第2章 平成24年度の地方財政

(1)平成24年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成23年12月22日閣議了解、平成24年1月24日に閣議決定された。この中で、以下の平成23年度の経済動向、平成24年度の経済財政運営の基本的態度及び平成24年度の経済見通しが示された。

(ア)平成23年度の経済動向

 東日本大震災により我が国の経済活動は深刻な打撃を受け、マイナス成長が2四半期続くなど、平成23年度は厳しい状況からのスタートとなった。その後、官民の総力を結集した復旧・復興努力を通じてサプライチェーンの急速な立て直しが図られ、景気は持ち直しに転じたが、夏以降は急速な円高の進行や欧州政府債務危機の顕在化による世界経済の減速が、景気の持ち直しを緩やかなものにしている。

 こうした状況に対し、政府は累次の補正予算を編成し、復興への支援を図りつつ景気の下方リスクに先手を打って対処してきている。復興需要を中心とする政策効果が景気を下支えすることから、景気は緩やかな持ち直しが続くものと見込まれる。

 物価の動向を見ると、緩やかなデフレ状況が続いている。消費者物価は3年連続の下落となる。

 平成23年度の国内総生産の実質成長率は、成長の発射台がマイナスであったことから、その後の景気の持ち直しにもかかわらずマイナス0.1%程度となる。国民の景気実感に近い名目成長率は、マイナス1.9%程度と見込まれる。

(イ)平成24年度の経済財政運営の基本的態度

 東日本大震災からの復興に全力を尽くすとともに、欧州政府債務危機等による先行きリスクを踏まえ、景気の下振れの回避に万全を期す。デフレ脱却に断固として取り組み、全力を挙げて円高とデフレの悪循環を防ぐ。このため、政府は、日本銀行と一体となって、速やかに安定的な物価上昇を実現することを目指して取り組む。同時に、「日本再生の基本戦略」(平成23年12月24日閣議決定)の具体化を図るなど日本経済の再生に取り組み、中長期的に持続的な経済成長につなげる。

(財政政策)

 当面は、「円高への総合的対応策」(平成23年10月21日閣議決定)を含め、平成23年度第3次補正予算、第4次補正予算において措置した施策の迅速かつ着実な実行により、復興需要の早期発現に努めるとともに、円高等による景気の下振れリスクや産業空洞化リスク等に先手を打って対処する。

 平成24年度予算については、「日本再生元年予算」と位置づけ、震災復興に引き続き最優先で取り組むとともに、「日本再生重点化措置」等を通じて我が国経済社会の再生に向けた取組を進める。

 国際金融市場に危機の伝播リスクがあることに鑑みれば、財政健全化は、経済成長と並ぶ車の両輪として進めるべき必須の課題である。このため、社会保障・税一体改革を着実に実現するとともに、「財政運営戦略」の目標達成に向け、引き続き、財政健全化に取り組む。

(ウ)平成24年度の経済見通し

 平成24年度の日本経済は、本格的な復興施策の集中的な推進によって着実な需要の発現と雇用の創出が見込まれ、国内需要が成長を主導する。

 世界経済については、欧州政府債務危機を主因とする世界の金融資本市場の動揺が、各国政府等の協調した政策努力により安定化することを前提とすると、主要国経済は減速から持ち直しに転じていくと期待される。これは、我が国の輸出や生産にとって望ましい環境をもたらしていくと考えられる。

 こうしたことから、我が国の景気は緩やかに回復していくことが見込まれる。

 物価については、消費者物価上昇率はGDPギャップの縮小等により0.1%程度になると見込まれる。GDPデフレーターは穏やかに下落する。完全失業率は、雇用者数の穏やかな増加から低下する。

 こうした結果、平成24年度の国内総生産の実質成長率は2.2%程度、名目成長率は2.0%程度と、実質、名目ともプラスに転じる。

 先行きのリスクとしては、欧州政府債務危機の深刻化等を背景とした海外経済の更なる下振れ、円高の進行やそれに伴う国内空洞化の加速、電力供給の制約等が挙げられる。

イ 国の予算

 政府は、「平成24年度予算編成の基本方針〜日本再生に向けて−危機をチャンスに〜」(平成23年12月16日閣議決定)及び「平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に基づいて平成23年12月24日、平成24年度予算政府案を閣議決定した。

 平成24年度予算は、以下のような基本的考え方により編成された。

(ア)平成24年度予算の基本方針

 平成24年度予算においては、東日本大震災からの復興、経済分野のフロンティアの開拓、分厚い中間層の復活、農林漁業の再生、エネルギー・環境政策の再設計の5つの重点分野を中心に、日本再生に全力で取り組む。併せて、地域主権改革を確実に推進するとともに、既存予算の不断の見直しを行う。

a 東日本大震災からの復興

(a) 被災地の経済社会の再生

 日本再生の一丁目一番地は、東日本大震災の被災地の経済社会の再生である。被災地の方々が早期に復興を実感できるよう、「東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき、平成23年度補正予算に引き続き、平成24年度予算においても震災復興に全力を挙げる。

