2 地方財政の概況

 地方公共団体の歳入及び歳出は、一般会計と特別会計に区分して経理されているが、特別会計の中には、一般行政活動に係るものと企業活動に係るものがある。

 このため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門と水道、交通、病院等の企業活動部門に分け、前者を「普通会計」、後者を「地方公営事業会計」として区分している。

 以下、平成20年度の地方財政について、8までにおいて普通会計の状況を示すとともに、9において地方公営事業会計の状況を示す。

(1)決算規模[第1表第5表第10表第73表

 地方公共団体(47都道府県、1,777市町村、23特別区、1,339一部事務組合及び110広域連合(以下、一部事務組合及び広域連合を「一部事務組合等」という。))の普通会計の純計決算額は、第1表のとおり、歳入92兆2,135億円(前年度91兆1,814億円)、歳出89兆6,915億円(同89兆1,476億円)で、歳入、歳出いずれも9年ぶりに増加している。

 また、前年度と比べると、歳入1.1%増(前年度0.4%減)、歳出0.6%増(同0.1%減)となっている。

 このように決算規模が前年度決算額を上回ったのは、歳入については、地方税が景気悪化に伴い法人関係二税の減収により減少しているが、国の経済対策の実施により国庫支出金が大幅に増加し、また、減収補てん特例交付金等の創設により地方特例交付金等が増加したこと、歳出については、歳出削減努力により、人件費及び普通建設事業費を中心とする投資的経費は減少しているが、国の雇用対策によるふるさと雇用再生特別基金等の創設により積立金が増加したこと等によるものである。

 さらに、歳出から公債費及び公営企業への繰出しのうち公債費財源繰出し等を除いた一般歳出は、65兆8,143億円(前年度66兆2,634億円)となっており、前年度と比べると0.7%減となっている。

 決算規模の状況を団体種類別にみると、第2表のとおりであり、都道府県は、歳入、歳出ともに10年連続で前年度決算額を下回った一方、市町村(特別区及び一部事務組合等を含む。特記がある場合を除き、以下同じ。)は、歳入、歳出ともに2年連続で前年度決算額を上回っている。

 また、近年の決算規模の推移は、第7図のとおりである。

(2)決算収支

ア 実質収支[第7表

 実質収支(形式収支(歳入歳出差引額)から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額)の状況は、第3表のとおりである。

 平成20年度の実質収支は、1兆2,797億円の黒字(前年度1兆3,597億円の黒字)で、昭和31年度以降黒字が続いている。

 実質収支を団体種類別にみると、都道府県においては11年ぶりに全団体が黒字となり、2,659億円の黒字(前年度3,311億円の黒字)となっている。

 また、市町村においては1兆138億円の黒字(前年度1兆286億円の黒字)であり、昭和31年度以降黒字が続いている。

 実質収支が赤字である団体数をみると、平成19年度に赤字であった25団体(1府、24市町村)のうち16団体(16市町村)が引き続き赤字であり、3団体(3市町村)が新たに赤字団体となった結果、赤字団体数は19団体(打切り決算(市町村合併等により、出納整理期間中の歳入、歳出がないことをいう。以下同じ。)が行われたことによる赤字団体は除いている。)であり、前年度と比べると6団体減少している。

 さらに、近年の実質収支及び赤字団体の赤字額の推移は、第8図のとおりである。

 標準財政規模に対する実質収支額の割合である実質収支比率の推移は、第9図のとおりであり、平成20年度の実質収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は0.2ポイント低下の1.9%となっている。

 実質収支比率を団体種類別にみると、都道府県は0.3ポイント低下の0.9%、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。)は前年度と同じ3.0%となっている。

イ 単年度収支及び実質単年度収支[第7表

 平成20年度の単年度収支(実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額)は、784億円の赤字(前年度1,613億円の赤字)で、2年連続で赤字となっている。

 単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては653億円の赤字(前年度543億円の赤字)、市町村においては131億円の赤字(同1,071億円の赤字)となっている。

 また、実質単年度収支(単年度収支に財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた額)は、2年ぶりに黒字となっており、その黒字額は1,828億円(前年度137億円の赤字)となっている。

 実質単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては194億円の黒字(前年度625億円の黒字)、市町村においては1,634億円の黒字(同762億円の赤字)となっている。

 なお、実質収支、単年度収支及び実質単年度収支の赤字団体数の状況は、第4表のとおりである。

(3)歳入[第10表

 歳入純計決算額は92兆2,135億円で、前年度と比べると1兆321億円増加(対前年度比1.1%増)となっている。

 決算額の主な内訳をみると、第5表のとおりである。

 地方税は、景気の悪化に伴う法人関係二税(法人住民税、法人事業税)の減収等により、前年度と比べると7,083億円減少(同1.8%減)している。

 地方譲与税は、地方道路譲与税の減少等により、前年度と比べると357億円減少(同5.0%減)している。

 地方特例交付金等は、減収補てん特例交付金及び地方税等減収補てん臨時交付金の新設により、前年度と比べると2,271億円増加(同72.8%増)している。

 地方交付税は15兆4,061億円で、前年度と比べると2,033億円増加(同1.3%増)し、8年ぶりの増加となっている。また、臨時財政対策債を含めた実質的な地方交付税は、17兆9,510億円で、前年度と比べると4,110億円増加(同2.3%増)となっている。

