9 地方公営事業等の状況

(1)地方公営企業

ア 概況

(ア) 事業数[資料編:第114表

 平成21年度末において、地方公営企業を経営している団体数は1,794団体(企業団・一部事務組合等でのみ地方公営企業を経営している4団体及び特別区を含む。)であり、その内訳は47都道府県、18政令指定都市、1,729市町村となっている。

 これらの団体が経営している地方公営企業の事業数は8,903事業で、前年度末と比べると193事業減少している。これを事業別にみると、第93図のとおりであり、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業(簡易水道事業を含む。以下同じ。)、病院事業の順となっている。

(イ) 業務の状況

 地方公営企業は、住民の生活水準の向上を図るうえで大きな役割を果たしている。各事業全体の中で地方公営企業が占める割合は、第25表のとおりである。

 平成21年度における主要な事業の業務の状況についてみると、次のとおりとなっている。

a 水道事業

 水道事業(用水供給事業を除く。)においては、配水能力7,092万9千m3/日、導送配水管72万650kmを有し、年間157億25百万m3(対前年度比1.1%減)の配水を行っている。また、給水人口は1億2,492万9千人で、全国人口に対する割合は96.7%(10年前(平成11年度)は95.2%)であり、着実に上昇している。

b 工業用水道事業

 工業用水道事業においては、配水能力2,167万1千m3/日、導送配水管8,575kmを有し、年間45億49百万m3(対前年度比2.8%減)の配水を行っている。また、契約水量は1,742万8千m3/日(同0.7%減)となっている。

c 都市高速鉄道事業

 都市高速鉄道事業においては、車両4,521両、営業路線536kmを有している。また、年間輸送人員は29億4百万人(対前年度比1.1%減)となっている。

d バス事業

 バス事業においては、車両8,597両、営業路線9,490kmを有している。また、年間輸送人員は9億56百万人(対前年度比5.3%減)であり、近年減少が続いている。

e 病院事業

 病院事業においては、916病院、病床21万6,135床を有している。また、年延患者数は1億5,385万6千人(対前年度比3.8%減)であり、8年連続の減少となっている。

f 下水道事業

 下水道事業においては、現在晴天時処理能力6,175万m3/日、下水管布設延長47万9,928kmを有している。また、年間有収水量(流域下水道分は除く。)は109億18百万m3(対前年度比0.1%増)となっている。

(ウ) 職員数[資料編:第115表

 平成21年度末における地方公営企業に従事する職員の数は35万9,845人で、前年度末と比べると2.4%減となっている。

 これを事業別にみると、第94図のとおりであり、病院事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、下水道事業、交通事業の順となっており、これら4事業で職員数全体の93.4%を占めている。また、行政改革の推進による定員管理の適正化等により、有料道路事業、その他事業以外の事業において職員数は減少している。

(エ) 決算規模等[資料編:第116表

 決算規模は18兆4,594億円で、建設投資や地方財政法第33条の9の規定に基づく公的資金補償金免除繰上償還(以下「補償金免除繰上償還」という。)の減少等により、前年度と比べると1兆8,554億円減少(9.1%減)となっており、普通会計歳出決算額の19.2%(前年度22.6%)に相当する規模となっている。なお、補償金免除繰上償還を除いたベースでは17兆7,677億円となっており、前年度と比べると8,301億円減少(4.5%減)となっている。

 これを事業別にみると、第95図のとおりであり、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、病院事業、水道事業、交通事業の順となっている。

 また、建設投資額の推移は、第96図のとおりであり、平成21年度の額は3兆8,248億円で、前年度と比べると1,777億円減少(4.4%減)となっており、普通会計の普通建設事業費の26.6%(前年度30.8%)に相当する規模となっている。

 これを事業別にみると、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、病院事業、宅地造成事業の順となっている。建設投資額が前年度より減少した主な事業は、下水道事業(対前年度比1,030億円減少、5.1%減)、交通事業(同488億円減少、19.6%減)、宅地造成事業(同378億円減少、14.7%減)となっている。

(オ) 全体の経営状況

 法適用企業と法非適用企業を合わせた全体の経営状況をみると、第26表のとおりであり、黒字事業数は全体の87.6%、赤字事業数は12.4%で、全体としては2,986億円の黒字となっている(前年度1,879億円の黒字)。また、黒字額が増加した主な理由については、職員給与費や支払い利息の減少等に伴い総費用が減少したこと等によるものである。

(カ) 料金収入

 料金収入は8兆9,526億円で、前年度と比べると6,243億円減少(6.5%減)となっている。これを事業別にみると、第97図のとおりであり、病院事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、下水道事業、交通事業の順となっている。

(キ) 企業債の状況

 資本的支出に充当された企業債の発行額の状況は、第98図のとおりであり、発行額は3兆16億円で、前年度と比べると9,409億円減少(23.9%減)となっている。なお、補償金免除繰上償還に係る借換債を除いたベースでは2兆3,686億円となっており、前年度と比べると1,464億円減少(5.8%減)となっている。

 これを事業別にみると、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、病院事業、交通事業の順となっている。

 企業債借入先別現在高の推移は、第99図のとおりであり、平成21年度末の額は54兆9,824億円で、前年度末と比べると1兆5,705億円減少(2.8%減)となっている。これを借入先別にみると、政府資金が最も大きな割合を占め、以下、地方公共団体金融機構、市中銀行の順となっている。

(ク) 他会計繰入金の状況

 他会計からの繰入金は3兆3,685億円で、前年度と比べると564億円減少(1.6%減)となっている。この内訳をみると、収益的収入として2兆1,648億円(収益的収入に対する割合18.0%)、資本的収入として1兆2,037億円(資本的収入に対する割合21.3%)となっている。

 これを事業別にみると、下水道事業への繰入額が最も大きな割合(繰入額全体の55.3%)を占め、以下、病院事業(同22.9%)、水道事業(同7.2%)、交通事業(同5.5%)の順となっている。

