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第III章 意見申出制度 |
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(1) 法の趣旨
電気通信事業者の電気通信役務の料金や業務の方法に関して、苦情や意見がある場合には、その趣旨を行政に申し出ることができ、行政は申出があった場合には、事業者からのヒアリング等により調査を行った上、必要に応じ当該事業者に対し料金変更命令を発動するなどの措置を講じ、それらの処理の結果を申出者に通知しなければならないとするものである。
※ 電気通信事業法第96条の2(2) 基本的考え方
- 第1項
- 電気通信事業者の電気通信役務の料金その他の提供条件又は電気通信事業者の業務の方法に関し苦情その他の意見のある者は、郵政大臣に対し、理由を記載した文書を提出して意見の申出をすることができる。
- 第2項
- 郵政大臣は、前項の申出があつたときは、これを誠実に処理し、処理の結果を申出者に通知しなければならない。
まず、意見申出制度においては、ある事業者の料金等に意見を有する利用者等は、その後の手続が円滑に行われるようにするため、以下のような事項を記載した書面を提出することとすることが適当であると考えられる。
氏名、住所、連絡先
申出対象事業者、対象サービス、対象料金
申出事項
申出理由(根拠)
具体的改善策(もし、あれば)
なお、意見申出に対する行政、事業者の的確な対応ができるように、意見申出の理由ができるだけ詳細に記載されることが望ましいが、具体的にどの程度の詳細度の理由を記載することが求められるかは、事業者による情報公開事項(届出事項)に応じて考える必要がある。すなわち、事業者から広範かつ詳細な情報提供がなされていれば、それを踏まえた意見申出が行われることが望ましく、一方、事業者からの情報提供が乏しい場合には、意見申出の理由も概略的なものとならざるを得ないのではないかと考えられる。
また、一般利用者は、自らも料金設定を行う事業者に比べて、料金の妥当性を判断するための原価や競争状況などの情報にアクセスしにくい面もあることから、行政としても、この点に配慮し、情報入手先の紹介や情報自体の提供などに努めることが求められる。
いずれにしても、意見申出者に対して、申出時においてあまりにも詳細に申出理由等を明らかにすることを求めることにより、本制度の趣旨が損なわれることのないようにすべきである。
意見申出があった場合、行政としては、電気通信事業法上の報告徴収権をより積極的に活用するなどにより、当該事業者から料金の妥当性を説明するための原価情報等の開示を求めることとなる。
※ 電気通信事業法第92条第1項
郵政大臣は、この法律の施行に必要な限度において、電気通信事業者に対し、その事業に関し報告をさせ…ることができる。
行政は、意見申出により調査を開始した場合であって、当該料金が不当であると判断した場合には、料金変更命令等により当該料金を是正させることとなる。
意見申出に基づいて料金の妥当性について検証し、迅速かつ適切に処理を行った上で、意見申出者に処理の結果及びその判断の理由を通知するとともに、原則としてその通知した内容について公開することが行政手続の透明性の観点から必要であると考えられる。
なお、行政は、意見申出に対して、理由、根拠が不十分であることなどから料金変更を要しないと判断した場合でも、その旨を申出者に通知する必要がある。
また、申出内容を定期的に取りまとめて公表することや意見申出から最終決定までの標準処理期間を設けることが望ましいと考えられるので、諸外国の例や意見申出制度の運用の実態を踏まえ、今後検討することが求められる。
※ 米英の例
1 米国では、FCC(Federal Communications Commission)に対し、公式又は非公式のいずれの方法でも不服を申し立てることができるとしている。
公式な不服申立ては、利用者、他事業者が、差別的な料金等連邦通信法に違反する行為により損害を受けた場合に行うことができ、FCCは、電気通信事業者に通知し、合理的な期間内に、違反の事実等について回答を求め、必要と認める場合には、料金変更命令等の手段により是正を命ずるとしている。
非公式な不服申立てに対しても、FCCは電気通信事業者に通知し解決を斡旋している。問題が解決しない場合には、申立者は公式な申立てに移行することを求めることができるとしている。2 英国OFTEL(Office of Telecommunications)では、反競争的行為に対する不服申立てを受けた場合、予備審査と調査の2段階のアプローチを採用している。
予備審査段階では、苦情の内容や重要性、必要な追加情報等を調査し、本格調査に進めるべきか否かを決定する。予備審査は30営業日以内に完了することを目標としている。
調査段階では、詳細な調査、検討を行い、免許条件に違反していると判断した場合は、免許条件遵守のための命令を発出することとなる。調査は6か月以内に完了することを目標としている。
(参考)意見申出の手続
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