総務省トップ > 若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業 > 栄養士と学ぶプログラミング講座(バーチャルクッキング)食育とプログラミング教育の融合

栄養士と学ぶプログラミング講座
(バーチャルクッキング)
食育とプログラミング教育の融合

タイムソフト合同会社

H28年度第2次補正予算にて実証実施

1. モデルの概要

1.1 モデルの全体概要

「栄養士と学ぶプログラミング講座」(バーチャル・クッキング)
栄養士をメンターとして、「キッチンで料理を作る」というシーンを想定し、ロボット(Pepper)やScratchを活用して調理の手順を試行錯誤しながらプログラミングを学習する。調理の基礎的な技術と論理的思考力や創造性、問題解決能力等の「プログラマー的思考」の育成を実証する。

「食育とプログラミング教育の融合」
子供が好きな「たべること」への興味をとおして、班の子供たちが協力して新米シェフに料理の作り方を教えていくストーリーで学習を進める。

■モデルの意義・目指そうとしていることや、特徴(特異性、利点)

<プログラミングの視点>

  • 調理することは材料や調理器具などを用意し、手順に従って進めていく(順次実行)。また、卵がきつね色になったら火を止める(条件分岐)。4人分作る(繰り返し)のようにプログラムの基礎を理解するのに適している。
  • さらに、調理をもっとスムーズにしたり、料理をもっとおいしくする工夫など創造力を身につける学習が実践できる。

<食育(調理の技術)からの視点>

  • 子供たちは普段、栄養バランスを考えた給食や、家庭での食事などですでに調理されたものを食べているが、給食がない日には栄養バランスが偏りやすい。このため、自分の力で健康的な食生活を維持するためには「基礎的な調理技術」を身につけておくことが重要である。

<栄養士の願い(栄養士にできること)>

  • 子供たちが、生涯を心身ともに健康で過ごすためには、焼く・煮る・炒める等の「調理の技術」を身につけることが大切である。
  • 2030年の未来にはばたくためには健康であると同時に、「プログラミング的思考」を持つことがキャリア教育の面からも重要になる。
  • バーチャル・クッキングを通してこの2つのアイテムを獲得し、自信をもって自分の人生を歩んで行けるように栄養士の立場から支援していく。
■なぜそのモデルを設計・採用するに至ったか

<タイムソフトの成り立ちや活動>

  • 1982年公民館マイコン教室で米国ヒースキットの自走式知能ロボットHERO-1(80万円)を輸入し小中学生が協力して組み立て完成させた。
  • 学校栄養士を対象に学校給食コンピュータ研究会を組織し、給食業務や食育プレゼン等へのコンピュータ活用技術等を指導している。
  • 1998年、文部省事業「パソコンを活用した食に関する指導事業」36施設を受託。
  • 2016年、ソフトバンクの人型ロボットPepperを導入しロボット教室を開校。

<学校栄養士とプログラミング教育の親和性>

  • 学校栄養士とコンピュータ。学校栄養士は献立作成、見積発注、給食だよりの作成、食育の授業などの業務にコンピュータを活用している。
  • 調理とプログラミングの類似。調理作業は厳格な衛生管理が求められ、作業動線図や調理工程表に基づいて実施される。これはプログラミングと類似している。
  • メンターの確保。学校栄養士は地域ブロック内でのネットワークが形成されている。プログラミング授業に栄養士のグループが協力して実施するモデルは実現性が高い。
  • 食育とプログラミング教育。栄養士が「バーチャル・クッキング」としてプログラミング授業を教科横断的に導入するモデルは導入しやすい。

<プログラミング教育の課題>

  • 小学校におけるプログラミング教育必修化に際し、パソコン教室を使用しての一斉授業形式のメンター育成、確保と配置、一斉授業用の教材の開発が求められる。

<教材開発のポリシー>

  • 身近な料理(卵焼き)をテーマにした物語「マンプク・レストラン」によって子どもたちの学びにコンテキストを与え同時にモチベーション・アップにつながる教材を開発する。
  • 栄養士が使用する、授業者用プレゼンと学習用教材で構成された教材セットの開発を行い、担任や数人の栄養士で授業が成立できることを目標とする。

◆授業者用プレゼン

  • プレゼンテーションを活用して、児童に授業の流れがわかると同時に、スクラッチ教材の操作を的確に説明する。

◆学習用スクラッチ教材

  • 児童用の学習教材は「マンプク・レストラン」で言語は Scratchを使用する。
  • スクラッチで “たまごやき”をプログラミングする過程を通して、プログラミングの基礎を理解すると同時に、“たまごやき”の調理の仕方がわかる。
    ※青森:「ロボット・レストラン」言語は Choregraphe(コレグラフ)。Pepper用の開発言語。

◆プレゼンで進めるプログラミング授業

  • 「栄養士と学ぶプログラミング講座」は、栄養士がプレゼンに沿って授業を進め、担任と支援の栄養士(2~3名)がサブメンターとして、Scratch教材で学習する児童のサポートをする。
■実施概要まとめ表
事業者名 タイムソフト合同会社
実証ブロック/実証校 東北地区ブロック
実証校:青森県五戸町立切谷内小学校
福島県白河市立表郷小学校
育成メンター(メインメンター) メインメンター数:3人
メインメンター属性:栄養教諭
育成メンター(サブメンター) サブメンター数:26人
サブメンター属性:栄養教諭・学校栄養職員
研修時間 15時間(3日間×5時間)
(うち自宅研修時間) 0時間
使用言語・教材・ツール 言語:切谷内小学校 Choregraphe
表郷小学校   Scratch
教材・ツール:切谷内小学校 Pepper
使用端末とその帰属 PC:27台
帰属:メンター私物
講座の受講児童・生徒数と学年 受講者数:49人
学年:1学年 2人   2学年 6人  3学年 3人
4学年 13人  5学年 7人  6学年 18人
カリキュラム 切谷内小学校:5時間(1日目3時間 2日目2時間)
表郷小学校 :3時間(1日完結)
使用端末(PC・タブレット)の帰属 メンター私物

