2 地方財政の概況

 地方公共団体の歳入及び歳出は、一般会計と特別会計に区分して経理されているが、特別会計の中には、一般行政活動に係るものと企業活動に係るものがある。

 このため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門と水道、交通、病院等の企業活動部門に分け、前者を「普通会計」、後者を「地方公営事業会計」として区分している。

 以下、平成17年度の地方財政について、8までにおいて普通会計の状況を示すとともに、9において地方公営事業会計の状況を示す。

(1) 決算規模[第1表第5表第11表第73表]

 地方公共団体(47都道府県、1,821市町村、23特別区、1,464一部事務組合及び63広域連合(以下、一部事務組合及び広域連合を「一部事務組合等」という。))の普通会計の純計決算額は、第1表のとおり、歳入92兆9,365億円(前年度93兆4,422億円)、歳出90兆6,973億円(同91兆2,479億円)で、歳入、歳出いずれも6年連続して減少している。

 また、前年度と比べると、歳入0.5%減(前年度1.5%減)、歳出0.6%減(同1.4%減)となっている。

 なお、平成17年度には、兵庫県及び神戸市において、阪神・淡路大震災に関連して創設された財団法人阪神・淡路大震災復興基金に対して貸し付けていた貸付金が償還され、この財源となっていた地方債を全額償還したことにより、諸収入及び公債費が大幅に増加している。また、新潟県においても、平成16年度に中越大震災に関連して創設された財団法人新潟県中越大震災復興基金に対して支出した貸付金が皆減となったことから、貸付金が大幅に減少した。このため、これらを控除した場合の決算額をみると、歳入92兆376億円(前年度93兆1,372億円)、歳出89兆8,004億円(同90兆9,425億円)となっており、前年度と比べると、歳入1.2%減(前年度1.8%減)、歳出1.3%減(同1.8%減)となっている。

 このように実質的な決算規模が前年度決算額を下回ったのは、歳入については、地方税が回復傾向にあるものの、国庫支出金、地方債等が減少したこと、歳出については、歳出削減努力等により人件費、普通建設事業費を中心とする投資的経費等が減少したことによるものである。

 決算規模の状況を団体種類別にみると、第2表のとおりであり、都道府県、市町村(特別区及び一部事務組合等を含む。特記がある場合を除き、以下同じ。)ともに歳入、歳出は、それぞれ前年度決算額を下回っている。

 また、近年の決算規模の推移は、第7図のとおりである。

(2) 決算収支

ア 実質収支[第7表]

 実質収支(形式収支(歳入歳出差引額)から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額)の状況は、第3表のとおりである。

 平成17年度の実質収支は、1兆3,164億円の黒字(前年度1兆2,208億円の黒字)で、昭和31年度以降黒字が続いている。

 実質収支を団体種類別にみると、都道府県においては8年連続で赤字団体が発生したものの、2,262億円の黒字(前年度1,576億円の黒字)となっている。

 また、市町村においては1兆902億円の黒字(前年度1兆632億円の黒字)であり、昭和31年度以降黒字が続いている。

 実質収支が赤字である団体数をみると、平成16年度に赤字であった26団体(1府、25市町村。打切り決算(市町村合併等により、出納整理期間中の歳入、歳出がないことをいう。以下同じ。)が行われたことによる赤字団体は除いている。)のうち20団体(1府、19市町村)が引き続き赤字であり、8団体(1道、7市町村)が新たに赤字団体となった結果、赤字団体数は28団体であり、前年度と比べると2団体増加している。

 さらに、近年の実質収支及び赤字団体の赤字額の推移は、第8図のとおりである。

 標準財政規模に対する実質収支額の割合である実質収支比率の推移は、第9図のとおりであり、平成17年度の実質収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は前年度と同じ2.2%となっている。

 実質収支比率を団体種類別にみると、都道府県は0.2%ポイント上昇の0.9%、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。)は前年度と同じ3.5%となっている。

イ 単年度収支及び実質単年度収支[第7表]

 平成17年度の単年度収支(実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額)は、2,370億円の黒字(前年度1,276億円の黒字)で、3年連続で黒字となっている。

 単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては686億円の黒字(前年度91億円の黒字)、市町村においては1,684億円の黒字(同1,185億円の黒字)となっている。

 また、実質単年度収支(単年度収支に財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた額)は、2年ぶりに黒字に転じており(前年度117億円の赤字)、その黒字額は4,292億円となっている。

 実質単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては2,824億円の黒字(前年度1,373億円の黒字)、市町村においては1,468億円の黒字(同1,490億円の赤字)となっている。

 なお、実質収支、単年度収支及び実質単年度収支の赤字団体数の状況は、第4表のとおりである。

(3) 歳入[第11表]

 歳入純計決算額は92兆9,365億円で、前年度と比べると0.5%減(前年度1.5%減)となっている。

 決算額の主な内訳をみると、第5表のとおりである。

 地方税(対前年度比3.8%増)は、法人関係二税(法人住民税、法人事業税)、個人住民税の増加等により、前年度に比べると1兆2,656億円増加している。ただし、都道府県及び市町村(一部事務組合等を除く。)の合計の地方税収入の伸びが大きい東京都、愛知県及び千葉県を除くと全体の増加額の2分の1程度の6,501億円増加にとどまっている。

 地方譲与税(対前年度比58.8%増)は、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施するまでの間の暫定措置として都道府県及び市町村(一部事務組合等を除く。)に対して譲与される所得譲与税の増加等により、増加している。

 地方特例交付金(対前年度比37.4%増)は、平成16年度の義務教育費国庫負担金の見直し及び平成17年度の義務教育費国庫負担金の暫定的な減額に伴い交付する税源移譲予定特例交付金の増加等により、増加している。

