5 地方交付税算定の改革

(1) 新型交付税の導入

 地方行財政の各分野にわたり、国の法令や補助金等による細かな規則、関与が行われていることに対応して、地方交付税の基準財政需要額の算定方法は複雑なものとなっており、「地方分権推進計画」(平成10年5月29日閣議決定)において「地域の実情に即した地方公共団体の自主的・主体的な財政運営に資する方向で、算定方法の簡素化を進める」とされたほか、累次の基本方針においても算定の簡素化が指摘されていた。このような指摘を受けて、算定項目の統合や補正係数の廃止等が行われてきたが、更なる算定方法の簡素化を図り、交付税の予見可能性を高める観点から、地方分権21世紀ビジョン懇談会における議論を踏まえ、当時の竹中総務大臣が経済財政諮問会議で人口と面積を基本とした簡素な算定を行う新型交付税の導入を提案した。また、「基本方針2006」においても、「地方団体の財政運営に支障が生じないよう必要な措置を講じつつ、簡素な新しい基準による交付税の算定を行うなど見直しを図る」とされたところである。

 これらを踏まえ、平成19年度より「国の基準づけがない、あるいは弱い行政分野」に簡素な新しい基準による基準財政需要額の算定(新型交付税)を導入することとし、第166回通常国会に地方交付税法等の一部を改正する法律案を提出した。

 平成19年度においては、経常経費のうち「企画振興費」及び「その他の諸費」並びに「道路橋りょう費」及び「港湾費」を除く投資的経費を新型交付税に移行することとしており、基準財政需要額の1割程度を新型交付税により算定することとなる見込みである。

 新型交付税の導入により、基準財政需要額の算定項目は、平成18年度の95(都道府県分42、市町村分53)から68(都道府県分32、市町村分36)へと3割減少する。 

 なお、新型交付税の導入に当たっては、過疎団体をはじめ人口が少ない団体ほど人口1人当たり行政コストが割高になること等を反映するとともに、新たに設ける地域振興費において離島や寒冷地における特別な財政需要を適切に算定することなどにより、各地方公共団体の現実の財政運営に支障が生じないよう適切に対処することとしている。

(2) 頑張る地方応援プログラム

 「地方の活力なくして国の活力なし」の観点から、「魅力ある地方」の創出に向けて、地方独自のプロジェクトを自ら考え、前向きに取り組む地方公共団体に対し、地方交付税等の支援措置を新たに講ずる「頑張る地方応援プログラム」が平成19年度から実施されることとなった(地方交付税措置額3,000億円程度(平成19年度2,700億円程度))。

 その基本的枠組みは、地方公共団体が具体的な成果目標を掲げた独自のプロジェクトを策定し、住民に公表するとともに、総務省も地方公共団体のプロジェクトを総務省ホームページ上で一覧的に公表するものであり、地方交付税による主な支援措置としては、市町村が当該プロジェクトに取り組むための経費について所要の特別交付税措置を講じる(平成19年度500億円程度)とともに、都道府県及び市町村に対し、行政改革指標、農業産出額、製造品出荷額等の成果指標を普通交付税の算定に反映させる(平成19年度2,200億円)こととするものである。

 また、その他の支援措置として、政府一体となって地方の活力を高めるため、総務省ホームページ上で公表された地方公共団体のプロジェクトに対して、情報通信関係施策のほか、関係各省(農林水産省、経済産業省、国土交通省)と連携を図り、都市と農山漁村の共生・対流、企業立地促進、観光振興・交流などの施策に関し、補助事業の優先採択等について配慮することとしている。

 このほか、総務省ホームページ上で公表された地方公共団体のプロジェクトをもとに事例集を作成し、全国に普及広報を図るとともに、特に優良な事例に対する表彰や、総務大臣と市町村長等との各都道府県における懇談会、頑張る地方を応援する全国規模のシンポジウムの開催等を行うこととしている。

 これらの取組を通じて、地方分権の推進とともに、知恵と工夫にあふれた地方の実現が期待されるところである。