ピックアップ!ふるさと納税

北海道 斜里町 原生の森の復元に、100年の計で挑む。

知床国立公園の写真<ふるさと納税を活用して森づくり作業が進む知床国立公園内の100平方メートル運動地>

北海道の東部、オホーツク海に面した斜里町(しゃりちょう)は、
100kmを超える海岸線と雄大な知床連山を擁するまちです。
ユネスコの世界自然遺産に登録されている知床半島でもよく知られています。
知床半島の周辺海域は、北半球において流氷が接岸する最南端。流氷がもたらす生態系、
そして海域と陸域が一体となった独特の環境のもと、多様な動植物が生息しています。
斜里町ではこの貴重な自然を守るために、長年にわたり地道な活動を続けています。

【町長からのメッセージ】

北海道斜里町は、「みどりと人間の調和を求めて」という理念のもと、世界自然遺産・知床に代表される豊かな自然環境と人々の暮らしが密接な関係にあり、かねてから「100平方メートル運動の森・トラスト」をはじめとした自然保護の取り組みに力を入れてきました。緑あふれる雄大な自然を守り、次の世代、また未来へと繋いでいくことが、私たちの使命だと考えています。豊かな自然は豊かな人を育み、豊かな人が豊かな町を作っていくのです。ふるさと納税を通じて、斜里町を応援してくださる全国の皆様からの想いをしっかり受け止め、時代の潮流に流されることなく、多くの人と手をとりながら、幸せを実感できるまちづくり、また真の自然との共生への挑戦を続けていきます。引き続きあたたかいご支援をお願いいたします。

ふるさと納税の状況

知床の森は、人の歴史に翻弄されてきました。農業開拓によって原生林が切り拓かれ、畑が作られましたが、厳しい気候条件などから土地を離れる人が続きました。こうして離農跡地として残ることになったため、乱開発の危機にさらされたのです。そこで斜里町では、知床国立公園内の開拓跡地を保全するため、土地の買取に必要な寄附を募る「しれとこ100平方メートル運動」を昭和52年に開始しました。運動に共感した全国からの寄附により、20年後の平成9年には土地の買取が終了。以来、買い取った土地を元の森に戻す取組を続けています。
こうして自然保護を中心にまちづくりを続けてきた斜里町では、ふるさと納税の趣旨がまちづくりの趣旨と一致すると考え、ふるさと納税を充当する主な事業として「100平方メートル運動の森・トラスト」を設けています。このほか保健福祉や教育振興など10以上の寄附使途を設定し、寄附者が自由に事業を選べる仕組みを整えていますが、例年、多くの方から「100平方メートル運動の森・トラスト」が選ばれています。

平成26年度 ふるさと納税の使途希望内訳と実績
使途希望 寄附金額 件数 主な充当事業
合計 10,150,340円 542件
①100平方メートル運動の森・トラスト 6,155,340円 514件 100平方メートル運動地の森づくり、防鹿柵の設置、交流事業、国立公園内森林保全基金への積立など
②世界自然遺産の豊かな自然の保護と適正な利用を推進するための事業に活用 1,045,000円 6件 知床世界自然遺産の保護管理と適正利用基金への積立、国立公園内自動車利用適正化対策事業(シャトルバスの運行)、自然環境・野生動物の保護管理活動、ヒグマの保護管理対策事業など
③国内外交流基金 5,000円 1件 国内外交流基金への積立
④災害遺児の養育援助事業に活用 25,000円 3件 災害遺児養育援助基金への積立
⑤保健・福祉の総合的な向上に資する事業に活用 1,350,000円 4件 保健福祉サービス基金への積立、介護保険サービス利用者負担軽減事業、ひとり暮らし高齢者等への除雪サービス、介護用品支給事業、家族介護者交流事業など
⑥老人保健福祉施設の整備資金として活用 60,000円 4件 老人保健福祉施設整備基金への積立
⑦栽培漁業、さけ・ます増殖事業、付加価値研究開発事業等に活用 15,000円 2件 漁業振興基金への積立
⑧小学校図書の購入に活用 1,000,000円 1件 各小学校の図書購入
⑨芸術文化活動の促進、推進に係る事業に活用 100,000円 1件 芸術文化振興基金への積立
⑩新たな図書館建設のための資金として活用 10,000円 1件 新図書館建設基金への積立(H26年度 新図書館完成時に充当)
⑪図書館図書の購入に活用 185,000円 4件 図書館図書の購入
⑫医療環境の充実に活用 200,000円 1件 医療機器の購入