 地方交付税(対前年度比0.4%減)は、前年度に引き続き減少している。

 国庫支出金(対前年度比4.6%減)は、公共事業関係の国庫補助負担金の削減による普通建設事業費支出金の減少、三位一体の改革による義務教育費国庫負担金の一般財源化等により減少している。

 地方債(対前年度比16.2%減)は、臨時財政対策債の減少、普通建設事業費の減少等により減少している。

 歳入純計決算額の構成比の推移は、第10図のとおりである。

 地方税の構成比は、ピークとなった昭和63年度(歳入総額の44.3%)以降低下し、平成5年度以降は33%から36%台の間で推移していたが、17年度は前年度と比べると1.5%ポイント上昇の37.4%となり、平成4年度に近い水準に達している。

 地方交付税の構成比は、平成8年度から12年度までは上昇していたが、13年度以降、地方財政対策にあたり、交付税特別会計の借入金方式に代えて臨時財政対策債を発行し、基準財政需要額の一部を振り替えることとしたこと等から低下が続いている。17年度においては、前年度と同じ18.2%となっている。

 国庫支出金の構成比は、平成14年度から16年度は13%台で推移していたが、普通建設事業費支出金の減少、三位一体の改革による国庫補助負担金の一般財源化等により17年度は前年度と比べると0.5%ポイント低下の12.8%となっている。

 地方債の構成比は、平成13年度から臨時財政対策債の発行等により上昇していたが、普通建設事業費の減少や16年度に臨時財政対策債の発行額が減少したこと等により低下に転じ、17年度においても同様の要因により、前年度と比べると2.0%ポイント低下の11.2%となっている。なお、臨時財政対策債の発行額を除いた構成比は、前年度と比べると1.2%ポイント低下の8.0%となっている。

 一般財源の構成比は、平成13年度から地方交付税の減少により低下していたが、平成16年度に地方税、地方譲与税及び地方特例交付金の増加に加え、国庫支出金、地方債等が減少したことから上昇に転じ、17年度においても、前年度と比べると2.8%ポイント上昇の59.3%となっている。

 歳入決算額の構成比を団体種類別にみると、第11図のとおりである。

 都道府県においては地方税が最も大きな割合(35.2%)を占め、以下、地方交付税(18.9%)、国庫支出金(13.6%)の順となっている。

 市町村においても都道府県と同様に地方税が最も大きな割合(35.0%)を占め、以下、地方交付税(15.3%)、国庫支出金(10.4%)の順となっている。

(4) 歳出

 歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と経費の経済的な性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、次のとおりである。

ア 目的別歳出

(ア) 目的別歳出[第35表]

 地方公共団体の経費は、その行政目的によって、議会費、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、消防費、警察費、教育費、災害復旧費、公債費等に大別することができる。

 歳出純計決算額は90兆6,973億円で、前年度と比べると0.6%減(前年度1.4%減)となっている。

 目的別歳出の構成比は、第6表のとおりであり、教育費(歳出総額の18.3%)、民生費(同17.3%)、土木費(同15.9%)、公債費(同15.4%)、総務費(同9.6%)の順となっており、教育費、民生費及び土木費で全体の5割以上を占めている。

 これらの費目の対前年度増減率をみると、教育費(対前年度比2.0%減)は、普通建設事業費の減少等により、減少している。

 民生費(対前年度比3.7%増)は、三位一体の改革に伴う国庫補助負担金の改革による国民健康保険制度における都道府県調整交付金の創設や、児童手当の支給対象年齢の見直しなどの制度改正、被保護者数の増加に伴う生活保護費の増加、少子高齢化の進行等により、増加している。

 土木費(対前年度比5.4%減)は、道路橋りょう事業、都市計画事業等の減少により、減少している。

 公債費は、前年度と比べると6.5%増となっているが、兵庫県及び神戸市において、財団法人阪神・淡路大震災復興基金への貸付金に係る地方債の償還を行った特殊要因を除くと、前年度と比べて0.4%減となっている。

 総務費(対前年度比2.3%減)は、新潟県において、平成16年度に財団法人新潟県中越大震災復興基金に対して支出した貸付金が皆減となったこと等により、減少している。

 目的別歳出の構成比の推移は、第7表のとおりである。農林水産業費及び土木費の構成比がそれぞれ低下の傾向にある一方、民生費及び公債費の構成比が上昇の傾向にある。

 目的別歳出の構成比を団体種類別にみると、第12図のとおりである。

 都道府県においては、市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等により教育費が最も大きな割合(23.7%)を占め、以下、公債費(15.1%)、土木費(15.0%)、民生費(9.2%)、警察費(6.9%)の順となっている。

 また、市町村においては、児童手当支給事務、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉事務の比重が高いこと等により民生費が最も大きな割合(26.1%)を占め、以下、土木費(15.3%)、公債費(13.9%)、総務費(13.0%)、教育費(10.8%)の順となっている。

(イ) 一般財源の充当状況

 一般財源の目的別歳出に対する充当状況は、第8表のとおりである。

 一般財源総額(55兆1,301億円)に占める目的別歳出の割合をみると、教育費が最も大きな割合(19.6%)を占め、以下、公債費(19.2%)、民生費(16.5%)、総務費(11.7%)、土木費(10.3%)の順となっている。

 一般財源充当額の目的別構成比の推移は、第13図のとおりである。近年、公債費及び民生費に充当された一般財源の構成比が上昇の傾向にあり、土木費に充当された一般財源の構成比が低下の傾向にある。

イ 性質別歳出

(ア) 性質別歳出[第73表]

 地方公共団体の経費は、その経済的な性質によって、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別することができる。

