4 行財政改革への取組

(1)集中改革プラン等の取組状況

ア 集中改革プランの取組状況

 各地方公共団体においては、厳しい財政状況や地域経済の状況等を背景に、簡素で効率的な行財政システムを構築し、自らの行財政運営について透明性を高め、公共サービスの維持向上に努めるなど、積極的な行政改革に取り組んでいるところである。

 総務省は、「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」(平成17年3月29日付け総務事務次官通知)において、各地方公共団体に対し「集中改革プラン」の公表を要請したところである。これを受け、各地方公共団体では、定員管理の適正化、給与の適正化、民間委託等の推進などを中心に、平成17年度を起点としておおむね平成21年度までの具体的な取組を住民に分かりやすく示した計画の策定・公表を行ってきた。

 「集中改革プラン」に基づく主な取組状況を見ると、定員管理の適正化については、全地方公共団体で、平成17年4月1日から平成22年4月1日までの間に6.4%の純減を目標としており、平成21年4月1日までの4年間の実績は6.2%の純減を達成している。

 給与の適正化については、国の給与構造改革の取組を踏まえ、地方公共団体の約99%(平成21年4月1日現在)が給与表水準の引き下げ等の改革を実施した。また、ラスパイレス指数を見ると、地方の給与水準は、6年連続で国の給与水準を下回っている。なお、平成21年における国を100とした場合の地方のラスパイレス指数は98.5となっている(第53図「ラスパイレス指数の推移」を参照。)。

 民間委託等の推進については、定型的業務等(庁舎の清掃、総務関係事務、公用車運転、ホームページ作成・運営、電話交換など)の民間委託実施比率(単純平均)が、平成21年までに、都道府県で約85%、政令指定都市で約90%、市区町村で約66%となっている。また、平成21年4月1日現在における指定管理者制度導入施設は、都道府県で6,640施設(59.4%)、政令指定都市で5,759施設(49.1%)となっている。

イ 地方公共団体における行政改革の更なる推進

 総務省は、「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針」(平成18年3月31日付け総務事務次官通知。以下「地方行革新指針」という。)を示し、地方公共団体に対して、総人件費改革、公共サービス改革等のより一層の行政改革の推進を要請したところである。

 総人件費改革については、地域民間給与の更なる反映に向け、人事委員会勧告における公民較差のより一層精確な算定、公民比較対象企業規模の拡大、説明責任の徹底等の推進を図る給与構造改革の実施が求められており、これらについてはすべての都道府県及び政令指定都市において実施しているところである。また、地方公共団体と第三セクター等との随意契約の見直しについては、国の取組(「随意契約の適正化等について」(平成18年6月28日))を踏まえ、住民の目線に立って厳格かつ徹底的な見直しを行い、その適正化に取り組むことが求められており、平成21年4月1日現在、都道府県で45団体、政令指定都市で16団体、市区町村で1,417団体が見直し済みとなっている。

 公共サービス改革については、住民に対するサービスの提供その他の公共の利益の増産に資する業務(以下「公共サービス」という。)の見直しに当たって、公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図る観点から、透明かつ公正な競争の下での地方公共団体と民間事業者との又は民間事業者の間において、これを実施する者を決定するための手続(以下「市場化テスト」という。)の積極的な活用に取り組むことが求められており、平成21年4月1日現在、140団体が市場化テストを導入(一部検討中を含む。)している。

 地域主権型社会を確立するためには、国民の理解と信頼を得ることが不可欠であり、地方公共団体においては、平成22年度以降も、安全かつ良質な公共サービスが、確実、効率的かつ適正に実施されるよう、引き続き自主的に行政改革に取り組むことが必要と考えられる。

(2)地方公営企業等の改革

ア 地方公営企業の抜本的改革の推進

 地方公営企業は、将来にわたりその本来の目的である公共の福祉を増進していくためには、その経営環境の変化に適切に対応し、公営企業のあり方を絶えず見直していくことが求められており、地方公共団体に対しては、下記に掲げる事項等について取組が進められているところである。

