2 東日本大震災への対応

(1)東日本大震災の発生

ア 東日本大震災

 平成23年3月11日14時46分、三陸沖の深さ24kmを震源として、我が国観測史上最大のマグニチュード9.0の地震が発生した。この地震(「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」)により宮城県栗原市で震度7を観測したほか、東日本の広い範囲で強い揺れを観測した。今回の地震は、地震による直接の被害に加え、海溝型で非常に大規模なものであったため、地震に伴い発生した津波の規模も非常に大きく、北海道から沖縄にかけての太平洋沿岸で高い津波が観測され、特に東北地方から関東地方の太平洋沿岸で甚大な人的・物的被害が発生した。

 さらに3月11日、東京電力福島第一原子力発電所は、地震により外部電源が喪失し、あわせて1号機から5号機までは津波により全交流電源喪失となった。そのため冷却機能を失った1号機と3号機において、それぞれの原子炉建屋で爆発が発生し、大量の放射性物質が環境に放出された。

 政府は、東北地方太平洋沖地震による災害及びこれに伴う原子力発電所事故による災害について、「東日本大震災」と呼称することとした(平成23年4月1日閣議了解)。今回の東日本大震災は、死者16,140人、行方不明者3,123人、住宅被害(全壊)128,582棟(平成24年2月11日時点、総務省消防庁発表)に及ぶなど、極めて大規模なものであるとともに、地震、津波、原子力発電所の事故による複合的なものであり、かつ、影響が広く全国に及ぶものであった。

イ 発生後の対応

(ア)応急対応

 政府においては、平成23年3月11日に「災害対策基本法」(昭和36年法律第223号)に基づき緊急災害対策本部が、また、「原子力災害対策特別措置法」(平成11年法律第156号)に基づき原子力災害対策本部が、いずれも法律制定以来はじめて設置された(本部長:いずれも内閣総理大臣)。

 3月12日には、「東北地方太平洋沖地震による災害」について全国を対象とする激甚災害に指定するとともに、自衛隊の災害派遣部隊、警察の広域緊急援助隊、緊急消防援助隊、海上保安庁の部隊、及び災害派遣医療チーム等によるかつてない規模での救援・支援活動及び原発事故への対応等が実施された。

 また、これにあわせて、被災した地方公共団体に各府省から国家公務員が派遣されるとともに、全国の都道府県・市町村からも職員が派遣され支援業務に当たった。

(イ)財政上の対応

a 災害救助・災害廃棄物処理関係

 災害救助・応急対策については、「災害対策基本法」、「災害救助法」(昭和22年法律第118号)等に基づき対応されるが、今回の災害は被害が極めて甚大でありこれらの事業に多額の地方負担が生じること、また、特に大きな被害を受けた地方公共団体においては財政基盤の脆弱な団体が多いことから、その財政運営に支障が生じないよう、以下のような措置の拡充が図られた。

(a)災害救助関係

 災害救助関係では、「災害救助法」で国庫負担される経費について、避難所の設置、応急仮設住宅供与、炊き出し等食料品・飲料水の給与などのほか、避難所として民間の旅館等を借り上げることや応急仮設住宅として民間賃貸住宅を借り上げることなどについて、特別基準が設定され、「災害救助法」の弾力運用が行われることとなった。これら都道府県が支弁した災害救助費に対する国庫負担の地方負担分については、その全額を災害対策債により対処することとし、元利償還金の95%を普通交付税により措置することとした。

 また、東日本大震災の被災者の受け入れを行った地方公共団体に対しては、被災地方公共団体からの要請の有無にかかわらず、受け入れに要する経費について、「災害救助法」に基づき被災団体が負担するものを除いて、所要の特別交付税措置を講ずること、職員の派遣に要する経費やそれに付随する物資の応援等に要する経費についても所要の特別交付税措置を講ずることとした。

(b)災害廃棄物処理関係

 大規模な津波により膨大な災害廃棄物(ガレキ)が発生したことに鑑み、その処理については、一律1/2である通常の国庫負担率を、特例として標準税収入に対する事業費の割合に応じて9/10まで嵩上げするとともに、地方負担分については、その全額を災害対策債により対処することとし、後述する「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号)に定める特定被災区域内の市町村については、後年度その元利償還金の95%を普通交付税により措置するとともに、残余の5%を特別交付税により措置することにより、元利償還金の全額について交付税措置することとした。