1.2 実施体制

1.2.1 体制図

実施体制図

1.3 実施スケジュール

実施スケジュール

2. メンターの育成

2.1 育成メンター概要

  • 栄養教諭・学校栄養職員
  • 青森県学校給食コンピュータ研究会、公益社団法人福島県栄養士会(学校部会)
  • 学校栄養士は日常業務でコンピュータを使用していて操作にも慣れている。
  • 調理作業は調理工程によって進められプログラムの開発と類似している。
  • 学校給食を通して学校との連携が深く児童の指導にも長けている。
  • プログラミング授業にはメンターが必要であるが、栄養士グループによる協力体制を得ることができる。

<育成人数>
青森会場 17人   福島会場 12人   合計 29人

2.2 メンターの募集

会員への文書による募集
福島県栄養士会会員向けのメンター募集文書

2.3 育成研修

2.3.1 研修プログラム概要
■実施形態

青森会場:講義、Choregraphe 実習、模擬授業
福島会場:講義、Scratch 実習、模擬授業

■研修にかけた時間

全3回 15時間

青森会場

月日 時間 会場 人数
5月27日(土) 10:00~16:00 八戸市 ユートリー 会議室 16
6月18日(日) 10:00~16:00 八戸市 ユートリー デザイン室 14
7月23日(日) 10:00~16:00 八戸市 ユートリー 研修室 16

福島会場

月日 時間 会場 人数
6月24日(土) 10:00~16:00 郡山市 総合福祉センター 研修室 12
7月22日(土) 10:00~16:00 郡山市 労働福祉会館 第4会議室 11
9月 2日(土) 10:00~16:00 郡山市 労働福祉会館 第4会議室 11
■習熟具合をはかる仕組み・工夫

メインのメンターを交代して模擬授業を行いメンバー全員がメインを担当できるように実習した。

  • メンター育成研修の様子(左:青森会場 右 福島会場)
    青森会場
  • メンター育成研修の様子(左:青森会場 右 福島会場)
    福島会場
2.3.2 研修教材

福島会場 配布資料リスト

第1回メンター育成研修会(福島県)アジェンダ

メンター用マニュアル

メンター研修マニュアル抜粋

模擬授業 メンター用プレゼン

模擬授業用補助資料抜粋

※工夫した点、実際に使ってみての教育効果等
  • 授業者用のプレゼンと、児童の進み具合の両方のバランスを取る必要がある。
  • 当初はプレゼン用と教材(スクラッチ)用の2台のパソコンを用意して2人で別々に操作するという大掛かりなものであった。
  • これを一人のメンターで行うために、プレゼンの中にスクラッチ教材の動きをシミュレートして1台でできるように改良した。アニメーションを駆使してスクラッチの画面に近づける工夫をしたため、使いやすくなったと評価された。

メインメンター使用教材の改良

3. 実証講座の実施

3.1 講座の概要 五戸町立切谷内小学校

  • 人数学年 :34人 小学校1~6年生
  • 募集方法:学校で募集
  • メンター :栄養士16人 青森県・岩手県学校給食コンピュータ研究会
  • 講座進行:栄養教諭(メンター)
  • ロボット :Pepper 2機(ソフトバンクロボティクス株式会社)
  • タイトル :ロボット・レストラン
  • 言 語 :コレグラフ(Choregraphe)
実施日 コマ エクササイズ 学習活動 指導のポイント
8月22日 1 お客さまに あいさつ プログラムを開いてみる あいさつをプログラムする プログラムによって働きを変えることができる
2 料理の注文 ロボットと対話してみる リストの料理と比較することで注文を特定することができる
3 たまごやきの準備 冷蔵庫から卵をとる動作を考える 自分がロボットになったつもりで動きを確かめてみる
8月23日 4 たまごやきの調理 “たまごやき”を作る手順をプログラムする 根気よく試行錯誤しながら手順を修正していく
5 たまごやきの完成 “たまごやき”完成の言葉と動作を考えてプログラムする “たまごやき”の鉄人バトルで各班の作品を発表する

3.2 実施の様子 五戸町立切谷内小学校

切谷内小学校での実証講座の様子

切谷内小学校での実証講座の様子

切谷内小学校での実証講座の様子

3.3 講座の概要 白河市立表郷小学校

  • 人数学年 :15人 小学校1~6年生
  • 募集方法:教育委員会で募集 土曜学習会
  • メンター :栄養士14人 公益社団法人福島県栄養士会(学校部会)
  • 講座進行:栄養教諭(メンター)
  • タイトル :マンプク・レストラン
  • 言 語 :スクラッチ(Scratch)
実施日 コマ ステージ 学習活動 指導のポイント
9月16日 1 スクラッチの準備
スクラッチの操作に慣れよう
・スクラッチを立ち上げる
・操作方法を学ぶ
・グループ(カテゴリー)の説明
・ブロックの操作
・文字の入力練習
・スクラッチの画面を説明
・グループ毎のブロック分け
・ブロックを組み合わせてプログラムすること
・キーボードの入力方法
2 背景1 にわとり小屋
「にわとりおさんぽ」ゲームをプログラミング
・にわとりを歩かせる
・行ったり来たり繰り返す
・クリックすると止まる
・たまごを産む
・たまごをゲットする
・ブロックの操作を理解する
・にわとりの位置を確認する
・速く歩かせるには?
・クリックしたら動作する
・イベントの使い方
3 背景2 厨房
“たまごやき”を作る手順を考えよう
・“たまごやき”の手順を考える
・失敗例を実行してみる
・手順カードで流れを考える
・プログラムを完成させる
・工程毎にコメントを入れる
・ 調理の手順カードを使用
・ カードをボードに並べる
・ ワークシートに記入する
・ サンプルの実行方法
・ コメントの入れ方

3.4 実施の様子  白河市立表郷小学校

表郷小学校での実証講座の様子

表郷小学校での実証講座の様子

表郷小学校での実証講座の様子

3.5 メディア掲載

月日 メディア 実証校
5月27日 NHK青森支社 切谷内小学校 メンター育成研修会
5月28日 デーリー東北新聞社 切谷内小学校 メンター育成研修会
8月22日 NHK青森支社 切谷内小学校 実証講座
8月26日 デーリー東北新聞社 切谷内小学校 実証講座
8月26日 河北新報社 切谷内小学校 実証講座
9月16日 NHK福島支社 表郷小学校 実証

