2 平成22年度の地方財政

(1)平成22年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成22年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成21年12月25日に閣議了解、平成22年1月22日に閣議決定されたが、この中で平成21年度の我が国経済は、持ち直していくと見込まれるものの、失業率が高水準で推移するなど厳しい状況にあるとされている。平成21年度の国内総生産の実質成長率は、成長の発射台が極めて低いことなどから、前年度より改善するものの、マイナス2.6%程度にとどまるものと見込まれており、また、国民の景気実感に近い名目成長率は、マイナス4.3%程度と2年連続の急速な減少が見込まれている。

 このような情勢認識から、景気の持ち直しの動きを確かなものとするため、「明日の安心と成長のための緊急経済対策」(平成21年12月8日閣議決定)を着実に実施することとし、これに伴う平成21年度第2次補正予算と平成22年度予算を一体として切れ目なく執行することとされた。平成22年度予算においては、子育て、雇用、環境、科学・技術に特に重点を置き、国民の付託に応えて主要施策の実施に取り組むとともに、「新成長戦略(基本方針)」(平成21年12月30日閣議決定)の推進を通じて、成長のフロンティアを拡大し、新たな需要と雇用を創造していくこととされた。さらに、経済成長と財政規律を両立させ、経済成長や国民生活の安定、セーフティネットの強化という観点からも、財政の持続可能性を高めていくこととされた。

 以上のような経済財政運営を前提として、平成22年度においては、景気は緩やかに回復していくと期待され、平成22年度の国内総生産の実質成長率は1.4%程度と3年ぶりのプラス成長が見込まれ、また、名目成長率も0.4%程度のプラスに転じると見込まれている。

イ 国の予算

 平成21年12月15日、「平成22年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で、平成22年度予算編成にあたっては、以下のような基本的考え方により編成された。

(ア) 予算編成とは、貴重な国民の税金をどのように用いるか、選択を行う作業に他ならない。現在の国民のみならず、未来の国民に対しても責任を持つ選択を行うのが政治の役割である。未来を創る子ども達のために必要な政策を実行するため、政治が最大限の努力を行わなければならない。以下のような基本理念に立ち、全閣僚、全政務三役が一丸となって、責任ある予算編成に取り組む。

a 「コンクリートから人へ」

b 「新しい公共」

c 「未来への責任」

d 「地域主権」

e 「経済成長と財政規律の両立」

 以上の基本理念のもとで予算を編成した上で、今後の経済運営に当たっては、国民の暮らしに直結する名目の経済指標を重視するとともに、デフレの克服に向けて日本銀行と一体となって強力かつ総合的な取組を行う。また、平成21年度第2次補正予算と平成22年度予算を一体として切れ目なく執行することにより、景気が再び落ち込むことを回避し、着実に回復させるとともに、将来の安定的な成長につながる予算としていく。これにより、民需は底堅く推移し、自律的な成長軌道に向けて、景気は緩やかに回復していくものとみられる。

(イ) 新政権は、「人間のための経済」を目指す。何よりも人のいのちを大切にし、国民の生活を守る政治を行う。国民の暮らしを犠牲にしても経済合理性を追求するという発想をとらず、国民の暮らしの豊かさに力点を置いた経済・社会に転換していく。

 こうした観点から、平成22年度予算においては、子育て、雇用、環境、科学・技術に特に重点を置く。

(ウ) 国民主権とは、国民自らが国の政策決定に責任を持つことであり、物言えぬ将来の国民にツケを回すような無責任な財政運営を行ってはならない。同時に、「依らしむべし、知らしむべからず」といった独善的な発想で、財政規律の確保に失敗を重ねてきたことを、ほかならぬ政治と行政が深く反省しなければならない。国民・納税者の視点に立ち、国民が自らの税金の使い途を自ら精査し、自ら主体的に決定する、国民中心の予算編成を行い、予算の効率化と財政の健全化を目指す。

 平成22年度予算は、以上のような方針により編成され、平成21年12月25日に政府案の閣議決定が行われた後、平成22年1月22日に第174回国会に提出された。

 これによると、平成22年度の国の一般会計予算の規模は92兆2,992億円で、前年度当初予算と比べると3兆7,512億円の増加(4.2%増)となっており、うち一般歳出の規模は53兆4,542億円で、前年度当初予算と比べると1兆7,233億円の増加(3.3%増)となっている。なお、公債の発行予定額は44兆3,030億円で、前年度当初発行予定額と比べると11兆90億円の増加(33.1%増)となっており、公債依存度は48.0%となっている。他方、財政投融資計画の規模は18兆3,569億円で、前年度計画額と比べると2兆4,937億円の増加(15.7%増)となっている。