 義務的経費は、職員給与費等の人件費のほか、生活保護費等の扶助費及び地方債の元利償還金等の公債費からなっており、そのうち人件費が53.9%を占めている。また、投資的経費は、道路、橋りょう、公園、公営住宅、学校の建設等に要する普通建設事業費のほか、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっており、そのうち普通建設事業費が95.4%を占めている。

 歳出純計決算額の主な性質別内訳をみると、第9表のとおりである。

 義務的経費は、前年度決算額を上回っている(対前年度比1.5%増)。これは、行政改革に伴う給与の適正化、定員削減等による職員給の減少、退職金の減少等により人件費(同1.4%減)が減少する一方、児童手当の支給対象年齢の見直しなどの制度改正、被保護者数の増加に伴う生活保護費の増加、少子高齢化の進行等により扶助費(同2.5%増)が増加するとともに、兵庫県及び神戸市において、財団法人阪神・淡路大震災復興基金への貸付金に係る地方債の償還を行ったこと等により公債費(同6.5%増)が増加したためである。なお、この大震災復興基金に係る特殊要因を除くと、義務的経費は前年度と比べて0.5%減となっている。

 投資的経費は、前年度決算額を下回っている(対前年度比6.1%減)。これは、その大部分を占める普通建設事業費が、補助事業費(同7.1%減)、単独事業費(同9.1%減)ともに減少し、前年度決算額を下回ったためである(同7.5%減)。

 また、その他の経費は、新潟県において、平成16年度に支出した財団法人新潟県中越大震災復興基金に対する貸付金が皆減となったこと等に伴う貸付金(対前年度比10.1%減)の減少等により、前年度決算額を下回っている(同0.8%減)。

 平成12年度以降の歳出決算増減額に占めるこれらの経費の推移は、第14図のとおりである。

 次に、性質別歳出の構成比の推移は、第15図のとおりである。

 投資的経費の構成比は、平成8年度以降低下しており、17年度は前年度と比べると1.0%ポイント低下の17.5%となっている。

 一方、義務的経費の構成比は、平成8年度以降、投資的経費の減少に伴い上昇しており、17年度は前年度に比べると1.1%ポイント上昇の51.7%となっている。

 性質別歳出決算額の構成比を団体種類別にみると、第16図のとおりである。

 人件費の構成比は、都道府県において市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していることなどから、都道府県が31.4%、市町村が20.9%となっている。また、扶助費の構成比は、児童手当支給事務、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉関係事務が主に市町村において行われていること等から、市町村が13.7%、都道府県が2.0%となっている。

 さらに、普通建設事業費のうち、補助事業費の構成比は、都道府県(8.4%)が市町村(4.9%)を上回る一方、単独事業費の構成比は、市町村(9.3%)が都道府県(7.1%)を上回っている。

(イ) 一般財源の充当状況[第75表]

 一般財源の性質別歳出に対する充当状況は、第10表のとおりである。

 一般財源総額(55兆1,301億円)に占める性質別歳出の割合をみると、義務的経費が最も大きな割合(59.0%)を占めている。また、投資的経費の割合は6.9%であり、歳出総額に占める投資的経費の割合(17.5%)に比べて小さくなっている。

 一般財源充当額の性質別構成比の推移は、第17図のとおりである。

 義務的経費に充当された一般財源の構成比は、平成3年度以降、12年度及び15年度を除き上昇していたが、17年度は公債費の割合が低下したことにより、前年度と比べると0.1%ポイント低下の59.0%となっている。

 一方、投資的経費に充当された一般財源の構成比は、平成3年度以降低下の傾向にあり、17年度は前年度と比べると0.6%ポイント低下の6.9%となっている。

(5) 財政構造の弾力性

ア 経常収支比率[第8表]

 地方公共団体が社会経済や行政需要の変化に適切に対応していくためには、財政構造の弾力性が確保されなければならない。財政分析においては、財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つとして、経常収支比率が用いられている。

 経常収支比率は、経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源)が、経常一般財源(一般財源総額のうち地方税、普通交付税のように毎年度経常的に収入される一般財源)、減税補てん債及び臨時財政対策債の合計額に対し、どの程度の割合となっているかをみることにより財政構造の弾力性を判断するものである。

 平成17年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度(91.5%)とほぼ同率の91.4%となっており、第11表のとおり、高い水準での推移が続いている。その主な内訳をみると、人件費充当分が36.5%(前年度37.0%)、公債費充当分が21.5%(同21.9%)となっている。なお、減税補てん債及び臨時財政対策債の発行額を経常収支比率算出上の分母から除いた場合の経常収支比率を求めると、97.4%となる。

 また、経常収支比率が前年度とほぼ同率になったのは、第18図(その1)のように、分母である経常一般財源が、減税補てん債及び臨時財政対策債が減少したものの、地方税、地方譲与税、地方特例交付金等が増加したことにより分母全体として増加した一方、分子である経常経費充当一般財源も、国民健康保険制度における都道府県調整交付金の創設等による補助費等充当分の増加等により増加し、分母と分子の伸び率がほぼ同じであったことによるものである。

 なお、都道府県及び市町村(一部事務組合等を除く。)の合計の地方税収入の伸びが大きい東京都、愛知県及び千葉県の3都県の経常収支比率は前年度と比べると1.7%ポイント低下の88.3%となっているが、3都県を除くと0.3%ポイント上昇の92.1%となっている。

 経常収支比率を団体種類別にみると、都道府県は92.6%(前年度92.5%)、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。以下、この項において同じ。)は90.2%(前年度90.5%)となっている。

