授業実践パッケージ(小学校)
4年「音楽/いろいろな音のちがいを感じ取ろう」で行われた授業を紹介します。
- 実施校:仙台市立愛子小学校 4年
- 実践者:石井里枝 教諭
- 監修:稲垣 忠 東北学院大学教養学部准教授
- 単元:いろいろな音のちがいを感じ取ろう *
- 授業時間数:45分
- 学習の概要:音楽のない映像を見ながらBGM効果を考えたり、同じ映像でもBGMにより印象が変わることを体験する。また、自分が伝えたい 「気持ち」を効果的に伝えるためのBGMを考える。
- 本時の目標:
- 同じ映像でも、音楽が変わることによって、見る側の印象が変わることが分かる。
- 自分が伝えたい「気持ちや考え」を、映像と組み合わせて効果的に伝えるための音楽のイメージをもつことができる。
*23年度以降:いろいろな音色を感じ取ろう
- ― 児童が作成した「愛子こどもの森のCM(4枚の写真を繋げた映像。 BGM無し)」を、2種類視聴。
- みんなが普段見ているCMと比べて何が足りないかな。
- 「音が無い」「音がありません」と、次々、子どもたちが回答
- 今日は、自分が伝えたいことは何かを考えながら、「愛子の森のCM」にはどんな音楽があうか考えてみたいと思います。
- ― 「森のCMの写真と組み合わせる音楽のイメージを考えよう」と板書。
- クラス全員で、「森のCMの写真と組み合わせる音楽のイメージを考えよう」と読む
- 今から、女の子が出てくる映像を見るので、何を考えているのか、想像してみて下さい。
- ― 「映像不思議シミュレーター(音楽の不思議)」のBGMが無い女の子の映像を視聴。
- 女の子は何を考えているように見えたかな。
- 「つまんなそう」「おもしろそう」「今日のご飯は何かな」
- 見る人によって、女の子が何を考えているか違いますね。
次は、音楽のある映像を3つ見るので、女の子が何を考えているか紙に書いて下さい。 - ― 音楽A、B、Cの映像の順に視聴。
- Aの音楽の女の子は何を考えてるかな。
- 「悲しいな」「心配だな」
- Aはどんな音楽でしたか。速い感じ?音は高かった?もう一度きくね。
- ― 再度、Aの音楽の映像を視聴。
- 「ゆっくり」「波があった」
- Bの音楽の女の子はどんな感じでしたか。
- 「楽しい」「懐かしいな」「落ち着いている」
- ― 再度Bの音楽を視聴。
- Bはどんな音楽でしたか。楽しい音楽だと思った人。
- たくさんの児童が「楽しい」に手をあげる
- Cの音楽の女の子はどんな感じでしたか。
- 「怖い感じ」「嫌な感じ」「気分が悪い」
- Cはどんな感じの音楽ですか。
- 「不安定」
- 映像と音楽について、みんながわかったことを紙に書いて下さい。
書いたことを発表して下さい。 - 「音楽が違うと、女の子が考えていそうなことが変わる」
- 音楽が変わると、見ている人に伝わることが変わりますね。ということは、「森のCM」にどんな音楽をつけるかによって、相手に伝わることが変わるということです。
- 森のCMにどんな音楽をつけたらいいか紙に書いて下さい。
どんな音楽にしたらよいか思いつかなかったら、速さ、曲の気分、楽器、音色は何かのキーワードを使って考えて下さい。
あなたが伝えたい森のことは何かを振り返って、音楽を考えて下さい。何故その音楽にしたのか理由も考えて。 - 書いたことを発表して下さい。
森はどんなところがいいですか。どんな音楽をつけたらいいですか。
どんな速さがいいですか。楽器は何がいいですか。 - 「森は、緑がたくさんあって虫がくらしやすいところがいい」
「楽しい自然を感じてほしいので、自然の音のような音をつけたい」 - 言葉だけでなく、図で、CMにつけたい音楽を書いてくれた人もいました。
- 次の授業では、森のよさを伝えることをもう一度振り返って、音楽づくりをします。
石井里枝 教諭(仙台市立愛子小学校)
- Q.今日の授業の子どもたちの様子はどうでしたか。
- ◆音楽によって映像の印象が変わるということを、よく理解できた。
- 授業の最初に、これから何が始まるんだろうという期待している様子がみられ、授業中も活発に意見が出ていたので、子どもたちは授業を楽しんでいたと思います。
4年生にとって、「音楽について感じたことを言葉にする」のは初めてのことで、少し難しかったようですが、「音楽によって映像の印象が変わる」ということは、よく理解したようです。
- 授業の最初に、これから何が始まるんだろうという期待している様子がみられ、授業中も活発に意見が出ていたので、子どもたちは授業を楽しんでいたと思います。
- ◆音楽によって映像の印象が変わるということを、よく理解できた。
- Q.授業で工夫されたことは何ですか。