(2)地方財政計画

 平成22年度においては、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、「地域のことは、地域で決める」、地域主権の確立に向けた制度改革に取り組むとともに、地域に必要なサービスを確実に提供できるよう、地方財政の所要の財源を確保することで、住民生活の安心と安全を守るとともに地方経済を支え、地域の活力を回復させていくとの基本理念に立ち、歳出面においては、経費全般について徹底した節減合理化に努める一方、当面の地方単独事業等の実施に必要な歳出及び地域のニーズに適切に応えるために必要な経費を計上するほか、歳入面においては、安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税などの一般財源総額の確保を図ることを基本として、過去最大規模の財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき平成22年度地方公共団体の歳入歳出総額の見込額を策定する。

ア 地方税については、支え合う社会を実現するとともに、経済・社会の構造変化に対応し、国民が信頼できる税制を構築する観点からの税制全般にわたる改革の一環として、個人住民税における扶養控除の見直し、軽油引取税等の現行の10年間の暫定税率を廃止した上で、当分の間、現在の税率水準の維持、地方のたばこ税の税率の引上げ、地方税における税負担軽減措置等の適用状況等に関する報告書を国会に提出する措置の創設を行うとともに、税負担軽減措置等の整理合理化等を行うこととし、所要の措置を講じることとする。

イ 地方が自由に使える財源を増やすため、地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

(ア) 平成22年度単年度の措置として、平成21年度までと同様、財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等を除いた残余については国と地方が折半して補てんすることとし、国負担分については、国の一般会計の加算等により、地方負担分については、地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補てん措置を講じる。

 臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

 なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等1,761億円については、法律の定めるところにより平成28年度以降の地方交付税の総額に加算する。

(イ) これに基づき、平成22年度の財源不足見込額18兆2,168億円については、次により完全に補てんする。

a 地方交付税については、平成20年度分の精算による6,596億円の減額を繰り延べるほか、国の一般会計加算により7兆6,291億円(うち「地域活性化・雇用等臨時特例費」の創設による別枠の加算額9,850億円、平成21年度において別枠で加算した1兆円のうち平成22年度に協議することとされていた地域雇用創出推進費以外の加算額5,000億円(平成20年12月18日付け総務・財務両大臣覚書第3項)、同法附則第4条の2第3項の加算額866億円、同条第4項の加算額6,695億円、臨時財政対策特例加算額5兆3,880億円)増額する。

 また、平成22年度に予定されていた交付税特別会計借入金の償還7,812億円を後年度へ繰り延べるとともに、交付税特別会計剰余金3,700億円を活用する。

b 地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を7兆7,069億円発行する。

c 建設地方債(財源対策債)を1兆700億円増発する。

(ウ) 上記の結果、平成22年度の地方交付税については、16兆8,935億円(前年度に比し1兆733億円、6.8%の増)を確保する。

ウ 地方債については、極めて厳しい地方財政の状況の下で、地域主権の確立に向け、地域に必要なサービスを確実に提供できるよう、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、地方公共団体が、必要性の高い分野への重点的な投資を行えるよう、所要の地方債資金を確保する。

 この結果、地方債計画の規模は、15兆8,976億円(普通会計分13兆4,939億円、公営企業会計等分2兆4,037億円)とする。

エ 地域主権の確立に向け、地域経済の振興や雇用創出を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

(ア) 当面の地方単独事業等の実施に必要な歳出を計上し、地域のニーズに適切に応えるために必要な特別枠「地域活性化・雇用等臨時特例費」9,850億円を計上する。

(イ) 投資的経費に係る地方単独事業費については、「コンクリートから人へ」の理念を踏まえた国の公共投資関係費の取扱い等も勘案しつつ、前年度に比し15.0%減額することとする一方で、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

(ウ) 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、地域主権の確立に向けて地方が自主的・主体的に取り組む地域活性化施策等に財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

(エ) 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

(オ) 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

オ 公的資金補償金免除繰上償還については、深刻な地域経済の低迷等の事態を踏まえ、3年間延長することとし、財政健全化計画又は公営企業経営健全化計画を策定し、徹底した行政改革・経営改革を行う地方公共団体を対象に、平成22年度から3年間で、1.1兆円規模の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金及び旧公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、高金利の地方債の公債費負担を軽減する措置を講じる。

カ 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

キ 地方行財政運営の合理化を図ることとし、引き続き職員数の純減や給与構造改革等に取り組むとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成22年度の地方財政計画の規模は、82兆1,268億円で、前年度と比べると4,289億円減少(0.5%減)となっている。