(ア) 現在地方公営企業が供給しているサービス自体の必要性について検討する。また、サービス自体が必要な場合であっても、地方公営企業として実施する必要性について十分検討し、特に公共性の確保等の意義が薄れている場合には、民間への事業譲渡について検討する。

(イ) 地方公営企業として事業を継続する場合であっても、公の施設の指定管理者制度、地方独立行政法人制度、PFI事業、民間委託等の民間的経営手法の導入を促進する。

 平成17年度から平成21年度までの取組を見ると、民営化・民間譲渡事業数は119事業(都道府県・政令指定都市等18事業、市町村等101事業)で、主なものは、介護サービス事業(60事業)、病院事業(16事業)、交通事業(12事業)となっており、指定管理者制度については、導入済事業数は604事業(都道府県・政令指定都市等97事業、市町村等507事業)で、主なものは、介護サービス事業(167事業)、駐車場整備事業(134事業)、観光施設事業・その他事業(131事業)となっている。また、何らかのアウトソーシングを実施している団体数の割合が都道府県・政令指定都市等の全ての事業でほぼ100%、市町村においても水道事業(末端供給)、簡易水道事業、ガス事業、病院事業、下水道事業については100%に近い実施率を示している。

 さらに、平成21年4月から財政健全化法が全面施行されたこと等を踏まえ、平成21年7月、総務省は、すべての地方公共団体に対し、平成25年度までの間に、地方公営企業の抜本改革の推進、一層の経営の健全化等に集中的に取り組むことを要請したところである。

イ 第三セクター等の抜本的改革の推進

 第三セクター及び地方公社については、平成21年度の「第三セクター等の状況に関する調査」によると、平成21年3月31日現在の地方公社及び第三セクターの数は8,685法人で、前年比176法人、2.0%の減となっている。なお、平成20年度においては、廃止が188件、統合が22件、出資引き揚げが34件行われている。

 地方公社及び地方公共団体等の出資割合が25%以上又は財政支援を受けている第三セクターのうち、約37%が赤字となっており、平成20年度においては、法的整理を申し立てた法人が14あるなど、依然として厳しい状況にある。そのうち、土地開発公社については、平成20年度末における土地保有総額は、3兆6,989億円で、前年度と比べると9.5%減となっており、12年連続して減少しているが、5年以上保有している土地が占める割合は依然として高いことから、特に、保有期間が長期にわたる土地については、処分を積極的に行うことが望ましいと考えられる。

 地方公共団体が損失補償等を行っている第三セクター等に係る債務については、本来求められる民間企業と同様の市場規律やガバナンスが働かないケースも多くあり、その経営状況が著しく悪化している場合は、将来的に地方公共団体の財政に深刻な影響を及ぼすことが予想される。このため、地方公共団体が自らの決定と責任の下、第三セクター等の抜本的改革を推進し、もって、地方財政規律の強化に資することが極めて重要である。

 総務省は、「第三セクター等の抜本的改革の推進等について」(平成21年6月23日総務省自治財政局長通知)により、全地方公共団体に対し、第三セクター等が行っている事業の意義、採算性等について改めて検討の上、事業継続の是非を判断し、債務調整を伴う処理を行う場合には、法的整理等の活用を図るとともに、事業を継続する場合であっても、最適な事業手法の選択、民間的経営手法の導入の検討を行うなど、第三セクター等改革推進債の活用も念頭に置きつつ、その存廃を含めた抜本的改革に集中的かつ積極的に取り組むことを要請したところである。

ウ 地方公営企業会計制度の見直し

 地方公営企業の会計制度については、昭和27年の地方公営企業法施行以来、発生主義の考え方に立った複式簿記による会計を導入することにより、企業性を発揮する環境の整備に留意しつつも、企業債等を借入資本金として資本に位置付けるなど、地方公営企業独自の仕組みがとられてきた。