(※画像割愛)

5月27日 NHK青森ニュース645
8月26日 デーリー東北新聞社
8月26日 河北新報 ONLINE NEWS
9月16日 NHK福島ニュース645

3.6 参加者の声

  • メンターの先生方の数が多く、正直「手厚い授業だなぁ」と思いました。この指導形態での授業はなかなかとれないと感じました。
  • 子供達(学年の異なる1~6年)の能力が異なる中、子ども達が理解しながら進めるよう、段階を追って、指導が進められていたと思います。
  • 子どもたちの生き生きとした表情を見ながらとてもいい学習だったと実感しました。
  • 教材にそって進めていけば栄養士だけで授業が成立するのは大変ありがたいことだと思います。
  • 普段の授業ではあまり集中力のない児童が進んでパソコンに向かっている場面があった。実際に卵やきを作ってみたいという子がたくさんいて驚いた。
  • プログラミングを組んで、実際にうごかしたときの、子どもたちの表情がみんな笑顔で楽しそうだったのが印象的だった。自分で入力したことが目の前で動くというのは、想像以上におもしろい体験であることを感じた。
  • 1年生の子でも、大人の補助があれば、充分に学習できるということに驚いた。教科の学習は苦手でも、プログラミングはできる、という子もいると思うので、子どもの可能性をのばすことにつながるのではないかと思った。
  • 大人が思うよりも、理解が早かったと思う。プログラミングを目標にするだけでなく、食育など総合的な思考力等々、育てられていたと思う。どんどん成長していく子供たちのストッパーを解除したほうがいいですね。
  • ニュースで聞いたときは、何でも学校で行うようになり大変と思ったが、今日の授業を見て、すばらしい教材ができあがっているのでこれならやっていけると思った。
  • 授業時間を定めず、横断的に行うところは食育と同様な考え方なのでこの二つをドッキングさせるのは良い考え方です。ぜひ大きな力となって学校の現場に広げてほしいと思っています。
  • ゲーム感覚で楽しく学び、また失敗の原因を考えその対策をワークに記入することによって、実際の生活にも役立つスキルが自然と身につくように感じました。
  • 最後にはプログラミングと調理の技術の2つのアイテムをゲットした子ども達は、達成感、満足感を感じて3時間の授業を終了することが出来、今後のプログラミングへの興味、関心、自信につながったと思います。
3.6.1 児童・生徒の声
  • たまご焼きを作る手順を学んだので家でもたまご焼きを作ってみてこれからの学校生活に生かしていきたいです。そしてテレビなどもプログラミングされているので大切に使って行きたいです。
  • 実際にロボットなどを使って授業を行うなどふだんの授業では絶対にやることはないと思う授業を5時間受けることができて良かったです。もしかしたら近い未来プログラミングをするというのが当たり前になるときがあるかもしれません。そのときに生かしたいです。
  • わたしは、プログラミングというのをはじめて教えてもらいながらはんの人たちと楽しくやることができたし、自分たちでペッパーくんの設定をして、自分たちがやったとおりに動いてすごくうれしかったです。わたしは、最初プログラミングはどういう感じなのかと思っていたけど、思っていたよりも楽しくてこういう仕事もたのしいなと思いました。
  • パソコンでロボくんを動かしたり、いろいろな言葉や動作を考えて、パソコンにうってみたのも楽しかったです。今日の勉強を参考に家でも、ロボくんみたいにたまごやきを作ってみようと思いました。
  • レストランではたらいたペッパーくんのために言葉をつくるのがむずかしかったけど班できょうりょくして考えることができたのでよかったです。レストランではたらくことがあったら一回でもその言葉を使ってみたいです。
  • ロボくんがはじめ「るすばんロボット」になっていたのを「ロボットシェフ」にパソコンで直すのはむずかしかったけれどロボくんにお店にふさわしいあいさつをプログラムしたり、たまごやきをつくる手じゅんなどをプログラムして教えられたのでよかったです。
  • ぼくは、初めてプログラミングをしました。プログラミングは、パズルのようにパーツを組み合わせて作っていくことが分かりました。いろいろなパーツを、いろいろな形に組み合わせることで、たくさんのゲームを生みだせるということも分かりました。この体験で、プログラミングはおくが深いことも分かりました。
  • ぼくは、パソコンをやったときがあるのですが、プログラミングはやったときがなかったので本当に楽しかったです。友達とも協力してできたのでよりいっそう仲が深まったと思っています。たまご焼きは作っていたことがあるのですが、失敗の例を見てここを気をつけた方がいいとあらためて思いました。本当に楽しかったです。ありがとうございました。
  • 2校時目には、「にわとりとお散歩しよう」で、にわとりを歩かせてみたり、たまごをげっとしたりなど、すごく楽しいゲームでした。3校時目は、たまご焼きを作ってみました。パソコンでは、音が出ていてすごかったです。それに、まちがっている所をさがして見つけたりするのも楽しかったです。すごく楽しかったです。
  • 2時間目の「にわとりおさんぽゲーム」が歩く数を変えるだけであんなににわとりの歩く速さが変わってびっくりしました。3時間目は、たまごやきを作る時、マンプクさんはボウルの上でたまごをわらないなどいろいろなまちがいがあってびっくりしたし、改めて再確認できました。
  • じっさいに、昨日たまご焼きを作りました。さいしょにお母さんがみほんで、次にやりました。こげないように、でもきれいに、けっこう集中できました。私が作ったたまご焼きは、とてもおいしかったです。作り方もかんたんだったので、「きんろう感しゃの日」に、みんなに作ってあげたいと思います。むとう先生をはじめたくさんの方がやさしくていねいに教えてくださったので、たまご焼きの作り方がいちから分かりました。ほんとうによい体験になりました。
3.6.2 メンターの声
  • コレグラフを活用し、ロボットに指示を出し、実際にロボットが動くというところが興味深く、楽しく講習を受けることができた。児童にもプログラミングに興味がわくように楽しく授業をしていきたい。
  • 「プログラミング」と聞くと、自分では関わらない分野、触らない領域というイメージがあったが、研修を受講することで、そのイメージを払拭することができた。皆で研修することで、どこにつまずきやすいかをとらえることができた。
  • プログラミング的思考について知ることができた。ペッパーを使用することにより、プログラムの結果を確認することができ、達成感が得られる。
  • プログラミングが思っていたより簡単にでき、やってみると楽しいこと。料理をすることが、プログラミングそのものということに気付いた。
  • 子どもたちがこのたまごやきのプログラミングに挑戦することでたまごやきの作り方を知ることができる。他の料理もプログラミングすることで料理への感心が高まる。
  • プログラミング教育、ICTを活用した指導の必要性を実感でき良かった。なぜプログラミング教育が必修化されるかも理解できた気がする。プログラミングは全ての事に生かせることを関係者や子ども達にも啓発していきたい。
  • 普段の給食調理業務と密接にプログラミングが関係していることを理解することができました。生活に欠かせないものとして、子ども達に伝わるように指導できたらいいなと思います。
  • 将来、子どもたちの教育に取り込まれる技術を学ぶことができてよかった。食育とプログラミングをむすびつけたもので、子どもたちの興味、関心にも繋がっていけばよいと感じた。
  • ITに詳しくなくても、ソフトが大変使い易いもので、かつ講習中に受講者の意見を取り入れて修正してくださったので、万人向けのものとなったと思います。
  • 受講者の中には早速研究授業で実施したい方もいるようです。実際学校現場で実施した方々から聞き取りながら、私も実施を検討していきたいと思います。
3.6.3 実証校校長先生・教育委員会の声