 なお、平成23年8月18日に公布・施行された「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法」(平成23年法律第99号)により、国によるガレキ処理の代行制度が創設されるとともに、地域グリーンニューディール基金の活用により国庫負担率を平均95%まで引き上げることとされた。

b 地方交付税関係

 平成23年3月31日に成立した「地方交付税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第5号)により、地方公共団体の財政運営において特に著しい影響を及ぼすおそれのある大規模災害等が発生した場合は、12月又は3月とされている決定・交付とは別に、特別交付税の額を決定・交付することができることとした。東日本大震災においては、この特別交付税の特例交付制度を活用し、4月8日及び9月20日の2回にわたり、計2,150億円の特例交付を実施した。

 また、普通交付税についても、被災団体に対し、その資金繰りを円滑にするため、重ねて繰上げ交付を行った。

(2)平成23年度補正予算(第1号及び第2号)

ア 補正予算(第1号)

 東日本大震災からの早期復旧に向けて編成された、平成23年度補正予算(第1号)は、平成23年4月22日に閣議決定、4月28日に国会に提出され、5月2日に成立した。

 同補正予算においては、東日本大震災からの早期復旧に向け、年度内に必要と見込まれる経費を計上し、歳出面で、災害救助等関係経費、災害廃棄物処理事業費、災害対応公共事業関係費など東日本大震災関係経費4兆153億円等を計上し、その他、既定経費の減額3兆7,102億円等を計上している。また、歳入面で、税外収入3,051億円を増額計上している。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成23年度当初予算に対し、3,051億円増加し92兆7,167億円となった。

イ 「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」

 補正予算(第1号)とともに、東日本大震災に対処するため、地方公共団体等に対する特別の財政援助等について定める「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律案」が国会に提出され、平成23年5月2日に成立した(以下「東日本大震災財特法」という)。

 「東日本大震災財特法」においては、東日本大震災では大規模な地震・津波による被害が甚大かつ広範囲に及んでおり、また、被災した地方公共団体の財政基盤が総じて脆弱であることなどを踏まえ、対象となる地方公共団体について、災害の外形的規模(地震の震度、津波の観測値)、その段階で把握されている被害(住宅の損壊状況)等をもとに対象区域を設定するなど、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(昭和37年法律第150号)等の指定基準に比べ、より広い範囲の地方公共団体が特定被災地方公共団体等として指定されるとともに、集落排水施設、被災市町村の臨時庁舎等国庫補助対象となる事業が拡大されることとなった。

 「東日本大震災財特法」のうち地方財政に関係するものの概要は次のとおりである。

(ア)特定被災地方公共団体等に対する補助等

 大地震又は大津波により甚大な被害を被った特定被災地方公共団体(青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、新潟県及び長野県並びに東日本大震災による被害を受けた市町村で政令で定めるもの)等に対し、以下のとおり国による特別の補助等を行うこととした。

a 「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」における特別の財政援助等の規定を特定被災地方公共団体に適用すること。

b 上記aのほか、公共土木等、社会福祉施設等、公共施設等の施設の災害復旧事業等に対する補助等を行うこと。

(イ)地方債の特例等

 地方債の特例等として、以下のとおり歳入欠かん等債を発行できること等とした。

a 「東日本大震災財特法」第8条関係

 以下の場合において、東日本大震災による被害を受けた地方公共団体でその区域の全部又は一部が特定被災区域(東日本大震災に際し「災害救助法」が適用された市町村のうち政令で定めるもの及びこれに準ずる市町村として政令で定めるものの区域)内にあるもの(以下「特定被災区域団体」という。)は、平成23年度及び平成24年度以降の年度であって政令で定める年度に限り、「地方財政法」第5条及び「災害対策基本法」第102条の規定にかかわらず、地方債をもってその財源とすることができることとした。

b 「東日本大震災財特法」第9条関係

 東日本大震災の被災者等を支援するため、津波により甚大な被害を受けた区域内の土地及び家屋に対する平成23年度分の固定資産税等の課税免除等の措置をはじめ、個人住民税、不動産取得税などにおいて特例措置を講じることとした「地方税法の一部を改正する法律案」が、4月27日に成立した(平成23年法律第30号)。また、「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律案」についても同日成立した(平成23年法律第29号)。

 これらの施行による地方税等に係る平成23年度の減収額等を埋めるため、「地方財政法」第5条の規定にかかわらず、同年度の減収額を勘案して総務省令で定めるところにより算定した額の範囲内で、地方債を起こすことができることとするとともに、同年度分の地方交付税に限り、減収見込額の75%を基準財政収入額に加算することとした。