 国庫支出金は、国の公共事業関係費の抑制に伴い普通建設事業費支出金が減少したが、国の補正予算等により、前年度と比べると1兆3,525億円増加(同13.1%増)している。

 地方債は、減収補てん債特例分等の増加により、前年度と比べ3,376億円増加(同3.5%増)している。

 歳入純計決算額の構成比の推移は、第10図のとおりである。

 地方税の構成比は、ピークとなった昭和63年度(歳入総額の44.3%)以降低下し、20年度は前年度と比べると1.3ポイント低下の42.9%となっている。

 地方交付税の構成比は、平成8年度から12年度までは上昇していたが、13年度以降、地方財政対策にあたり、交付税特別会計の借入金方式に代えて臨時財政対策債を発行し、基準財政需要額の一部を振り替えることとしたこと等から低下が続いている。20年度においては、前年度と同じ16.7%となっている。

 国庫支出金の構成比は、平成12年度から13年度は14%台、14年度から16年度は13%台で推移したのち、三位一体の改革による国庫補助負担金の一般財源化、普通建設事業費支出金の減少等により17年度以降低下してきたが、20年度は国の補正予算等により前年度と比べると1.4ポイント上昇の12.7%となっている。

 地方債の構成比は、普通建設事業費の減少や平成16年度に臨時財政対策債の発行額が減少したこと等により低下していたが、20年度においては減収補てん債特例分等の増加により、前年度と比べると0.3ポイント上昇の10.8%となっている。なお、臨時財政対策債の発行額を除いた地方債の構成比は、前年度と比べると0.1ポイント上昇の8.0%となっている。

 一般財源の構成比は、平成16年度から地方税、地方譲与税及び地方特例交付金等の増加に加え、国庫支出金、地方債等の減少などにより上昇していたが、19年度に低下に転じ、20年度は地方税、地方譲与税が減少したことから、前年度と比べると1.1ポイント低下の60.9%となっている。

 歳入決算額の構成比を団体種類別にみると、第11図のとおりである。

 都道府県においては地方税が最も大きな割合(41.7%)を占め、以下、地方交付税(16.9%)、地方債(12.4%)の順となっている。

 市町村においても都道府県と同様に地方税が最も大きな割合(38.9%)を占め、以下、地方交付税(14.5%)、国庫支出金(11.7%)の順となっている。

(4)歳出

 歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と経費の経済的な性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、次のとおりである。

ア 目的別歳出

(ア) 目的別歳出[第34表

 地方公共団体の経費は、その行政目的によって、議会費、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、消防費、警察費、教育費、災害復旧費、公債費等に大別することができる。

 歳出純計決算額は89兆6,915億円で、前年度と比べると5,439億円増加(対前年度比0.6%増)となっている。

 目的別歳出の構成比は、第6表のとおりであり、民生費(歳出総額の19.9%)、教育費(同18.0%)、公債費(同14.7%)、土木費(同14.4%)、総務費(同9.9%)の順となっている。

 民生費は、生活保護受給者数の増加に伴う生活保護費等社会保障関係経費の増加により、前年度と比べると8,450億円増加(対前年度比5.0%増)している。

 教育費は、人件費の減少等により、前年度と比べると2,851億円減少(同1.7%減)している。

 公債費は、臨時財政対策債や合併特例事業債の償還額の増加等により、前年度と比べると1,343億円増加(同1.0%増)している。

 土木費は、道路橋りょう費、都市計画費等の減少により、前年度と比べると5,195億円減少(同3.9%減)している。

 総務費は、景気の悪化に伴う法人住民税の還付の増加等により、前年度と比べると138億円増加(同0.2%増)している。

 目的別歳出の構成比の推移は、第7表のとおりである。農林水産業費及び土木費の構成比がそれぞれ低下の傾向にある一方、民生費の構成比が上昇の傾向にある。

 目的別歳出の構成比を団体種類別にみると、第12図のとおりである。

 都道府県においては、市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等により教育費が最も大きな割合(23.4%)を占め、以下、公債費(14.3%)、土木費(13.2%)、民生費(11.6%)、商工費(7.7%)の順となっている。

 また、市町村においては、児童手当支給事務、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉事務の比重が高いこと等により民生費が最も大きな割合(28.8%)を占め、以下、土木費(14.1%)、公債費(13.4%)、総務費(13.2%)、教育費(10.7%)の順となっている。

(イ) 一般財源の充当状況

 一般財源の目的別歳出に対する充当状況は、第8表のとおりである。

 一般財源総額(56兆1,825億円)に占める目的別歳出の割合をみると、公債費が最も大きな割合(19.2%)を占め、以下、民生費(19.1%)、教育費(19.0%)、総務費(11.6%)、土木費(9.2%)の順となっている。

 一般財源充当額の目的別構成比の推移は、第13図のとおりである。民生費に充当された一般財源の構成比が上昇の傾向にあり、土木費に充当された一般財源の構成比が低下の傾向にある。

イ 性質別歳出

(ア) 性質別歳出[第73表

 地方公共団体の経費は、その経済的な性質によって、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別することができる。

 義務的経費は、職員給与費等の人件費のほか、生活保護費等の扶助費及び地方債の元利償還金等の公債費からなっており、そのうち人件費が53.2%を占めている。また、投資的経費は、道路、橋りょう、公園、公営住宅、学校の建設等に要する普通建設事業費のほか、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっており、そのうち普通建設事業費が98.6%を占めている。