青森県五戸町立切谷内小学校 小坂校長

  • メンターが懇切丁寧な支援をしてくれた。PCの操作面では非常に有効だったが、一方で、子どもたちがすぐにメンターを頼ってしまい、「共同の学び」「不具合の原因追求」といった子どもたち自身に深めてほしい学習活動が思うように展開されなかった。
  • 2チームに分けて、自分たちのプログラミングを紹介し合う学習場面は非常に興味深く、子ども達も成就感を味わえたようだ。

福島県白河市立表郷小学校 神永校長

  • 楽しんで学習していたと思います。低学年の児童でも一生懸命取り組んでいる姿がとても良かったと思います。全体的に子ども達の意欲が感じられました。6年女子「めっちゃ楽しい」という一声にすべて表れていると思います。
  • 今やコンピュータのない生活は考えられないので方向としてはICTに力を入れていかなくてはならないのだと思う。現在プログラミング教育ができる指導者が少ない。小学校の教員では無理だと思うので、ICT支援員を各学校に配置してほしい。

4. アンケート結果

4.1 児童・生徒

Q1.8あなたはこれまで、「プログラミング」という言葉を知っていましたか。
またはこれまで「プログラミング」を体験したことがありますか?

児童・生徒向けアンケート(Q1-8)あなたはこれまで、「プログラミング」という言葉を知っていましたか。またはこれまで「プログラミング」を体験したことがありますか?最も近いものをひとつ選んでください。「プログラミング」を経験したことがあった、8%、「プログラミング」を経験したことはないが、意味は知っていた、14%、「プログラミング」という言葉を聞いたことはあるが、中身まではよく知らなかった、43%、「プログラミング」という言葉を聞いたことがなかった、35%。

「プログラミング」を経験したことがある児童は8%しかなく、35%は「プログラミング」という言葉も聞いたことがなかった。

Q2.1「プログラミング講座」は楽しかったですか。

児童・生徒向けアンケート(Q2-1)「プログラミング講座」は楽しかったですか。最も近いものをひとつ選んでください。プログラミングすることも、講座も楽しかった、97%、プログラミングすることはあまり楽しくなかったが、講座は楽しかった、3%、プログラミングすることは楽しかったが、講座はあまり楽しくなかった、0%、プログラミングすることはあまり楽しくなかったし、講座もあまり楽しくなかった、0%。

97%の児童が「プログラミング」も「講座」も楽しかったと回答していることから、「栄養士と学ぶプログラミング講座」の目的は児童に受け入れられたと考察される。

Q2.4「プログラミング」の講座で利用した教材は簡単でしたか。

児童・生徒向けアンケート(Q2-4)「プログラミング」の講座で利用した教材は簡単でしたか。最も近いものをひとつ教えてください。簡単すぎた、3%、簡単だった、18%、ちょうどよかった、45%、少し難しかった、31%、とても難しかった、3%。

教材が「簡単すぎた」と「簡単だった」を合計すると21%の児童は余裕があった。また、45%の児童が「ちょうどよかった」と回答している。「少し難しかった」と「とても難しかった」と回答した児童のアンケート内容からみると、たまごやきの工程を考えて並べるのが難しかったようであり、プログラミングが難しかったのでないことがわかった。

Q3.11プログラミングを通して、アプリやゲームがどうやって動くのか理解できるようになった

児童・生徒向けアンケート講座を体験したことによって、以下の内容について達成できたと思いますか。あてはまるものをそれぞれひとつ選んでください。(Q3-1@)プログラミングを通して、アプリやゲームがどうやって動くのか理解できるようになった、よくできた、53%、だいたいできた、42%、どちらともいえない、5%、あまりできなかった、0%、ほとんどできなかった、0%。

「よくできた」と回答した児童が53%あった。さらに、「だいたいできた」も42%あった。2つを合計すると95%の児童がアプリやゲームの仕組みがプログラミングを通して理解できた結果となり、「栄養士と学ぶプログラミング講座」の実証は成功であった。
これには、メンターの人数が青森では3対1、福島では1対1であったことの効果が大きかったことが貢献したものと考察される。

Q3.12自分なりのアイディアを取入れたり、工夫したりするようになった

児童・生徒向けアンケート(Q3-1A)自分なりのアイディアを取入れたり、工夫したりするようになった、よくできた、29%、だいたいできた、53%、どちらともいえない、10%、あまりできなかった、8%、ほとんどできなかった、0%。