 一方、企業会計においては、経済のグローバル化を踏まえ、会計ビックバンと呼ばれる大幅な会計基準の見直しが行われ、連結財務諸表重視への転換、時価評価主義の導入、キャッシュ・フロー計算書の導入、研究開発費の費用処理、退職給付に係る会計基準の導入、減損会計の導入等がなされた。

 こうした中で、地方公営企業会計と企業会計との制度上の違いが近年大きくなっており、相互の比較分析を容易にするためにも企業会計制度との整合を図る必要が生じている。

 総務省は、平成21年6月から「地方公営企業会計制度等研究会」(鈴木豊座長(青山学院大学大学院教授))を開催し、地方公営企業会計の今後のあり方等について検討を行ってきたが、平成21年12月24日、同研究会の報告がとりまとめられた。

 当該報告の主な提言は以下のとおりである。

 このうち、資本制度の見直しについては、義務付け・枠付けの見直しの一環として、地方分権改革推進計画に位置付けられており、第174回国会に提出する方針である「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(仮称)」に盛り込まれる見込みである(平成22年2月19日現在の状況)。

(ア) 会計基準に関する具体的検討事項

(1) 借入資本金

・資本金を負債として計上

(2) 補助金等により取得した固定資産の償却制度等

・任意適用が認められている「みなし償却制度」を廃止

・償却資産の取得に伴い交付される補助金、一般会計負担金等については、「長期前受金(仮称)」として負債(繰延収益)計上した上で、減価償却見合い分を準じ収益化

(3) 引当金

・退職給付引当金の引当てを義務化(期末要支給額による算定を可とする)

(4) その他

・たな卸資産の価額について、時価評価を義務付け

・公営企業型地方独法減損会計と同様の減損会計を導入

・キャッシュ・フロー計算書の作成を義務付け  等

(イ) 会計変更に伴う経過措置等

(1) 移行期間等

・2〜3年程度の移行期間を設定

・システム改修経費や職員研修に要する経費等について財政措置を検討

(2) 健全化判断比率等に関する措置及び経営改革の推進

・今回の会計の見直しが健全化法に基づく各指標に影響することがないよう必要な調整を実施

(ウ) 資本制度

・法定積立金の積み立て義務を廃止

・経営判断により、資本剰余金、利益剰余金を資本金に組み入れることができることとし、現行の資本組入れ制度を廃止

・減資制度の創設

(エ) 財務適用範囲の拡大等

・法非適用企業(地方財政法第6条の公営企業のうち、法適用企業以外の企業)に財務規定等を適用

・任意適用基準の見直し

(3)地方公会計改革の推進

 現金主義では見えにくい費用や資産に関する財務情報の開示といった観点から、発生主義を活用し複式簿記の考え方を導入した公会計の整備は重要な課題である。

 近年の公会計整備において、総務省は、平成18年5月18日に地方公共団体が参考とすべき財務書類のモデルである基準モデルと総務省方式改訂モデルを提示し、平成19年10月17日には2つのモデルを活用し財務書類を作成する場合に必要となる資産評価の要領や連結の原則、仕訳例等が公表されており、この2つのモデルを活用し地方公共団体は早急に財務書類の整備を行うことが重要であるが、健全化法により平成20年度決算に基づく健全化判断比率の状況によっては平成21年度に財政健全化計画等の策定が義務付けられることを踏まえ、平成21年度までに一定の資産評価を行った上で財務書類を整備することを要請してきたところである。

 当該財務書類の整備が中小規模の地方公共団体においても円滑に進められるよう、実務上の課題となっている事項に対する解決方策の検討や財務書類作成のより詳細な手順などの検討を行うため、平成20年6月に「地方公会計の整備促進に関するワーキンググループ」が設置され、「新地方公会計モデルにおける資産評価実務手引」や「新地方公会計モデルにおける連結財務書類作成実務手引」などが順次公表されたところである。

 地方公会計は、住民等に対する情報開示を一層進め、財政の透明性を高めるものであり、今後、地方公共団体において、連結ベースでの財務書類4表を早期に整備するとともに、必要な分析や説明を加えた分かりやすい公表にも配慮することが重要である。