 歳入についてみると、地方税は32兆5,096億円で、前年度と比べると3兆6,764億円減少(10.2%減)(道府県税16.2%減、市町村税5.7%減)、地方譲与税は1兆9,171億円で、前年度と比べると4,553億円増加(31.1%増)、地方特例交付金は3,832億円で、前年度と比べると788億円減少(17.1%減。なお、平成21年度には特別交付金を含んでいた。)、地方交付税は16兆8,935億円で、前年度と比べると1兆733億円増加(6.8%増)、国庫支出金は11兆5,663億円で、前年度と比べると1兆2,647億円増加(12.3%増)、地方債(普通会計分)は13兆4,939億円で、前年度と比べると1兆6,610億円増加(14.0%増)となっている。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は21兆6,864億円で、前年度と比べると4,407億円減少(2.0%減)となっている。なお、地方財政計画における職員数については、引き続き定員の純減を進め20,666人の純減としている。一般行政経費29兆4,331億円で、前年度と比べると2兆1,723億円増加(8.0%増)となり、一般行政経費にかかる地方単独事業費は13兆8,285億円で、前年度と同額となっている。公債費は13兆4,025億円で、前年度と比べると1,070億円増加(0.8%増)、投資的経費のうち、公共事業費中の普通建設事業費は4兆2,806億円で、前年度と比べると6,160億円減少(12.6%減)となっている。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は6兆8,683億円で、前年度と比べると1兆2,125億円減少(15.0%減)となっている。

 他方、平成22年度の地方債計画の規模は15兆8,976億円で、前年度当初計画と比べると1兆7,132億円増加(12.1%増)となっている。平成22年度の地方債計画は、極めて厳しい地方財政の状況の下で、地域主権の確立に向け、地域に必要なサービスを確実に提供できるよう地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、地方公共団体が、必要性の高い分野への重点的な投資を行えるよう、所要の地方債資金の確保を図ることとして策定している。

(3)地方交付税の算定方法の見直し等

ア 事業費補正方式の見直し

 地方公共団体の自主的・主体的な財政運営を図る観点から、地方交付税の算定において、平成22年度以降の新規事業に係る地方債の元利償還金について、事業費補正方式により基準財政需要額への算入を従来行っていたものは基本的にこれを廃止(全国的遍在、先発・後発団体間の不均衡等の問題があるものを除く。)し、単位費用により措置する方式に振り替えることとしている。

イ 段階補正等の見直し

 平成22年度の普通交付税の算定において、条件不利地域や小規模の市町村において、必要な行政サービスが実施できるよう、段階補正及び人口急減補正の見直しを行うこととしている。

ウ 臨時財政対策債の算出方法の見直し

 平成22年度における臨時財政対策債の急増への対応として、財政力の弱い団体に配慮し、財源調整機能を強化する観点から、発行可能額の算出方法を見直し、全ての団体に対して人口を基礎として算出する現行方式に加えて、各団体の財源不足額及び財政力を考慮して算出する新方式を導入することとしている。

(4)地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

 地方公営企業については、経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図る必要がある。

 このため、平成22年度においては、次のような措置を講じることとしている。

 公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆6,961億円(前年度2兆6,628億円)を計上している。

 地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆4,037億円(前年度2兆3,515億円)を計上している。

 また、普通会計分と合わせた公債費負担対策として、平成19年度から平成21年度までの措置として5兆円程度の公的資金の補償金免除繰上償還措置を講じたところであるが、深刻な地域経済の低迷等の事態を踏まえ、3年間延長することとし、財政健全化計画又は公営企業経営健全化計画を策定し、徹底した行政改革・経営改革を行う地方公共団体を対象に、平成22年度から3年間で1. 1兆円規模の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金、旧公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、高金利の地方債の公債費負担を軽減することとしている。このうち、旧公営企業金融公庫資金の繰上償還の財源として、平成22年度地方債計画に公営企業借換債を300億円計上している。

 さらに、各事業における財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

(ア) 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入することとしている。

(イ) 水道事業については、簡易水道事業の統合を推進することにより、水道事業の経営基盤の強化を図る観点から、国庫補助(簡易水道再編推進事業)の対象となった建設改良事業について、新たに地方財政措置を講じることとしている。また、上水道安全対策事業のうち、災害対策の観点から行われる送・配水管の相互連絡管等の特定の事業について、引き続き一般会計出資比率の拡充を図るとともに、補助事業についても、引き続き一般会計出資の対象とするよう所要の地方財政措置を講じることとしている。