「よくできた」と回答した児童が29%、「だいたいできた」が53%あった。合計すると82%の児童が「アイディアを取り入れたり、工夫するようになった」と回答している。プログラミングを通して、想像力や論理的な思考が育まれている。

Q3.13自分なりの作品を作ることができるようになった

児童・生徒向けアンケート(Q3-1B)自分なりの作品を作ることができるようになった、よくできた、54%、だいたいできた、33%、どちらともいえない、3%、あまりできなかった、10%、ほとんどできなかった、0%。

「よくできた」と「だいたいできた」の合計が89%と、約9割の児童が肯定的な回答を示している。本実証モデルはスクラッチを初めて体験する入門編として設計され一斉授業の形式をとっていたため、学習者にとっては自由度の少ない講座であったにもかかわらず、自分なりの作品ができたと満足度の高い結果がでている。

Q3.14うまくプログラムが動かないときは理由を考えて、解決策を試すようになった

児童・生徒向けアンケート(Q3-1C)うまくプログラムが動かないときは理由を考えて、解決策を試すようになった、よくできた、34%、だいたいできた、39%、どちらともいえない、11%、あまりできなかった、11%、ほとんどできなかった、5%。

「よくできた」と回答した児童が34%、「だいたいできた」が39%あった。合計すると73%の児童が「うまく動かない理由を考えて解決策を試すようになった」と回答している。プログラミングの過程で行われるバグつぶしと試行錯誤が、児童の学習に効果的に実践されていると考察される。

Q3.15自分から積極的に取り組むようになった

児童・生徒向けアンケート(Q3-1D)自分から積極的に取り組むようになった、よくできた、46%、だいたいできた、27%、どちらともいえない、10%、あまりできなかった、17%、ほとんどできなかった、0%。

「よくできた」と「だいたできた」の合計が73%、一方「あまりできなかった」が17%となっている。実証講座に入る段階では、ほとんどの児童はプログラミング体験が初めてだったことから、自主的に作業を進めることが困難でありメンターの指示に従って進めざるをえないレベルであったことがその要因と考察される。今後、プログラミングの体験を増やしていくことにより自主的に取り組めるようになってくるのではないか。

Q3.16友達と協力して作業を進められるようになった

児童・生徒向けアンケート(Q3-1E)友達と協力して作業を進められるようになった、よくできた、56%、だいたいできた、37%、どちらともいえない、7%、あまりできなかった、0%、ほとんどできなかった、0%。

「よくできた」56%、「だいたいできた」37%と合計93%の児童が友達と協力して進められたと回答している。「どちらともいえない」と回答した7%の中には、自分が操作する時間が少なく不満が残ったケースがあったようで、個々に操作する時間を多く取ることにより不満が解消され協同的な学びが成立してくるのではないか。

Q3.17人前で作品や意見を発表できるようになった

児童・生徒向けアンケート(Q3-1F)人前で作品や意見を発表できるようになった、よくできた、27%、だいたいできた、33%、どちらともいえない、27%、あまりできなかった、3%、ほとんどできなかった、10%。

「よくできた」「だいたいできた」の合計が60%、「どちらともいえない」が27%と回答している。また「ほとんどできなかった」が10%であった。実証のコマ数が青森5コマ、福島3コマとプログラミングの導入部がメインであり時間数が十分でなかったことが反省される。また、プログラミング一連の完結を重視したことと、一斉授業の形式で全員が落ちこぼれなく修了することを目標にしたことにより、個々の意見発表や自由な活動が制約されていたことが問題であった。もっとコマ数を多くとることや、授業内容を緩くして児童の自主的な活動を増やすことを考慮する必要がある。

Q3.18難しいところであきらめずに取り組めるようになった

児童・生徒向けアンケート(Q3-1G)難しいところであきらめずに取り組めるようになった、よくできた、50%、だいたいできた、30%、どちらともいえない、20%、あまりできなかった、0%、ほとんどできなかった、0%。

「よくできた」「だいたいできた」の合計が80%であったことと比較して、「どちらともいえない」の回答が20%あった。この要因としては、児童の数に対してメンターが多すぎた(青森3対1、福島1対1)ことが影響していると考察される。本事業の目的の一つがメンターの育成であったため、できるだけ多くのメンターに経験をしてもらいたいという意図から児童に対しての割合が多くなりすぎた点がある。また、メンターの心得として、「児童に考えさせる場面」なのか、「すぐに支援する必要がある(キーボードの位置がわからない等)」の判断が徹底していなかったことにより、コーチングに徹していなかった点が課題である。

Q3.19自分でもの(ゲーム等のプログラムを含む)を作りたいと思うようになった

児童・生徒向けアンケート(Q3-1H)自分でもの(ゲーム等のプログラムを含む)を作りたいと思うようになった、よくできた、60%、だいたいできた、30%、どちらともいえない、7%、あまりできなかった、3%、ほとんどできなかった、0%。

「よくできた」「だいたいできた」の合計が90%であった。一連の授業の中で、様々なアイディアが想起された箇所があったようで、生活に役立つこと、ゲームに使えるもの、スポーツに活用することなど児童らしいアイディアがあった。子どもたちは生活の中でICT機器に囲まれて暮らしているが、プログラミング授業を通してその仕組みを理解するためのきっかけが生まれている。これが次のステップへの可能性としてプラスの方向に作用していることが推察できる。

Q3.2プログラムが思うように動かなかったとき、どうすることが一番多かったですか。
最も近いものをひとつ選んでください。

児童・生徒向けアンケート(Q3-2)プログラムが思うように動かなかったとき、どうすることが一番多かったですか。最も近いものをひとつ選んでください。自分でプログラムを見直し、「命令」の組み合わせを直して、やりなおした、30%、すべてのプログラムや「命令」を消して、もう一度初めからやりなおした、3%、少しずつ「命令」や数字を変えてみて、繰り返しやりなおした、8%、メンター(先生)や近くの大人に教えてもらった、54%、進んでいる友達に教えてもらった、5%、どうしたらよいかわからなかったので、そのままにした、0%、その他、0%。