(b) 原発事故からの再生

 「福島の再生なくして、日本の再生なし」との考え方で、平成23年度補正予算に引き続き、平成24年度予算においても、被災者の支援に加え、放射性物質汚染廃棄物処理や土壌の除染等の取組を加速する。

b 日本再生重点化措置等を通じた経済分野のフロンティア開拓

 平成24年度予算においては、「日本再生重点化措置」を最大限活用し、新たなフロンティア及び新成長戦略、教育・雇用等の人材育成、地域活性化、安心・安全社会の実現といった分野への投資に予算配分の重点化を図る。

c 分厚い中間層の復活に向けて

 所得中位層に属する階層をかつての水準に回復させること等により、分厚い中間層を復活させることが必要である。そのためには、働く能力がある国民が全員参加できる社会の実現を目指すとともに、働く能力を育てる政策が必要であり、平成24年度予算において重点的に取り組む。

d 農林漁業の再生

 「我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」(平成23年10月25日食と農林漁業の再生推進本部決定)に基づく5年間の行動計画の初年度として、競争力・体質強化を図り、若者が担う農業を目指して、農地の集約化、若者の新規就農を進め、6次産業化を始め、若者が魅力を感じ、安心して創意工夫を生かせる農業への改革を推進する。

e エネルギー・環境政策の再設計

 福島原発事故の反省を踏まえ、事故収束と原子力安全の強化に万全を期すとともに、原子力発電に電力供給の過半を依存するとしてきた現行のエネルギーミックスをゼロベースで見直す。

f 地域主権改革

 地域主権改革は、地域のことは地域で決めるための重要な改革である。平成23年度予算に引き続き、平成24年度予算においても補助金等の一括交付金化を更に進め、対象事業の拡大、増額を図るとともに、都道府県に加え、政令指定都市に対象を拡大する。

g 既存予算の不断の見直し

 平成24年度予算は、東日本大震災からの復旧・復興の足取りを確実なものとするために、国民に追加的な負担をお願いしつつ編成される予算であると同時に、社会保障・税一体改革を控えた予算であり、これまで以上の緊張感を持って、徹底した無駄の排除を進めていく。

(イ)財政運営戦略の着実な実現

a 欧州の政府債務危機の状況も踏まえ、我が国財政への市場の信認を確保していくため、「財政運営戦略」における財政健全化目標の達成に向け、行政刷新会議の「提言型政策仕分け」等も活用しつつ既存歳出の見直しを進め、「中期財政フレーム(平成24年度〜平成26年度)」(平成23年8月12日閣議決定)に基づいて平成24年度予算編成を進める。

b 平成24年度当初予算における新規国債発行額(償還財源の確保された復興債を除く。)は、平成23年度当初予算の水準である約44兆円を上回らないものとするよう、全力を挙げる。

c 平成24年度当初予算における基礎的財政収支対象経費については、「中期財政フレーム(平成24年度〜平成26年度)」に則り、平成23年度当初予算の水準である約71兆円(年金差額分(基礎年金国庫負担割合2分の1と36.5%の差額を言う。)2.6兆円を除けば68.4兆円)を実質的に上回らないものとする。

 このような方針に基づいて編成された平成24年度の一般会計予算の規模は、90兆3,339億円(前年度比2兆777億円、2.2%減)で、基礎的財政収支対象経費は、68兆3,897億円(前年度比2兆4,728億円、3.5%減)となっている。なお、経済危機対応・地域活性化予備費が9,100億円(前年度比1,000億円、12.3%増)計上されている。

 財政投融資計画の規模は、17兆6,482億円(前年度比2兆7,423億円、18.4%増)となっている。

(ウ)東日本大震災関係

 「東日本大震災からの復興の基本方針」において、震災復旧・復興対策について別途財源を確保し、多年度で収入と支出を完結させる枠組みが定められた。これを踏まえ「中期財政フレーム(平成24年度〜平成26年度)」では、別途管理での対応を可能とする等の配慮を行うとの基本的な考え方の下、歳出面での取組として、東日本大震災の復旧・復興対策に係る経費であって、既存歳出の削減により賄われる額を超えた金額のうち、復興債、更なる税外収入の確保及び時限的な税制措置により確保された金額については、財源と併せて別途管理し、「歳出の大枠」に加算するとされた。