(ケ) 法適用企業の経営状況[資料編:第117表

a 損益収支

 法適用企業の経営状況を表すものには、純損益、経常損益、総収支比率、経常収支比率等がある。純損益とは、当該年度の総合的な収支状況を表し、総収益が総費用を上回る場合の差額が純利益であり、逆に総費用が総収益を上回る場合の差額が純損失である。

 経常損益とは、純損益から固定資産売却益等の臨時的な収益(特別利益)や、過年度の職員給与費等の費用(特別損失)を除いたものをいい、当該年度の経営活動の結果を表し、経常収益が経常費用を上回る場合の差額が経常利益であり、逆に経常費用が経常収益を上回る場合の差額が経常損失である。

 総収支比率とは総費用に対する総収益の割合、ここでいう経常収支比率とは経常費用に対する経常収益の割合であり、それぞれ100%を下回ると費用が収益を上回っている状態を意味することになる。

 法適用企業の総収益(経常収益+特別利益)は9兆9,796億円、総費用(経常費用+特別損失)は9兆7,501億円となっている。この結果、純損益は2,295億円の黒字となっており、総収支比率は102.4%と前年度より1.2ポイント増加している。また、経常収益(営業収益+営業外収益)は9兆8,749億円、経常費用(営業費用+営業外費用)は9兆5,761億円となっている。この結果、経常損益は2,988億円の黒字となっており、経常収支比率は103.1%と前年度より1.9ポイント増加している。

 経常収支比率の推移をみると、平成3年度以降100%を下回る状況が続いていたが、平成15年度から7年連続で100%を上回った。なお、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第27表のとおりである。

b 累積欠損金

 過去の年度から通算した純損益における損失の累積額である累積欠損金は5兆1,329億円で、前年度と比べると27億円減少(0.1%減)となっている。また、累積欠損金合計額に占める割合が大きい事業は、交通事業(累積欠損金合計額の43.2%)、病院事業(同42.0%)である。

c 不良債務

 貸借対照表日現在において、流動負債の額が流動資産の額(翌年度へ繰り越される支出の財源充当額を除く。)を上回る場合の当該超過額である不良債務は2,546億円で、前年度と比べると263億円減少(9.4%減)となっている。不良債務の大きい事業は、交通事業(不良債務額全体の61.1%)、病院事業(同19.9%)、下水道事業(同9.4%)である。

d 資本収支

 建設投資や企業債の償還金等の支出である資本的支出は5兆7,821億円で、前年度と比べると6,544億円減少(10.2%減)となっている。これに対する財源は、企業債等の外部資金が3兆1,794億円、損益勘定留保資金等の内部資金が2兆5,012億円、財源不足額は1,014億円となっている。

 資本的支出のうち建設改良費は2兆4,761億円で、前年度と比べると510億円減少(2.0%減)となっている。建設改良費が大きい事業は、水道事業(建設改良費全体の40.0%)、下水道事業(同31.8%)、病院事業(同12.6%)である。

(コ) 法非適用企業の経営状況[資料編:第119表

 法非適用企業の実質収支をみると、黒字事業数は法非適用企業全体の96.7%、赤字事業数は3.3%を占めており、全体では691億円の黒字(前年度600億円の黒字)となっている。

(サ) 経営健全化等の状況

a 工業用水道事業

 工業用水道事業の経営健全化措置については、平成14年度から水利権の転用等を伴う未稼動資産等の整理により抜本的な経営健全化策に取り組む地方公共団体を対象として未稼動資産等整理経営健全化対策を講じたところであり、1団体2施設が取組を行っている(経営健全化団体の指定は平成18年度をもって終了している)。

b 交通事業(地下鉄事業)

 交通事業(地下鉄事業)の経営健全化措置については、計画期間開始年度の前年度末において不良債務(注)を有し、計画期間中に不良債務の増加が見込まれる団体で、かつ、計画期間内に償却前営業収支の額を5%以上向上させることが確実と見込まれる団体のうち、経営健全化計画を策定する団体の中から総務大臣が指定する団体、または、地下鉄事業について「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に基づく経営健全化計画を策定する団体で、かつ、経営健全化計画の期間中に償却前営業収支の額を、当該期間の直前の事業年度の営業収益の1%に計画期間の年数を乗じて得た額を加算した額以上に向上させることが確実と見込まれる団体を対象として、不良債務の計画的な解消及びその発生の抑制を図ることを目的に、平成21年度末現在において4団体が取組を行っている。

(注)「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」附則第9条の規定による改正前の「地方公営企業法」第43条に定める不良債務の額から基準年度において支出予算執行済となった建設改良費の財源に充てられるべき企業債で未借入又は未発行の額を控除した額である。

イ 事業別状況[資料編:第114表第119表

(ア) 水道事業

a 事業数

(a)上水道事業

 地方公共団体が経営する上水道事業で、平成21年度決算対象となるものは、1,366事業であり、このうち、末端給水事業は1,289事業、用水供給事業は77事業(うち建設中8事業)である。これを経営主体別にみると、末端給水事業は、都県営が4事業、政令指定都市営が18事業、市営が691事業、町村営が528事業、企業団営等が48事業であり、用水供給事業は、府県営が23事業、政令指定都市営が1事業、企業団営等が53事業となっている。

(b)簡易水道事業

 地方公共団体が経営する簡易水道事業で、平成21年度決算対象となるものは、809事業(うち法適用21事業)である。これを経営主体別にみると、町村営が503事業で全体の62.2%を占め、以下、市営が297事業、政令指定都市営が5事業、一部事務組合営等が3事業、県営が1事業となっている。

b 経営規模

 水道事業の給水人口(用水供給事業を除く。)は、平成21年度末で1億25百万人(上水道事業1億21百万人、簡易水道事業4百万人)であり、前年度と比べると微増となっている。また、平成21年度の年間総有収水量(用水供給事業を含む。)は187億53百万m3(前年度189億3百万m3)、給水人口1人当たり1日平均有収水量(用水供給事業を除く。)は309l (同313l )となっている。

c 経営状況

(a)法適用企業

(i)損益収支

 上水道事業及び法適用の簡易水道事業の総収益は3兆439億円、総費用は2兆7,873億円となっており、この結果、純損益は2,566億円の黒字(前年度2,613億円の黒字)、総収支比率は109.2%となっている。また、経常収益は3兆375億円、経常費用は2兆7,791億円となっており、この結果、経常損益は2,584億円の黒字、経常収支比率は109.3%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第28表のとおりである。