 経常収支比率の段階別分布状況をみると、第12表のとおりである。経常収支比率が80%以上の団体数は、都道府県においては47団体のすべての団体(前年度同数)、市町村においては全体の91.7%を占める1,669団体(同2,356団体)となっており、多くの団体の経常収支比率が高い水準にある。

イ 実質公債費比率、起債制限比率及び公債費負担比率[第8表]

 地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性をみる場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費による負担度合いを判断するための指標として、実質公債費比率、起債制限比率及び公債費負担比率が用いられている。

 このうち実質公債費比率については、平成18年4月から地方債協議制度へ移行したことに伴い、公債費による負担度合いを判断し、起債に協議を要する団体と許可を要する団体とを判定するための指標として新たに導入されたものであり、従来の起債制限比率について一定の見直しを行ったものである。その見直しの要点としては、公営企業の元利償還金への一般会計からの繰出しや、PFIや一部事務組合等の公債費への負担金等の公債費類似経費を原則として算入することなどによる実質的な公債費の把握、また、満期一括償還方式の地方債に係る積立ルールの統一などが挙げられる。

 実質公債費比率は、地方債の元利償還金(繰上償還等を除く。)や公営企業債に対する繰出金などの公債費に準ずるものを含めた実質的な公債費相当額から、これに充当された一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除いたものが、標準財政規模及び臨時財政対策債発行可能額の合計額(普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く。)に対し、どの程度の割合となっているかをみるものである。

 平成18年度の起債協議等手続において用いる平成15年度から平成17年度の3か年平均の実質公債費比率は、14.9%となっている。

 実質公債費比率の段階別分布状況は、第13表のとおりである。実質公債費比率が18%以上の団体数は、都道府県においては全体の8.5%を占める4団体となっており、市町村(一部事務組合等を除く。)においては全体の22.3%を占める412団体となっている。

 実質公債費比率は、平成18年度の起債協議等手続において用いるために初めて算定された指標であり、過去からの推移をみることができるものとしては、これまで地方債の許可制限に係る指標として用いられてきた起債制限比率がある。

 起債制限比率は、地方債元利償還金及び公債費に準ずる債務負担行為に係る支出の合計額から繰上償還された額を除き、さらにこれに充当された一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除いたものが、標準財政規模及び臨時財政対策債発行可能額の合計額(普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く。)に対しどの程度の割合となっているかをみるものである。ただし、一部を除き公営企業の元利償還金への一般会計からの繰出し等の準元利償還金が含まれていない点に留意する必要がある。

 平成17年度の起債制限比率(一部事務組合等を除く加重平均)は、第14表のとおりであり、分子については、元利償還金等が増加したものの控除される災害復旧費等に係る基準財政需要額が大幅に増加したことにより減少したが、分母についても標準財政規模が3か年平均で減少したこと等により減となったため、前年度と同じ11.7%となっている。

 起債制限比率の段階別分布状況は、第15表のとおりである。起債制限比率が15%以上の団体数は、都道府県においては全体の8.5%を占める4団体(前年度6団体)となっており、市町村(一部事務組合等を除く。)においては全体の9.4%を占める174団体(同194団体)となっている。

 公債費負担比率は、公債費充当一般財源(地方債の元利償還金等の公債費に充当された一般財源)が一般財源総額に対し、どの程度の割合となっているかを示す指標であり、公債費がどの程度一般財源の使途の自由度を制約しているかをみることにより、財政構造の弾力性を判断するものである。

 平成17年度の公債費負担比率(全団体の加重平均)は、前年度(19.4%)と比べて0.2%ポイント低下の19.2%となっている。

 このように公債費負担比率が前年度を下回ったのは、第19図のとおりであり、分母である一般財源総額が、地方税、地方特例交付金が増加したことにより、全体として増加し、分子である公債費充当一般財源の伸び率を上回ったためである。

 近年の公債費負担比率の推移は、第20図のとおりであり、平成17年度は前年度から0.2%ポイント低下したものの、平成4年度以降はおおむね上昇傾向にあり、財政構造の硬直化が進んでいる。

(6) 将来にわたる財政負担

 地方公共団体の財政状況をみるには、単年度の収支状況のみでなく、地方債、債務負担行為等のように将来にわたって財政負担となるものや、財政調整基金等の積立金のように年度間の財源調整を図り将来における弾力的な財政運営に資するために財源を留保するものの状況についても、併せて総合的に把握する必要がある。これらの状況は、次のとおりである。

ア 地方債現在高[第100表]

 平成17年度末における地方債現在高は139兆9,296億円で、前年度末と比べると0.6%減(前年度末1.4%増)となっている。なお、特定資金公共投資事業債を除いた地方債現在高は、139兆9,292億円で、前年度末と比べると0.5%減(同1.8%増)となっている。

 地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、第21図のとおりである。

 地方債現在高は、昭和50年度末では歳入総額の0.44倍、一般財源総額の0.88倍であったが、地方税収等の落込みや減税に伴う減収の補てん、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことに伴い、平成4年度末以降急増し、さらに、平成13年度からの臨時財政対策債の発行により17年度末には歳入総額の1.51倍、一般財源総額の2.54倍となっている。なお、標準財政規模に対する比率は、前年度末と比べると11.6%ポイント低下の269.4%となっている。

 近年の地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移は、第22図のとおりである。

 地方債現在高の借入先別の構成比は、政府資金(43.3%)、市中銀行資金(25.9%)、市場公募債(17.6%)、公営企業金融公庫資金(5.8%)の順となっている。

 また、前年度末の割合と比べると、近年の公的資金の縮減に対応し、一層の市場化の推進等に伴い、政府資金が0.8%ポイント低下する一方、市場公募債は1.8%ポイント上昇している。

 地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては79兆542億円、市町村においては60兆8,754億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.1%減(前年度末2.3%増)、1.3%減(同0.2%増)となっている。