「メンター(先生)や近くの大人に教えてもらった」が54%と半数以上あった。これは、児童数に比較してメンターの数が多すぎたことと、プログラミング体験が初めてだったことから覚えることが多かった(キーボードの配置、スクラッチの知識など)ことなどにより必然的に「考えることより聞くことが多くなった」と考察される。また、「自分でプログラムを見直し、「命令」の組み合わせを直して、やりなおした」が30%あった。この回答は学年が高くなるほど多い傾向にあり、低学年では授業についていくのがやっとで高学年ほどの余裕がなかったことが窺われる。この結果から、高学年と低学年の児童を組み合わせて複式で授業を実施することにより、同一時間内で高学年が低学年を指導するという協同的・対話的な学びの可能性が考えられる。メンターの確保が困難な場合の対応策として効果的な方法ではないか。
また、「少しずつ「命令」や数字を変えてみて、繰り返しやりなおした」の回答が8%であったが、授業を参観した感じでは、全ての児童が「スプライト(にわとり)の歩数」を変えたり、繰り返しの回数を変更したり試行錯誤している。「にわとりの歩数」を変えると、歩くスピードが速くなりつかまえにくくなるが、大人は「10歩から20歩」といった感覚であるのに対し、児童は一様に「1,000歩や10,000歩」と想定外の数字を入力することに驚かされた。大人の常識をあっさり超えていることに、児童の隠された能力と未来への可能性が認識させられることになった。これらは、プログラミング教育の必要性を立証する確かな根拠となりうるものである。

Q3.4あなたは今後も「プログラミング」を続けていきたいと思いますか。あてはまるものをひとつ選んでください。

児童・生徒向けアンケート(Q3-4)あなたは今後も「プログラミング」を続けていきたいと思いますか。あてはまるものをひとつ選んでください。続けたい、97%、わからない、3%、続けたくない、0%。

「続けたい」が97%あった。プログラミングを初めて体験したほとんどの児童が続けていきたいと回答していることは、児童とプログラミング教育の相性のよさを物語っている。学校の教師の側からは慎重論が囁かれるものの、本実証モデルにおいてはほとんどの児童がプログラミング教育への興味と関心をもったようである。
この要因としては、授業者(メインのメンター)が授業者用プレゼンによって授業を進めたことにより、一斉授業の形態が維持され、全ての学習者に学習の目標と学習の段階がしっかりと理解されていたことによると考察される。
また、「プレゼン+スクラッチ教材」のセットが「子どもたちの学びにコンテキストを与え、同時にモチベーション・アップにつながるプログラミング教材」という方針に沿って開発され、授業内容も小学生の子どもたちにとってはごくありふれた「卵焼きをつくる」という課題を設定したことが、プログラミングという未知の体験への敷居を下げ抵抗なくストーリー(スクラッチのプログラミング)に溶け込めた要因の一つとなっていたのではないか。
さらにもう一つの要因を挙げるとすれば、ほとんどの人が「プログラミング教育になぜ栄養士なの?」という疑問をもったこと、つまり「学校栄養士がメンターを担った」ことである。小学校へのプログラミング教育導入のポイントは、「プログラミング的思考を育む」ことであるが、「小学校での必修化」という観点からは、全ての児童がプログラミングの授業に取り組むことが前提である。理数系が得意な子だけに止まらず、全ての児童に共通している関心事は食べ物である。そこで、毎日の学校給食を提供している栄養教諭を起用したプログラミング授業は、児童にとってこれまで体験した食育授業の延長であり抵抗なく溶け込むことができる授業である。「灯台下暗し」の例えにある如く、学校栄養士は日常コンピュータで業務を遂行し、食育授業では食育プレゼンを活用し指導している。また、調理作業はプログラミングと類似した工程管理という手法のもとで給食が作られている。学校栄養士は学校内においてはプログラミング教育に最も適した人材である。アンケートによると「今後もプログラミングを続けていきたい」という回答が97%という結果が得られたことから「学校栄養士のメンターとしての適性」が推察できる。
整理すると、子どもたちの学びにコンテキストを与え同時にモチベーション・アップにつながる「プレゼン+スクラッチ教材」のセットと学校内でプログラミング教育に適した人材である学校栄養士がメンターを務めた結果、プログラミングを「続けたいが97%」という回答を得たと考察される。

4.2 メンター

Q3.3メンター育成研修を受けて、全体的に内容を理解できましたか。

育成メンター向けアンケート(Q3-3)メンター育成研修を受けて、全体的に内容を理解できましたか。あてはまるものをひとつ選んでください。よく理解できた、45%、だいたい理解できた、52%、どちらともいえない、3%、あまり理解できなかった、0%、ほとんど理解できなかった、0%。

「よくできた」が45%。「だいたいできた」が52%。合計で92%のメンターが「内容を理解できた」と回答している。学校栄養士にとっては、料理とプログラミングが類似していることがわかり、理解が早くなったと考察できる。

Q3.6実際にメンターを行うにあたって、不安はありますか。

育成メンター向けアンケート(Q3-6)実際にメンターを行うにあたって、不安はありますか。あてはまるものをひとつ選んでください。まったく不安はない、10%、あまり不安はない、72%、わからない、0%、やや不安がある、14%、非常に不安がある、4%。

「まったく不安はない」が10%。「あまり不安はない」が72%。合計82%のメンターが「不安がない」と回答している。授業者(メインのメンター)用のプレゼンが用意されていて、プレゼンに沿って授業を進める。これは日常のプレゼンによる食育授業と同じことから自信をもっているものと考察できる。

Q3.7(3.6で「やや不安がある」または「非常に不安がある」と答えた方)具体的にどういったことに
不安がありますか。(複数回答)

育成メンター向けアンケート(Q3-7)(3.5で1または2と答えた方)具体的にどういったことに不安がありますか。あてはまるものを全て教えてください。(複数回答)、児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートできるか、80%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言ができるか、60%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導ができるか、60%、児童・生徒が自分の指導や助言を聞き入れ、従ってくれるか、0%、時間内に予定のプログラムを終了できるか、20%、用意された教材を効果的に使用して指導できるか、40%、その他、0%。

