6 公営企業金融公庫の改革

(1) 行政改革推進法の成立

 政策金融改革については、「基本方針2005」において、「平成14年12月の経済財政諮問会議の「政策金融改革について」に従い、経済財政諮問会議において、本年秋に向けて議論を行い、政策金融のあるべき姿の実現に関する基本方針を取りまとめる」ことが決定され、また、平成17年11月29日には「政策金融改革の基本方針」がとりまとめられた。この中で、公営企業金融公庫については「地方公共団体の共同債券発行機能であり、政策金融スキームで行う必要はなく、撤退する。」「廃止し、資本市場等を活用した仕組みに移行する。」こととされた。これらの議論を経て、同日に政府・与党政策金融改革協議会が開かれ、最終的に、公営企業金融公庫については、「必要な財政基盤を確保する等廃止に向けた一定の移行措置を講ずる」こと等が加えて合意され、政府・与党において「政策金融改革について」が取りまとめられた。

 この「政策金融改革の基本方針」及び政府・与党合意事項については、「行政改革の重要方針」に盛り込まれることとなり、これを反映した「行政改革推進法」においても、公営企業金融公庫関係については第7条において「公営企業金融公庫は、平成20年度において、廃止するものとし、地方公共団体のための資金調達を公営企業金融公庫により行う仕組みは、資本市場からの資金調達その他金融取引を活用して行う仕組みに移行させるものとする。」とされ、第2項において「政府は、前項の移行の後の仕組みのために必要な財政基盤を確保するための措置を講ずるものとする。」とされた。

(2) 政策金融改革に係る制度設計の決定

 行政減量・効率化有識者会議等で「行政改革推進法」成立後の制度設計に向けた議論が行われ、平成18年6月27日に「政策金融改革に係る制度設計」(以下、「制度設計」という。)が決定された。公営企業金融公庫に関する事項としては、基本的な考え方として、「公営企業金融公庫は、平成20年度において、廃止するものとし、廃止後の地方公共団体のための資金調達は、資本市場からの資金調達その他の金融取引を活用して行う仕組みとする。この仕組みのために必要な財政基盤を確保するための措置を講ずる。」「新たな仕組みについては、地方分権も踏まえ、国が担ってきた仕組みから、地方が主体的に担う仕組みに移行させることを基本とする。」「既往の地方公共団体向け貸付債権に係る債券(借換債)について、所要の経過措置を講ずる。」、また、新たな仕組みの在り方として、「地方公共団体は共同して、資金調達のための新組織を自ら設立する。」「同組織は、個々の地方公共団体の資金調達の環境整備を行うとともに、必要に応じて債券発行により資金調達を行い、個々の地方公共団体に貸付けを行う。その際、国は、新たな出資・保証及びヒト・モノ・カネの全ての面における関与を行わない。」「公営企業金融公庫が保有する既往の資産・負債は、デューデリジェンスに基づき適切に同組織に移管・管理する。」「国は、必要な法制度を整備する。」等とされた。

(3) 地方六団体案、現公庫の資産・負債の承継、廃止後の新組織のあり方

 公営企業金融公庫廃止後の新組織については、地方が主体的・自律的に運営を行う組織となることから、政府における検討と並行して、地方六団体の中でも具体的に議論を行うこととなり、全国知事会の中に「公営企業金融公庫改革小委員会」が設置された。この委員会において地方六団体の制度設計案がとりまとめられ、平成18年10月31日に総務大臣に提出された。また、「制度設計」においては、「遅くとも次期通常国会には関連法案を提出する」とされたことから、政府、与党等の様々な場において、公営企業金融公庫廃止後の新組織のあり方および現公庫の資産・負債の承継に関する議論が行われた。この結果、現公庫が保有する債券借換損失引当金(以下「引当金」という。)の承継に関しては、新組織の将来にわたる安定的な経営を確保し、現公庫の既往の債権の適切な管理等を行うものとして、平成20年10月の組織移行時に見込まれる引当金の全額である、概ね3.4兆円程度を承継することとなった。

 また、これらの財務基盤の議論と並行し、公営企業金融公庫廃止後の新組織の在り方についても引き続き検討が深められ、「行政改革推進法」及び「制度設計」を踏まえ、地方公共団体の資本市場からの資金調達を補完し、水道、交通、病院、下水道、公営住宅、臨時地方道等住民生活に密着した社会資本整備に対し、引き続き長期かつ低利の資金融通を行う組織を地方公共団体が自ら設立するものとする「地方公営企業等金融機構法案」を第166回国会に提出したところである。