イ 債務負担行為額[第101表]

 地方公共団体は、将来の支出を約束するために、債務負担行為を行うことができる。

 この債務負担行為は、数年度にわたる建設工事、土地の購入等の場合のように翌年度以降の経費支出が予定されているものと、債務保証又は損失補償のように債務不履行等の一定の事実が発生したときに支出されるものとに大別することができる。

 これらの債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額をみると、平成17年度末では12兆2,055億円で、前年度末と比べると5.0%増(前年度末8.5%減)となっている。

 翌年度以降支出予定額を目的別にみると、第23図のとおりである。

 このうち、物件の購入等に係るものについては、製造・工事の請負に係るもの(対前年度末比2.9%増)等が増加したものの、土地の購入に係るもの(同10.1%減)が減少したこと等により、全体として2.4%減となっている。

 翌年度以降支出予定額を団体種類別にみると、都道府県においては5兆4,680億円、市町村においては6兆7,375億円で、前年度末と比べるとそれぞれ2.0%増(前年度末10.2%減)、7.7%増(同7.0%減)となっている。

ウ 積立金現在高[第102表]

 地方公共団体の積立金現在高の状況は、第16表のとおりである。

 平成17年度末における積立金現在高は4年ぶりに増加に転じ、13兆1,465億円となっており、前年度末と比べると1,146億円増加(対前年度末比0.9%増)している。また、標準財政規模に対する比率は、前年度末と比べると0.7%ポイント低下の25.3%となっている。

 積立金現在高の内訳をみると、年度間の財源調整を行うために積み立てられている財政調整基金は前年度末と比べると6.1%増となっている。地方債の将来の償還費に充てるために積み立てられている減債基金は前年度末と比べると6.1%減となっている。将来の特定の財政需要に備えて積み立てられているその他特定目的基金は前年度末と比べると0.5%増となっている。

 積立金現在高を団体種類別にみると、前年度末と比べ、都道府県においては減債基金及びその他特定目的基金が減少している一方、財政調整基金が増加したことにより、全体として734億円増加(対前年度末比1.9%増)しており、市町村においては減債基金が減少している一方で、財政調整基金及びその他特定目的基金が増加したことにより、全体として413億円増加(同0.4%増)している。

エ 将来にわたる実質的な財政負担[第100表〜第102表第134表]

 地方債現在高(特定資金公共事業債及び特定資金公共投資事業債を除く。)に債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の将来にわたる実質的な財政負担の推移は、第24図のとおりである。

 平成17年度末における将来にわたる実質的な財政負担は138兆9,882億円で、前年度末と比べると0.2%減(前年度末2.1%増)となっている。

 なお、財団法人阪神・淡路大震災復興基金及び財団法人新潟県中越大震災復興基金に係る特殊要因を除いた場合には、将来にわたる実質的な財政負担は138兆6,832億円で、前年度末と比べると0.5%増(前年度末1.5%増)となっている。

 また、標準財政規模に対する比率は、前年度末と比べると10.6%ポイント低下の267.6%となっており、また、国内総生産(名目ベース。以下同じ。)に対する割合では、前年度末と比べると0.3%ポイント低下の27.6%となっている。

 将来にわたる実質的な財政負担を団体種類別にみると、都道府県においては80兆6,693億円(標準財政規模に対する比率331.4%)、市町村においては58兆3,188億円(同211.2%)であり、前年度末と比べるとそれぞれ0.1%増(前年度末2.4%増)、0.5%減(同1.7%増)となっている。

オ 普通会計が負担すべき借入金残高

 普通会計が将来にわたって負担すべき借入金という観点からは、地方債現在高のほか、巨額の地方財源不足に対処するための交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「交付税特別会計」という。)借入金のうち地方財政全体で負担するもの及び地方公営企業において償還する企業債のうち、経費負担区分の原則等に基づき、普通会計がその償還財源を負担するものについても併せて考慮する必要がある。

 この観点から、交付税特別会計借入金残高のうち地方財政全体で負担することとなるものと企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものを地方債現在高(特定資金公共事業債及び特定資金公共投資事業債を除く。以下、この項において同じ。)に加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第25図のとおりである。

 これをみると、近年の地方税収等の落込みや平成4年度以降の補正予算による経済対策に加え、平成6年度以降の減税による地方税の減収等に対応するための財源確保や平成13年度以降の臨時財政対策債の発行等に伴い、普通会計が負担すべき借入金残高は急増している。平成17年度末には、普通会計が負担すべき借入金残高は201兆2,943億円となっており、前年度末と比べると0.1%減(前年度1.6%増)となったものの、依然として高い水準にある。

 また、その内訳は、地方債現在高が139兆9,292億円、交付税特別会計借入金残高が33兆6,142億円、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものが27兆7,509億円となっている。

 なお、この普通会計が負担すべき借入金残高の標準財政規模に対する比率は、前年度末と比べると15.1%ポイント低下の387.5%となっており、普通会計が負担すべき借入金残高の国内総生産に対する比率は、前年度末と比べると0.4%ポイント低下の40.0%となっている。

(7) 決算の背景

ア 平成17年度の経済見通しと国の予算

(ア) 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成17年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成16年12月20日に閣議了解、平成17年1月21日に閣議決定された。

 これによると、平成16年度の我が国経済は、一部に弱い動きがみられるが、年度全体を通してみると、企業収益が大幅に改善するなど企業部門が引き続き堅調な中、雇用環境が持ち直す動きがみられ、民間需要中心の回復を続けると見込まれた。こうした結果、平成16年度の実質成長率は、2.1%程度(名目成長率は0.8%程度)になると見込まれた。

