はじめに
このたび、東日本大震災により被災された皆様におかれましては心からお見舞い申し上げますとともに、お亡くなりになった方々に哀悼の意を表します。
我が国の統計制度は、平成19年5月23日に公布された新統計法により新たなスタートを切りました。60年ぶりに全面改正された新統計法におきましては、学識経験者で構成される統計委員会を内閣府に設置するとともに「公的統計の整備に関する基本的な計画」(以下「基本計画」という)を閣議決定し、国の統計行政を総合的・計画的に実施することとされております。
基本計画は平成19年10月1日に発足した統計委員会の審議を経て、平成21年3月13日に閣議決定されました。基本計画は、新統計法が全面施行された平成21年4月1日以降のおおむね5年間を視野に入れた中期的な計画で、実施する施策の担当府省、実施時期が具体的に明記されております。計画に沿って、各府省が講じた措置については、毎年度、その前の年度に実施した実績について総務省(政策統括官(統計基準担当))がとりまとめ、統計委員会に報告することとされております。報告を受けた統計委員会では、その内容について審議し、必要に応じ関係機関の長に対し意見を提示することとされております。平成22年度においては、国民経済計算と一次統計等との連携強化とビジネスレジスターの整備について、それぞれ内閣総理大臣及び総務大臣に意見を提示しました。
この報告書が、国の統計行政を理解する上での一助になれば幸いです。
平成23年6月
統計委員会委員長
樋口 美雄
1.統計委員会について
平成19年5月23日、公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図るため、統計法が公布されました。この統計法には、専門的かつ中立・公正な第三者機関として、内閣府に統計委員会を設置することが規定されています。
統計委員会で審議する事項は、
- 公的統計の整備に関する基本的な計画
- 国民経済計算の作成基準の設定・変更
- 基幹統計の指定
- 基幹統計調査の実施・変更・中止
- 統計基準の設定
- 匿名データの匿名性の確保
などとなっており、公的統計の整備に関する「司令塔」機能の中核としての役割を担っています。
2.統計法の施行状況に関する審議
(1) 経緯等
統計法第55条第2項に基づき、総務大臣は、毎年度、法の施行状況に関する行政機関の長等からの報告を取りまとめ、その概要を公表するとともに、統計委員会に報告することとされています。
また、統計委員会は、総務大臣から報告があったときは、同条第3項に基づき、法の施行に関し、内閣総理大臣、総務大臣又は関係行政機関の長に対し、意見を述べることができることとされています。
平成21年度の法の施行状況については、平成22年6月18日に開催された第35回統計委員会において、総務大臣(政策統括官(統計基準担当))から報告されたところですが、引き続き、法及び基本計画に沿った統計行政を着実かつ計画的に推進するため、報告内容について審議し、統計委員会としての意見を取りまとめました。
審議スケジュールは以下のとおりです。
平成22年 6月18日 |
総務大臣から統計委員会に対し、「平成21年度 統計法施行状況報告」を提出。基本計画部会において審議の進め方を決定 |
7月〜8月 | 各ワーキンググループの検討結果を第25回基本計画部会に報告 |
9月8日 | 第26回基本計画部会において、審議結果及び意見を取りまとめ |
9月30日 | 第38回統計委員会において審議結果及び意見を決定。審議結果を公表するとともに、関係大臣宛に意見を提示 |
(2) 意見の取りまとめについての考え方
1 意見の取りまとめに向けて審議することの意義
平成19年に法が全面改正され、新法の下では、総務大臣が統計委員会の意見を聴いて作成し閣議決定した基本計画に基づき、政府の統計行政は計画的に進められることとなっています。
本審議は、法第55条に基づき、統計委員会が、基本計画を含む同法の施行状況について関係行政機関の長等に意見を述べることができることから、その意見の取りまとめに際し実施するものですが、審議の過程で判明した事実関係や委員から提示された課題、統計整備の方向性等は、報告書の公表等を通じて関係府省等との間で情報共有され、今後の統計委員会における審議等に活用されるものです。
2 意見の対象とする事項
審議の過程で提示された統計整備等の報告性の中には、特に重要な課題であって、統計部局にとどまらず、各府省における重要課題として対応していくことが望ましいと考えられるものがあります。そのような事項については、統計部局の属する行政機関の長に意見を述べることにより、課題の解決に向けた動きを一層効果的に促進することが望ましいと考えられます。このような観点から、意見を提示することとする事項を選定することとしました。選定にあたっては、以下に掲げる視点を総合的に勘案することとしました。
<意見を取りまとめる際の視点>