 累積欠損金は1,233億円で、前年度と比べると2.1%減となっている。また、不良債務は7億円で、前年度と比べると44.6%減となっている。

(ii)資本収支

 資本的支出は、第100図のとおりであり、平成21年度の額は1兆8,919億円で、前年度と比べると15.4%減となっている。これに対する財源は、外部資金が7,579億円、内部資金が1兆1,319億円で、財源不足額は21億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は9,911億円で、前年度と比べると0.6%増、企業債償還金は7,940億円で、前年度と比べると30.0%減となっている。

(iii)給水原価と料金

 有収水量1m3当たりの給水原価(用水供給事業を除く。)は172.79円で、前年度と比べると0.4%減となっている。給水原価の内訳をみると、資本費が64.45円、職員給与費が26.65円、受水費が30.73円、その他の経費が50.96円となっている。これに対して1m3当たりの供給単価は172.16円であり、供給単価が給水原価を0.63円下回る状態となっている。

 また、平成21年度中に料金改定を実施した水道事業(用水供給事業を含む。)は87事業(前年度150事業)で、営業中の事業の6.3%となっている。

(b)法非適用企業

 簡易水道事業における法非適用企業は788事業(うち建設中1事業)で、実質収支をみると、黒字事業が776事業で65億円の黒字、赤字事業が11事業で4億円の赤字となっており、差引61億円の黒字となっている。

(イ) 工業用水道事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営する工業用水道事業で、平成21年度決算対象となるものは、152事業(うち建設中3事業)である。これを経営主体別にみると、都道府県営が41事業、政令指定都市営が8事業、市営が81事業、町村営が14事業、企業団営が8事業となっている。

 施設数は261施設、給水先事業所数は6,166箇所、年間総配水量は45億49百万m3となっている。また、施設利用率(1日平均配水量を現在配水能力で除したもの)の平均は57.5%(前年度59.1%)となっている。

b 経営状況

(a)損益収支

 工業用水道事業の総収益は1,543億円、総費用は1,439億円となっており、この結果、純損益は104億円の黒字(前年度243億円の黒字)、総収支比率は107.2%となっている。また、経常収益は1,519億円、経常費用は1,265億円となっており、この結果、経常損益は254億円の黒字、経常収支比率は120.1%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第29表のとおりである。

 累積欠損金は603億円で、前年度と比べると21.2%増となっている。なお、不良債務を有する事業はない。

(b)資本収支

 資本的支出は1,257億円で、前年度と比べると29.7%減となっている。これに対する財源は、外部資金が502億円、内部資金が750億円で、財源不足額は5億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は374億円で、前年度と比べると17.4%減、企業債償還金は537億円で、前年度と比べると25.2%減となっている。

(c)給水原価と供給単価

 有収水量1m3当たりの給水原価は28.44円(資本費14.80円、職員給与費3.75円、その他の経費9.89円)となっており、これに対して1m3当たりの供給単価は30.52円となっている。

 これを補助事業と単独事業に分けてみると、単独事業では供給単価(14.15円)が給水原価(11.71円)を2.44円上回っており、補助事業では供給単価(34.92円)が給水原価(32.94円)を1.98円上回っている。

(ウ) 交通事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営する交通事業で、平成21年度決算対象となるものは、100事業(うち未開業1事業)である。これを事業別にみると、バスが36事業、都市高速鉄道が10事業、路面電車が5事業、モノレール等が2事業、船舶が47事業となっている。

 これらによる年間輸送人員は39億7,025万人、1日平均1,088万人(対前年度比2.2%減)である。1日平均輸送人員を事業別にみると、バスが262万人(同5.4%減)、都市高速鉄道が796万人(同1.0%減)、路面電車が14万人(同6.7%減)、その他が16万人(同同数)となっている。

 公営交通が国内の旅客輸送機関に占める割合を輸送人員からみると、第101図のとおりであり、バスについては21.4%、鉄道については13.2%となっている。

b 経営状況

(a)法適用企業

(i)損益収支

 法適用の交通事業の総収益は7,868億円、総費用は7,526億円となっており、この結果、純損益は342億円の黒字(前年度203億円の黒字)、総収支比率は104.5%となっている。また、経常収益は7,783億円、経常費用は7,462億円となっており、この結果、経常損益は321億円の黒字、経常収支比率は104.3%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第30表のとおりである。

 累積欠損金は2兆2,158億円で、前年度と比べると0.1%減となっている。また、不良債務は1,556億円で、前年度と比べると5.0%減となっている。

 これを事業別にみると、バス事業においては、経常損益は21億円の赤字となっている。一方、純損益は39億円の黒字となっている。また、累積欠損金は1,432億円で、前年度と比べると1.7%減となっており、不良債務は274億円で、前年度と比べると16.6%減となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第31表のとおりである。

 都市高速鉄道事業においては、経常損益は373億円の黒字となっており、純損益は333億円の黒字となっている。また、累積欠損金は2兆121億円で、前年度と比べると0.2%減となっており、不良債務は863億円で、前年度と比べると3.1%減となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第32表のとおりである。

(ii)資本収支

 資本的支出は6,066億円(うち都市高速鉄道事業5,571億円、バス事業386億円)で、前年度と比べると15.8%減となっている。これに対する財源は、外部資金が3,822億円、内部資金が1,785億円で、財源不足額は459億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1,996億円(うち都市高速鉄道事業1,725億円、バス事業182億円)で、前年度と比べると19.7%減、企業債償還金は3,639億円(うち都市高速鉄道事業3,447億円、バス事業174億円)で、前年度と比べると19.1%減となっている。