- ◆音楽の特徴を考える時は、2回、視聴させる。
- 映像不思議シミュレーターを使って、音楽の違いによる映像の印象の違いについてワークシートに記入させたとき、1度視聴しただけでは、特徴を掴みきれないので、2回、視聴させるようにしました。
- ◆意見がでない時や、意見が発散する時は、女の子の絵を黒板に貼り、発言の方向付けをする。
- 今日は意見がたくさん出たので、一種類しか使いませんでしたが、音楽によって変化してみえる女の子の表情(楽しそうな表情、悲しそうな表情など)の絵を用意しておき、子どもたちの意見がでない時や意見が発散している時に黒板に貼り、子どもたちの発言の方向付けをするとよいでしょう。
- ◆時間があれば、グループ活動やペア学習を取り入れるとよい。
- CMの音楽を考える時は、時間があれば、グループ活動やペア学習を取り入れるとよいと思います。自分のアイデアについて友達と意見交換をすることで、自分の意思を明確にすることができ、アイデアを練りあげることができるからです。
- ◆事前に、CMで「何を伝えたいのか」を考える時間を設ける。
- 子どもたちは、学校の近くの森を紹介するためのCMづくりをしていて、今日の授業もその一環で行いましたが、CMをつくるためには「何を伝えたいのか」を考えることが重要です。 「音楽の違いで映像の見え方が違う」ということを理解できても、伝えたいことがはっきりしていなければ、学習を生かすことができません。
そのためには、事前に、CMで伝えたいことは何かを考える時間を設けることが必要だと思います。子どもたちは「楽しいことを伝えたい」とよく言いますが、「楽しいってどんなこと?」といろいろ子どもに質問をして、掘り下げてあげることも大切です。
- 子どもたちは、学校の近くの森を紹介するためのCMづくりをしていて、今日の授業もその一環で行いましたが、CMをつくるためには「何を伝えたいのか」を考えることが重要です。 「音楽の違いで映像の見え方が違う」ということを理解できても、伝えたいことがはっきりしていなければ、学習を生かすことができません。
- ◆音楽の特徴を考える時は、2回、視聴させる。
- Q.この学習は、音楽以外でもできますか。
- ◆「総合的な学習時間」でも実施可能。 新しい音楽の教科書の活動にも適している。
- 通常、 4年生の音楽で、「映像と音楽の関係」について学習することはありません。しかし、総合的な学習時間で、映像づくりをしている学校もあるので、その時に、今回のような学習をすることができると思います。
また、新しい音楽の教科書では、「○○の様子を思い浮かべて音楽をつくりましょう」といった活動が盛り込まれているので、そこで、今回の学習をするとよいと思います。
- 通常、 4年生の音楽で、「映像と音楽の関係」について学習することはありません。しかし、総合的な学習時間で、映像づくりをしている学校もあるので、その時に、今回のような学習をすることができると思います。
- ◆「総合的な学習時間」でも実施可能。 新しい音楽の教科書の活動にも適している。
- Q.児童が作った森のCMの映像や、「映像不思議シミュレーター」が無くても、この授業はできますか。
- ◆テレビのCMを使って考えさせることができる。
- 子どもたちが好きなCMを使って、効果音と映像の関係を考えさせることができます。でも、「映像不思議シミュレーター」があれば、授業の準備で苦労しなくても、手軽に音楽と映像の関係について学習できますね。
- ◆テレビのCMを使って考えさせることができる。
- Q.この授業を実施してよかったですか。 よかった点について教えて下さい。
- ◆伝えたいことと音楽の関係を意識するようになった。
- 今日の学習で、日常的にかかわっている音楽をあらためて見つめなおすことができました。こうした学習をしないと、好き勝手に音を作りがちになりますが、授業が終わった時に、「森の音を、映像に重ねて入れたい」と言ってきた子どもがいて、「伝えたいことと音楽の関係」を意識するようになってきたと思います。
ただ、このような学習は、低学年から系統立てて実施したほうがよいと思うので、学習指導要領で、どの学年でどのようなメディアリテラシーの学習をすべきかを示してもらえると、もっと授業がやりやすくなると思います。
- 今日の学習で、日常的にかかわっている音楽をあらためて見つめなおすことができました。こうした学習をしないと、好き勝手に音を作りがちになりますが、授業が終わった時に、「森の音を、映像に重ねて入れたい」と言ってきた子どもがいて、「伝えたいことと音楽の関係」を意識するようになってきたと思います。
- ◆伝えたいことと音楽の関係を意識するようになった。