(ウ) 交通事業については、地下鉄事業経営健全化対策について、健全化法が平成21年4月から全面施行されたことに伴い一部制度見直しを行うこととし、同法に基づく経営健全化団体に対しては、当該団体が定める経営健全化計画に基づき、当該計画の期間中に経営基盤の強化を目的として一般会計が行う出資について、所要の地方債措置を講じることとしている。

(エ) 病院事業については、感染症指定医療機関における良質かつ適切な医療を提供するための体制を確保するための経費について、新たに地方財政措置を講じるとともに、周産期母子医療センターにおける満床状態の解消やNICU等に長期入院している児童にとってふさわしい医療提供のための体制を確保するための経費について、地方財政措置を充実することとしている。

(オ) 以上の他、地方公営企業職員に係る子ども手当に要する経費について、所要の地方財政措置を講じることとしている。

イ 国民健康保険事業

 国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア) 都道府県が、市町村の国保財政安定のために必要な取組等に対し交付する都道府県調整交付金(給付費等の7%)の所要額(5,108億円)について、地方交付税措置を講じることとしている。

(イ) 国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部を負担することとし、その所要額(3,393億円(都道府県3/4、市町村1/4))について地方交付税措置を講じることとしている。

(ウ) 低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし、その所要額(766億円(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4))について地方交付税措置を講じることとしている。

(エ) 高額医療費共同事業については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし、その所要額(2,585億円(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2))について地方交付税措置を講じることとしている。また、一件30万円以上の医療費を対象に、市町村国保の拠出金で賄う保険財政共同安定化事業については、都道府県内の市町村国保間の保険料の平準化や国保財政の広域化の観点から、都道府県が事業の対象となる医療費の額や市町村国保からの拠出金の拠出方法の基準を「広域化等支援方針」で定めることができることとしている。

(オ) 国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じることとしている。

(カ) 国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図るため、40歳から74歳までの国民健康保険加入者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業に対して、国及び都道府県が一部を負担することとし、その所要額(580億円(国1/3、都道府県1/3、市町村国保1/3))について地方交付税措置を講じることとしている。

ウ 後期高齢者医療制度

 後期高齢者医療制度については、実施主体である広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア) 保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図る(均等割2割・5割・7割軽減)とともに、被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減を行うため、都道府県及び市町村が負担することとし、その所要額(2,232億円(都道府県3/4、市町村1/4))について地方交付税措置を講じることとしている。

 なお、「明日の安心と成長のための緊急経済対策」(平成21年12月8日) により、70歳から74歳までの窓口負担軽減措置、低所得者の保険料軽減措置(均等割9割・8.5割、所得割5割軽減)及び被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減措置(均等割9割軽減)については、後期高齢者医療制度を廃止するまでの間、継続することとされている。このうち、70歳から74歳までの窓口負担軽減措置及び低所得者の保険料軽減措置に伴う平成22年度分の財政措置については、平成21年度第2次補正予算において、全額国費により対応することとしている。また、被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減措置に伴う平成22年度分の財政措置については、均等割9割軽減のうち4割分については国費により措置することとして、所要額を平成21年度第2次補正予算に計上するとともに、均等割9割軽減のうち5割分については、引き続き、地方交付税措置を講じることとしている。

(イ) 高額医療費負担金については、広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし、その所要額(1,106億円(国1/4、都道府県1/4、広域連合1/2))について地方交付税措置を講じることとしている。

(ウ) 財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金を設置しその拠出金に対して国及び都道府県が一部を負担することとし、その所要額(324億円(国1/3、都道府県1/3、広域連合1/3))について地方交付税措置を講じることとしている。

(エ) 不均一保険料助成については、医療給付の実績が低い広域連合内の市町村に対して、平成26年度まで他の市町村とは異なる不均一の保険料を設けることに対して国及び都道府県が負担することとし、その所要額(9億円(国1/2、都道府県1/2))について地方交付税措置を講じることとしている。

(オ) 実施主体である広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じることとしている。

エ 公営競技納付金制度の延長

 公営競技納付金制度は、公営競技施行団体が、黒字収益がある場合に、その一部を地方公共団体金融機構に納付し、同機構から地方公共団体への貸付金の利下げに活用することにより、公営競技施行団体に遍在する収益金の全国的な均てん化を図る仕組みである。

 現行の公営競技納付金制度は平成22年度で期限切れとなることから、公営競技の厳しい経営状況を踏まえた様々な配慮措置を講じた上で、平成27年度までの延長を図ることとし、「地方交付税法等の一部を改正する法律案」を第174回国会に提出したところである。