(b)法非適用企業

 交通事業における法非適用企業は船舶運航事業の39事業で、実質収支をみると、黒字事業が31事業で3億円の黒字、赤字事業は8事業で4億円の赤字となっている。

(エ) 電気事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営する電気事業で、平成21年度決算対象となるものは、67事業であり、法適用企業が29事業、法非適用企業が38事業である。これを経営主体別にみると、都道府県営が29事業、政令指定都市営が4事業、市営が16事業、町村営が14事業、一部事務組合等営が4事業となっている。施設数は366施設で、最大出力の合計は289万6千kW(建設中を含む。)、年間発電電力量は91億82百万kWh、年間売電電力量は86億34百万kWhとなっている。

 上記のうち稼働中の水力発電施設は295施設、ごみ発電施設は18施設、スーパーごみ発電施設は3施設、ごみ固形燃料発電施設は1施設、風力発電施設は40施設であり、自家消費部分を含む最大出力の合計は水力発電施設で250万kW、ごみ発電施設で16万kW、スーパーごみ発電施設で78千kW、ごみ固形燃料発電施設で12千kW、風力発電施設で101千kW、年間発電電力量は、水力発電施設で80億31百万kWh、ごみ発電施設で6億46百万kWh、スーパーごみ発電施設で2億89百万kWh、ごみ固形燃料発電施設で60百万kWh、風力発電施設で1億56百万kWh、年間売電電力量は、水力発電施設で79億50百万kWh、ごみ発電施設で2億84百万kWh、スーパーごみ発電施設で2億11百万kWh、ごみ固形燃料発電施設で36百万kWh、風力発電施設で1億53百万kWhとなっている。

b 経営状況

(a)法適用企業

(i)損益収支

 法適用の電気事業の総収益は784億円、総費用は706億円となっており、この結果、純損益は78億円の黒字(前年度65億円の黒字)、総収支比率は111.1%となっている。また、経常収益は759億円、経常費用は689億円となっており、この結果、経常損益は70億円の黒字、経常収支比率は110.1%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第33表のとおりである。

 累積欠損金は25億円で、前年度と比較すると54.3%減となっている。なお、不良債務を有する事業はない。

(ii)資本収支

 資本的支出は508億円で、前年度と比べると36.2%増となっている。これに対する財源は、外部資金が104億円、内部資金が405億円で、財源不足額は生じていない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は120億円で前年度に比べると4.2%減、企業債償還金は182億円で、前年度と比べると31.1%増となっている。

(b)法非適用企業

 電気事業における法非適用企業は、ごみ発電事業、スーパーごみ発電事業、風力発電事業及び水力発電事業の38事業で、実質収支をみると38事業全てにおいて黒字であり、黒字額は14億円となっている。

(オ) ガス事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営するガス事業で、平成21年度決算対象となるものは、32事業である。これを経営主体別にみると、政令指定都市営が1事業、市営が23事業、町村営が7事業、企業団営が1事業となっている。公営ガス事業の供給戸数(契約数)は91万戸(前年度94万戸)で、供給区域内戸数に対する普及率は71.4%となっている。また、販売量は369億13百万MJで、前年度と比べると4.1%減となっている。

 ガス事業全体に占める公営ガス事業の割合をみると、事業数で15.2%、供給戸数で3.2%、販売量で2.6%となっている。なお、民間大手4社を除いた割合では、供給戸数で11.2%、販売量で9.6%となっている。

b 経営状況

(a)損益収支

 ガス事業の総収益は914億円、総費用は880億円となっており、この結果、純損益は34億円の黒字(前年度52億円の黒字)、総収支比率は103.9%となっている。また、経常収益は902億円、経常費用は875億円となっており、この結果、経常損益は27億円の黒字、経常収支比率は103.1%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第34表のとおりである。

 累積欠損金は455億円で、前年度と比べると2.8%減となっている。なお、不良債務を有する事業はない。

(b)資本収支

 資本的支出は367億円で、前年度と比べると3.4%減となっている。これに対する財源は、外部資金が49億円、内部資金が318億円で、財源不足額は生じていない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は151億円で、前年度と比べると11.3%減、企業債償還金は159億円で、前年度と比べると0.2%減となっている。

(カ) 病院事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営する病院事業(地方公営企業法を適用する病院事業)で、平成21年度決算対象となるものは、659事業であり、これらの事業が有する病院(以下「自治体病院」という。)数は916病院である。これを経営主体別にみると、都道府県立が188病院(43都道府県)、政令指定都市立が44病院(17政令指定都市)、市立が397病院(326市)、町村立が187病院(180町村)及び一部事務組合等立が100病院(77組合)となっている。

 自治体病院のうち病床数300床以上の病院は、一般病院の33.0%に当たる288病院となっており、地域における基幹病院、中核病院として高度医療の提供を行っている。

 一方、病床数が150床未満であり、直近の一般病院までの移動距離が15キロメートル以上となる位置に所在している等の条件下にある「不採算地区病院」は、一般病院の36.5%に当たる319病院となっており、民間医療機関による診療が期待できない離島、山間地等のへき地における医療の確保のため、重要な役割を果たしている。

 さらに、自治体病院全体の83.4%に当たる764病院が救急病院として告示を受けており、地域の救急医療を担っている。

 平成21年度末における病床数は21万6千床で、前年度と比べると3.3%減となり、入院、外来延患者数は1億5千万人で、3.8%減となっている。

 また、病床利用率は73.6%(前年度73.8%)、外来入院患者比率(年延外来患者数を年延入院患者数で除したもの)は166.6%(前年度166.4%)となっている。なお、全国の病院に占める自治体病院の数及び病床数の推移は、第102図のとおりである。

b 経営状況

(a)損益収支

 病院事業の総収益は3兆9,987億円、総費用は4兆1,056億円となっており、この結果、純損益は1,070億円の赤字(前年度1,817億円の赤字)、総収支比率は97.4%となっている。また、経常収益は3兆9,646億円、経常費用は4兆749億円となっており、この結果、経常損益は1,103億円の赤字、経常収支比率は97.3%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第35表のとおりである。