 この「中期財政フレーム(平成24年度〜平成26年度)」を前提に、「平成24年度予算の概算要求組替え基準について」(平成23年9月20日閣議決定)において、平成24年度予算の概算要求に当たっては、「平成24年度予算における東日本大震災からの復旧・復興対策に係る経費については、別途管理とし、所要の金額を要求することとする」こととされた。

 「平成24年度予算編成の基本方針」では、復旧・復興対策に係る経費については、復興事業に係る歳入歳出を管理する特別会計を平成24年度に設置し、区分経理を行うこととされ、「東日本大震災復興特別会計(仮称)」が設置されることとなった。

 「東日本大震災復興特別会計(仮称)」の予算の規模は3兆7,754億円となっている。歳入については、復興特別税5,305億円、一般会計からの繰入5,507億円、復興債2兆6,823億円等となっている。歳出については、公共事業等の追加5,091億円、東日本大震災復興交付金2,868億円、全国防災対策費4,827億円、震災復興特別交付税の財源としての地方交付税交付金5,490億円などの東日本大震災復興経費3兆2,500億円、東日本大震災復興予備費4,000億円等となっている。

(2)地方財政計画

 平成24年度においては、被災団体が東日本大震災からの復旧・復興事業に着実に取り組めるようにするとともに、被災団体以外の地方公共団体の財政運営に影響を及ぼすことがないよう、地方公共団体の歳入歳出総額の見込額の策定に当たっては、通常収支分と東日本大震災分を区分して整理することとしている。

 通常収支分については、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、経費全般について徹底した節減合理化に努める一方、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うとともに、地域経済の基盤強化等のため、地域が実施する緊急事業に対応するために必要な経費を計上するほか、歳入面においては、「財政運営戦略」に基づき定める「中期財政フレーム(平成24年度〜平成26年度)」に沿って、交付団体始め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、平成23年度地方財政計画と実質的に同水準となるよう確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとしている。

 また、東日本大震災分については、東日本大震災の復旧・復興事業及び東日本大震災の教訓を踏まえ全国的に緊急に実施する防災・減災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとしている。

 以上を踏まえ、次の方針に基づき平成24年度地方公共団体の歳入歳出総額の見込額を策定している。

ア 通常収支分

(ア) 地方税について、平成24年度税制改正では、地域決定型地方税制特例措置(通称:わがまち特例)の導入、固定資産税等の負担調整措置を延長したうえで、住宅用地に係る据置特例の見直し、自動車取得税における「エコカー減税」の重点化等を講じることとしている。

(イ) 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

a 財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発、別枠加算等に加えて、新たに平成24年度から平成26年度まで行うこととする地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金の活用により対処することとした残余については、平成23年度に講じた平成25年度までの制度改正に基づき、国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については、「地方財政法」第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

b これに基づき、平成24年度の財源不足見込額13兆6,846億円については、次により補填する。

(1) 地方交付税については、国の一般会計加算により5兆8,613億円(うち「地方交付税法」附則第4条の2第2項の加算額867億円、同条第3項の加算額2,150億円、同条第4項の加算額6,235億円、平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)に定める平成24年度における「乖離是正分加算額」500億円、地方の財源不足の状況を踏まえた別枠の加算額1兆500億円及び臨時財政対策特例加算額3兆8,361億円)増額する。

 また、交付税特別会計剰余金5,200億円を活用するとともに、「地方公共団体金融機構法」(平成19年法律第64号)附則第14条の規定により財政投融資特別会計に帰属させる地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金3,500億円を財政投融資特別会計から交付税特別会計に繰り入れる。

(2) 「地方財政法」第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を6兆1,333億円発行する。

(3) 建設地方債(財源対策債)を8,200億円増発する。

c 上記の結果、平成24年度の地方交付税については、17兆4,545億円(前年度比811億円、0.5%増)を確保する。

d 交付税特別会計の借入金については、「特別会計に関する法律」(平成19年法律第23号)附則第4条第1項に基づき、1,000億円の償還を実施する。

e なお、平成4年度までの国庫補助負担率の引下げ措置(投資的経費)に伴い一般会計から交付税特別会計に繰入れを予定していた額等644億円については、法律の定めるところにより平成30年度以降の地方交付税の総額に加算する。

(ウ) 地方債については、極めて厳しい地方財政の状況の下で、地域主権改革を推進し、地域に必要なサービスを確実に提供できるよう地方財源の不足に対処するための措置を講じ、また、地方公共団体が地域の活性化への取組を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

