第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題

1 社会保障・税一体改革

 平成24年1月6日に政府・与党社会保障改革本部において「社会保障・税一体改革素案」が決定され、次いで2月17日に「社会保障・税一体改革大綱」が閣議決定された。

 同大綱では、社会保障の機能強化を確実に実施するとともに社会保障全体の持続可能性の確保を図ることにより、全世代を通じた国民生活の安心を確保する「全世代対応型」社会保障制度の構築を目指すとされた。また、社会保障は、子育て、医療、介護などの多くが地方公共団体を通じて国民に提供されており、地方公共団体の役割も極めて大きいことから、国と地方が一体となって、安定的に実施していくことが重要であり、今回の改革は、国・地方双方が協力しながら推進していく必要があることが示された。

 また、同大綱の策定までには、平成23年11月17日から12月29日までの計6回にわたり「国と地方の協議の場」(社会保障・税一体改革分科会を含む。)において国と地方の協議が行われ、国の制度と地方単独事業の二つのセーフティネットが組み合わさることによって社会保障制度全体が持続可能なものとなっていくという認識が共有された上で、地方単独事業の総合的な整理が行われ、引上げ分の消費税収に係る国と地方の配分の協議が整った。

 同大綱では、地方財政との関係で、次のような内容が盛り込まれることとなった。

 社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成への第一歩を踏み出すための税制抜本改革を行うこととし、特に、消費税及び地方消費税については、以下の措置を講じる。

ア 消費税率(国・地方)は、平成26年4月より8%へ、平成27年10月より10%へ段階的に引上げを行うこと。

イ 地方単独事業を含めた社会保障給付の全体像の総合的な整理を踏まえ、引上げ分の消費税収(国・地方)については、「制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用」(「社会保障四経費」、平成21年度税制改正法附則第104条)に則った範囲の社会保障給付における国と地方の役割分担に応じた配分を実現することとし、引上げ分の消費税収の地方分は、消費税率換算で、平成26年4月から0.92%分、平成27年10月から1.54%分とすること。また、地方消費税の充実を基本とするが、財政力の弱い地方団体における必要な社会保障財源の確保の観点から、併せて消費税の交付税法定率分の充実を図ること。

 このため、地方消費税の現行の税率1%(消費税率換算)を、平成26年4月より1.7%(消費税と合わせて8%)へ、平成27年10月より2.2%(消費税と合わせて10%)へ引き上げるとともに、消費税に係る現行の地方交付税率(29.5%(消費税率換算1.18%))を、平成26年度から22.3%(同1.40%)、平成27年度から20.8%(同1.47%)、平成28年度から19.5%(同1.52%)とすること。

ウ 消費税収(地方分(現行分の地方消費税を除く。))については、現行の基本的枠組みを変更しないことを前提として、その使途を明確化すること(消費税収の社会保障財源化)。

エ 引上げ分の地方消費税収の都道府県と市町村の配分については、現行の1:1を基本とし、また、引上げ分の地方消費税に係る市町村交付金については、人口による配分など社会保障財源化に適した交付基準を検討し、地方団体の意見を踏まえて結論を得ること。