 このような情勢認識に立って、平成17年度の経済財政運営の基本的態度については、平成16年6月4日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(以下「基本方針2004」という。)に基づき、個人や企業の挑戦する意欲と地方の自主性を引き出すため、規制、金融、税制、歳出の四分野に加え、郵政民営化、三位一体、社会保障等の構造改革を引き続きスピード感を持って一体的かつ整合的に推進し、民間需要主導の持続的な経済成長を図ることとされている。また、デフレからの脱却を確実なものとするため、政府は、日本銀行と一体となって政策努力を更に強化し、今後とも、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととされた。

 以上のような経済財政運営を前提として、平成17年度の国内総生産の実質成長率は、1.6%程度(名目成長率は1.3%程度)になると見通された。

(イ) 国の予算

 平成16年12月3日、「平成17年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で平成17年度予算については、持続的な財政構造の構築と予算の質の向上を図る必要があることから、歳出改革を一層推進し、一般会計歳出及び一般歳出の水準について、実質的に前年度水準以下に抑制してきた従来の歳出改革路線を堅持・強化することを基本的考え方とすることとされた。また、歳出の見直しと構造改革の推進のため、活力ある社会・経済の実現に向けた4分野(「人間力の向上・発揮―教育・文化、科学技術、IT」、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」、「公平で安心な高齢化社会・少子化対策」、「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」)について、これまでの実績・評価を考慮しつつ、政策効果が顕著なものについて重点的かつ効率的に推進することとされた。また、社会資本整備、社会保障制度及び地方財政の事項についても制度・施策の見直しを行い、さらに、防衛、ODAその他の歳出分野についても「基本方針2004」に即し、歳出の見直しに取り組むこととされた。

 社会資本整備については、上記の活力ある社会・経済の実現に向けた4分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野に施策を集中しつつ更に絞込みを図るため、整備水準、整備の緊急性、国と地方の役割分担等の観点から、きめ細かく重点化を図ることとされた。

 地方財政については、国と地方に関する「三位一体の改革」を推進することにより、地方の権限と責任を大幅に拡大し、歳入・歳出両面での地方の自由度を高めることで、真に住民に必要な行政サービスを地方が自らの責任で自主的、効率的に選択できる幅を拡大するとともに、国・地方を通じた簡素で効率的な行財政システムの構築を図ることとされた。また、三位一体の改革については、「基本方針2004」に基づき、平成18年度までの改革の全体像に係る政府・与党合意(平成16年11月26日)を踏まえ、政府一丸となって取り組み、その成果を平成17年度予算に適切に反映することとされた。

 平成17年度予算は、以上のような方針により編成され、平成16年12月24日に概算の閣議決定が行われた後、平成17年1月21日に第162回国会に提出された。

 これによると、平成17年度の国の一般会計予算の規模は82兆1,829億円で、前年度当初予算と比べると720億円の増加(0.1%増)となり、うち一般歳出の規模は47兆2,829億円で、前年度当初予算と比べると3,491億円の減少(0.7%減)となった。なお、「平成17年度予算編成の基本方針」において、前年度当初予算から3%以上削減することとされた公共投資関係費については、4.0%減の8兆2,720億円となった。また、公債の発行予定額は34兆3,900億円で、前年度当初発行予定額と比べると2兆2,000億円の減少(6.0%減)となり、公債依存度は41.8%となった。

 他方、財政投融資計画については、「特殊法人等整理合理化計画(平成13年12月19日閣議決定)」等を適切に反映しつつ、真に必要な資金需要には的確に対応するとともに、民業補完の原則の下、総額の抑制及び対象事業の重点化・効率化に努めることとされ、計画規模は17兆1,518億円、前年度計画額と比べると3兆3,376億円の減少(16.3%減)となった。

イ 地方財政計画

 平成17年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」等に沿って、歳出全般にわたり見直しを行うことにより歳出総額の計画的な抑制を図る一方、当面の重要課題である人間力の向上・発揮(教育・文化、科学技術、IT)、個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、少子・高齢化対策、循環型社会の構築・地球環境問題への対応等に財源の重点的配分を図ることとし、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

(ア) 地方税については、現下の経済・財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するための「あるべき税制」の構築に向け、定率減税の縮減、所得譲与税による税源移譲、法人事業税の分割基準の見直しその他の所要の措置を講じる。

(イ) 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じる。

a 恒久的な減税に伴う影響額及び平成15年度税制改正に伴う減収額以外の地方財源不足(以下「通常収支に係る財源不足」という。)の見込額7兆5,129億円については、次の措置を講じる。

(a) 平成16年度に講じた平成18年度までの間の制度改正に基づき、財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等を除いた残余については国と地方が折半して補てんすることとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補てん措置を講じる。

 また、投資的経費に係る地方単独事業費と一般行政経費に係る地方単独事業費の一体的かい離是正分の一般財源に相当する地方財源不足分については、基本的には国と地方が折半して負担することとするが、平成17年度は全額地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により措置することとし、国負担となるべき分については後年度に調整することとする。

 臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

 なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等2,736億円については法律の定めるところにより、平成18年度以降の地方交付税の総額に加算することとする。

(b) これに基づき、平成17年度の通常収支に係る財源不足見込額7兆5,129億円については、次により完全に補てんする。

(i) 地方交付税については、国の一般会計加算により2兆5,298億円(うち、地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額1,683億円、同条第4項の加算額11億円、同条第8項の加算額1,963億円、臨時財政対策特例加算額2兆1,641億円)増額する。