 歳出純計決算額の主な性質別内訳をみると、第9表のとおりである。

 義務的経費は46兆2,220億円で、前年度と比べると2,139億円減少(対前年度比0.5%減)している。これは、生活保護費の増加等に伴う扶助費の増加(同3.7%増)や、臨時財政対策債及び合併特例事業債の償還額の増加等に伴う公債費の増加(同1.0%増)があったものの、各団体の歳出削減努力により人件費が減少(同2.6%減)したことによるものである。

 投資的経費は13兆1,779億円で、前年度と比べると7,041億円減少(同5.1%減)している。これは、その大部分を占める普通建設事業費が、補助事業費、単独事業費ともに減少し(それぞれ同2.7%減、同4.7%減)、普通建設事業費全体で5,364億円減少(同4.0%減)したことによるものである。

 また、その他の経費は30兆2,916億円で、前年度と比べると1兆4,619億円増加(同5.1%増)となっている。これは、国の雇用対策によるふるさと雇用再生特別基金や緊急創出基金の創設により、積立金が6,848億円増加(同31.8%)したこと等によるものである。

 平成15年度以降の歳出決算増減額に占めるこれらの経費の推移は、第14図のとおりである。

 次に、性質別歳出の構成比の推移は、第15図のとおりである。

 投資的経費の構成比は、平成8年度以降低下しており、20年度は前年度と比べると0.9ポイント低下の14.7%となっている。

 一方、義務的経費の構成比は、平成8年度以降、投資的経費の減少に伴い上昇していたが、20年度は歳出総額が増加したのに対し義務的経費が減少したことから、前年度に比べると0.6ポイント低下の51.5%となっている。

 性質別歳出決算額の構成比を団体種類別にみると、第16図のとおりである。

 人件費の構成比は、都道府県において市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していることなどから、都道府県が31.1%、市町村が20.4%となっている。また、扶助費の構成比は、市町村において児童手当支給事務、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉関係事務が行われていること等から、市町村が15.7%、都道府県が1.8%となっている。

 さらに、普通建設事業費のうち、補助事業費の構成比は、都道府県(6.7%)が市町村(4.9%)を上回る一方、単独事業費の構成比は、市町村(7.9%)が都道府県(6.0%)を上回っている。

(イ) 一般財源の充当状況[第75表

 一般財源の性質別歳出に対する充当状況は、第10表のとおりである。

 一般財源総額(56兆1,825億円)に占める性質別歳出の割合をみると、義務的経費が58.6%で最も大きな割合を占めている。また、投資的経費の割合は5.8%であり、歳出総額に占める投資的経費の割合(14.7%)に比べて小さくなっている。

 一般財源充当額の性質別構成比の推移は、第17図のとおりである。

 義務的経費に充当された一般財源の構成比は、平成3年度以降上昇の傾向にあったが、近年は横ばいとなっており、20年度は前年度と比べると0.8ポイント低下の58.6%となっている。

 一方、投資的経費に充当された一般財源の構成比は、平成3年度以降低下の傾向にあり、20年度は前年度と比べると0.4ポイント低下の5.8%となっている。

(5)財政構造の弾力性

ア 経常収支比率[第8表

 地方公共団体が社会経済や行政需要の変化に適切に対応していくためには、財政構造の弾力性が確保されなければならない。財政分析においては、財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つとして、経常収支比率が用いられている。

 経常収支比率は、経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源)が、経常一般財源(一般財源総額のうち地方税、普通交付税のように毎年度経常的に収入される一般財源)、減収補てん債特例分及び臨時財政対策債発行額の合計額に対し、どの程度の割合となっているかをみることにより財政構造の弾力性を判断するものである。

 平成20年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度より0.6ポイント低下の92.8%となり、集計開始(昭和44年度)以来最も高い値を示した前年度をやや下回ったものの、依然として高い水準での推移が続いている。その主な内訳をみると、人件費充当分が35.1%(前年度36.2%)、公債費充当分が21.5%(同21.5%)となっている。なお、減収補てん債特例分及び臨時財政対策債の発行額を経常収支比率算出上の分母から除いた場合の経常収支比率を求めると、98.5%となる。

 また、経常収支比率が前年度を下回ったのは、第18図(その1)のように、分子である経常経費充当一般財源のうち人件費分が減少したものの、社会保障関係経費、公債費等の増加により分子全体として増加した一方、分母である経常一般財源も、普通交付税、地方特例交付金等の増加や減収補てん債特例分及び臨時財政対策債発行額の増加等により分母全体として増加し、分母の伸び率が分子の伸び率を上回ったことによるものである。

 経常収支比率を団体種類別にみると、都道府県は前年度より0.8ポイント低下し93.9%(前年度94.7%)、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。以下、この項において同じ。)は前年度より0.2ポイント低下し91.8%(同92.0%)となっている。

 経常収支比率の段階別分布状況をみると、第12表のとおりである。経常収支比率が80%以上の団体数は、都道府県においては47団体のすべての団体(前年度同数)、市町村においては全体の92.2%を占める1,638団体(同1,675団体)となっており、多くの団体の経常収支比率が高い水準にある。

イ 実質公債費比率及び公債費負担比率[第8表

 地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性をみる場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費による負担度合いを判断するための指標として、実質公債費比率及び公債費負担比率が用いられている。

