2 地域力の創造・地方の再生

 総務省では、活力ある地域社会を形成し、地域主権を確立するため、それぞれの地域で様々な主体が協働・連携して地域資源を最大限活用し、地域力を高めるための多様な取組を展開できるよう支援しているところである。

(1)緑の分権改革

 地域においては、少子高齢化・人口減少社会が到来する中にあって、厳しい財政制約の下で、地域主権の確立、低炭素型社会への転換等の改革の推進が強く求められている。緑の分権改革とは、地域主権改革の一環として、行財政制度の改革にあわせて、経済社会システム全般の改革を目指すものである。

 すなわち、それぞれの地域が、森・里・海とそれにはぐくまれるきれいな水などの豊かな資源とそれにより生み出されうる食料やエネルギー、あるいは歴史文化資産の価値等を把握し、最大限活用する仕組みを創り上げていくことによって、地域の活性化、絆の再生を図り、地域から人材、資金が流出する中央集権型の社会構造を分散自立・地産地消・低炭素型としていくことにより、「地域の自給力と創富力(富を生み出す力)を高める地域主権型社会」への転換を実現しようとするものである。

 総務省では、省内横断的な推進体制として、平成21年12月、「緑の分権改革推進本部」を設置し、積極的に取り組んでいるところである。

ア 平成21年度の取組

 緑の分権改革の推進のための基礎的条件整備として、地域におけるクリーンエネルギー資源の賦存量の調査とフィージビリティ調査、固定価格買取の仕組みや住民共同出資の活用等も含めた事業化方策についての先行実証調査を実施している。

イ 平成22年度の取組

(ア) 研究会の設置

 アのクリーンエネルギー資源の調査の状況、(イ)の先行的な取組を実施する市町村による調査の状況も踏まえ、緑の分権改革を推進していくための課題・対応策等について検討する。

(イ) 先行的な取組についての委託調査事業

 エネルギー、食料等の可能な限りの域内生産を推進するとともに、歴史文化資産をはじめ地域資源を最大限活用し、地域の自給力と創富力を高める取組を、先行的・総合的に実施する市町村を募集し、委託調査を実施する。

ウ 平成23年度以降の展開

 平成21年度及び平成22年度における調査・研究結果、先行実施市町村の検証・提言等を広く都道府県、市町村はじめ関係者に周知するとともに、国として、広報・啓発にあわせて、必要な制度的対応などによる支援策を講じていくことにより、緑の分権改革を積極的に推進していく。

(2)定住自立圏構想の推進

 定住自立圏構想は、基礎的自治体である市町村の創意工夫により、「中心市」の都市機能、「周辺市町村」の環境、歴史、文化、食料生産などの機能、それぞれの魅力を活用して相互に役割分担することにより、圏域ごとに地域住民の生活に必要な機能を確保し、地方圏における定住の受け皿を形成することをねらいとしている。

 総務省は、平成20年12月に、定住自立圏構想の基本的な考え方、定住自立圏形成の具体的な手順等を記載した「定住自立圏構想推進要綱」を公表し、以降、地方公共団体に対する情報提供や、補正予算の各種地域活性化関係臨時交付金の割増算定、定住自立圏等民間投資促進交付金の交付等の措置により、同構想を推進してきた。

 平成22年1月末現在では、42市が中心市宣言を行い、そのうちの25の中心市により23の定住自立圏が形成されている(中心市を含め、延べ107市町村が関係)。さらに、長野県飯田市は定住自立圏共生ビジョンを策定し、定住自立圏における具体的な事業に着手しているところである(いずれも平成22年2月19日現在の状況)。

 今後も、定住自立圏構想の推進のため、地方公共団体に対する情報提供を実施するほか、地方財政措置や関係各省の補助事業の優先採択等による支援を行うこととしている。

(3)過疎地域等の条件不利地域の自立・活性化の支援

ア 基本的考え方

 過疎地域等は、都市部の災害防止、水源の涵養、安心・安全な食料の供給、森林による二酸化炭素の吸収などにより、都市部を支えている一方、人口減少、高齢化、身近な生活交通の不足、医師不足、維持が危ぶまれる集落の問題など、多くの課題が存在している。これらの状況を踏まえ、条件不利地域と都市が共生するという日本型の共生社会を実現するとともに、都市部を含めた国民全体の安心・安全な生活を確保していくことが必要である。

イ 取組内容

 条件不利地域の自立・活性化への支援を着実に推進していくため、総務省では以下のような取組を進めている。

・地域医療提供体制の確保

・モデルプロジェクトによる遠隔医療の推進

・デジタル・ディバイドの解消(ブロードバンド、携帯電話)

・集落の維持・活性化対策(「集落支援員」による集落点検の促進等)

・都市から地方への移住・交流の促進(移住・交流推進機構(JOIN)や関連NPO法人との連携、空き家活用によるU・Iターン促進対策等)

ウ 現行過疎法の延長

 平成22年3月末で失効する現行の過疎地域自立促進特別措置法(議員立法)については、各会派間の協議が整い、以下を主な内容とする「過疎地域自立促進特別措置法の一部を改正する法律案」がとりまとめられ、第174回国会での提出に向けて検討が進められているところである(平成22年2月19日現在の状況)。

(ア) 平成17年国勢調査の結果に基づく過疎地域の要件の追加

(イ) 地方分権改革推進の観点からの過疎地域自立促進方針等の策定に係る義務付け等の見直し

(ウ) 過疎地域自立促進のための特別措置の拡充

・過疎対策事業債の対象の追加(いわゆるソフト事業への拡充等)

・減価償却の特例の拡充

・地方税の課税免除又は不均一課税に伴う措置の拡充

(エ) 失効期限の延長

現行法の失効期限(平成22年3月31日)について、6年間の延長を行い、平成28年3月31日とする。