13.5%)、特例市が9.2%(同9.3%)、中都市が23.2%(同20.8%)、小都市が23.3%(同21.5%)、人口1万人以上の町村が9.5%(同13.1%)、人口1万人未満の町村が2.2%(同4.4%)となっている。

イ 決算規模[第12表第36表第74表]

 団体規模別の決算規模の割合をみると、歳入総額については、大都市が21.9%(前年度20.8%)、中核市が12.6%(同11.6%)、特例市が7.4%(同7.5%)、中都市が20.0%(同17.4%)、小都市が24.2%(同21.5%)、人口1万人以上の町村が9.7%(同13.0%)、人口1万人未満の町村が4.2%(同8.1%)となっている。

 また、歳出総額については、大都市が22.2%(同21.2%)、中核市が12.6%(同11.6%)、特例市が7.4%(同7.6%)、中都市が19.9%(同17.4%)、小都市が24.1%(同21.4%)、人口1万人以上の町村が9.6%(同12.9%)、人口1万人未満の町村が4.2%(同8.1%)となっている。

 団体規模別の決算規模の割合について平成13年度から17年度にかけての推移は、第78図のとおりである。17年度には、中都市及び小都市の占める割合が大きく上昇する一方、町村の占める割合は大きく低下しており、人口1万人未満の町村については最も割合が小さくなっている。これは、主に市町村合併の進展に伴う団体数や人口割合の変化の影響の他、町村同士の合併によって都市となった団体については新たに都市としての事務事業が増加したことや合併に伴う事務事業が増加したことなども要因として考えられる。

(2) 人口1人当たりの財政状況等

 団体規模別の財政状況について、人口1人当たり平均の決算額等を中心に分析してみると、次のとおりである。

ア 決算規模等[第3表第5表]

 1市町村当たり平均の歳入歳出決算額、人口(住民基本台帳登載人口)1人当たり平均の歳入歳出決算額をみると、第25表のとおりである。

 人口1人当たり平均の決算額は、歳入については、大都市が477千円、中核市が346千円、特例市が315千円、中都市が341千円、小都市が409千円、人口1万人以上の町村が405千円、人口1万人未満の町村が748千円となっており、歳出については、大都市が472千円、中核市が336千円、特例市が308千円、中都市が331千円、小都市が397千円、人口1万人以上の町村が391千円、人口1万人未満の町村が724千円となっている。

 これをみると、大都市、中核市及び特例市については他の都市と行政権能が異なることなどから人口1人当たり決算額が大きくなっているものの、その他の市町村については規模が小さな団体ほど人口1人当たり決算額が大きくなっている。

 次に、財政力指数の単純平均を団体規模別にみると、第27表のとおりである。これを財政力指数の高い順にみると、特例市(0.86)、大都市(0.83)、中都市(0.79)、中核市(0.78)、小都市(0.57)、人口1万人以上の町村(0.53)、人口1万人未満の町村(0.30)となっており、大都市及び中核市以外の市町村については規模が大きいほど財政力指数が高くなっている。

 さらに、実質収支比率は、第26表のとおりである。実質収支比率の高い順にみると、人口1万人以上の町村(5.2%)、人口1万人未満の町村(4.7%)、小都市(4.5%)、中都市(4.2%)、中核市(3.4%)、特例市(3.1%)、大都市(0.6%)となっている。

イ 歳入

 歳入決算の主な内訳は、第79図のとおりである。

 地方税の構成比の高い順にみると特例市(45.9%)、中核市(42.6%)、中都市(40.6%)、大都市(39.4%)、小都市(29.3%)、人口1万人以上の町村(27.6%)、人口1万人未満の町村(14.7%)となっており、大都市及び中核市以外の市町村については規模が小さいほど地方税の占める割合が低くなっている。

 また、地方税が歳入総額に占める割合の分布状況を団体規模別にみると、第80図のとおりであり、町村においては地方税の歳入総額に占める割合が低い団体の構成比が大きくなっている。なお、主な税目の1人当たりの額は、第81図のとおりである。

 一方、地方交付税の構成比の高い順にみると、人口1万人未満の町村(41.2%)、人口1万人以上の町村(28.1%)、小都市(24.5%)、中都市(12.9%)、中核市(11.8%)、特例市(8.3%)、大都市(6.4%)となっている。