森づくりの活動を定期的に
寄附者に報告し、ふるさと納税の継続を募る。

斜里町にふるさと納税をされる方の中には、継続して寄附をされている方が多くいらっしゃいます。「森づくりは、単年でできるような事業ではないことを、皆さんがよくわかってくださっているのだと思います。私たちも100年、200年の単位で知床を原生の森に戻そうと考えているので、この考えに共感してくださっていることは、本当にありがたいです」と斜里町役場の方は言います。
こうした感謝の思いを伝え、寄附金が着実に森づくりに活用されていることを報告するために、しれとこ100平方メートル運動のホームページで活動内容を紹介するほか、年に1回『しれとこの森通信』という冊子を制作し、寄附者に発送しています。A4・12ページほどの冊子では、運動の現地作業を担っている公益財団法人 知床財団のスタッフやボランティアの皆さんがどのようにして森づくりを行っているか、活動の様子を写真入りでわかりやすく紹介し、植樹祭などのイベント告知もしています。冊子の発送後は、イベントへの参加申込はもちろん、寄附者からの激励のメールや電話も数多くいただくそうです。また『しれとこの森通信』以外に、単年ではわかりづらい森の成長が伝わるよう、5年ごとに活動内容をまとめたレポートを作成してふるさと納税をされた方に発送しています。こうして寄附者とのつながりを大切にし、長期間にわたって応援を得られるような努力を続けています。

  • 斜里町役場の皆さんの写真ふるさと納税について説明していただいた斜里町役場の皆さん。
  • 『しれとこの森通信』の写真 ふるさと納税の寄附者に送っている『しれとこの森通信』。
    活動報告のほかに、寄附者からのメッセージや会計報告なども掲載されています。

多様な動植物が生きる森を取り戻すために。
「100平方メートル運動の森・トラスト」

ふるさと納税は「100平方メートル運動の森・トラスト」の様々な活動に活かされており、活動内容は大きく2つに分けられます。1つが「森にかかわる活動(森林の再生・生物相の復元)」、もう1つが「森と人をつなぐ活動(運動地の公開)」です。
まず「森にかかわる活動」として、開拓前の森に戻すための「森林の再生」を目指した取組があります。例えば、シカに樹皮を食べられるのを防ぐために、シカが好む広葉樹を中心に樹皮保護ネットを巻いて、広葉樹と針葉樹がバランス良く育つ森に戻す活動もその1つです。樹皮保護ネットは定期的に巻き替えが必要で木の数だけ枚数も必要になります。このネットの購入にふるさと納税が充てられています。このほかにも、知床連山から吹き降ろす強風から若い木を守る防風柵の設置に、ふるさと納税が充てられています。

自然復元係主任 松林さんの写真「森づくりに着手して17年。まだ緒に就いたばかりですが、新しい木が育ってくるなど、少しずつ成果が出ています」
公益財団法人 知床財団 自然復元係主任 松林さん

こうして森林の再生を進めると同時に、元々森に住んでいた生きものたちを呼び戻す「生物相の復元」に向けた活動もスタートしました。生物相とは、同じ環境や一定の地方に生活しているすべての生物の種類のことです。例えば、知床半島の中央からオホーツク海に注ぐ岩尾別川(いわおべつがわ)は、かつてサクラマスが生息していましたが、ダムの建設など環境の変化で激減。そこで卵の放流だけでなく、川の環境改善などの取組にも着手しました。またシマフクロウなどの鳥類、カワウソといったほ乳類も復元対象生物となっていますが、人の生活への影響など現段階では解決すべき課題が多いため、長い目で考え取り組んでいく予定です。