 累積欠損金は2兆1,571億円で、前年度と比べると1.0%増となっている。また、不良債務は508億円で、前年度と比べると11.8%減となっている。

 また、医業費用に対する医業収益の割合である医業収支比率は89.5%(前年度88.1%)となっており、これを病院の種別にみると、一般病院が90.1%(同88.7%)、結核病院が42.5%(同42.5%)、精神科病院が67.4%(同66.7%)となっている。

(b)資本収支

 資本的支出は6,889億円で、前年度と比べると0.1%減となっている。これに対する財源は、外部資金が4,862億円、内部資金が1,878億円で、財源不足額は149億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は3,125億円で、前年度と比べると7.7%増、企業債償還金は3,446億円で、前年度と比べると2.5%減となっている。

(キ) 下水道事業

a 事業数及び経営規模

 地方公共団体が経営する下水道事業で、平成21年度決算対象となるものは、3,635事業(うち建設中72事業)であり、法適用企業が377事業、法非適用企業が3,258事業である。これを経営主体別にみると、都道府県営が82事業、政令指定都市営が43事業、市営が1,889事業、町村営が1,596事業、一部事務組合等営が25事業となっている。

 下水道事業の平成21年度末における現在処理区域内人口は9,945万人、現在処理区域面積は446万haとなっている。また、年間総処理水量(雨水処理水量と汚水処理水量の合計。ただし、流域下水道分は流域関連公共下水道として水量を計上しているため除く。)は145億66百万m3で、前年度と比べると0.9%減となっている。

b 経営状況

(a)法適用企業

(i)損益収支

 法適用企業の下水道事業の総収益は1兆5,201億円、総費用は1兆4,647億円となっており、この結果、純損益は555億円の黒字(前年度501億円の黒字)、総収支比率は103.8%となっている。また、経常収益は1兆5,138億円、経常費用は1兆4,619億円となっており、この結果、経常損益は519億円の黒字、経常収支比率は103.5%となっている。純損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第36表のとおりである。

 累積欠損金は2,063億円で、前年度と比べると0.8%増となっている。また、不良債務は240億円で、9.6%減となっている。

(ii)資本収支

 資本的支出は1兆9,001億円で、前年度と比べると4.6%減となっている。これに対する財源は、外部資金が1兆2,183億円、内部資金が6,488億円で、財源不足額は330億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は7,866億円で、前年度と比べると1.2%増、企業債償還金は1兆991億円で、前年度と比べると8.7%減となっている。

(b)法非適用企業

 下水道事業における法非適用企業の総収益は1兆5,091億円で、前年度と比べると1.4%減となっている。その内訳をみると、料金収入が6,517億円(総収益に占める割合43.2%)、他会計繰入金(雨水処理負担金を含む。)が6,492億円(同43.0%)等となっている。一方、総費用は1兆934億円で、前年度と比べると5.2%減となっており、うち地方債利息が4,435億円(総費用に占める割合40.6%)となっている。

 資本的支出は2兆3,111億円で、前年度と比べると14.4%減となっている。その内訳をみると、建設改良費は1兆1,122億円で、前年度と比べると9.1%減、地方債償還金は1兆1,924億円で、前年度と比べると18.7%減となっている。

 実質収支をみると、黒字事業が3,122事業で907億円の黒字、赤字事業が67事業で286億円の赤字となっており、差引621億円の黒字となっている(第36表)。

(c)全体の経営状況

 法適用企業と法非適用企業を合計した下水道事業の総収益は3兆292億円、総費用は2兆5,580億円となっており、この結果、全体の収支(法適用企業の純損益と法非適用企業の実質収支の合計)は1,176億円の黒字となっている。このように、全体の収支は黒字となっているが、これは他会計からの繰入れが大きく影響している。

 汚水処理費を年間有収水量で除して算出した汚水処理原価(特定公共下水道及び流域下水道を除く。)についてみると、法適用企業が133.44円/m3(維持管理費58.13円/m3、資本費75.31円/m3)、法非適用企業が192.56円/m3(維持管理費87.21円/m3、資本費105.35円/m3)、全体としては159.84円/m3(維持管理費71.12円/m3、資本費88.72円/m3)となっている。

 汚水処理原価と使用料単価(使用料収入を年間有収水量で除して算出したもの、特定公共下水道及び流域下水道を除く。)の関係をみると、法適用企業の使用料単価は135.10円/m3で、汚水処理原価の101.2%、法非適用企業の使用料単価は135.01円/m3で、汚水処理原価の70.1%、全体の使用料単価は135.06円/m3で、汚水処理原価の84.5%と低い水準となっている。このため、下水道事業の経営健全化のためにも今後使用料水準の適正化を図っていく必要がある。

(ク) その他の地方公営企業

a 事業数

 地方公共団体は、以上の事業のほかにも各種の事業を経営している。これを事業別にみると、平成21年度決算対象となるものは、港湾整備事業が101事業、市場事業が175事業、と畜場事業が74事業、観光施設事業が370事業、宅地造成事業が495事業、有料道路事業が3事業、駐車場整備事業が234事業、介護サービス事業が603事業及びその他事業が42事業(診療所、廃棄物等処理施設、自動車学校等)となっている。

b 経営状況

 その他の地方公営企業の純損益、経常損益、実質収支における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第37表のとおりである。

(2)国民健康保険事業[資料編:第120表

 平成21年度末の国民健康保険事業の保険者は、1,752団体(18政令指定都市、41中核市、41特例市、685都市、939町村、5一部事務組合等、23特別区)で、総保険者数は前年度末と比べると49団体減少している。また、直営診療所を設置している団体は386団体(1政令指定都市、9中核市、11特例市、159都市、204町村、2一部事務組合)で、前年度末と比べると1団体減少している。