 実質公債費比率は、地方債の元利償還金(繰上償還等を除く。)や公営企業債に対する繰出金などの公債費に準ずるものを含めた実質的な公債費相当額から、これに充当された一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除いたものが、標準財政規模(普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く。)に対し、どの程度の割合となっているかをみるものである。平成18年4月から地方債協議制度へ移行したことに伴い、公債費による負担度合いを判断し、起債に協議を要する団体と許可を要する団体とを判定するための指標として導入されたものであり、従来の起債制限比率について一定の見直しを行ったものである。

 実質公債費比率は、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(平成19年6月22日法律第94号)において、健全化判断比率の一つとして位置付けられている。なお、実質公債費比率の状況は、「第2章 平成20年度決算に基づく健全化判断比率等の状況」のとおりである。

 公債費負担比率は、公債費充当一般財源(地方債の元利償還金等の公債費に充当された一般財源)が一般財源総額に対し、どの程度の割合となっているかを示す指標であり、公債費がどの程度一般財源の使途の自由度を制約しているかをみることにより、財政構造の弾力性を判断するものである。

 平成20年度の公債費負担比率(全団体の加重平均)は、前年度(19.1%)と比べて0.1ポイント上昇の19.2%となっている。

 近年の公債費負担比率の推移は、第19図のとおりであり、近年は横ばいの状態が続いている。

(6)将来の財政負担

 地方公共団体の財政状況をみるには、単年度の収支状況のみでなく、地方債、債務負担行為等のように将来の財政負担となるものや、財政調整基金等の積立金のように年度間の財源調整を図り将来における弾力的な財政運営に資するために財源を留保するものの状況についても、併せて総合的に把握する必要がある。これらの状況は、次のとおりである。

ア 地方債現在高[第100表

 平成20年度末における地方債現在高は137兆3,657億円で、前年度末と比べると0.6%減(前年度末0.6%減)となっている。

 地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、第20図のとおりである。

 地方債現在高は、昭和50年度末では歳入総額の0.44倍、一般財源総額の0.88倍であったが、地方税収等の落込みや減税に伴う減収の補てん、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことに伴い、平成4年度末以降急増した。さらに、平成13年度からの臨時財政対策債の発行等があったが近年は横ばいで推移しており、平成20年度末には歳入総額の1.49倍、一般財源総額の2.44倍となっている。

 近年の地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移は、第21図のとおりである。

 地方債現在高の借入先別の構成比は、政府資金(27.8%)、市中銀行資金(25.8%)、市場公募債(23.8%)、旧郵政公社資金(9.0%)の順となっている。

 また、前年度末の割合と比べると、近年の公的資金の縮減に対応し、一層の市場化の推進等に伴い、政府資金が11.5ポイント低下する一方、市場公募債は1.2ポイント上昇している。

 地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては80兆2,223億円、市町村においては57兆1,434億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.8%増(前年度末0.6%増)、2.4%減(同2.3%減)となっている。

イ 債務負担行為額[第101表

 地方公共団体は、将来の支出を約束するために、債務負担行為を行うことができる。

 この債務負担行為は、数年度にわたる建設工事、土地の購入等の場合のように翌年度以降の経費支出が予定されているものと、債務保証又は損失補償のように債務不履行等の一定の事実が発生したときに支出されるものとに大別することができる。

 これらの債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額をみると、平成20年度末では12兆4,576億円で、前年度末と比べると5.9%増(前年度末4.5%減)となっている。

 翌年度以降支出予定額を目的別にみると、第22図のとおりである。

 このうち、物件の購入等に係るものについては、土地の購入に係るもの(対前年度末比8.6%減)が減少しているが、製造・工事の請負に係るもの(同14.3%増)が増加したこと等により、全体として3.9%増となっている。

 翌年度以降支出予定額を団体種類別にみると、都道府県においては5兆5,212億円、市町村においては6兆9,364億円で、前年度末と比べるとそれぞれ8.1%増(前年度末8.8%減)、4.2%増(同1.0%減)となっている。

ウ 積立金現在高[第102表

 地方公共団体の積立金現在高の状況は、第13表のとおりである。

 平成20年度末における積立金現在高は15兆3,033億円となっており、前年度末と比べると1兆3,646億円増加(対前年度末比9.8%増)している。

 積立金現在高の内訳をみると、年度間の財源調整を行うために積み立てられている財政調整基金は前年度末と比べると4.9%増となっている。地方債の将来の償還費に充てるために積み立てられている減債基金は前年度末と比べると2.7%減となっている。将来の特定の財政需要に備えて積み立てられているその他特定目的基金は前年度末と比べると15.4%増となっている。

 積立金現在高を団体種類別にみると、前年度末と比べ、都道府県においては国の雇用対策によるふるさと雇用再生特別基金等の創設等により特定目的基金が前年度末と比べると43.9%増と大幅に増加したこと等により、全体として1兆1,118億円増加(対前年度末比26.9%増)しており、市町村においては減債基金が減少したものの、財政調整基金及びその他特目基金が増加したことにより、全体として2,527億円増加(同2.6%増)している。

エ 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担[第100表第102表第134表

 地方債現在高(特定資金公共投資事業債を除く。)に債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担の推移は、第23図のとおりである。

