かつての自給自足が成り立っていた農村社会では、例えば、道路の除雪も協力して行い、子育てや介護は大家族の中で賄われ、電気系統が故障すると村人の誰かが修理してしまうなど、地域における相互扶助・コミュニティが機能していました。
それが工業化の進んだ高度成長期、特に人口が流入した都市部では、育児や介護、道路の除雪などを家族や地域コミュニティだけで担うことができなくなり、その受け皿として行政が役割を拡大することとなりました。
税収が伸びた高度成長期にはそれでも増大する福祉需要に対応するだけの余力がありました。これからの時代、少子高齢化等の社会環境の変化によってますます「公」(※1)の守備範囲が拡大する一方で、厳しい財政状況やいわゆる2007年問題等による経営資源の制約等により行政で対応し得る範囲に限界があることから、従来の行政のやり方だけでは対応できない領域が生じてきています。
これらの直面する課題に対応するためには、地域社会における課題解決に、地域住民がその担い手として参画していくよう、地域コミュニティを再生すること(=「地域社会への住民参画」)と、地方自治体における政策の企画・立案・策定および執行・評価の過程に、地域住民が積極的に参画していくこと(=「地方行政への住民参画」)が不可欠であり、両者がいわば車の両輪として、相互補完的に実現されることにより、「地域における課題解決力」が向上し、地域にふさわしい多様な公共サービスを適切な受益と負担のもとに提供される公共空間が形成され、豊かな「公」を実現することが可能となります。
(※1)
「公」とは、公共サービスや公益活動など、社会全体の利益につながったり、地域住民に共通して必要であるような活動やサービス及びその領域を念頭に置いている。(「日本21世紀ビジョン」(平成17年4月内閣府編)より引用)
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