- 国民の合理的意思決定や政府の政策判断において重要な役割を果たす統計に関するもの
- 他の重要な統計の母集団として使用されるなど、政府の統計体系全体に及ぼす影響が大きい統計に関するもの
- 新法の下で新たに基幹統計等と位置付けられ、制度の確保等について特段の配慮が必要となる統計等に関するもの
- 行政機関におけるリソースの在り方など、課題の解決に行政機関の長の判断が必要となるもの
- 現時点で指摘しておかないと、今後の円滑な業務に遂行に支障が生ずるおそれのあるもの
(3) 審議結果
統計整備の重要度、緊急度が高いなどの重要な事項について、取り組むべき統計整備等の方向性をとりまとめました。これらのうち、政府の統計体系全体に及ぼす影響が大きいなど、所管する府省における重要課題として取り扱うことが望ましいと考えられるものについては、所管大臣に意見として提示しました。
重要な事項に関する統計整備等の方向性
(意見として提示した事項)
◎ 国民経済計算の整備と一次統計等との連携強化【対 内閣総理大臣】
- 新しい年次推計方法等の確立とシステムの構築に関する具体的な工程表の策定等
- 高い知見を有する研究者、中核的職員等による責任体制の明確なプロジェクトチームによる対応
◎ ビジネスレジスター(事業所母集団データベース)の構築・利活用【対 総務大臣】
- 基盤的・共通的な統計データ等のレジスターへの収録等の検討、レジスター内の統計データの時系列的整備等の推進
- 各府省のデータ管理における共通事業所・企業コードの保持・利活用等の推進
(その他の重要な事項)
- ワークライフバランスの状況を把握するための関連統計整備
- 雇用・労働に関する世帯及び企業・事業所ベースの統計調査結果を総合的に分析
- 少子高齢化の進展と就業構造の変化の関係を解明するため、既存の雇用・労働関係統計等に必要な調査項目の追加等
- 非正規雇用の実態を的確に把握するための関係統計整備
- 関係府省が共同で既存の雇用・労働統計の鳥瞰図を提示
- 非正規雇用の雇用形態別雇用者数を継続的に毎年把握する統計調査の実施について検討等
- オーダーメード集計、匿名データの作成及び提供(二次的利用)、調査票情報の提供
- 統計データの高度かつ多様な研究分析を通じて、学術研究はもとより社会の発展への寄与が期待
- ニーズを踏まえ、二次的利用の対象となる統計調査の拡大や利用目的の範囲の検討等を推進
- 統計職員等の人材の育成・確保
- 制度の高い統計作成、国際的な標準化の対応等、人材の育成・確保には計画的な実施が不可欠
- 政府横断的な研修機能の活用や大学等の研究者との連携など、統計職員の専門性向上のための方策について検討
- 行政記録情報等の活用
- 統計調査予算の確保が困難になる中、報告者の負担軽減等の観点からも、引き続き重要な課題
- 行政記録情報等の保有期間や国民との間の信頼関係の構築を図りながら、活用の推進について調査研究
- 平成21年度統計法施行状況に関する統計委員会意見について(審議結果報告書)(平成22年9月30日)
- 平成21年度統計法施行状況に関する審議結果についての統計委員会委員長談話(平成22年9月30日)
3.諮問・答申
平成22年度における諮問は10件、答申は8件です。
4.統計利用者との意見交換会
平成22年度においては、「科学技術・イノベーション」及び「サービス」分野の統計について、それぞれ以下の統計利用者との間で意見交換を行いました。
- 第3回統計委員会と統計利用者との意見交換会(平成22年11月19日)
「科学技術・イノベーション政策の科学」の観点からの統計整備- 桑原 輝隆 科学技術政策研究所(NISTEP)所長
科学技術・イノベーション政策の科学のための統計・データ基盤の整備について - 伊地知寛博 成城大学 社会イノベーション学部 教授
科学技術・イノベーション統計の整備等に係る現状と課題:政策研究分析者側の視点および国際的動向を踏まえて
- 桑原 輝隆 科学技術政策研究所(NISTEP)所長
- 第4回統計委員会と統計利用者との意見交換会(平成23年2月24日)
サービス活動に係る統計の整備- 森川 正之 (独)経済産業研究所(RIETI)副所長
サービス産業の生産性:統計利用者の立場から - 浅井 澄子 大妻女子大学社会情報学部 教授
情報通信分野における統計データ整備の現状と問題点(電気通信・インターネット・コンテンツ) - 川渕 孝一 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医療経済学分野 教授
医療分野における統計データ活用の現状と課題
- 森川 正之 (独)経済産業研究所(RIETI)副所長
5.その他
(調査研究)
平成22年度においては以下の調査研究を実施しました。
「ワークライフバランスの状況の把握を視野に入れた統計の体系的整備に関する調査」
全体版(PDF形式:5,756KB)
分割版