ウ 補正予算(第1号)に係る地方財政措置

 補正予算(第1号)においては、東日本大震災関係経費の追加に伴う地方負担が生じること、また、東日本大震災により被害を受けた地方公共団体等において地方税等の減収が見込まれることから、これらに関連して次のとおり財政措置を講じることとした。

(ア)特別交付税の増額

 東日本大震災による被害状況は極めて甚大であり、補正予算(第1号)に係る災害弔慰金の地方負担額、行政機能の維持や被災者支援に係る応急対応経費及び被災地域の応援に要する経費等について多額の経費が見込まれることから、これらの特別の財政需要に対応するため、平成23年度分の地方交付税の総額に1,200億円を加算し、その全額を特例として特別交付税とする措置を講じることとした。

 以上の措置を講じるための、「平成23年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律案」が平成23年5月2日に成立した(平成23年法律第41号)。

(イ)追加の財政需要等に係る財政措置

 補正予算(第1号)により平成23年度に追加される災害復旧事業等の投資的経費に係る地方負担額等については、地方負担額の100%まで地方債(災害復旧事業債及び補正予算債)を充当できることとし、後年度においてその元利償還金について地方交付税により措置することとした。

(ウ)地方公営企業に係る財政措置

 東日本大震災に係る地方公営企業の災害復旧事業については、「東日本大震災財特法」等により国の特別の補助等を行うこととされたが、これに併せて、当該施設の早期復旧を図るとともに企業経営の安定を図るため、東日本大震災に係る一般会計からの繰出基準の特例を設けることとし、当該繰出金について災害復旧事業債を充当できることとした。具体的には、通常の建設改良について一般会計で負担することとされている部分に、残余の部分の1/2を加え、復旧事業に係る企業負担が当該地方公営企業の収益に比し1/2を超える場合は、さらに嵩上げを行った額を加えたものを一般会計からの繰出し対象としている。

 また、東日本大震災により被害を受けた地方公営企業における資金不足額については、資金手当のための公営企業債を充当できることとするとともに、これに係る利子の1/2の額に一般会計からの繰出しを認め、当該繰出金について特別交付税を措置することとした。

エ 補正予算(第2号)

(ア)主な内容

 平成23年度補正予算(第2号)は、平成23年7月5日に閣議決定、7月15日に国会に提出され、7月25日に成立した。

 同補正予算においては、歳出面で、東日本大震災の当面の復旧対策に万全を期すため、原子力損害賠償法等関係経費2,754億円、被災者支援関係経費3,774億円、東日本大震災復旧・復興予備費8,000億円、地方交付税交付金5,455億円等を追加計上している。また、歳入面で、前年度剰余金受け入れ1兆9,988億円を追加計上している。

 この結果、一般会計予算の規模は歳入歳出とも平成23年度の補正予算(第1号)による補正後予算に対し、1兆9,988億円増加し、94兆7,155億円となった。

(イ)被災者生活再建支援法の特例措置

 「被災者生活再建支援法」(平成10年法律第66号)に基づく被災者生活再建支援制度は、大規模な自然災害により一定規模の住宅全壊被害が発生した場合に、住宅の被害程度と再建方法に応じて、一世帯あたりで最大300万円を支給する制度であるが、東日本大震災による甚大な住宅被害の発生により、被災者生活再建支援金の支給に必要な資金の大幅な不足が見込まれることとなった。そのため1/2である国の補助率について、東日本大震災に限り、補正予算(第1号)の時点において確保されている分にさかのぼって8/10とする特例措置を設けることとして、これについては「東日本大震災財特法」の一部改正により対処することとされた。必要とされる総支給見込額(4,400億円)に係る国の負担分のうち、同補正予算で計上済みの額(520億円)を控除した3,000億円が補正予算(第2号)に計上された。

オ 補正予算(第2号)に係る地方財政措置等

 補正予算(第2号)においては、平成22年度の国税決算に伴う剰余金の法定率分の地方交付税の増が見込まれるとともに、歳出の追加に伴う地方負担が生じることなどから、これらに関連して次のとおり地方財政措置を講じることとした。

(ア)地方交付税の追加等

 平成23年度分の地方交付税の増5,455億円(平成22年度清算分)については、補正予算(第1号)による補正後の予算における普通交付税の総額と「地方交付税法」第10条第2項本文の規定による普通交付税の算定額の合計額との差額分を除き、同法第6条の3第1項の規定に基づき、同補正予算による補正後の特別交付税総額に加算(4,571億円)された。なお、この加算額は10月26日に行った普通交付税の再算定の結果、4,573億円となった。