 平成20年度末における地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担は134兆5,200億円で、前年度末と比べると1.1%減(前年度末1.3%減)となっている。

 また、国内総生産(名目ベース。以下同じ。)に対する割合では、前年度末と比べると0.8ポイント上昇の27.2%となっている。

 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担を団体種類別にみると、都道府県においては80兆4,933億円、市町村においては54兆267億円であり、前年度末と比べるとそれぞれ0.1%減(前年度末0.4%減)、2.5%減(同2.7%減)となっている。

オ 普通会計が負担すべき借入金残高

 普通会計が将来にわたって負担すべき借入金という観点からは、地方債現在高のほか、巨額の地方財源不足に対処するための交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「交付税特別会計」という。)借入金のうち地方財政全体で負担するもの及び地方公営企業において償還する企業債のうち、経費負担区分の原則等に基づき、普通会計がその償還財源を負担するものについても併せて考慮する必要がある。

 この観点から、交付税特別会計借入金残高のうち地方財政全体で負担することとなるものと企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものを地方債現在高(特定資金公共投資事業債を除く。以下、この項において同じ。)に加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第24図のとおりである。

 これをみると、バブル崩壊後の地方税収等の落込みや平成4年度以降の補正予算による経済対策に加え、平成6年度以降の減税による地方税の減収等に対応するための財源確保や平成13年度以降の臨時財政対策債の発行等に伴い、普通会計が負担すべき借入金残高は急増した。近年は横ばいとなっており、平成20年度末には、普通会計が負担すべき借入金残高は197兆110億円となっており、前年度末と比べると0.8%減(前年度0.8%減)となったものの、依然として高い水準にある。

 また、その内訳は、地方債現在高が137兆3,657億円、交付税特別会計借入金残高が33兆6,173億円、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものが26兆280億円となっている。

 なお、この普通会計が負担すべき借入金残高の国内総生産に対する比率は、前年度末と比べると1.4ポイント上昇の39.9%となっている。

(7)決算の背景

ア 平成20年度の経済見通しと国の予算

(ア) 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成20年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成19年12月19日に閣議了解、平成20年1月18日に閣議決定されたが、この中で平成19年度の我が国経済は、企業部門の底堅さが持続し、景気回復が続くと見込まれるものの、「改正建築基準法」施行の影響により住宅建設が減少していること等から、回復の足取りが緩やかになると見込まれた。こうした結果、平成19年度の国内総生産の実質成長率は、1.3%程度(名目成長率は0.8%程度)になると見込まれた。

 このような情勢認識に立って、「平成20年度の経済財政運営の基本的態度」においては、「希望と安心」の国の実現を目指すため、(1)成長力の強化、(2)地方の自立と再生、(3)安心と信頼のできる財政、社会保障、行政の構築、の3つを一体のものとして推進し、民間需要主導の持続的な成長を図るとともに、これと両立する安定的な物価上昇率を定着させるため、政府と日本銀行は、「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月19日閣議決定。以下「基本方針2007」という。)に示されたマクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、政策運営を行い、平成19年度に引き続き、サブプライム住宅ローン問題を背景とする金融資本市場の変動、原油価格の高騰、海外経済の動向等のリスク要因が我が国経済に与える影響については注視しつつ、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととされた。

(イ) 国の予算

 平成19年12月4日、「平成20年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で、平成20年度予算については、歳出全般にわたって、これまで行ってきた歳出改革の努力を決して緩めることなく、国・地方を通じ、引き続き「基本方針2006」及び「基本方針2007」に則り、最大限の削減を行うとともに、若者が明日に希望を持ち、お年寄りが安心できる「希望と安心」の国の実現のため、予算の重点化・効率化を行うこととして、このため歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、一般歳出及び一般会計歳出について厳しく抑制を図るとともに、新規国債発行額について極力抑制し、予算配分に当たっては、「公共事業関係費」の総額を前年度予算額から3%減算した額とすること等を基本に厳しく抑制した上で、引き続き予算執行実績を的確に踏まえた予算とすることとされた。

 地方財政については、平成20年度予算においても、「基本方針2006」及び「基本方針2007」に則り、国の取組と歩調を合わせて、人件費、投資的経費、一般行政経費の各分野にわたり厳しく抑制し、安定的な財政運営に必要となる地方税、地方交付税等の一般財源の総額を確保するとともに、法人二税を中心に税源が偏在するなど地方公共団体間で財政力に格差があることを踏まえ、地方間の税源の偏在是正について、具体策を策定し、その格差の縮小を目指し、また、「ふるさと」に対する納税者の貢献や、関わりの深い地域への応援が可能となる税制上の方策の実現に向け、検討することとされた。

 平成20年度予算は、以上のような方針により編成され、平成19年12月24日に政府案の閣議決定が行われた後、第169回国会に提出され、平成20年3月28日に政府案どおり成立した。

 これによると、平成20年度の国の一般会計予算の規模は83兆613億円で、前年度当初予算と比べると1,525億円の増加(0.2%増)となった。歳入、歳出別に見た場合、歳入については、租税及び印紙収入が53兆5,540億円で、前年度当初予算と比べると870億円の増加(0.2%増)となり、公債の発行予定額は25兆3,480億円で、前年度当初発行予定額と比べると840億円の減少(0.3%減)となった。その結果、公債依存度は30.5%となった。一方、歳出については、一般歳出の規模は47兆2,845億円で、前年度当初予算と比べると3,061億円の増加(0.7%増)となった。また、地方交付税交付金等は15兆6,136億円で前年度当初予算と比べると6,820億円の増加(4.6%増)となった。