序章 調査の問題意識と目的(PDF形式:404KB)

第1章 経済・経営環境に対応した企業の雇用戦略の変化(PDF形式:1,134KB)

第2章 非正規雇用者とワークライフバランスをめぐる諸問題(PDF形式:1,257KB)

第3章 正規雇用者とワークライフバランスをめぐる諸問題(PDF形式:1,029KB)

第4章 雇用者のワークライフバランスと結婚・出産行動をめぐる諸問題(PDF形式:775KB)

終章 ワークライフバランス関連統計の問題点と整備への提言(PDF形式:291KB)

添付資料 統計マップ(PDF形式:355KB)

補章 米国現地調査報告(PDF形式:1,464KB)

(参考)会議記録
6.平成21年度以前の統計委員会の活動
(平成21年度)
諮問・答申(含む委員長談話)
意見交換会
平成21年度においては、SNA等の経済統計及びワークライフバランス分野の統計について、それぞれ以下の統計利用者との間で意見交換を行いました。
- 河野龍太郎 BNPパリバ証券チーフエコノミスト
日本の統計の問題について(ユーザーの立場から) - 後藤 康雄 三菱総合研究所政策・経済研究センター主席研究員チーフエコノミスト
- ロバート・アラン・フェルドマン モルガン・スタンレー証券経済調査部長
- 山口 一男 シカゴ大学社会学科長
ワークライフバランス(WLB)に関する調査について
その他
調査研究
「経済統計の体系的整備に関する調査」
全体版(PDF形式:3,926KB)
分割版



研究開発の推進等(統計の品質管理)
統計委員会は、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成21年3月13日閣議決定)に基づき統計に係る研究開発について、総合科学技術会議、統計関連学会等に対し協力を要請することとされています。
統計に係る研究開発テーマのうち、「品質評価」に関しては、国際的に見ても様々な検討が行われている状況であり、我が国でも早急に研究開発を進めていくことが強く求められておりますが、統計を作成する各府省の研究開発への体制や知見は必ずしも十分とは言えない状況にあります。
このため、(社)日本品質管理学会へ、統計の品質評価に関する研究開発の積極的な推進についての協力を要請しました(平成22年2月22日)。
(参考) 会議記録
(平成20年度)
- 基本計画の策定関係 「公的統計の整備に関する基本的な計画」の策定に関する審議
- 諮問・答申 諮問・答申一覧
- その他 調査研究 「2008年度事業所・企業についての統計の体系的整備に関する海外現地調査」(PDF形式:673KB)
平成19年度に引き続き以下に掲げる4つのWG及び基本計画部会で審議し、平成20年12月22日に答申を総務大臣に手交しました。

(参考)会議記録
(平成19年度)
(19年10月1日〜)
- 基本計画の策定関係
平成20年1月21日の総務大臣からの諮問を受けて、基本計画部会の下に、以下の4つのWGを設置して審議をしました。
第1WG | (公的統計の整備の考え方(スキーム・基準関係)、統計リソースの有効活用等) |
第2WG | (公的統計の体系的整備(経済統計関係)) |
第3WG | (公的統計の体系的整備(人口・社会統計関係)) |
第4WG | (統計作成・利活用環境の整備) |
諮問・答申
(参考)会議記録
(参考資料)
- 統計委員会委員名簿
- 統計委員会の構成
- 統計委員会関係法令等
- 統計制度改革の歩み

統計委員会令(平成19年政令第300号)(PDF形式:34KB)

統計委員会運営規則(PDF形式:13KB)

統計委員会部会設置内規(PDF形式:12KB)