(ii) 地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を3兆2,231億円発行する。

(iii) 建設地方債(財源対策債)を1兆7,600億円増発する。

b 平成11年から実施されている恒久的な減税については、平成17年度税制改正により、平成18年分以後の所得税及び平成18年度分以後の個人住民税から定率減税を2分の1に縮減することとされており、平成17年度の地方財政への影響額には大きな変動はないものと見込まれる。このため、恒久的な減税に伴う地方財政への影響額3兆4,720億円については、次の措置を講じる。

(a) 恒久的な減税の実施による地方税の減収1兆9,198億円について、その4分の3相当額を国と地方のたばこ税の税率変更による地方たばこ税の増収措置(1,135億円)、法人税の地方交付税率の引上げによる増収措置(4,375億円)及び地方特例交付金(8,888億円)により、その4分の1相当額を地方財政法第5条の特例となる地方債(減税補てん債、4,800億円)により完全に補てんする。

(b) 恒久的な減税の実施による地方交付税への影響額1兆5,522億円のうち、平成17年度に新たに発生する地方交付税の減収1兆4,295億円については、交付税特別会計借入金により措置し、その償還は国と地方が折半して負担することにより完全に補てんする。なお、所得税の定率減税の縮減により、地方交付税原資が増加した分に相当する借入金の縮減(592億円)が見込まれる。また、平成11年度以降地方交付税への影響額の補てん対策として措置した交付税特別会計借入金に係る利子相当額のうち国負担分601億円は一般会計からの繰入れにより、地方負担分626億円は交付税特別会計借入金により措置する。

c 平成15年度税制改正に伴う平成17年度の地方税及び地方交付税の減収額1,772億円については、次の措置を講じる。

(a) 地方税の減収783億円については、減税補てん債の発行により完全に補てんする。

(b) 地方交付税の減収989億円については、交付税特別会計借入金により完全に補てんする。

d 上記の結果、平成17年度の地方交付税については、16兆8,979億円(前年度に比し0.1%増)を確保する。

(ウ) 三位一体の改革の一環として、次のとおり国庫補助負担金の改革と、これに対応した税源移譲等の措置を講じることとする。

a 国民健康保険国庫負担、養護老人ホーム等保護費負担金、公営住宅家賃対策等補助のうち公営住宅家賃収入補助分など、税源移譲に結びつく改革に係るもののうち、暫定措置とされた義務教育費国庫負担金の減額分を除いた国庫補助負担金については、平成17年度から一般財源化することとし、所要額を税源移譲する。

 税源移譲については、平成18年度税制改正において、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実現することとし、平成17年度においては、暫定措置として、平成16年度措置分を含め、所得譲与税により税源移譲する。この平成17年度所得譲与税は、国庫補助負担金の改革内容等を踏まえ、都道府県へ総額の5分の3、市町村(一部事務組合等を除く。)へ総額の5分の2を譲与することとし、譲与基準は、平成16年度と同様、人口とする。

b 義務教育費国庫負担金の暫定的な減額相当分については、平成16年度から措置されている退職手当及び児童手当の暫定的な一般財源化分に加えて、税源移譲予定特例交付金により財源措置する。

 この税源移譲予定特例交付金のうち、退職手当及び児童手当に係るものについては、平成16年度と同様、人口を基準として、平成17年度の義務教育費国庫負担金の暫定的な減額相当分については、教職員給与費を基本として都道府県に交付する。

(エ) 地方債については、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、極めて厳しい地方財政の状況の下で、その健全性の確保に留意しつつ、地方公共団体が個性豊かで活力に満ちた地域社会の構築を目指して、地域再生の推進、それぞれの地域の特性を活かした魅力あふれる地域づくり、ICT(情報通信技術)を活用した住民サービスの向上と地域経済の活性化、災害等に強く安心安全な地域づくり等の当面する政策課題に重点的・効率的に対応しうるよう所要額を確保する。この結果、地方債計画の規模は15兆5,366億円(普通会計分12兆2,619億円、公営企業会計等分3兆2,747億円)とする。

(オ) 社会経済情勢の推移等に即応して使用料・手数料等の適正化を図る。

(カ) 地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 投資的経費に係る地方単独事業費については、「基本方針2003」を踏まえた事業規模の計画的抑制と併せ、かい離是正を行ったところである。その結果、平成17年度においては、前年度に比し8.2%減額することとしているが、かい離是正分を除いた場合は3.0%減額であり、地域活性化事業、地域再生事業及び防災対策事業などにより、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

b 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、人間力の向上・発揮(教育・文化、科学技術、IT)、個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、少子・高齢化対策、循環型社会の構築・地球環境問題への対応等の分野に係る施策に財源の重点的配分を図るとともに、かい離是正を行い、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

c 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

d 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(キ) 地方公共団体の公債費負担の軽減を図るため、普通会計における高金利の公的資金に係る地方債に対する特別交付税措置を拡充するとともに、一定の公営企業金融公庫資金に係る公営企業債についての借換え措置を拡大する。

(ク) 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行う。

(ケ) 地方行財政運営の合理化を図ることとし、一般職の定員削減を行う等定員管理の合理化を図るとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成17年度の地方財政計画の規模は、83兆7,687億円で、前年度と比べると8,982億円減少(対前年度比1.1%減)となった。

