第V章 上限価格方式の運用の在り方

第6節 その他

  1. 基準料金指数以下の料金の届出

     特定電気通信役務に係る料金についても、料金指数が基準料金指数を超えていない限り、基本的に他の届出料金と同様の取扱いとなる。つまり、事前に行政に届け出ることにより、事業者自らの判断によって自由に料金を設定・改定できる一方、不当な料金である場合には、事後的に行政から料金変更命令が発動されることとなる。
     ただし、基準料金指数を超えるものでないことを確認するため、次の届出の手続について、他の届出料金と異なる取扱いとすることが適当であると考えられる。

    (1) 事前届出期間
     料金体系の変更を含む料金改定の場合には、確認に時間を要することも想定されることから、上限価格方式導入時においては、事前届出期間を当面1ヵ月とすることが適当である。ただし、確認作業が不要な単純な改定の場合の短縮化や確認作業の効率化等の実績を踏まえ、将来的には、期間の短縮化についても検討することが必要となる。

     英国ではBTのプライスキャップ対象料金は28日前までに届け出ることとしている。
    (2) 届出事項
     第II章3の届出料金における届出事項に加え、料金指数が基準料金指数を満たすとともに、その料金指数の算出方法が適正であることをを示す資料をあわせて届け出ることが必要となる。

  2. 基準料金指数超の料金の認可

     上限価格方式においては、行政が通常実現可能と考えられる料金水準を基準料金指数として定めることから、基本的に料金指数が基準料金指数を超える料金が設定されることは想定されない。
     しかしながら、大規模な事故の発生など基準料金指数設定時に見込んでいない特別な環境変化が生じ、基準料金指数以下では、十分なサービス提供を行うことが困難となる場合には、例外的に基準料金指数を超える料金を認めることとする。この場合、種別に含まれる全ての料金について、行政の認可を受けなければならない。
     基準料金指数を超える料金の認可においては、安易に基準料金指数超の料金設定・改定が行われることを防止するため、超えることとなる特別な事情を審査することが求められる。また、当該料金が、料金変更命令の発動要件に該当しないことを事前に審査することとなる。

    ※ 電気通信事業法第31条第4項
    …変更後の料金の料金指数が基準料金指数を超えるものであるときは、郵政大臣の認可を受けなければならない。
    ※ 電気通信事業法第31条第5項
    郵政大臣は、前項の認可の申請があった場合において、基準料金指数以下の料金指数の料金により難い特別な事情があり、かつ、当該申請に係る変更後の料金が第2項各号のいずれにも該当しないと認めるときは、前項の認可をしなければならない。
  3. 会計情報の取扱い

     特定電気通信役務については、行政においてX値を算定する際に必要となることから、特定電気通信役務の種別ごとの実績原価等の会計情報を報告させることとなる。
     このような原価情報については、上限価格方式の趣旨が、基準料金指数の範囲内であれば報酬の幅等を規制しないことにより事業者に自主的な経営効率化インセンティブを賦与するものであることから、X値の見直し時以外は報告する必要はないとする意見がある。
     しかしながら、特定電気通信役務は、独占的に提供され利用者に及ぼす影響が大きいものであることから、その会計情報は毎年度社会的に公開されることが望ましく、基準料金指数の適正さを社会的に検証する上でも必要であると考えられる。
     したがって、事業者は、特定電気通信役務のサービス及び種別ごとの原価情報(レートベース、報酬率を含む)等について、毎年度行政に対し報告するとともに、企業秘密に該当するもの以外はできるだけ公開することが適当であると考えられる。

  4. サービス品質低下の防止

     上限価格方式の下では、事業者においてサービス品質を低下させることにより原価を引き下げ、利益を拡大しようとする誘因が働く可能性がある。このような問題については、事業者がサービス品質に関する情報を公開し、社会的な検証が行われることにより、防止していくことが望まれる。
     なお、行政にあっては意見申出制度の適切な運用により、不当なサービス品質の低下に対しては業務改善命令等により適切に対処することが求められる。

     英国では、プライスキャップ方式の導入後、サービス品質についてのユーザーの苦情が多数寄せられるようになったことから、OFTEL長官はBTに対して、次の統計を公表するよう要請した。
    標準時間内に設置された回線の割合
    目標時間内に修理された故障の割合
    回線当たり故障率
    使用不能時間率
  5. 基準料金指数の適用スケジュール

    (1) 概要
     行政は、基準料金指数が、物価等の経済事情やサービス提供に必要な適正な原価からみて適正なものとなるよう、毎年見直すこととする。
     また、事業者は必要があれば、基準料金指数の適用の日までに、料金指数がその基準料金指数以下になるように料金の変更を届け出、実施しなければならないことから、行政は、一定期間前までに基準料金指数を事業者に通知することとする。

    ※ 電気通信事業法第31条第3項
     郵政大臣は、毎年少なくとも一回…基準料金指数を定め、…その適用の日の郵政省令で定める日数前までに、事業者に通知しなければならない。
    (2) 基準料金指数の適用時期
     会計年度に合わせて生産性の向上を考える場合、年1回基準料金指数を設定するとすれば、会計年度の中間点が適切であることから、通常の基準料金指数の適用期間は、10月1日に開始し翌年9月30日に終わる1年間とすることが適当であると考えられる。

    (3) 事前通知期間
     事業者において、料金改定を実施するためには、経営判断を行うための期間や課金システムの改造等の時間を要すること、また、特定電気通信役務に係る料金については、その実施の1ヵ月前までに届け出なければならないことなどから、行政は、少なくとも、基準料金指数の適用の日の3ヵ月前までに事業者に通知する必要があると考えられる。

  6. 基準料金指数の適用開始時期

     基準料金指数の適用開始時期については、できるだけ早期に導入し、電気通信料金の低廉化を促すことが望ましいと考えられるが、現時点で上限価格方式の適用対象となるNTTについては、来年(平成11年)夏に再編成が予定されており、現在のNTTに適用したとしても、短期間で基準料金指数を再設定する必要性があることなどから、再編成後できるだけすみやかに実施することが適当と考えられる。
     具体的には、再編時において策定される事業収支見積、又は再編後最も早い時期に出される会計データ等をもとに、生産性向上見込率を算定し、平成11年度中を目途に基準料金指数の適用を開始することが適当と考えられる。
     なお、基準料金指数の適用が開始されるまでの間は、法律上、現行の認可制が適用されることとなっている。


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