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第VI章 料金等に係る情報公開の在り方 |
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今般の料金制度改正の趣旨は、電気通信分野における競争の進展に対応して、規制の緩和を行い、できるだけ市場メカニズムを通じて電気通信サービス・料金の多様化、低廉化を促進しようとするものである。
したがって、電気通信サービスの料金等に係る情報についても、市場メカニズムが有効に機能する中で必要な情報が事業者から利用者に伝達され、それらの情報をもとに利用者が自己責任においてサービスを選択するという仕組みが基本となる。
しかしながら、市場メカニズムが必ずしも十分に働かない領域においては、料金・サービスの妥当性を担保するため、必要最小限の規制が必要であり、その規制に必要な限度において事業者の情報公開についても一定のルールを定めることが求められている。
また、電気通信サービスは、国民生活や社会経済活動において欠くことのできないものとなっているが、近時における著しい技術の革新や競争の進展に伴い料金・サービスが複雑化・高度化しており、一般利用者からは各電気通信料金をわかりやすく整理した情報の提供や電気通信事業者や行政が利用者の意見・苦情に対応して的確な情報提供を行うような体制の整備が求められている。
さらに、行政に対する国民の参加、監視を充実することにより、適正な行政運営を確保するため、行政に対しては、情報を積極的に公開することや国民に対する説明責任を十分に果たすことが求められている。
以下においては、こうした情報公開をめぐるさまざまな要請を踏まえつつ、電気通信事業者及び行政に求められる料金等に係る情報公開の在り方について検討する。
なお、ここでは、次表のとおり、請求に応じて情報を公開することを「情報開示」、請求によらず任意に情報を公開することを「情報提供」、請求によらず義務的に情報を公開することを「情報の公表」とし、これらを総合的に表した概念を「情報公開」とすることとする。
任意的 | 義務的 | |
請求によらいないもの | 情報提供 例:広報紙誌の発行 :報道機関への情報提供 |
情報の公表(公表義務制度) 例:法令などの公布 :財務状況の公表 |
請求に応じるもの | (任意的)情報開示 例:資料室などでの閲覧 :相談窓口などにおける対応 |
(義務的)情報開示 例:情報公開法案 |
(1) 情報公開の局面
新しい料金制度の下で電気通信事業者が情報公開を求められる局面は、
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料金設定・改定時の届出に係る情報提供 |
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意見申出等に対応した料金の妥当性の説明に係る情報開示 |
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電気通信事業法に基づく義務的な会計情報の公表 |
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事業者による定期的又は随時の任意的な情報提供 |
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利用者の個別的要請に対応した情報開示 |
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サービス品質(故障件数、呼損率、回線復旧に要する時間等) |
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意見・苦情の内容件数、利用者の満足度 |
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サービス向上策 |
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中長期的な経営ビジョン |
※ | 鉄道事業においては、運輸省が「鉄軌道業の情報提供ガイドライン」を策定し、その中で、事業者が定期的又は随時情報提供する事項として、事業計画の概要、利用者サービスの向上策、利用者の声等を規定している |
※ | 米国においては、FCCは、年間売上高1億ドル以上の地域電気通信事業者及び指定する市外電気通信事業者に対し、電子的な報告方法(ARMIS(Automated Reporting Management Information System))により、統一会計システムによる報告に加え、サービス品質報告書や利用者満足度報告書等を作成し、報告することを義務づけている。 |
報告書名 | 内 容 |
年次概要報告書 | 通信事業者の必要収入、報酬率、アクセスチャージなどを監視するための財務情報を記載 |
統一会計システム報告書 | 通信事業者の必要収入、報酬率、アクセスチャージなどを監視するための事業活動結果を統一会計システム(USOA)に則って記載 |
連結原価報告書 | 通信事業者の必要収入、報酬率、アクセスチャージなどを監視するための詳しい財務情報(収入・支出)を規制/非規制に分けて記載 |
接続報告書 | 通信事業者の必要収入、費用配賦、所轄範囲の分離、アクセスチャージを監視するための所轄範囲ごとに分離した収支とアクセスチャージについて記載 |
サービスの質報告書 | プライスキャップ規制下でのサービスの質を把握するため、また報告義務の標準化・改善のための修理間隔や苦情回数などのサービスの質について記載 |
利用者満足度報告書 | プライスキャップを適用される通信事業者の報告義務の標準化と改善を目的として、サービスの質を記載(プライスキャップ規制を受けている地域電気通信事業者のみが対象) |
インフラ報告書 | プライスキャップを適用される通信事業者の報告義務の標準化と改善、電話産業のインフラの発展を目的として、通信事業者のインフラ設備状況を記載(プライスキャップ規制を受けている地域電気通信事業者のみが対象) |
事業データ報告書 | ネットワークの信頼性、利用、拡大を管理するために、電信電話設備、稼働中のアクセス線、通話数・通話時間などを記載 |
投資見通し報告書 | 報告年度を含め今後3年間の投資配分を記載 |
実投資利用報告書 | 報告年度の実際の投資利用について記載 |
(1) 基本的な考え方
行政機関が保有する情報については、利用者の利便に資するとともに、行政の取組みや手続を透明化・明確化する意味から積極的に公開すべきであり、先般の国会に提出され、継続審議となっている「行政機関の保有する情報の公開に関する法律案」においても、行政の保有する行政文書について、開示請求があった場合には不開示情報を除き公開することとされるとともに、行政は情報の公開の総合的な推進を図るため、情報の提供に関する施策の充実に努めることが求められており、電気通信行政においてもこの法案の趣旨を踏まえ、行政情報を積極的に公開していくことが必要である。
※ 行政機関の保有する情報の公開に関する法律案(2) 事業者からの情報
第5条 行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
一 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
イ 法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
ロ・ハ (略)