(イ)追加の財政需要等に対する財政措置

a 補正予算(第2号)により追加される災害復旧事業等の投資的経費に係る地方負担額については、地方負担額の100%まで地方債(補助災害復旧事業債及び補正予算債)を充当できることとし、後年度においてその元利償還金について地方交付税により措置することとした。

b 補正予算(第2号)により平成23年度に追加される「被災者生活再建支援法」第9条第2項の規定に基づく、被災者生活再建支援基金への都道府県の追加拠出については、特別交付税によりその全額を措置するとともに、支給所要額の確定に伴う同基金への積戻しに係る拠出についても、その95%を特別交付税により措置することとした。また、地方債の対象とならない経費については、特別交付税により適切に対処することとした。

 なお、原子力事故による災害に対処するため、「東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に対処するための地方税法及び東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の一部を改正する法律」が8月5日に成立し(平成23年法律第96号)、固定資産税及び都市計画税の課税免除等の措置並びに不動産取得税、自動車取得税、自動車税等に係る特例措置を講ずることとし、あわせて、これらの措置による減収額についても、前述した「東日本大震災財特法」第9条を適用することとした。

(3)復興の基本方針と復興財源の確保

ア 東日本大震災復興構想会議

 平成23年4月11日に「東日本大震災復興構想会議の開催について」が閣議決定され、有識者からなる東日本大震災復興構想会議を開催し、復興に向けた指針策定のための復興構想について幅広く議論を行うこととし、会議の議論の結果を、復興に関する指針等に反映させるものとされた。精力的な検討の結果、6月25日に「復興への提言〜悲惨の中の希望〜」がとりまとめられた。

 このなかで、津波災害に強い地域づくりを推進するにあたっての基本となる新たな一般的制度の創設、使い勝手のよい自由度の高い交付金の仕組みが必要であること、現行制度の隙間を埋めて必要な事業の柔軟な実施を可能とする基金の設立を検討するべきこと、が提示されるとともに、復旧・復興のための財源について「財源の議論なくして復興は語れないし、復興の姿なくして財源の議論も語れない」の考えを基本とし、「国・地方の復興需要が高まる間の臨時財政措置として、基幹税を中心に多角的な検討をすみやかに行い、具体的な措置を講ずるべきである」こと、「地方の復興財源についても、上記の臨時増税措置などにおいて確実に確保するべきである。そのなかで、被災地以外の地方公共団体の負担にいたずらに影響を及ぼすことがないよう、地方交付税の増額などにより確実に財源の手当てを行うべきである」こと、などが提示された。

イ 「東日本大震災復興基本法」

 平成23年6月20日「東日本大震災復興基本法」が成立した(平成23年法律第76号)。この法律は、東日本大震災からの復興についての基本理念、復興のための資金の確保、復興特別区域制度の整備等とともに、東日本大震災復興対策本部及び復興庁の設置に関する基本方針を定めている。復興のための資金の確保等については、以下のとおり規定されている。

ウ 「東日本大震災からの復興の基本方針」

 平成23年7月29日、「東日本大震災復興基本法」第3条に基づき、「東日本大震災からの復興の基本方針」が、東日本大震災復興対策本部(本部長:内閣総理大臣)において決定された。同方針は、東日本大震災からの復興に向けた国による復興のための取組の基本方針であり、また、被災した地方公共団体による復興計画等の作成に資するため、国による復興のための取組の全体像を明らかにするものとされた。本方針においては、

等が決定された。

エ 復興財源等の確保

 「東日本大震災からの復興の基本方針」を踏まえ、歳出削減、税外収入及び時限的な税制措置による復興財源の確保策について検討が進められ、平成23年10月7日、東日本大震災復興対策本部において、補正予算(第3号)の骨格及び復興財源としての税制措置概要等が決定されるとともに、「平成23年度第3次補正予算及び復興財源の基本的方針」が閣議決定された。本方針においては、

等が決定された。

 以上により、集中復興期間中に実施すると見込まれる施策・事業の事業規模19兆円程度に充てる財源は、平成23年度補正予算(第1号)等及び補正予算(第2号)における財源(6兆円程度)、歳出削減及び税外収入の確保(5兆円程度)並びに時限的な税制措置(8兆円程度)とされた。

