2 地域力の創造と新成長戦略

(1)地域力の創造

 総務省では、活力ある地域社会を形成し、地域主権型社会を構築するため、地域で様々な主体が協働・連携して地域資源を活用し、地域力を高めるための多様な取組を展開できるよう、「地域主権戦略大綱」及び後述する「新成長戦略」を踏まえ、「緑の分権改革」、「定住自立圏構想」の推進及び過疎地域などの条件不利地域の自立・活性化の支援を行っている。

ア 緑の分権改革の推進

 地域においては、少子高齢化・人口減少社会が到来する中にあって、厳しい財政制約の下で、地域主権の確立、低炭素型社会への転換等の改革の推進が強く求められている。

 緑の分権改革とは、それぞれの地域が、森・里・海とそれにはぐくまれるきれいな水などの豊かな資源とそれにより生み出されうる食料やエネルギー、あるいは歴史文化資産の価値等を把握し、最大限活用する仕組みを創り上げていくことによって、地域の活性化、「絆」の再生を図り、「地域から人材、資金が流出する中央集権型の社会構造」から、分散自立・地産地消・低炭素型の「地域の自給力と創富力を高める地域主権型社会」への転換を実現しようとするものである。

 緑の分権改革の推進については、総務省に設置された緑の分権改革推進会議において推進のための課題・対応策等について検討が行われるとともに、地域におけるクリーンエネルギー資源の賦存量調査等及び緑の分権改革のモデルとなりうる先行的・総合的な取組についての調査が進められてきている。「新成長戦略実現2011」(平成23年1月25日閣議決定)では、今後は、これらの成果を踏まえ、さらに検討を深め、実証的で使いやすい改革モデルを取りまとめの上、地方公共団体に示していくこととされた。

イ 定住自立圏構想の推進

 人口減少が急速に進んでいく地方圏においては、安心して暮らせる地域を各地に形成し、地方圏から三大都市圏への人口流出を食い止めるとともに、地方圏への人の流れを創出する必要がある。

 定住自立圏構想は、基礎自治体である市町村の創意工夫により、「中心市」の都市機能及び「周辺市町村」の持つ環境、歴史、文化、食料生産などの特長を有機的に連携させ、全体として魅力あふれる地域を形成していくことを目指すものである。

 平成22年10月に開催された「「定住自立圏」全国市町村長サミット2010 in 南信州」等の様々な機会に、先進的に取り組む団体からその取組内容の報告や取組の方向性についての提言が行われてきている。平成23年1月末現在で、61団体が中心市宣言済み、49圏域(延べ192団体)で定住自立圏形成協定締結又は定住自立圏形成方針策定済み、37団体が定住自立圏共生ビジョン策定済みとなっており、定住自立圏構想は着実な進展をみている。

 今後も、地方公共団体に対する情報提供や所要の地方財政措置、関係各省の補助事業の優先採択等により、定住自立圏構想の取組団体数の更なる増加を見込むとともに、それぞれの定住自立圏での取組が積み重ねられることによって取組内容が充実・深化することが期待される。

ウ 過疎対策の推進

 過疎地域自立促進特別措置法については、平成22年4月1日に「過疎地域自立促進特別措置法の一部を改正する法律」が施行され、失効期限の6年間の延長、過疎地域の要件の追加、過疎対策事業債のソフト事業への拡充及び対象施設の追加などの改正が行われた。

 本改正法に基づき、平成17年国勢調査の結果を過疎地域の要件に追加した結果、58市町村が新たに要件を満たすこととなり、平成22年4月1日現在において、全国の過疎地域市町村数は776市町村となっている。

 過疎地域では、将来の維持が危ぶまれる集落の発生、身近な生活交通の不足、地域医療の危機など、様々な問題に直面しており、こうした過疎地域を取り巻く厳しい現状を踏まえれば、今後は、これまでのハード事業に加え、ソフト事業の重要性がますます高まっていくものと考えられる。

 こうしたことを踏まえ、過疎対策事業債の対象事業については、地域医療の確保、住民に身近な生活交通の確保、集落の維持及び活性化、その他の住民の安心・安全な暮らしの確保を図るためのソフト事業に拡充され、過疎地域の市町村が過疎地域自立促進市町村計画に定める事業で将来にわたり過疎地域の自立促進に資する事業を広く対象としている。なお、ソフト事業への充当は総務省令で定めるところにより算定した額の範囲内に限り発行が認められており、平成22年度の発行限度額総額は約660億円となっている。