イ 地方財政計画

 平成20年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、「基本方針2006」及び「基本方針2007」に沿って、国の取組と歩調を合わせて、歳出全般にわたり見直しを行うことにより計画的な抑制を図る一方、喫緊の課題である地方の再生に向け、地方の知恵と工夫を活かした産業振興や地域活性化、生活の安全安心の確保等の施策の推進に財源の重点的配分を図ることとし、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税などの一般財源総額の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

(ア) 地方税については、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の暫定措置として、法人事業税の税率の引下げを行うとともに、地方法人特別税を創設し、その収入額に相当する額を地方法人特別譲与税として都道府県に対して譲与するため所要の措置を講じることとする。

 また、最近における社会経済情勢等にかんがみ、個人住民税について、寄附金控除の拡充、上場株式等の配当等・譲渡所得等に対する税率の特例措置の見直し並びに公的年金からの特別徴収制度の創設を行い、自動車取得税及び軽油引取税の税率の特例措置の適用期限の延長並びに公益法人制度改革に対応した所要の措置を講じるほか、非課税等特別措置の整理合理化等を行うこととし、所要の措置を講じることとする。

(イ) 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

a 平成19年度に予定されていた交付税特別会計借入金の償還を平成25年度以降に繰り延べた上で当該償還予定額(5,869億円)を平成20年度に繰り越し地方交付税の総額に加算するとともに、平成20年度に予定されている交付税特別会計借入金の償還を平成26年度以降に繰り延べる。また、平成18年度精算分の一部(5,016億円の減額のうち3,016億円)を平成21年度に繰り延べる。

b 平成20年度の地方財源不足見込額5兆2,476億円については、平成19年度に講じた平成21年度までの間の制度改正に基づき、従前と同様の例により、次の補てん措置を講じる。その結果、平成19年度に引き続き、国と地方が折半して補てんすべき額は生じないこととなる。

(a)建設地方債(財源対策債)の増発 1兆5,400億円

(b)国の一般会計加算による地方交付税の増額 6,744億円(うち地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額2,000億円、同条第3項の加算額4,744億円)

(c)地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)の発行 2兆8,332億円(うち既往の臨時財政対策債の元利償還分1兆2,522億円、決算かい離是正分1兆2,110億円、地方再生対策費分3,700億円)

(d)地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律附則第4条第1項に規定する特別交付金の交付 2,000億円

 なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等3,092億円については、法律の定めるところにより平成26年度以降の地方交付税の総額に加算するとともに、平成18年度において一般会計から交付税特別会計に繰り入れた国負担分の借入金利子相当額の予算額と実際に要した額の差額847億円については、法律の定めるところにより平成21年度及び平成22年度の地方交付税の総額から減額する。

 また、交付税特別会計借入金の償還計画については、平成19年度から平成21年度までの各年度に行う予定となっている交付税特別会計借入金の償還を平成25年度以降に繰り延べる方式により、現行の償還期限の範囲で見直す。

c 上記の結果、平成20年度の地方交付税については、15兆4,061億円(前年度に比し1.3%増)を確保する。

(ウ) 平成20年度から適用される個人住民税における住宅借入金等特別税額控除の実施に伴う地方団体の減収分を補てんするため、地方特例交付金(減収補てん特例交付金)を創設する。

(エ) 地方債については、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方団体が、行政改革と財政の健全化を推進し、当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を引き続き推進しつつ、所要の地方債資金を確保する。

 この結果、地方債計画の規模は12兆4,776億円(普通会計分9兆6,055億円、公営企業会計等分2兆8,721億円)とする。

(オ) 地方の再生に向け、地域経済の振興や雇用の確保を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 喫緊の課題である地方の再生に向けた総合的な戦略と連携して、「地方と都市の共生」の考え方の下、地方税の偏在是正により生じる財源を活用して、地方が自主的・主体的に取り組む地域活性化施策に必要な特別枠「地方再生対策費」4,000億円を計上し、地方の再生に向けた施策を積極的に推進する。なお、平成20年度においては、偏在是正策の効果が発現しないため、その財源のうち3,700億円を臨時財政対策債の発行により措置する。

b 投資的経費に係る地方単独事業費については、国の公共投資関係費の取扱い等も勘案しつつ、前年度に比し3.0%減額することとする一方で、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

c 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、引き続き、地域において必要な行政課題に対して財源の重点的配分を図る。

d 平成20年度から施行される後期高齢者医療制度の安定的な運営に資するため、所要の財政措置を講じる。

e 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

f 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(カ) 地方団体の公債費負担の軽減を図るため、平成19年度に引き続き平成21年度までの3年間で、徹底した総人件費の削減等を内容とする財政健全化計画又は公営企業経営健全化計画を策定し、行政改革・経営改革を行う地方団体を対象に、公営企業借換債を合わせて5兆円程度の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金及び公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、その財源として必要に応じ民間等資金による借換債を発行できることとする。

(キ) 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(ク) 地方行財政運営の合理化を図ることとし、「基本方針2006」及び「基本方針2007」に沿って、職員数の純減や給与構造改革等に引き続き取り組むとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成20年度の地方財政計画の規模は、83兆4,014億円で、前年度と比べると2,753億円増加(0.3%増)となった。