実証前の段階では、「ファシリテートできるか」が80%。「目的に沿った指導助言」が60%。「能力に合わせた指導助言」が60%。

Q5.1講座は当初予定していた通りに実施できましたか。

育成メンター向けアンケート(Q5-1)講座は当初予定していた通りに実施できましたか。最も近いものをひとつ教えてください。実施できた、69%、だいたい実施できた、31%、どちらともいえない、0%、あまり実施できなかった 、0%、まったく実施できなかった、0%。

「実施できた」が69%。「だいたい実施できた」が31%。合計100%とメンター全員が「実施できた」と回答している。

Q5.2実施前のイメージと比較して、メンターを実施することは難しかったですか。

育成メンター向けアンケート(Q5-2)実施前のイメージと比較して、メンターを実施することは難しかったですか。最も近いものをひとつ教えてください。非常に難しかった、0%、やや難しかった、11%、どちらともいえない、0%、比較的容易だった、85%、非常に容易だった、4%。

「比較的容易だった」が85%。「非常に容易だった」が4%。合計89%のメンターが「容易だった」と回答している。これは、年間を通して食育プレゼン等の研修を実施している内容と、今回のプログラミング事業のメンター研修の内容が、同様なものであったことによると考察される。普段からプログラミング教育に応用できる内容の訓練を積んでいたことがうかがわれる。

Q5.3実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できたと思いますか。(複数回答)

育成メンター向けアンケート(Q5-3)実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できたと思いますか。あてはまるものを全て教えてください。児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートすること、79%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言を行うこと、76%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導を行うこと、79%、児童・生徒に自分の指導や助言を聞いてもらい、集中を切らさずに講座に参加してもらうこと、66%、時間内に予定の講座内容を終了させること、55%、用意された教材を効果的に使用すること、69%、その他、3%。

ほとんど全ての項目がチェックされていて、メンターとしてあらゆる点に注意しながら進めていたという心構えがうかがえる。

Q5.5実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できなかったと思いますか。(複数回答)

育成メンター向けアンケート(Q5-5)実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できなかったと思いますか。あてはまるものを全て教えてください。児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートすること、3%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言を行うこと、7%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導を行うこと、3%、児童・生徒に自分の指導や助言を聞いてもらい、集中を切らさずに講座に参加してもらうこと、3%、時間内に予定の講座内容を終了させること、17%、用意された教材を効果的に使用すること、0%、その他、21%。

うまくできなかった要因を質問しているが、「時間内に終了させること」が17%となっている。また「その他」も21%の回答があったが、その内容は「特になし5人」、「スムーズにできた 1人」と指導内容以外の事項について回答している。
児童への指導に対する要因としては、4項目ともほぼ均等に回答されている。

Q8.3今後のあなた自身のメンターとしての関わり方について、最も近いものをひとつ教えてください。

育成メンター向けアンケート(Q8-3)今後のあなた自身のメンターとしての関わり方について、最も近いものをひとつ教えてください。メインの指導者として、ひとりで、または経験の少ないサブメンターと一緒にプログラミング教育の指導ができると思う、34%、メインの指導者として、経験のあるサブメンターがついてくれれば指導できると思う(ひとりで指導するのは不安だ)、35%、サブメンターとして、経験のあるメイン指導者と一緒にさらに指導経験を積みたい、27%、メンター業務を今後もやるには不安が大きい、0%、今後はメンターをやりたくない、0%、わからない(考えがまとまっていない)、0%、その他、4%。

「指導できる」が34%。「サブメンターがつけば指導できる」が35%。合計69%が「指導できる」と感じているようである。
「栄養士と学ぶプログラミング講座」は、授業者(メインのメンター)に、学級担任と3人程度の栄養士(サブメンター)計5名程度で実施することを前提にしたモデルであるため、「サブメンターとして経験を積みたい」の回答者27%も特に問題なく実施できる。
また、「その他」4%の内容は「指導者を増やす取り組みをしたい」という積極的なものであった。

5. 発見・成果と課題・改善

5.1 発見・成果

5.1.1 実証校・教育委員会他との連携体制の構築
  • 実証校との連携が密になった。
5.1.2 メンター育成
  • まず最初に、「なぜ栄養士がプログラミングなのか?」との疑問が湧いたようであるが、実証講座を参観したことにより納得し、理解されたものと思われる。
  • 不思議なことに、児童からは「なぜ栄養士がプログラミングなのか?」という質問は一切おこらなかった。
  • 青森県、岩手県、福島県の栄養士によるメンターの育成が為されたことにより、「栄養士と学ぶプログラミング講座」展開のステップが達成できた。
5.1.3 講座内容
  • 児童の様子からは、授業が受け入れられ達成感が得られたようで、落ちこぼれた子はいなかったように思われる。低学年の情緒障害の子も最後まで成し遂げていて先生に感謝された。
  • 「栄養士と学ぶプログラミング講座」バーチャル・クッキングを参観した教師からは、このような形態であれば「小学校にプログラミングの授業を導入することは可能である」との手応えが得られた。

5.2 課題・改善

5.2.1 実証校・教育委員会他との連携体制の構築
  • 教育委員会主催の土曜学習会で実施したモデルでは、学校との連絡に教育委員会を経由しなければならずスムーズにコンタクトできなかった。学校と直接連携するのが望ましい。
5.2.2 メンター育成
  • 今回の事業は課外に限定されていたため、「栄養士と学ぶプログラミング講座」ではメンター(学校栄養士)は自由に参加できたが、今後平日の授業時間にメンターとして参加するには所属校への派遣依頼が必要になる。この点を検討しておく必要があるのではないか。
5.2.3 講座内容
  • 学校のパソコン教室のPCは授業支援ソフトで管理されていて、管理者パスワードがなければアクセスできない仕組みになっている。このため、管理者の教師が授業中であったり、外部の委託業者が立ち会わないとScratch などをインストールすることができない不都合がある。
  • 本実証講座では、児童数が少なかったのでメンターのノートパソコンを使用することにした。これは、メンターにとっては自分のパソコンで指導するわけで安心できた。思わぬところでメンターの不安感(機種、OSなどの不安)を取り去ることができた。