 被保険者数は3,573万人であり、加入世帯数は2,037万世帯となっている。これらを前年度末と比べると、被保険者数は28万人減、加入世帯数は2万世帯増となっている。

 なお、退職者医療制度の被保険者数及び被扶養者数は208万人で、前年度末と比べると26万人増加(14.4%増)している。

ア 事業勘定

(ア) 歳入

 事業勘定の歳入決算額は12兆9,337億円で、前年度と比べると1,905億円増加(対前年度比1.5%増)となっている。

 歳入の内訳をみると、第103図のとおりであり、国民健康保険税(料)及び国庫支出金の合計で歳入総額の48.3%を占め、前年度(48.0%)と比べると0.3ポイント上昇となっている。

 それぞれの決算額をみると、国民健康保険税(料)は3兆517億円で、前年度と比べると103億円減少(同0.3%減)、国庫支出金は3兆1,899億円で、前年度と比べると1,289億円増加(同4.2%増)となっている。国庫支出金の主な内訳としては、療養給付費等負担金が2兆4,240億円、財政調整交付金等が7,659億円で、それぞれ前年度と比べると1,025億円増加(同4.4%増)、264億円増加(同3.6%増)となっている。

 また、都道府県支出金は5,693億円で、前年度と比べると170億円増加(同3.1%増)となっている。

 さらに、他会計繰入金は1兆890億円で、前年度と比べると122億円増加(同1.1%増)となっている。この内訳をみると、財源補填的な繰入金が3,097億円(同3.5%減)、国民健康保険の財政基盤の安定を図るための保険基盤安定制度による繰入金が3,871億円(同3.9%増)、高医療費基準超過額に係る繰入金が12億円(同17.8%増)等となっている。

(イ) 歳出

 歳出決算額は12兆8,405億円で、前年度と比べると1,701億円増加(対前年度比1.3%増)となっている。

 歳出の内訳をみると、第104図のとおりであり、保険給付費は8兆5,434億円で、前年度と比べると2,022億円増加(同2.4%増)となっている。

 保険給付費の主な内訳をみると、療養諸費等が8兆3,623億円で、前年度と比べると2,038億円増加(同2.5%増)、その他の給付費が1,534億円で、18億円減少(同1.2%減)となっている。

(ウ) 収支

 実質収支は924億円の黒字(前年度721億円の黒字)であり、昭和40年度以降黒字基調が続いている。しかし、実質収支から財源補填的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支については、3,032億円の赤字(同3,425億円の赤字)となっており、16年連続して赤字となっている。

 再差引収支を団体規模別にみると、政令指定都市が1,755億円の赤字(同1,995億円の赤字)、中核市が502億円の赤字(同537億円の赤字)、特例市が312億円の赤字(同345億円の赤字)、都市が785億円の赤字(同819億円の赤字)となる一方、町村が129億円の黒字(同143億円の黒字)、一部事務組合等が6億円の黒字(同3億円の黒字)、特別区が186億円の黒字(同126億円の黒字)となっている。再差引収支を黒字・赤字の団体別にみると、黒字の団体数は前年度と比べると3団体減少の1,035団体で、その黒字額は122億円増加の1,399億円となっている。

 一方、赤字の団体数は前年度と比べると46団体減少の717団体で、その赤字額は271億円減少の4,431億円となっている。

 赤字の団体が占める割合を団体規模別にみると、政令指定都市が94.4%、中核市が68.3%、特例市が73.2%、都市が48.0%、町村が33.0%、特別区が13.0%となっており、特に政令指定都市、中核市及び特例市においては、厳しい財政運営が続いている。

イ 直診勘定

 直診勘定の歳入決算額は711億円で、前年度と比べると19億円増加(対前年度比2.7%増)となっている。

 このうち、診療収入は454億円で、前年度と比べると11億円減少(同2.4%減)となっており、歳入総額に占める割合は、前年度と比べて3.3ポイント低下の63.8%となっている。一方、他会計繰入金は150億円で、前年度と比べると12億円増加(同8.8%増)となっており、歳入総額に占める割合は、1.2ポイント上昇の21.1%となっている。

 直診勘定の歳出決算額は689億円で、前年度と比べると13億円増加(同1.9%増)となっている。

 このうち、総務費は356億円で、前年度と比べると2億円減少(同0.5%減)となっている。また、医業費は239億円で、前年度と比べると2億円減少(同0.6%減)となっており、歳出総額に占める割合は、0.9ポイント低下の34.7%となっている。なお、医業費の診療収入に対する割合は前年度と比べて0.9ポイント上昇の52.7%となっている。

 実質収支は21億円の黒字(前年度15億円の黒字)となっているが、この実質収支から他会計繰入金を控除し、繰出金を加えた再差引収支は、124億円の赤字(同120億円の赤字)となっている。

(3)後期高齢者医療事業[資料編:第122表

 後期高齢者医療事業では、保険料の徴収や後期高齢者医療連合へ保険料等の納付を行う市町村等(1,748団体(18政令指定都市、41中核市、41特例市、686都市、938町村、1広域連合、23特別区))及び後期高齢者医療事業を実施する都道府県区域ごとの後期高齢者医療広域連合(47団体)に特別会計が設けられている。

ア 市町村

 市町村等の特別会計の歳入決算額は1兆2,110億円となっている。このうち、被保険者が支払う後期高齢者医療保険料は8,594億円で、歳入総額に占める割合は71.0%となっている。

 歳出決算額は1兆1,879億円となっている。このうち、後期高齢者医療広域連合への納付金が、1兆1,117億円で、歳出総額に占める割合は93.6%となっている。

イ 後期高齢者医療広域連合

(ア) 歳入

 後期高齢者医療広域連合の歳入決算額は11兆7,000億円となっている。

 歳入の内訳をみると、第105図のとおりであり、それぞれの決算額をみると、支払基金交付金が4兆7,518億円(歳入に占める割合40.6%)、国庫支出金が3兆6,433億円(同31.1%)、市町村支出金が1兆9,516億円(同16.7%)、都道府県支出金が8,997億円(同7.7%)となっている。