  • 樹皮を守るための保護ネットの写真樹皮をどう保護するか、これまで様々な方法を試してきた取組の変遷を紹介し、森を訪れた人たちに、地道な森づくり活動への理解を促します。
  • 森づくり作業地内植樹の写真木の成長を阻むのは山からの強風。人が大木を切ったことで森の防御機能が失われ、若い木が育ちにくくなってしまいました。

キャンプや自然教室の開催で森と人をつなぐ。

「森と人をつなぐ活動(運動地の公開)」としては、知床の大自然を体感できる多様なイベントを実施しており、これらにもふるさと納税が充てられています。例えば、夏の恒例行事「知床自然教室」では、小学校4年生から高校3年生の子どもたちを対象に、知床の森で6泊7日のキャンプが開催されます。都会に住む子どもたちの参加が多く、大自然の中で過ごす時間の素晴らしさに驚く声が聞かれるそうです。今年で36回を重ねるこのイベントでは、親子2代にわたる参加者や、大人になってからボランティアスタッフとしてサポートに加わる人もいます。知床の森を愛する気持ちが、世代を超えて受け継がれていることがよくわかります。
また、毎秋開催される「しれとこ森の集い」は、森づくりの現場監督である森の番人とともに森を散策し、植樹を体験するイベントです。これら森と人との交流イベントを経験した人から「森づくりの手伝いがしたい」というボランティアの申し出もあるそうです。
さらに、知床の森を訪れた人に、森づくりの様子を実際に見てもらえるよう「森づくりの道」を昨年オープンしました。木々を守るための防鹿柵に囲まれたエリアを自由に歩ける散策路です。木の生育を阻む笹を刈り、若い木を植えるなど、人間が少しだけ自然の手助けをして森を復元している様子がよくわかります。散策路の入口には「しれとこ100平方メートル運動ハウス」という建物があり、運動の概要の展示のほか、森づくりに共感した人が、現地でふるさと納税の申込ができるようにしています。

  • 復元途上の知床の森と、背後に見える知床連山の写真背後の知床連山が隠れてしまうほど、こんもりと茂る原生の森の復元を目指しています。
    • 「しれとこ森の集い」活動風景写真「しれとこ森の集い」では、森づくりの現場を見て運動への理解を深め、将来の豊かな森に思いをはせて参加者全員で植樹を行います。
    • 「知床自然教室」活動風景写真全国から集まった子どもたちが1週間の野外生活をしながら、森づくりや自然について学ぶ「知床自然教室」。
  • 「しれとこ100平方メートル運動ハウス」の外観写真「森づくりの道」の入口にある「しれとこ100平方メートル運動ハウス」。
  • 「しれとこ100平方メートル運動ハウス」の内観写真「しれとこ100平方メートル運動ハウス」では、しれとこ100平方メートル運動の活動内容をわかりやすく展示しています。

取材を振り返って

ふるさと納税の寄附者の方の中には、親子で森と人の交流イベントに参加したり、自主的に現場でボランティアとして活動してくださる方もいらっしゃるそうです。知床の森を守るために実際に体も動かし、自然保護への思いを子どもたちに伝える、そうした寄附者の方々の行動に、胸が熱くなりました。知床財団の方も「森の番人の知恵と、応援してくださる方の寄附、思い、力が現場を動かしています」とおっしゃっていました。
そして、寄附者の皆さんの知床の自然保護に対する純粋な思いは、斜里町役場や知床財団の方々の思いとまったく同じであることを取材を通して感じました。応援する人の気持ちと、応援を受けるまちの人の気持ちがひとつになる。ふるさと納税は、心を結ぶ制度だと感じました。

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