6. 実証モデルの普及に向けて

6.1 モデルの横展開の可能性

6.1.1 メンター育成
  • 育成したメンター全員が、「栄養士と学ぶプログラミング講座」の教材を使用することで、自分でメインを務めることができるレベルである。今後は会のメンバー全員に普及することと、栄養士の組織を通して会員以外の栄養士にも普及活動を行う。
  • また、学校給食コンピュータ研究会の合同研修でも取り上げられ、新たなメンターが育っている。11月に実施された岩手県盛岡市での「総務省プログラミング教育キャラバン」では新しいメンターが授業を実践している。
6.1.2 講座の構成、教材
  • 1月から学校給食コンピュータ研究会の研修(全6回、青森会場・盛岡会場)が始まるが、「栄養士と学ぶプログラミング講座」の家庭科版(ごはんとみそ汁)の他に、算数、理科、音楽、英語等の教材を開発し、栄養士と連携して小学校のプログラミング教育の普及に取り組む。
  • メンター用プレゼンと児童用学習教材のセットで、栄養士以外の教師もプログラミング授業を気軽に導入できる教材開発を進める。

6.2 普及のための活動

  • 実証講座が実施されたあと、メンター研修に参加したメンバーによる授業が既に福島県二本松市と岩手県宮古市で実施されている。

6.3 実証モデルのまとめと普及の可能性について

本モデルは、小学校での教育課程内で、学校栄養士と教師が主体となり、学校内のコンピュータ室で実施することを想定したものである。

◆小学校でのプログラミング教育必修化における課題としては、指導者の問題、ICT環境の問題、プログラミング教材の3点が挙げられている。

1 指導者の対応

本モデルは、指導者(メンター)を学校栄養士と教師が担当し、外部の人材に頼らないことに特徴がある。
この長所としては、学校に所属する教師による授業であることから、児童との距離が近く、教師間の連携がスムーズであるため柔軟に対応することが可能である。また、学校栄養士はクラスを担任していないため、比較的時間にゆとりがあり、地域ブロック内での支援が受けやすくメンターの確保が容易である。授業のメンター配置例としては、栄養士が授業者を務め、サブメンター4人(担任、副担等、支援の栄養士2名)の計5人を基準とする。
短所としては、メンターが学校栄養士と教師であることから、プログラミングの専門的知識をもっていない。このため、専門性を補う何らかの手段が必要になってくる。(本モデルでは授業用プレゼンがその役割を果たしている)

2 ICT環境の対応

本モデルは学校内に設置されているコンピュータ室での一斉授業形式を想定している。全国的にICT環境の整備が進んでいるものの、全ての学校が対処できているとは限らない。現状のままでプログラミング教育を実践しなければならない学校への対応が求められている。
本モデルでは、教室内の全パソコンが一斉にアクセスした際のトラブル等を回避するために、オフラインでのスクラッチアプリ(Scratch)を使用した。このため、ICT環境の整備が遅れている学校でも安心してプログラミング教育を実施することが可能である。短所としては、パソコンへのアプリをインストールするなどの事前作業が必要になる。
本事業を通して、学校のICT環境において障害になったことは、スクラッチ(Scratch)のインストールの際、コンピュータ室のシステム管理者が授業中で抜け出せなかったり、外部の納入事業者で連絡が取れなかったりしたためにパスワードをクリアできない事例が多かったことである。また、教師が管理者の場合、アプリのインストール経験がなく、電源をオフにすると管理ソフトが自動で削除してしまったケースもあった。
これらの事例から推察されることは、「日常的にコンピュータ室が利用されていない」ということである。児童が図書室を利用するように自由にパソコンを利用できる環境が必要である。さらに、児童の個々の作業データを保存して、継続して学習できるような環境が望ましい。
また、コンピュータ室の機器の配置が電源やLANの配線でがんじがらめになっている。プログラミング教育の立場からはもう少し移動の自由度が欲しい。それと、教師の位置にディスプレイやスキャナ、プリンターなどが盛り上げられていて、大型の電子黒板やスクリーンを配置しにくいのが難点であった。既存の設備を使用するにしても、日常的にプログラミング学習で使用できるように機器配置を変更する必要がある。

3 教材の対応

小学校でのプログラミング教育必修化という性格上、教師(栄養教諭含む)による授業(カリキュラム)として実施することが望ましい。このため本モデルでは、プログラミングの専門的知識がなくても、授業者用プレゼンとプログラミング教材をセットで使用することにより、誰でもプログラミングの授業を実施できる「教材セット」としてシステム化されている。
また、専門知識を持っていないメンターにとっては、大画面で表示された授業者用プレゼンと照らし合わせることにより、児童の操作の間違いや遅れなどに的確に対応することができるため、余裕をもって授業に望むことができる。
授業者用プレゼンは、スクール・プレゼンテーションの手法を使用して、身近な料理(卵焼き)をテーマにした物語「マンプク・レストラン」によって、子どもたちの学びにコンテキストを与え、同時にモチベーション・アップにつながるプログラミング教育の教材として開発されている。このため、小学校におけるプログラミング教育の入門コースとして適している。

◆普及の可能性

今回の事業では、「食育とプログラミング教育の融合」というアプローチをとったが、授業者用プレゼンとプログラミング教材の「教材セット」という形態で教材を開発することにより、「英語とプログラミング」「算数とプログラミング」「理科とプログラミング」のように、教科横断的な教材の開発が可能である。
複数の教科指導が委ねられる小学校学級担任制の教師にとっては、授業の事前準備に煩わされることなく、手軽に使用できるプログラミング教材として広く普及する可能性が期待できる。
今後、地域のプログラミング教育推進コーディネーターとして、まずは「栄養士と学ぶプログラミング講座」の地域展開を確実なものにし、学校栄養士から担任教師へとプログラミング授業の波を広げていくと同時に、「様々な教科とプログラミング教育の融合」による教材開発を行い、広く普及活動を展開していくものである。

6.参考添付資料

ページトップへ戻る