 これに、年金臨時財源の補てん分(2.5兆円程度)及びB型肝炎対策のための財源(0.7兆円程度)を加えた11.2兆円程度(なお、10年間トータルの税外収入等は段階を経て7兆円になり、結果として増税額は9.2兆円となる)について、時限的な税制措置により確保することとされた。そのうち、全国の地方公共団体で行われることが予定されている緊急防災・減災事業の地方負担分0.8兆円程度(推計)については、地方税において税制上の措置を講じることとされた。

 当初の政府案においては、国税について、復興特別所得税(仮称・10年間)、復興特別法人税(仮称・3年間)、復興特別たばこ税(仮称・10年間)の創設及び平成23年度税制改正事項(給与所得控除等の見直し)により10.4兆円程度を、地方税については、個人住民税の均等割の標準税率の引上げ(5年間)、地方たばこ税の臨時引上げ(5年間)及び平成23年度税制改正事項(給与所得控除等の見直し)により0.8兆円程度を確保することとされた。

 復興債については、平成23年度補正予算(第3号)以降平成27年度までの各年度において、償還期限を平成34年度として発行することができることとされた。

 これらの措置を講ずるため、国税における時限的な税制措置、復興債の発行等を内容とする「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案」及び地方税における時限的な税制措置を内容とする「東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源の確保に係る地方税の臨時特例に関する法律案」が国会に提出された。

 両法案は、衆議院の修正等を経て、11月30日に成立し(国税関係が平成23年法律第117号、地方税関係が平成23年法律第118号)、国税については、復興特別所得税(25年間)及び復興特別法人税(3年間)により9.7兆円程度を、地方税については、個人住民税の均等割の標準税率の引上げ(10年間)及び平成23年度税制改正事項(個人住民税の退職所得10%税額控除廃止)により0.8兆円程度を確保することとされた。また、復興債の償還期限については平成49年度とされた。

(4)平成23年度補正予算(第3号)等

ア 補正予算(第3号)

(ア)主な内容

 平成23年度補正予算(第3号)は、平成23年10月21日に閣議決定、10月28日に国会に提出され、11月21日に成立した。

 同補正予算においては、歳出面で、東日本大震災・原子力災害からの本格的な復興予算として、「東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき、真に復興に資する施策を重点的に措置する等のため、災害救助等関係経費941億円、災害廃棄物処理事業費3,860億円、公共事業等の追加1兆4,734億円、災害関連融資関係経費6,716億円、地方交付税交付金1兆6,635億円、東日本大震災復興交付金1兆5,612億円、原子力災害復興関係経費3,558億円、全国防災対策費5,752億円、その他の東日本大震災関係経費2兆4,631億円、年金臨時財源の補てん2兆4,897億円、台風第12号等に係る災害対策費3,203億円、B型肝炎関係経費480億円等を追加計上しているほか、既定経費の減額1,850億円、東日本大震災復旧・復興予備費の減額2,343億円の修正減少額を計上している。また、歳入面で、復興債11兆5,500億円、税外収入1,333億円を追加計上等している。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成23年度の補正予算(第2号)による補正後予算に対し、11兆6,832億円増加し、106兆3,987億円となった。

(イ)東日本大震災復興交付金

 補正予算(第3号)においては、「東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき、被災地方公共団体が自らの復興プランの下に進める地域づくりを支援するための東日本大震災復興交付金1兆5,612億円を計上しており、その概要は次のとおりである。

a 被災地方公共団体の復興地域づくりに必要な公共事業等を基幹事業(5省40事業)として幅広く一括化するとともに、地方公共団体の負担を軽減するため、当該事業に係る地方負担額の50%をさらに国費により措置すること。

b 基幹事業に係る事業費の35%を上限に、基幹事業による復興を加速するために必要となるハード・ソフト両面にわたる事業を効果促進事業として実施できることとし、その経費の80%を国費により措置すること。

 以上の措置を含め、地域の創意工夫を活かした復興を促進するため、復興特区制度を創設することとして、「東日本大震災復興特別区域法案」が国会に提出され、衆議院での修正を経て、12月7日に成立した(平成23年法律第122号)。

イ 補正予算(第3号)に係る地方財政措置等

 東日本大震災の復旧・復興に当たって時限的な税制措置を講ずることなどにより特別に財源を確保した上で対処することとされたことを踏まえ、東日本大震災に係る復旧・復興事業等に係る地方負担額等について、震災復興特別交付税を創設して措置するとともに、全国的に緊急に実施する防災・減災事業に係る地方負担額等について、以下のとおり財政措置等を講じることとした。

