第V章 上限価格方式の運用の在り方

第5節 料金指数の算出方法

  1. 概要

    (1) 法の趣旨
     基準料金指数は、個別の料金額ではなく、特定電気通信役務の種別ごとに種別全体の適正な料金水準を示すものであり、基準料金指数と現実の料金水準の関係を明らかにするため、種別ごとの現実の料金水準を指数化し、料金指数として算出することとしている。
     また、料金指数の算出のためには、対象事業者の通信量等のデータを用いることとなるため、対象事業者に、必要となるデータの測定及び記録を義務づけることとしている。

    ※ 電気通信事業法
    第31条第3項  …料金指数(電気通信役務の種別ごとに、料金の水準を表す数値として、通信の距離及び速度その他の区分ごとの料金額並びにそれらが適用される通信量、回線数等を基に算出される数値…)…
    第31条の2   第38条の2第2項に規定する指定電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者は、郵政省令で定める方法により、その提供する特定電気通信役務の通信量、回線数等を記録しておかなければならない。
    (2) 基本的な考え方
     料金指数は、できるだけ現実の料金水準を正確に表すことが求められることから、個別料金の変化率をそれぞれの前年度の収入ウェイトで加重平均し、料金改定ごとに算出することとする。
     具体的には、料金指数は、基準時における料金水準を100として、料金改定時において、改定後料金(Pt)と改定前料金(Pt-1)のそれぞれにつき前年度の供給実績(S)と同量だけ需要があった場合の収入を計算し、その比率を料金改定前の料金指数に掛け合わせることによって算出する。
  2. 通信量、回線数等の記録

     料金指数を算出するためには、少なくとも、料金額ごとの通信量、回線数等が必要であるが、料金体系を変更する場合(距離区分の変更、課金秒数の変更等)における料金指数の適正性を確保するため、通信量、回線数等は、できるだけ詳細に記録することが望ましい。
     しかしながら、あらゆる料金体系の変更に対応できるよう通信量、回線数等を記録することは、事業者に過度の負担をもたらすこととなることから、当面は、現在の料金体系に基づく記録を行うこととし、料金体系の変更を行う場合には、計量モデルなどの一定の合理的な方法により、料金指数を算出することとすることが適当である。
     なお、上限価格方式導入後の料金体系の多様化の動向を踏まえ、より適切かつ詳細な記録方法の在り方について、検討を行っていくことが求められる。

  3. 選択割引料金、新サービス、サービス廃止の取扱い

    (1) 選択割引料金の取扱い
     選択割引料金の取扱いについては、それが特定の利用者を対象としたものであり、料金指数の算出に含めた場合、基準料金指数を満たすために、大口向け選択割引料金だけを値下げし、小口向け料金については据え置き又は値上げするといったようなことが懸念される。
     しかしながら、選択割引料金と基本的な料金の区別は相対的なものであり、料金指数はできるだけ全ての料金の水準を総合的に表す数値であることが求められるとともに、大口利用者向けの不当な差別的料金については、基本的には、変更命令の発動により対応すべき問題であることから、選択割引料金を含めて料金指数を算出することが適当であると考えられる。
     なお、上限価格方式導入後、このような問題が顕在化し、変更命令によって対応することが困難となった場合には、小口利用者向け料金についてサブバスケットを設けることについて検討すべきであると考えられる。

     米国FCCのAT&Tに対するプライスキャップ規制においては、住宅用サービスと事務用サービスを別バスケットとしていた。
    (2) 新サービス料金・新割引料金の取扱い
     新サービス料金・新割引料金は、その開始時には通信量等の供給量が測定されていないことから料金指数の算出においては考慮せず、供給量が測定できた段階で、料金指数の算出に含めることとすることが適当である。

    (3) サービス・割引料金の廃止の取扱い
     サービス・割引料金が廃止される場合には、当該サービス・割引料金の利用が非常に少なくなっていると想定されることから、当該料金に係る通信量、回線数等については、代替的なサービスに移行するものとして料金指数のウェイトを補正することが可能であると考えられる。

  4. 料金指数の算出方法に関する具体案

     以上の検討を踏まえると、料金指数の算出方法に関する具体案は次のとおりとすることが適当であると考えられる。

    (1) 料金指数は、特定電気通信役務の種別ごとに、次に掲げる式により算出するものとする。

    (Ptは改定後料金、Pt-1は改定前料金、Sは前年度の供給実績)
    導入時の料金水準を100とする。
    (2) 前年度の供給量となる通信量、回線数等は、現行の料金体系に応じて記録することとする。


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