5 公営企業金融公庫の廃止及び地方公営企業等金融機構の設立

ア 地方公営企業等金融機構法の成立

 政府は、政策金融改革の一環として、公営企業金融公庫(以下「公庫」という。)を平成20年度に廃止し、地方公共団体の資本市場からの資金調達を補完するため、長期かつ低利の資金の融通等の業務を行う地方公営企業等金融機構(以下「機構」という。)を設立すること等を内容とする「地方公営企業等金融機構法案」を、平成19年2月23日、閣議決定し、第166回国会に提出した。同法は平成19年5月23日、参議院において可決・成立し、同月30日、公布されたところである。

イ 地方公営企業等金融機構法の概要

 地方公営企業等金融機構法(平成19年法律第64号)の概要は、以下のとおりである。

(ア) 「機構」の目的

 「機構」は、地方公共団体による資本市場からの資金調達を効率的かつ効果的に補完するため、地方公共団体に対しその公営企業に係る地方債につき長期・低利の資金を融通するとともに、地方公共団体の資本市場からの資金調達に関して支援を行い、もって地方公共団体の財政の健全な運営及び住民の福祉の増進に寄与することを目的とする。

(イ) 「機構」の組織・ガバナンス

 「機構」は、地方が主体的に担う法人として、地方六団体がそれぞれ推薦する都道府県知事、市町村長並びに都道府県及び市町村議会の議長が発起人となり、地方公共団体の全額出資によって設立されるほか、その意思決定機関である代表者会議も、全国知事会、全国市長会及び全国町村会が選任する都道府県知事、市町村長等によって組織される。

 他方、代表者会議の委員の半数を地方公共団体の長以外の学識経験者とし、学識経験者で構成され「機構」の経営をチェックする機関として経営審議委員会を設置するなど、「機構」の経営の適正を担保する措置を講じる。

(ウ) 「機構」の業務

 「機構」の業務については、「公庫」と同様、水道、交通、病院、下水道、公営住宅、臨時地方道等住民生活に密着した社会資本整備に対して長期・低利の資金融通を行うほか、新たに地方公共団体の資金調達に関する調査研究等を行う。なお、貸付対象事業は、法定の5事業以外は政令で定めることとされ、地方公共団体による資本市場からの長期・低利の資金調達状況等を勘案し、「機構」の業務の重点化を図る観点から、段階的な縮減を図ることとし、貸付量についても、財政融資資金の地方公共団体への貸付けの縮減に併せて、段階的に適切な縮減を図ることとしている。

(エ) 「機構」の財政基盤

 「機構」が行う新規の貸付け等の業務に係る勘定(一般勘定)と「公庫」から承継する既往債権の管理・回収業務に係る勘定(管理勘定)を設けて各勘定の損益を明確に区分した上で、両勘定の金利変動リスクに備えるため、それぞれ金利変動準備金を設ける。また、公営競技施行団体からの納付金を原資とする公営企業健全化基金を「公庫」から承継し、引き続きその運用益等によって貸付金利の軽減を行うこととしている。

(オ) 「機構」に対する国の関与

 「機構」に対する国の関与については、「公庫」に対する人事面、財政面の関与を原則廃止し、適法性担保のために不可欠となる最小限のものに限定している。ただし、管理勘定に対しては、「公庫」から承継する債権の管理を行うこと、政府保証債の発行が認められていることを踏まえ、引き続き国が一定の関与を行う。

(カ) その他

 政府は、平成29年度末を目途に、地方公共団体による資本市場からの資金調達の状況等を勘案し、業務の重点化を図ることの重要性に留意しつつ、「機構」の自主的・一体的な経営を確立する観点から、「機構」の業務の在り方全般について検討を行い、必要に応じて所要の措置を講じることとしている。その際、総務大臣は地方六団体の意見を聴くこととしている。

ウ 「機構」の設立に向けた取組み

 平成20年10月1日の「機構」の業務開始に向け、地方六団体は、平成19年11月7日、発起人会を発足させた。発起人会は平成20年上期の「機構」設立を目指し、準備を進めている。

 政府においては、平成19年12月21日、「機構」の貸付対象事業等を定めた「地方公営企業等金融機構法施行令」(平成19年政令第384号)を公布した。また、平成20年度財政投融資計画においては「機構」の管理勘定の借換債4,200億円全額に政府保証を付すとともに、平成20年度地方債計画において「機構」資金を公的資金に位置づけ、所要の「機構」資金の貸付枠を計上している。