 歳入についてみると、地方税は33兆3,189億円で、前年度と比べると9,958億円増加(対前年度比3.1%増)(道府県税4.3%増、市町村税2.2%増)、地方譲与税は1兆8,419億円で、前年度と比べると6,967億円増加(同60.8%増)、地方特例交付金は1兆5,180億円で、前年度と比べると4,132億円増加(同37.4%増)、地方交付税は16兆8,979億円で、前年度と比べると117億円増加(同0.1%増)、国庫支出金は11兆1,967億円で、前年度と比べると9,271億円減少(同7.6%減)、地方債(普通会計分)は12兆2,619億円で、前年度と比べると1兆8,829億円減少(同13.3%減)となった。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は22兆7,240億円で、前年度と比べると2,750億円減少(対前年度比1.2%減)となった。なお、地方財政計画全体の職員数については、一般職員(義務教育教職員、警察官、消防職員、非義務制学校の教員を除く職員。)について、国家公務員の定員削減の方針に準じ、10,369人を縮減するとともに、消防防災関係職員の増員、施設増に伴う所要の増員等に義務教育教職員、警察官、消防職員、非義務制学校の教員の増減員を加え、12,411人の減員を見込んだ。一般行政経費は23兆1,307億円で、前年度と比べると1兆2,474億円増加(同5.7%増)、公債費は13兆3,803億円で、前年度と比べると2,976億円減少(同2.2%減)、投資的経費は19兆6,761億円で、前年度と比べると1兆6,522億円減少(同7.7%減)となり、投資的経費のうち、公共事業費中の普通建設事業費は6兆1,153億円で、前年度と比べると5,266億円減少(同7.9%減)、地方単独事業費は12兆3,700億円で、前年度と比べると1兆1,000億円減少(同8.2%減)となった。

ウ 財政運営の経過

(ア) 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005

 平成17年6月21日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(以下「基本方針2005」という。)が閣議決定された。

 「基本方針2005」においては、我が国の経済について、「バブル後」と呼ばれた時期を確実に抜け出し、「攻めの改革」に踏み出すときを迎えているとしたうえで、平成18年度までの2年間について、(1)「小さくて効率的な政府」の実現、(2)少子高齢化とグローバル化を乗り切るための基盤整備、(3)デフレの克服及び民需主導の経済成長の実現の3つの課題に取り組む「重点強化期間」として位置づけられた。

 具体的には、「『小さくて効率的な政府』の実現」については、政策金融改革や政府の資産・債務管理の強化等を通じて資金の流れを「官から民へ」と変えるとともに、三位一体の改革の確実な実現や市場化テストの本格的導入等を通じて仕事の流れを変え、国・地方を通じた徹底的な行政改革や公務員の総人件費改革等を通じて人と組織を変えることとされた。「少子高齢化とグローバル化を乗り切るための基盤整備」については、2010年代初頭における国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指しつつ、歳出・歳入一体改革を進めるとともに、国民の安全・安心を確保するための取組、持続的な社会保障制度の構築、少子化対策及び教育改革の推進、人間力の強化に向けた取組、「新産業創造戦略2005」の推進や「科学技術創造立国」の実現等を通じたグローバル化への総合的かつ戦略的な取組等を実施していくこととされた。「デフレの克服及び民需主導の経済成長の実現」については、民間需要・雇用の拡大に力点を置いて規制改革、金融システム改革、税制改革、歳出改革の4分野における構造改革への取組をより本格的に推進するとともに、デフレからの脱却を確実なものとするよう、政府は日本銀行と一体となって政策努力の更なる強化・拡充を図り、今後とも経済情勢によっては大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととされた。

(イ) 平成17年度補正予算(第1号)

 平成17年度補正予算(第1号)は、平成17年12月20日に閣議決定され、平成18年1月20日に第164回国会に提出され、2月3日に成立した。

 この補正予算においては、歳出面では、災害対策費5,733億円、義務的経費3,774億円、地方交付税交付金1兆3,516億円、改革推進公共投資事業償還時補助等7,610億円、アスベスト対策関連経費1,805億円、市町村合併推進体制整備費補助金463億円、新型インフルエンザ対策等関連経費372億円等を追加計上したほか、既定経費の節減1兆3,197億円、予備費の減額500億円の修正減少額を計上した。また、歳入面では、最近までの収入実績等を勘案し、租税及印紙収入3兆350億円の増収を見込むとともに、前年度剰余金受入1兆6,294億円を計上するほか、その他収入7,785億円の増収を見込む一方、財政健全化の推進のため公債金は9,210億円を減額した。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成17年度当初予算に対し4兆5,219億円増加し、86兆7,048億円となった。

(ウ) 平成17年度補正予算(第1号)に係る地方財政補正措置

 平成17年度補正予算(第1号)の編成により、国税の増収見込み等に伴い地方交付税の増加が見込まれたとともに、災害復旧事業の追加等に伴う地方負担の増加(4,416億円程度)が生じた結果、以下の地方財政補正措置が講じられた。

a 地方交付税の追加等

 国の補正予算により増額された平成17年度分の地方交付税の額1兆3,516億円(平成16年度精算分4,322億円、平成17年度国税五税の自然増に伴うもの9,194億円)については、平成17年度において普通交付税の調整額の復活に要する額609億円を交付することとしたうえで、残余の額1兆2,908億円について平成18年度分として交付すべき地方交付税の総額に加算して交付する措置が講じられた。

b 追加の財政需要等に対する財政措置

(a) 国の補正予算により平成17年度に追加されることとなる災害復旧事業、アスベスト対策関連事業等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分3,138億円)については、原則として、地方債(充当率100%)を充当することとし、後年度においてその元利償還金の全額を基準財政需要額に算入することとした。その際、元利償還金の50%(義務教育施設改築事業等当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては、原則として当初の算入率)については、公債費方式により各地方公共団体の地方債発行額に応じて基準財政需要額に算入することとし、残余については単位費用により措置することとした。また、出資金、貸付金等については、資金手当のための地方債を措置することとした。

(b) 生活保護費、老人医療給付費、都道府県調整交付金等地方債の対象とならない経費(1,278億円)については、給与関係経費の不用額(190億円)の充当及び追加財政需要額(5,100億円)の取崩しにより対応することとした。