 また、国庫支出金(交通安全対策特別交付金を除く。)の構成比の高い順にみると、大都市(12.9%)、中核市(12.4%)、特例市(11.2%)、中都市(10.2%)、小都市(8.9%)、人口1万人未満の町村(6.8%)、人口1万人以上の町村(6.4%)となっている。

 一方、都道府県支出金の構成比の高い順にみると、人口1万人未満の町村(7.3%)、人口1万人以上の町村(6.0%)、小都市(5.8%)、中都市(5.1%)、特例市(4.4%)、中核市(3.2%)、大都市(1.7%)となっている。

 地方債の構成比(地方債依存度)の高い順にみると、小都市(10.3%)、大都市及び人口1万人以上の町村(10.1%)、人口1万人未満の町村(9.9%)、中核市(9.2%)、特例市(8.8%)、中都市(8.6%)となっている。

ウ 歳出

 目的別歳出決算額の主な内訳は、第82図のとおりである。それぞれの団体規模ごとに構成比が高い費目をみると、大都市、中核市及び特例市においては民生費、土木費、公債費の順、中都市においては民生費、土木費、総務費の順、小都市においては民生費、総務費、土木費の順、人口1万人以上の町村においては民生費、総務費、公債費の順、人口1万人未満の町村においては公債費、総務費、民生費の順となっている。

 性質別歳出決算額における主な費目の構成比は、第83図のとおりである。

 それぞれの団体規模ごとに構成比が高い費目をみると、大都市においては公債費、扶助費、人件費の順、中核市、特例市及び中都市においては人件費、扶助費、普通建設事業費の順、小都市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村においては人件費、普通建設事業費、公債費の順となっている。

 扶助費の構成比については、町村における生活保護費等を都道府県が負担していることなどから、町村が低くなっている。

エ 財政構造の弾力性

(ア) 経常収支比率

 経常収支比率は、第27表のとおりであり、経常収支比率の高い順にみると、大都市(94.3%)、小都市(91.0%)、特例市(89.2%)、中都市(89.1%)、人口1万人以上の町村(88.5%)、人口1万人未満の町村(88.2%)、中核市(87.0%)となっている。

 なお、団体規模別の分布状況をみると、第84図のとおりである。大都市の経常収支比率が高いのは、経常経費に占める公債費の割合が大きいことなどによる。また、町村の経常収支比率が比較的低いのは、主として生活保護費等を都道府県が負担していること等により、経常経費に占める扶助費の割合が小さいことなどによるものである。

 これを財政力指数段階別にみると、第85図のとおりであり、同規模の団体においては、財政力指数の低いものほど経常収支比率が高く、財政構造の弾力性が乏しいといえる。

(イ) 実質公債費比率、起債制限比率及び公債費負担比率

 実質公債費比率は、第28表のとおりであり、実質公債費比率の高い順でみると、大都市(19.1%)、小都市及び人口1万人未満の町村(15.6%)、特例市(14.6%)、中都市(14.3%)、中核市及び人口1万人以上の町村(14.2%)となっている。団体規模別の分布状況は、第86図のとおりであり、中核市、特例市、中都市、小都市、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村においては10%以上18%未満の団体の割合が、大都市においては18%以上25%未満の団体の割合が大きくなっている。

 次に、実質公債費比率を財政力指数段階別にみると、第87図のとおりであり、財政力指数が低いほど実質公債費比率が高くなっている。

 起債制限比率は、第29表のとおりであり、起債制限比率の高い順にみると、大都市(15.2%)、中核市及び小都市(11.1%)、特例市(10.8%)、中都市及び人口1万人未満の町村(10.7%)、人口1万人以上の町村(9.8%)となっている。

 公債費負担比率は、第88図のとおりであり、公債費負担比率の高い順にみると、人口1万人未満の町村(21.2%)、大都市(20.9%)、小都市(16.9%)、中核市(16.6%)、人口1万人以上の町村(16.4%)、中都市(15.3%)、特例市(15.2%)となっている。

オ 将来にわたる実質的な財政負担

 将来にわたる実質的な財政負担の標準財政規模に対する比率は、第89図のとおりである。高い順にみると、大都市(349.6%)、中核市(202.9%)、小都市(194.1%)、特例市(192.9%)、中都市(186.0%)、人口1万人未満の町村(175.6%)、人口1万人以上の町村(166.3%)となっている。

 なお、これを団体規模別の分布状況でみると、第90図のとおりである。