二 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
ロ 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提出されたものであって、法人等または個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの
三〜六 (略)
- 行政文書(第2条):
- 行政機関の職員が職務上作成又は取得し、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有している文書、図画及び電磁的記録
第39条 政府は、その保有する情報の公開の総合的な推進を図るため、行政機関の保有する情報が適時に、かつ、適切な方法で国民に明らかにされるよう、行政機関の保有する情報の提供に関する施策の充実に努めるものとする。
(基本的な政策等に関する情報は、国民からの請求を待たずに広く国民に提供されるべきであり、また、消費生活その他特定の行政分野においては、国民一般に伝達すべき情報を行政機関に作成又は取得させた上、最も適切な方法で国民に提供することを義務付けるなどの情報提供制度の充実、強化も図られるべきであるとの趣旨から、広く情報公開の総合的な推進を図ることの努力義務を定めている(行政機関の保有する情報の公開に関する法律案参考資料より)。)
(3) 不開示情報
※ 米国の電気通信分野においては、FCC規則において事業者のFCCへの届出・報告事項を定めており、FCCは届け出られた事項のうち、取引上の秘密事項などを除き、全て公開している。
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開示すると事業者の利益を不当に侵害する情報 事業者の「競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報」の範囲については、明確な基準がなく、今後の料金制度の運用を通じて明確にしていくことが求められるが、とりあえず以下の論点について検討することとする。 なお、不開示情報に該当する情報であっても事業者の任意の同意が得られるものについては公開していくことが適当である。 ア) 営業秘密等 当該事業者固有の技術情報やノウハウなど、公開されると競争事業者に模倣されるおそれがあるものについては先行企業の努力による正当な利益を保護する必要があることから開示すべきではないと考えられ、不正競争防止法においても「秘密として管理している生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術情報又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」を営業秘密と定義し、知的財産権として保護することとしている。 また、公にはなっていない事業者の将来的な(事業)計画のうち、料金改定計画など、競争事業者により対抗措置を講じられるおそれがあるものについても、競争上の地位を害するおそれがある情報として、不開示情報に該当すると考えられる。 イ) 原価情報 電気通信サービスに係る原価情報については、一般的にその全てが、事業者の競争上の地位を害するとして不開示とすべきものとは考えられず、事業者の正当な利益を侵害することとなるかどうかといった観点から、個別具体的な検討が必要である。 今後、原価情報の開示範囲をより明確にするため、例えば、機器の調達等に係る個別的取引情報(メーカ名、機種名、価格)や上記の営業秘密がうかがい知れるような情報など問題となる情報を列挙して、それ以外は、不開示情報には当たらないとするネガティブリスト方式を採用することなども検討すべきである。 |
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個人に関する情報 特定の個人を識別することができる情報については不開示とすべきであると考えられる。例えば、意見申出に係る情報公開においては、その目的が、行政手続の透明性の確保と一般の利用者に対する啓発が主なものであると考えられることから、個人の意見申出者の氏名等は不開示とすることが適当と考えられる。一方、事業者からの申出の場合には、不開示とする必要性は低いと考えられる。 |
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料金変更命令等の行政処分に関する事項 料金変更命令その他の行政処分が行われる場合には、当該処分を行うこととなった経緯、処分の内容及び処分を行う理由等を公開することが必要であると考えられる。 |
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基準料金指数の設定に関する事項 基準料金指数は、国民生活・経済に及ぼす影響が大きい役務に係る料金に関するものであることから、行政は、基準料金指数自体はもちろんのこと、設定の考え方や根拠等を積極的に説明する必要があると考えられる。 |
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意見申出に関する事項 意見申出においては、受け付けた意見について、行政が個々の案件を整理し、申出の理由が不明確・不十分なものについては、定期的に件数等の統計データを公開し、一定の調査を行ったものについては、行政が知り得た情報のうち企業秘密に関するものや特定の個人を識別できるようなものを除き、原則全て公開すべきであると考えられる。 |
届出対象料金 | 特定電気通信役務料金 | |||
事 業 者 |
1 料金届出時 | 料金の案(新旧対照表)、実施時期、料金の設定・改定の理由、適用地域・期間(限定がある場合)、その他参考となる事項があれば、その事項(収支見通し等) | 左記の事項に加え、料金水準が基準料金指数以下であることを示す資料 | |
2 意見申出時 | 意見申出の内容に応じ料金の適正を説明する事項(例:合理的理由、収支見通し、原価情報等) | |||
3 定期的 | ||||
(1) 義務的事項 | 会計情報(会計規則) トラヒックデータ(報告規則) |
左記の事項に加え、サービス及び種別ごとのレートベース報酬率 | ||
(2) 任意的事項 | サービス品質(例:故障件数、呼損率等) 意見、苦情、利用者の満足度 (意見・苦情内容、処理件数等) サービス向上策 中長期的な経営ビジョン |
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4 情報提供 | 情報へのアクセス方法、開示情報メニュー | |||
行 政 |
1 料金届出時 | 不開示情報を除く届出事項 | ||
2 意見申出時 | 不開示情報を除く調査・処理結果 | |||
3 行政措置 | ||||
(1) 基準料金指数設定 | ------------ | 基準料金指数及びX値設定の根拠 | ||
(2) 料金変更命令 | 命令を行った経緯、命令の内容及びその理由 | |||
4 定期的 | 内外価格 差市場データ(トラヒックデータ、市場シェア、料金推移、移動体通信の契約数等) 苦情処理状況(苦情内容、処理件数等) |
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5 情報提供 | 情報へのアクセス方法、開示情報メニュー | |||
公 的 団 体 |
情報提供 | 料金・サービス比較情報 |
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