(イ) 歳出

 後期高齢者医療広域連合の歳出決算額は11兆3,979億円となっている。

 歳出の内訳をみると、第106図のとおりであり、保険給付費は11兆403億円で、歳出総額の96.9%を占めている。

 その他については、基金積立金1,424億円、総務費384億円、保健事業費154億円等となっている。

(ウ) 収支

 実質収支は47団体全て黒字となっており、その黒字額は3,021億円となっている。

(4)介護保険事業[資料編:第123表

 介護保険制度を実施する保険者である市町村等が設ける介護保険事業会計は、第1号被保険者(65才以上の者)からの保険料や、第2号被保険者(40才以上65才未満の医療保険加入者)の介護納付金分に係る支払基金からの交付金である支払基金交付金等を財源として保険給付等を行う保険事業勘定と、介護給付の対象となる在宅サービス及び施設サービスを実施する介護サービス事業勘定とに区分される。

 なお、市町村等が実施する指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、老人短期入所施設、老人デイサービスセンター、指定訪問看護ステーションの5施設により介護サービスを提供する事業は介護サービス事業として公営企業会計の対象とされている。

 平成21年度末の介護保険事業の保険者は、1,587団体(18政令指定都市、41中核市、40特例市、632都市、794町村、39一部事務組合等、23特別区)となっている。また、介護サービス事業勘定を設置している団体は798団体(8政令指定都市、15中核市、22特例市、342都市、388町村、9一部事務組合等、14特別区)となっている。

ア 保険事業勘定

(ア) 歳入

 保険事業勘定の歳入決算額は7兆5,587億円となっている。

 歳入の内訳をみると、第107図のとおりである。それぞれの決算額をみると、第1号被保険者が支払う保険料が1兆3,902億円(歳入総額に占める割合18.4%)、介護給付費負担金(介護給付及び予防給付に要する費用の額(以下「介護・予防給付額」という。)の100分の20(施設等給付費にあたっては100分の15)に相当する額)、調整交付金(介護・予防給付額の100分の5に相当する額)等の国庫支出金が1兆6,385億円(同21.7%)、支払基金交付金(第2号被保険者の介護給付金分に係る社会保険診療報酬支払基金からの交付金)が2兆844億円(同27.6%)、都道府県の法定負担(介護・予防給付額の100分の12.5(施設等給付費にあたっては100分の17.5)に相当する額)を含む都道府県支出金が1兆530億円(同13.9%)、市町村の法定負担分(介護・予防給付額の100分の12.5に相当する額)を含む他会計繰入金が1兆1,206億円(同14.8%)、介護保険制度の円滑な導入のために設置された基金等の取崩し額である基金繰入金が800億円(同1.1%)等となっている。

(イ) 歳出

 保険事業勘定の歳出決算額は7兆4,376億円となっている。

 歳出の内訳をみると、第108図のとおりであり、保険給付費は6兆8,836億円で、歳出総額の92.6%を占めている。

 その他については、総務費が2,229億円(歳出総額に占める割合3.0%)、基金積立金809億円(同1.1%)等となっている。

(ウ) 収支

 実質収支は1,203億円の黒字となっており、実質収支から財源補填的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支についても、1,180億円の黒字となっている。

 再差引収支を黒字・赤字の団体別にみると、黒字の団体数は1,564団体で、全団体に占める割合は98.6%となっており、その黒字額は1,202億円となっている。

 一方、赤字の団体数は23団体で、全団体に占める割合は1.4%となっており、その赤字額は21億円となっている。

イ 介護サービス事業勘定

 介護サービス事業勘定の歳入決算額は310億円となっている。このうち、利用者の支払う自己負担金を含むサービス収入は118億円で、歳入総額に占める割合は38.0%となっている。

 普通会計等からの繰入金は172億円で、歳入総額に占める割合は55.5%となっており、このうち、普通会計からのものが158億円となっている。

 歳出決算額は298億円となっている。このうち、サービス事業費が101億円で、歳出総額に占める割合は34.0%となっている。

 また、公債費の元利償還金は、110億円で、歳出総額に占める割合は36.7%となっている。

 なお、実質収支は11億円の黒字となっており、再差引収支は155億円の赤字となっている。

(5)その他の事業

ア 収益事業[資料編:第124表

 収益事業を実施した地方公共団体の数は前年度と同じ延べ299団体となっている。

 これを事業別にみると、公営競技についてはモーターボート競走事業を施行した団体が113団体と最も多く、以下、自転車競走事業61団体、競馬事業53団体、小型自動車競走事業7団体の順となっている。

 また、宝くじは、47都道府県及び18政令指定都市の65団体で発行されている。

 これらを団体種類別にみると、都道府県においては延べ68団体、市町村においては延べ231団体が収益事業を実施している。

(ア) 経営状況

 収益事業の決算額は、歳入3兆1,699億円、歳出3兆1,789億円となっている。これを前年度と比べると歳入は2,488億円減少(対前年度比7.3%減)、歳出は2,452億円減少(同7.2%減)となっている。

 実質上の収支(歳入歳出差引額から翌年度に繰り越すべき財源、他会計からの繰入金、過去の収益を積み立てた基金からの繰入金及び未払金を控除し、他会計への繰出金及び未収金を加えた額)は4,060億円の黒字(前年度4,443億円の黒字)となっている。

 普通会計等への収益金の繰出しについて、事業別にみると、自転車競走事業が60億円(前年度84億円)、小型自動車競走事業が5億円(同4億円)、モーターボート競走事業が115億円(同116億円)、宝くじ事業が4,149億円(同4,404億円)となっている。

