3 行財政改革

(1)給与の適正化及び適正な定員管理の推進

 各地方公共団体においては、厳しい財政状況や地域経済の状況等を背景に、簡素で効率的な行財政システムを構築するとともに、自らの行財政運営について透明性を高め、公共サービスの質の維持向上に努めるため、給与の適正化、適正な定員管理の推進など積極的な行政改革に取り組んできた。

 給与については、国の給与構造改革の取組を踏まえ、ほぼ全ての地方公共団体で給料表水準の引下げ等の改革を実施しており、地方公共団体の給料水準は、平成16年から7年連続で国の水準を下回った(平成22年4月1日現在のラスパイレス指数98.8)。

 定員管理については、第51表のとおり、平成17年4月1日から平成22年4月1日までの5年間で、都道府県5.3%減、政令指定都市10.6%減、政令指定都市を除く市区町村9.9%減となっており、全地方公共団体では7.5%の減少となった。

(2)地方公営企業等の改革

ア 地方公営企業の抜本改革の推進

 地方公営企業が、将来にわたり本来の目的である公共サービスの供給を行っていくためには、経営環境の変化に適切に対応し、事業のあり方を絶えず見直していくことが求められており、地方公共団体に対しては、下記に掲げる事項等について取組が進められているところである。

(ア) 地方公営企業が供給しているサービス自体の必要性を検討する。また、サービスが必要な場合であっても、地方公営企業として実施する必要性があるのかを検討し、公共性の確保等の意義が薄れているなどの場合は、民間への事業譲渡を検討する。

(イ) 地方公営企業として事業を継続する場合であっても、公の施設の指定管理者制度、地方独立行政法人制度、PFI事業、民間委託等の民間的経営手法の導入を促進する。

 第120図に示されるように、平成22年度の民営化・民間譲渡事業数は20事業、平成18年度から平成22年度の間で115事業となっている。主なものとしては、介護サービス事業(57事業)、病院事業(18事業)、観光施設事業・その他事業(11事業)が挙げられる。一方、指定管理者制度については、第121図に示されるように、平成22年度時点での導入済事業数は618事業(都道府県・政令指定都市等95事業、市町村等523事業)となっており、第122図に示されるように、主なものは、介護サービス事業(180事業)、観光施設事業・その他事業(132事業)、駐車場整備事業(131事業)が挙げられる。

 なお、総務省では、健全化法が施行されたこと等を踏まえ、全ての地方公共団体に対し、平成25年度までに、地方公営企業の抜本改革の推進、一層の経営の健全化等に集中的に取り組むことを要請している。

イ 第三セクター等の抜本的改革の推進

(ア) 第三セクター等の抜本的改革

 平成22年度の「第三セクター等の状況に関する調査」によれば、第52表のとおり、地方公社及び第三セクターの数は8,556法人で、前年比129法人減となっている。なお、平成21年度においては、廃止が163件、統合が23件、出資引き揚げが23件行われている。

 地方公社及び地方公共団体等の出資割合が25%以上又は財政支援を受けている第三セクターのうち、約34%が赤字であり、平成21年度に法的整理を申し立てた法人は12となるなど、依然として厳しい経営状況にある。うち、土地開発公社については、平成21年度末における土地保有総額は第123図に示されるように、前年度と比べると4,639億円減の3兆2,350億円となり、13年連続の減少となった。

 地方公共団体が損失補償等を行っている第三セクター等に係る債務については、民間企業と同様の市場規律やガバナンスが働かないケースも多くあり、その経営状況が著しく悪化した場合は、地方公共団体の財政に深刻な影響を及ぼすことが予想される。このため、地方公共団体が自らの決定と責任の下、第三セクター等の抜本的改革を推進し、財政規律の強化に資することが重要である。

 総務省では、地方公共団体に対し、地方公営企業、地方公社及び第三セクターの事業の意義、採算性等について、改めて検討の上で、事業継続の是非を判断し、債務調整を伴う処理が必要な場合は、法的整理等の活用を図るとともに、事業を継続する場合でも、最適な事業手法の選択、民間的経営手法の導入の検討を行うなど、第三セクター等改革推進債の活用も念頭に置きつつ、存廃を含めた抜本的改革に集中的かつ積極的に取り組むことを助言している。

