昭和50年版 通信白書

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6 大容量有線伝送方式

 画像通信,データ伝送等の普及に伴う,大容量伝送路の将来需要に対処するため,アナログ,ディジタル伝送による大容量同軸ケーブル方式等の検討が進められている。
(1) 陸上同軸ケーブル方式
 現在,電話回線に用いられている同軸ケーブルは,標準同軸ケーブル(内外径2.6/9.5mm)と細心同軸ケーブル(1.2/4.4mm)に大別され,ケーブルの特性はいずれもCCITT規格によっている。
 現在,我が国において使用されている代表的方式は,標準同軸ケーブルを用いた12MHz方式(伝送帯域308kHz〜12,435kHz,電話2,700ch,周波数分割多重)であるが,更に大容量の伝送方式として標準同軸ケーブルを用いる60MHz方式(伝送帯域4,287kHz〜61,160kHz,電話1万800ch,又は1MHzテレビ電話36ch,若しくは4MHzテレビ電話9ch,周波数分割多重)が開発され,49年度には前年度に引き続いて電話伝送とテレビ電話伝送との共用を考慮した方式設計,建設保守上の問題について調査するため,東京・名古屋・大阪間で試験が実施された。本方式については,更に,端局装置,中継装置,テレビ変換装置の長期安定度の確認,長距離・多リンクの映像伝送を行うための伝送路等化方式の検討が計画されている。
 また,長距離伝送に適合する,より経済的な大容量方式として60MHz方式を超える大容量アナログ伝送方式の基礎検討が行われている。
 一方,将来のディジタル網を構成するための方式として,音声,画像,データ信号等の多様な情報を経済的かつ高品質で伝送できる多重度の高いPCM方式が検討され,49年度には標準同軸ケーブルを用いたPCM-100M方式(伝送速度100Mb/s,電話1,440ch,又は4MHzテレビ電話3ch,時分割多重)の実用化のための試験が実施された。
 今後,標準同軸ケーブルを用いて更に多重度を上げたPCM-400M方式(伝送速度400Mb/s,電話5,760ch,又は4MHzテレビ電話12ch,時分割多重)の実用化が見込まれ,中継装置,多重変換装置,伝送路切替制御装置,測定器類の機能や伝送特性及び保守・建設上の問題点について調査するため,大阪・神戸・姫路間で試験が予定されている。
(2) 海底同軸ケーブル方式
 国内通信用海底同軸ケーブルについては,短距離浅海用として,電話900chを伝送する方式(CS-10M方式)及び電話2,700chを伝送する方式(CS-36M方式)が実用の段階にあるが,更に,深海用として,電話2,700chを伝送する大容量長距離海底同軸ケーブル方式(CS-36M方式)の開発が行われており,三浦(長浜)と茨城(阿字ヶ浦)を結ぶ約450kmの伝送路において現場試験が行われている。また,この現場試験の経験を生かし,機器,ケーブルをはじめ布設工法等を含めた総合的な試験が行われている。更に将来の国内通信網に適用するためには,より大きな伝送容量を持つ方式が必要と考えられることから,超広帯域海底ケーブル方式の開発が進められようとしている。
 国際通信用海底同軸ケーブル方式としては,電話1,600ch(3kHz/ch)を伝送するCS-12M方式が開発され,二宮・三浦間に布設された10中継の試験用システムの現場試験が前年度から継続して行われ,順調に動作していることが確認されている。また,日本・中国間海底同軸ケーブルに採用されることになっているCS-5M方式(480ch,4kHz/ch)についても,CS-12M方式の技術を基に,日中間のように浅海部の多い区間での実用化を目的として,中継器,海洋区間の等化器,端局装置等について開発が進められている。
 また,浅海部におけるケーブル保護の面では,ケーブルをその区間埋設することが有効となる場合があり,そのための埋設機及び埋設ケーブル修理のための探線掘削機の開発,更に埋設工法に必要なケーブル布設船の設備に関しての検討が進められるとともに,実験も行われた。
(3) ミリ波導波管伝送方式
 40〜80GHzの周波数帯域を利用し,導波管1条当たり電話約30万ch,又は4MHzテレビ電話約600chの伝送容量を有する大容量ディジタル伝送方式の開発が引き続き進められている。
 本方式は,伝送媒体として直径51mmの円形導波管を使用し,43〜87GHzの間に28システムを得るもので,1システム当たりの伝送速度は,800Mb/s(電話換算1万1,520ch,4相位相変調使用)という大きなものである。また,平均中継距離は約15kmである。
 電電公社の茨城電気通信研究所と水戸電報電話局間約22.7kmに設置された実験回線による現場試験の結果から,中継装置,測定器,導波管の性能と伝送特性,管路及びとう道における導波管の布設,回線の品質と安定度等について多くの成果が得られ,40〜80GHzの全周波数帯において,長距離伝送に必要な回線品質を満足することが明らかとなっている。
 これらの結果を踏まえて,50年度には,導入に当たっての外部条件の検討,導波管布設上必要な特殊導波管の開発と導波管布設の安定度の調査,測定器の開発,システムの信頼性,保守,運用に関する検討等が予定されている。
(4) 光ファイバ伝送方式
 光通信方式は,超大容量伝送方式として脚光を浴びており,現在,発振源である各種レーザや発光ダイオード,伝送媒体としての光ファイバ,変調器,検波器等の研究が活発に行われている。
 光通信方式には,光ファイバ伝送方式と空間を伝搬させる方式があるが,電電公社では,このうち,主として光ファイバ伝送方式の検討が行われている。
 この方式は,低損失であるため中継距離を長くできること,ファイバの直径が細いので大束ケーブルの製造が可能であること,漏話が無視できるほど小さいこと,限りある銅資源を使用しなくても済むことなど多くの特徴を有しており,電電公社でも,将来の超大容量伝送方式に適するものとして積極的に基礎検討を行っており,その実用化が大いに期待されるところである。
 この方式の目標である長距離大容量伝送方式が実現するまでには,半導体レーザの長寿命化,光ファイバの低損失化等なお解決しなければならない問題が残されており,これらについての基礎研究が強力に推進されている。
 

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