(ア)震災復興特別交付税

 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して、別枠で加算し交付することとしている震災復興特別交付税(1兆6,635億円)により、補正予算(第3号)並びに補正予算(第1号及び第2号)等に係る地方負担額等、「地方税法」の改正等に伴う地方税の減収分等の全額を措置することとした。その際、これまで地方債により措置することとしていた地方負担額等についても、地方債に代え、震災復興特別交付税で全額措置することとした。

 以上に掲げる措置を講じる等のため、「平成23年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律等の一部を改正する法律案」を国会に提出し、平成23年11月30日に成立した(平成23年法律第116号。以下「総額特例法等一部改正法案」という。)。その概要は次のとおりである。

a 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等に対応する震災復興特別交付税を交付できるようにするため、平成23年度分として交付すべき地方交付税の総額の特例として、1兆6,635億円を加算すること。

b 震災復興特別交付税額について、東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施状況を勘案して、当該額の一部を平成24年度分として交付すべき地方交付税の総額に加算して交付することができることとするとともに、同年度分として交付すべき普通交付税の総額及び特別交付税の総額の特例を設けること。

c 震災復興特別交付税の額の決定時期及び決定時期ごとに決定すべき額の特例を設けること。

 なお、被災者の居住の安定確保や地域経済活動の再生等を支援する観点から、個人住民税及び不動産取得税に係る特例措置並びに固定資産税及び都市計画税の課税免除等の措置を定める「地方税法の一部を改正する法律案」が、12月7日に成立し(平成23年法律第120号)、これによる地方税の減収額についても、震災復興特別交付税により措置することとした。

(イ)全国的に緊急に実施する防災・減災事業に係る措置等

 補正予算(第3号)により追加された全国防災対策費に係る地方負担額等(補正予算(第1号)により追加された学校施設環境改善交付金事業に係る地方負担額を含む。)に係る地方財政措置は以下のとおりとした。

a 全国防災対策費のうち投資的経費に係る地方負担額については、その100%まで地方債(緊急防災・減災事業(補助・直轄))を充当できることとし、後年度における元利償還金の80%を公債費方式により基準財政需要額に算入することとした。

b 上記aに準ずる地方単独事業のうち投資的経費に係る起債対象事業費については、その100%まで地方債(緊急防災・減災事業(単独))を充当できることとし、後年度における元利償還金の70%を公債費方式により基準財政需要額に算入することとした。

c 地方債の対象とならない経費については、特別交付税により適切に対処することとした。

 また、「総額特例法等一部改正法案」において、「地方交付税法」の一部を改正し、上記施策に要する費用に充てるために平成23年度に起こした地方債で総務大臣が指定したものに係る元利償還に要する経費を、平成24年度以降において、普通交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入することとした。

(ウ)地方公営企業に係る財政措置

 東日本大震災に係る地方公営企業の災害復旧事業については、一般会計からの繰出基準の特例を設けて、当該繰出金に対して災害復旧事業債を充当できることとしていたが、これらについてはその全額を震災復興特別交付税により措置することとした。

 また、東日本大震災復興交付金を受けて施行する地方公営企業関係の復興事業について、一般会計からの繰出基準の特例を設けて、当該繰出金についてはその全額を震災復興特別交付税により措置することとした。

 さらに、全国的に緊急に実施する地方公営企業関係の防災・減災事業について、一般会計からの繰出基準の特例を設けて、当該繰出金については緊急防災・減災事業債(補助)を充当することができることとした。

ウ 復興基金への対応

 大災害が発生した場合の行政の対応については、住民生活の安定や地域の再生をはじめとする被災地の様々なニーズに、弾力的かつきめ細かく対処していく必要がある。これまでも、阪神・淡路大震災等においては、復興基金を創設して対処したところであり、東日本大震災についても復興基金による対応が必要であるとの主張が被災した地方公共団体等からなされた。

 このため、特定被災地方公共団体である9県(青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、新潟県、長野県)が、地域の実情に応じて単年度予算の枠に縛られずに弾力的かつきめ細かに対処できる資金として設置する基金に対して、阪神・淡路大震災における措置等を踏まえ、平成23年度12月分の特別交付税により総額1,960億円を措置した。その際、過去の災害において設置された復興基金は運用型のものであったが、現在の低金利の状況では必ずしも有効でないことから取崩し型基金により対処することとした。

 なお、復興基金は、特別交付税による措置であることから、基金を具体的にどのように使うのかについては、各県の判断に委ねられるものであるが、きめ細かな事業を実施するという基金の趣旨から、各県においては、基金の半分程度を市町村に交付するなど市町村事業に配慮した運用がなされているところである。