(イ) 第三セクター等改革推進債の状況

 地方公営企業、地方公社及び第三セクターの改革については、地方公共団体が健全化法の全面施行から5年度間で抜本的改革を集中的に行えるよう、平成21年度から平成25年度までの間の時限措置として、その整理又は再生のために特に必要となる一定の経費を議会の議決等の手続を経て地方債の対象とできることとされている。

 平成21年度において第三セクター等改革推進債を起債した団体は11団体であり、許可額は384億円となっている。

ウ 地方公営企業会計制度等の見直し

 地方公営企業の会計制度については、昭和27年の地方公営企業法施行以来、発生主義の考え方に立った複式簿記による会計を導入することにより、企業性を発揮する環境の整備に留意しつつも、企業債等を借入資本金として資本に位置付けるなど、地方公営企業独自の仕組みがとられてきた。

 一方、企業会計においては、経済のグローバル化を踏まえ、会計ビッグバンと呼ばれる大幅な会計基準の見直しが行われ、連結財務諸表重視への転換、時価評価主義の導入、キャッシュ・フロー計算書の導入、研究開発費の費用処理、退職給付に係る会計基準の導入、減損会計の導入等がなされた。

 こうした中で、地方公営企業会計と企業会計との制度上の違いが近年大きくなっており、相互の比較分析を容易にするためにも企業会計制度との整合を図る必要が生じている。

 そのような状況等を踏まえ、総務省においては、「地方公営企業会計制度等研究会」を設置し、地方公営企業会計の今後のあり方等について検討を行ってきたが、平成21年12月24日、同研究会の報告がとりまとめられた。

 この報告を受け、まず、法定積立金の積立義務の廃止など、資本制度の見直しについては、地方公営企業経営の自由度の向上を図るという観点から、第174回国会に提出された「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」に地方公営企業法の一部改正が盛り込まれており、継続審議となっているところである。

 また、地方公営企業会計基準の見直しについては、報告において、借入資本金を負債に計上すること、みなし償却制度を廃止するとともに、償却資産の取得に伴い交付される補助金、一般会計負担金等について「長期前受金(仮称)」として負債に計上すること、退職給付引当金の引当てを義務化すること等、多岐に渡る見直しが提言されたところであり、今後、これらに沿った見直しの検討が進められる予定である。

 さらに、地方公営企業法の財務規定等の適用範囲の拡大については、提言を踏まえ、今後、更に検討を深めていくこととされている。

(3)地方公会計改革の推進

 現金主義では見えにくい費用や資産に関する財務情報の開示といった観点から、発生主義を活用し複式簿記の考え方を導入した公会計の整備は重要な課題である。

 近年の公会計整備において、総務省は、平成18年5月に地方公共団体が参考とすべき財務書類のモデルとして「基準モデル」と「総務省方式改訂モデル」を提示し、平成19年10月には、2つのモデルを活用した財務書類を作成する場合に必要となる資産評価の要領や連結の原則、仕訳例等を公表するとともに、健全化法の本格施行により、財政健全化計画等の策定が義務付けられたことを踏まえ、全ての地方公共団体に対して平成21年度までに連結財務書類4表の整備を要請してきたところである。

 さらに、平成20年6月には、「地方公会計の整備促進に関するワーキンググループ」を開催し、中小規模の団体でも円滑に財務書類の整備を進めることが出来るよう、実務上の課題となっている事項に対する解決方策の検討や財務書類の作成のより詳細な手順などの検討を行い、「新地方公会計モデルにおける資産評価実務手引」や「新地方公会計モデルにおける連結財務書類作成実務手引」、「地方公共団体における財務書類の活用と公表について」などの各種手引書を、順次とりまとめ・公表してきたところである。

 これらの取組もあり、平成22年3月末時点での財務書類の整備状況は、第53表のとおり、全国の9割以上の団体が財務書類の作成に着手済み、うち8割以上の団体が2つのモデルを活用している結果となり、着実に整備が進められている。

 このような状況下、今後更に新地方公会計を推進するため、平成22年9月に、「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」を開催し、作成依頼から3年が経過した財務書類の作成についての検証や国際公会計基準及び国の公会計等の動向を踏まえた新地方公会計の推進方策などについて検討しているところである。

 地方公会計は、住民等に対する情報開示や財政の効率化・適正化を一層進める観点から、全ての団体において連結財務書類4表を早期に整備するとともに、必要な分析や説明を加えた分かりやすい公表や内部管理への活用にも配慮することが重要である。