(イ) 収益金の使途状況

 収益金の大部分は普通会計等に繰り入れられ、道路、教育施設、社会福祉施設等の整備事業などの財源として活用されている。その繰入額は4,329億円で、前年度と比べると278億円減少(対前年度比6.0%減)となっている。

 収益金繰入額の使途状況を目的別にみると、土木費が1,562億円で最も大きな割合(収益金繰入額に占める割合36.1%)を占め、次いで、教育費の604億円(同14.0%)となっており、これらの費目で繰入総額の50.0%を占めている。

 このほか、民生費が480億円(同11.1%)、衛生費が206億円(同4.8%)、商工費が131億円(同3.0%)等となっている。

イ 共済事業

(ア) 農業共済事業[資料編:第126表

 農業共済事業を実施した市町村の数は70団体で、前年度と比べると1団体減少している。

 農業共済事業会計の決算額は歳入197億円、歳出170億円で、前年度と比べると歳入は17億円増加(対前年度比9.7%増)、歳出は1億円増加(同0.5%増)となっている。

 なお、実質上の収支(歳入歳出差引額から支払準備金積立額、責任準備金積立額、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は、21億円の赤字(前年度45億円の赤字)となっている。

(イ) 交通災害共済事業[資料編:第127表

 直営方式により交通災害共済事業を実施した地方公共団体は100団体(1県、60市町村、39一部事務組合等)で、前年度と比べると6団体減少している。

 また、加入者は平成21年度末で1,106万人(前年度末1,132万人)となっている。

 交通災害共済事業会計の決算額は歳入94億円、歳出81億円で、前年度と比べると歳入は2億円減少(対前年度比2.3%減)、歳出は2億円増加(同2.3%増)となっている。

 なお、実質上の収支(歳入歳出差引額から未経過共済掛金、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は25億円の黒字(前年度23億円の黒字)となっている。

ウ その他

(ア) 老人保健医療事業[資料編:第121表

 老人保健医療事業会計の決算額は、医療制度改革に伴い、平成20年4月から後期高齢者医療制度が施行されたことから、前年度から大幅に減少し、歳入713億円、歳出543億円であり、前年度と比べると歳入は1兆684億円減少(対前年度比93.7%減)、歳出は1兆553億円減少(同95.1%減)となっている。

 実質収支は168億円の黒字(前年度300億円の黒字)となっている。

(イ) 公立大学附属病院事業[資料編:第125表

 公立大学附属病院事業を実施した地方公共団体は1団体である。

 その結果、公立大学附属病院事業会計の決算額は、収益的収支では総収益18億円、総費用19億円となり、前年度と比べると総収益は1億円減少(対前年度比3.3%減)、総費用は1億円減少(同6.6%減)となっている。

 また、資本的収支では資本的収入3億円、資本的支出3億円となり、前年度と比べると、資本的収入は1億円減少(同25.6%減)、資本的支出は微増(同10.6%増)となっている。

 実質収支は1億円の黒字(前年度2億円の黒字)となっている。

(6)第三セクター等

 第三セクター等の状況については、平成22年度の「第三セクター等の状況に関する調査」(平成22年3月31日現在)によると次のとおりである。

ア 第三セクター等の定義

 第三セクター等とは、次の法人をいう。

 (ア)第三セクター

 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律等の規定に基づいて設立されている社団法人、財団法人及び特例民法法人(以下「社団法人・財団法人」という。)のうち、地方公共団体が出資を行っている法人

 会社法の規定に基づいて設立されている株式会社、合名会社、合資会社、合同会社及び特例有限会社(以下「会社法法人」という。)のうち、地方公共団体が出資を行っている法人

 (イ)地方住宅供給公社、地方道路公社及び土地開発公社(以下「地方三公社」という。)

 (ウ)地方独立行政法人

イ 第三セクター等の数

 第三セクター等の数は第38表のとおりであり、法人数の総計は8,618法人で、前年度末(8,729法人)に比べ111法人減少している。

ウ 第三セクター等の経常収支の状況

 第三セクター等のうち、(1)地方公共団体等の出資割合が25%以上の社団法人・財団法人及び会社法法人(2)出資割合が25%未満であるものの財政的支援(注1)を受けている社団法人・財団法人及び会社法法人(3)地方三公社(4)地方独立行政法人の7,351法人から18法人(注2)を除いた7,333法人(以下「経営状況等調査対象法人」という。)の経常収支の状況については第39表のとおりであり、4,868法人(66.4%)が黒字、2,465法人(33.6%)が赤字となっている。

(注1)ここで「財政的支援」とは、補助金、貸付金及び損失補償のことをいう。

(注2)第三セクター等のうち、清算手続中、休眠中、設立後間もない等の理由により財務諸表(損益計算書、収支計算書)が作成されていない18法人については除いている。

エ 第三セクター等の純資産又は正味財産の状況

 経営状況等調査対象法人の純資産又は正味財産の状況は、第40表のとおりである。

 負債が資産を上回っている法人は392法人(5.3%)であり、当該法人の負債が資産を上回っている額の合計は4,360億円となっている。

オ 地方公共団体からの補助金交付額の状況

 経営状況等調査対象法人の地方公共団体からの補助金交付額の状況は、第41表のとおりである。

 地方公共団体から補助金を交付されている法人は、3,188法人(43.5%)であり、交付総額は5,349億円となっている。

カ 地方公共団体からの借入残高の状況

 経営状況等調査対象法人の地方公共団体からの借入残高の状況は、第42表のとおりである。

 地方公共団体からの借入残高を有する法人は982法人(13.4%)であり、借入残高は4兆6,709億円となっている。

キ 損失補償・債務保証の状況

 経営状況等調査対象法人の損失補償・債務保証の状況は、第43表のとおりである。

 地方公共団体以外からの借入残高を有する法人は2,348法人であり、借入残高は10兆4,834億円となっている。また、地方公共団体による損失補償・債務保証が付されている債務残高を有する法人は1,147法人(48.9%)であり、債務残高は6兆9,415億円となっている。