 歳入についてみると、地方税は40兆4,703億円で、前年度と比べると975億円増加(0.2%増)(道府県税0.1%減、市町村税0.5%増)、地方譲与税は7,027億円で、前年度と比べると64億円減少(0.9%減)、地方特例交付金等は4,735億円で、前年度と比べると1,615億円増加(51.8%増)、地方交付税は15兆4,061億円で、前年度と比べると2,034億円増加(1.3%増)、国庫支出金は10兆831億円で、前年度と比べると908億円減少(0.9%減)、地方債(普通会計分)は9兆6,055億円で、前年度と比べると474億円減少(0.5%減)となった。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は22兆2,071億円で、前年度と比べると3,040億円減少(1.4%減)となった。なお、地方財政計画における職員数については、「基本方針2006」における5年間で5.7%の定員純減目標を踏まえ28,319人の純減としている。一般行政経費は26兆5,464億円で、前年度と比べると3,653億円増加(1.4%増)となり、一般行政経費に係る地方単独事業費は13兆8,410億円で、前年度と比べると1,100億円減少(0.8%減)となっている。公債費は13兆3,796億円で、前年度と比べると2,300億円増加(1.7%増)、投資的経費は14兆8,151億円で、前年度と比べると4,177億円減少(2.7%減)となっており、投資的経費のうち、公共事業費中の普通建設事業費は5兆3,210億円で、前年度と比べると1,465億円減少(2.7%減)となっている。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は8兆3,307億円で、前年度と比べると2,577億円減少(3.0%減)となった。

 他方、平成20年度の地方債計画の規模は12兆4,776億円で、前年度当初計画と比べると332億円減少(0.3%減)となった。平成20年度の地方債計画は、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方公共団体が、行政改革と財政の健全化を推進し当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を引き続き推進しつつ、所要の地方債資金の確保を図ることとして策定している。

 なお、平成19年度に引き続き平成21年度までの3年間で、5兆円程度の公的資金(旧資金運用部資金3兆3,000億円程度以内、旧簡易生命保険資金5,000億円程度以内、公営企業金融公庫資金1兆2,000億円程度、公営企業金融公庫資金にあっては公営企業借換債による措置4,000億円(平成19年度2,000億円、平成20年度2,000億円)を含む。)の補償金免除繰上償還を行うこととしており、その財源として必要に応じ民間等資金による借換債を発行できることとした。

ウ 財政運営の経過

(ア) 平成20年度補正予算(第1号)

 平成20年度補正予算(第1号)は、平成20年9月29日に閣議決定され、同日第170回国会に提出され、10月16日に成立した。

 この補正予算においては、緊急安心実現総合対策費1兆8,081億円等を追加計上したほか、既定経費の節減9,599億円、予備費の減額1,000億円の修正減少額を計上した。また、歳入面では、公債金3,950億円、前年度剰余金受入6,319億円等を追加計上した。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成20年度当初予算に対し、1兆641億円増加し、84兆1,255億円となった。

(イ) 平成20年度補正予算(第1号)に係る地方財政措置等

 平成20年度補正予算(第1号)の編成により、歳出の追加に伴う地方負担の増加が生じた結果、以下の措置が講じられた。

a 追加の財政需要等に対する財政措置

(a)国の補正予算により平成20年度に追加されることとなる公立文教施設整備費等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分3,169億円)については、原則として、地方債(充当率100%)を充当することとし、後年度においてその元利償還金の全額を基準財政需要額に算入する。

その際、元利償還金の50%(義務教育施設改築事業等当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては、原則として当初の算入率)については、公債費方式により各団体の地方債発行額に応じて基準財政需要額に算入することとし、残余については単位費用により措置する。

(b)地方債の対象とならない経費については、新たな地方負担が既定経費の節減に伴う地方負担の減少の範囲内であるため、全体として地方負担の追加は生じていないところである。

b 地方税等減収補てん臨時交付金

(a)地方税法等の一部を改正する法律(平成20年法律第21号)及び所得税法等の一部を改正する法律(平成20年法律第23号)が平成20年4月1日後に公布されたことにより生じた自動車取得税及び軽油引取税並びに地方道路税の収入の減少に伴う地方公共団体の平成20年度の減収を補てんするため、地方税等減収補てん臨時交付金を交付する。

 地方税等減収補てん臨時交付金の総額は656億円であり、その内訳は次のとおりである。

(i)自動車取得税の収入の減少に伴う都道府県及び市町村の減収を補てんするために交付する自動車取得税減収補てん臨時交付金   116億85百万円

(ii)軽油引取税の収入の減少に伴う都道府県及び政令指定都市の減収を補てんするために交付する軽油引取税減収補てん臨時交付金   493億39百万円

(iii)地方道路税の収入の減少に伴う都道府県及び市町村の減収を補てんするために交付する地方道路譲与税減収補てん臨時交付金   45億95百万円

 地方税等減収補てん臨時交付金については、各地方公共団体の減収見込額に応じて交付し、その額は道路に関する費用に充てることとしている。

(b)地方税等減収補てん臨時交付金の創設に伴い、平成20年度の普通交付税について、次のとおり基準財政収入額の再算定を行う。

(i)自動車取得税減収補てん臨時交付金及び軽油引取税減収補てん臨時交付金については、その75%を基準財政収入額に算入する。

(ii)地方道路譲与税減収補てん臨時交付金については、その100%を基準財政収入額に算入する。

(ウ) 地域活性化・緊急安心実現総合対策交付金

 安心実現のための緊急総合対策に掲げられた「地方公共団体に対する配慮」として、地方公共団体が安心実現のための緊急総合対策に対応した総合的な対策を実施し、もって地域活性化を図ることができるよう、地域活性化・緊急安心実現総合対策交付金を創設する。