 地域の実情に応じた主体的かつ創意工夫に富んだ積極的施策の実施により、総合的かつ計画的な自立促進のための取組が展開されることが期待される。

(2)新成長戦略に基づく経済対策と地域の活性化

ア 新成長戦略

 平成21年12月30日閣議決定された「新成長戦略(基本方針)〜輝きある日本へ〜」をもとに、「成長戦略実行計画」(工程表)を含めた「新成長戦略〜「元気な日本」復活のシナリオ〜」(以下、「新成長戦略」という。)が、平成22年6月18日に閣議決定された。また、新成長戦略に掲げる施策について、2010年にどのような具体の成果が表れたのか、どのような成果が挙がるのか、その実現に当たって何が課題となるのかを、国民に対し明らかにするとともに、成長戦略の基本的な考え方を示すため、「新成長戦略実現2011」が、平成23年1月25日に閣議決定された。

 「新成長戦略」では、「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」を一体的に実現する必要があるとしたうえで、「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略」、「ライフ・イノベーションによる健康大国戦略」、「アジア経済戦略」、「観光立国・地域活性化戦略」、「科学・技術・情報通信立国戦略」、「雇用・人材戦略」、「金融戦略」の7つの戦略分野と21の国家戦略プロジェクトが示され、「観光立国・地域活性化戦略」の具体的な取り組みの中に「緑の分権改革等」「定住自立圏構想の推進等」が盛り込まれることになった。

イ 新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策

 「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策〜円高、デフレへの緊急対応〜」が平成22年9月10日に閣議決定された。同経済対策においては、経済危機対応・地域活性化予備費(以下、「予備費」という。)を活用した緊急的な対応(ステップ1)、その後の景気・雇用の動向を踏まえた補正予算の編成等による機動的対応(ステップ2)、平成23年度における新成長戦略の本格実施(ステップ3)により、時間軸を考慮した「3段構え」の政策展開を行い、デフレ脱却と、景気の自律的回復に向けた道筋を確かなものとしていくことが示された。

 その中で、ステップ1においては、「雇用」、「投資」、「消費」、「地域の防災対策」、「規制・制度改革」を5つの柱と位置づけ、即効性があり、需要・雇用創出効果が高い施策が盛り込まれた。

ウ 円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策

 「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」におけるステップ1の決定以降も、景気を巡る環境の厳しさは増しているとの認識から、先行きの景気・雇用の悪化リスクに対し、先手を打って備えるため、「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策〜新成長戦略実現に向けたステップ2〜」が、平成22年10月8日に閣議決定された。

 同経済対策においては、「雇用・人材育成」、「新成長戦略の推進・加速」、「子育て、医療・介護・福祉等」、「地域活性化、社会資本整備、中小企業対策等」、「規制・制度改革」の5つの柱の下、経済の活性化や国民生活の安定・安心に真に役立つ施策が盛り込まれた。

エ 地域活性化交付金と交付税の増額

 「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を受けて、平成22年10月26日に平成22年度補正予算(第1号)が成立した。同補正予算においては、地方公共団体が地域の実情に応じ、地域の目線に立ったきめ細かな事業等に活用できる「地域活性化交付金」(3,500億円)が盛り込まれた。これは、「きめ細かな交付金」(2,500億円)と「住民生活に光をそそぐ交付金」(1,000億円)からなっており、いずれも、予算は、内閣府に一括して計上された後、各自治体の提出する実施計画の内容に応じて、関係府省に移し替えた上で、地方公共団体に交付を行う仕組みとなっている。

 それぞれの交付金の概要は、以下のとおりである。

(ア) きめ細かな交付金

 観光地における電線地中化等、地域の活性化ニーズに応じて、きめ細かな事業を実施できるよう支援を行うものである。

(イ) 住民生活に光をそそぐ交付金

 これまで住民生活にとって大事な分野でありながら、光が十分に当てられてこなかった分野に対する地方の取組を支援するものである。使途としては、地方消費者行政、DV対策・自殺予防等の弱者対策・自立支援、図書館など知の地域づくりなどの分野の取組のために利用される。

 また、同補正予算において、平成21年度一般会計決算において地方交付税の財源として留保された未繰入額、及び平成22年度の国税収入の増額補正に伴う地方交付税法定率分増加額(計1.3兆円)について、交付税及び譲与税配付金特別会計に繰入れを行うこととし、そのうちの0.3兆円については、平成22年度に地方公共団体に交付することとなった。