 地域活性化・緊急安心実現総合対策交付金の総額は260億円であり、交付限度額の算定式については、財政基盤のぜい弱な地方公共団体に重点を置き、原油高騰の影響が特に大きい離島や寒冷地に配慮して定める。

(エ) 安心実現のための緊急総合対策に係る特別交付税措置

 安心実現のための緊急総合対策として、離島・寒冷地での生活支援、学校給食に係る保護者負担の軽減、農林漁業者・中小企業への金融措置等による支援など地方公共団体の自主的な取組みに要する経費や原油価格の高騰に伴う救急自動車等の燃料費、寒冷地における公共施設の暖房費などの増加分に対し特別交付税措置を講じる。

(オ) 平成20年度補正予算(第2号)

 平成20年度補正予算(第2号)は、平成20年12月20日に閣議決定され、平成21年1月5日に第171回国会に提出され、1月27日に成立した。

 この補正予算においては、生活対策関係経費4兆6,880億円等を追加計上したほか、既定経費の節減7,569億円等の修正減少額を計上した。また、歳入面では、税収を7兆1,250億円減額計上する一方、公債金7兆4,250億円、地方公営企業等金融機構納付金3,000億円等を追加計上した。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成20年度の補正予算(第1号)による補正後予算に対し、4兆7,858億円増加し、88兆9,112億円となった。

(カ) 平成20年度補正予算(第2号)に係る地方財政措置等

 平成20年度補正予算(第2号)の編成により、国税の減額補正に伴い地方交付税が減額されるとともに、歳出の追加に伴う地方負担の増加が生じた結果、以下の措置が講じられた。

a 国税の減額補正に伴う地方交付税の減額に対する補てん措置

 今回の補正予算においては、平成20年度の国税の減収に伴い地方交付税が2兆2,731億円の減額となったところであるが、これについては、平成20年度当初における地方財政対策に準じ、次のとおり措置する。この結果、平成20年度の当初予算の地方交付税の総額が確保されるものである。

(a)地方交付税の減2兆2,731億円については、全額を国の一般会計からの加算により措置する。

(b)(a)の加算のうち国負担分1兆320億円については、臨時財政対策加算とする。

(c)(a)の加算のうち1兆2,410億円(地方負担分)については、臨時財政対策債を発行することに代えて措置するものであることを踏まえ、平成23年度から平成27年度までの各年度の地方交付税総額から減額する。

b 追加の財政需要等に対する財政措置

(a)国の補正予算により平成20年度に追加されることとなる公立文教施設整備費等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分1,645億円)については、原則として、地方債(充当率100%)を充当することとし、後年度においてその元利償還金の全額を基準財政需要額に算入する。

 その際、元利償還金の50%(義務教育施設改築事業等当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては、原則として当初の算入率)については、公債費方式により各団体の地方債発行額に応じて基準財政需要額に算入することとし、残余については単位費用により措置する。

(b)地方債の対象とならない経費については、追加財政需要額(5,700億円)の取崩しにより対応する。

c 定額給付金事業に対する財政措置

 「生活対策」(平成20年10月30日新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)に掲げられた「景気後退下での生活者の不安にきめ細かく対処するための家計への緊急支援」として、総額2兆円規模の定額給付金事業を計上した。

d 地域活性化・生活対策臨時交付金

 「生活対策」における「地方公共団体支援策」として、地域活性化等に資するきめ細かなインフラ整備などを進めるため、地域活性化・生活対策臨時交付金6,000億円を計上した。

 この交付金の財源は、国費3,000億円と併せ、地方公営企業等金融機構が旧公営企業金融公庫から承継した公庫債権金利変動準備金等のうち3,000億円の地方還元によることとする。

e ふるさと雇用再生特別交付金及び緊急雇用創出事業交付金

 雇用情勢が急速に悪化しつつある中で、生活対策に掲げられた「雇用セーフティネット強化対策」及び新たな雇用対策に掲げられた「再就職支援対策」として、「ふるさと雇用再生特別交付金」及び「緊急雇用創出事業交付金」を創設する。

 ふるさと雇用再生特別交付金及び緊急雇用創出事業交付金の総額はそれぞれ2,500億円、1,500億円であり、平成23年度までの期間にわたり実施することとしている。

f 年末年始等における離職者等への対応に係る特別交付税措置

 今回の補正予算における「ふるさと雇用再生特別交付金」及び「緊急雇用創出事業交付金」による対応が可能となるまでの年末年始等において、離職者等の臨時的な雇用・就業機会を創出するための対策及び居住の安定確保のための対策など地方公共団体が緊急・臨時的に実施する離職者等の緊急雇用・居住確保のため必要と認められる対策等に要する経費に対し、財政力に応じて5〜8割の特別交付税措置を講じる。