 この結果、地方債計画(通常収支対応分)の規模は、13兆5,396億円(普通会計分11兆1,654億円、公営企業会計等分2兆3,742億円)とする。

(エ) 地域主権改革に沿って、地域経済の基盤強化や雇用創出を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 「地方再生対策費」及び「地域活性化・雇用等対策費」について、一定の縮減を図った上で、「地域経済基盤強化・雇用等対策費」として整理・統合し、歴史的円高等の地域経済を取り巻く環境が激変する中、海外競争力強化等のため、地域が実施する緊急事業に対応するための緊急枠(1,750億円)を含めて1兆4,950億円を計上する。

b 投資的経費に係る地方単独事業費については、国の公共投資関係費の取扱い等も勘案しつつ、前年度に比し3.6%減額することとする一方で、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

c 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体における行政改革の状況等を踏まえ行政経費の縮減を行う一方、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

d 消防力の充実、防災対策等の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

e 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(オ) 平成24年度までの3年間で1.1兆円規模の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金及び旧公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、高金利の地方債の公債費負担を軽減する措置を講じる。

(カ) 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(キ) 地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減、事務事業の見直しや民間委託など引き続き自主的な改革を推進する。

イ 東日本大震災分

(ア)復旧・復興事業

a 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、以下に掲げる地方負担分等の全額を措置するため、6,855億円を確保する。

b 地方債については、東日本大震災復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。この結果、地方債計画(東日本大震災に関連する事業分)における復旧・復興事業の規模は、359億円(普通会計分127億円、公営企業会計等分232億円)とする。

c 直轄事業負担金及び補助事業費、「地方自治法」(昭和22年法律第67号)に基づく職員の派遣・投資単独事業等の地方単独事業費及び「地方税法」等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出等について所要の事業費1兆7,788億円を計上する。

 なお、地方税については、被災者等の負担の軽減及び復旧・復興へ向けた取組の推進を図るため、3回にわたり講じられてきた税制上の臨時特例措置に加えて、平成24年度税制改正において、新たな復興支援措置として、避難等の指示が解除されていない区域内の土地及び家屋に係る固定資産税等の課税免除措置を平成25年度以降も継続すること等としている。

(イ)緊急防災・減災事業

a 平成24年度については、平成25年度から平成35年度までの地方税の臨時的な税制上の措置による地方税の増収が見込めないため、一般財源充当分として96億円を計上する。

b 地方債については、東日本大震災を教訓として、全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災等の事業を推進するため、所要額についてその全額を公的資金で確保する。この結果、地方債計画(東日本大震災に関連する事業分)における緊急防災・減災事業の規模は、4,546億円(普通会計分4,173億円、公営企業会計等分373億円)とする。

c 国の全国防災対策費に係る直轄事業負担金及び補助事業費、地方単独事業費等について、所要の事業費6,329億円を計上する。

(3)地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

 平成24年度においては、被災団体が東日本大震災からの復旧・復興事業に着実に取り組めるようにするとともに、被災団体以外の地方公共団体の財政運営に影響を及ぼすことがないよう、通常収支分と東日本大震災分を区分して整理することとしている。

(ア)通常収支分

 地方公営企業については、経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図る必要がある。

 このため、平成24年度においては、次のような措置を講じることとしている。

 公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆6,590億円(前年度2兆6,867億円)を計上している。

 地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆3,742億円(前年度2兆2,568億円)を計上している。

 また、普通会計分と合わせた公債費負担対策として、平成24年度までの3年間で1.1兆円規模の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金、旧公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、高金利の地方債の公債費負担を軽減する措置を講じることとしている。このうち、旧公営企業金融公庫資金の繰上償還の財源として、平成24年度地方債計画に公営企業借換債を300億円計上している。

 さらに、各事業における地方財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

a 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入することとしている。

b 簡易水道事業については、経営の効率化・健全化を図るため、法適化・統合推進に要する経費のうち、複数の簡易水道事業の統合に要する資産台帳作成や電算システム導入等のソフト事業について、地方交付税措置を講じることとしている。

c 病院事業については、先般の東日本大震災を教訓として、災害時の医療に必要な資機材等の備蓄に係る地方交付税措置については、災害拠点病院に加え、新たに救急告示病院を対象とすることとしている。

d 以上のほか、地方公営企業職員に係る子どものための手当に要する経費について、所要の地方交付税措置を講じることとしている。

(イ)東日本大震災分

 東日本大震災の復旧・復興事業及び東日本大震災の教訓を踏まえ、全国的に緊急に実施する防災・減災事業については、通常収支とはそれぞれ別枠で区分し、所要の事業費及び財源を確保することとしている。

 このため、平成24年度においては、次のような措置を講じることとしている。

a 復旧・復興事業

 地方公営企業に係る復旧・復興事業については、一般会計から公営企業会計への繰出基準の特例を設け、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととし、当該繰出金に対してはその全額を震災復興特別交付税により措置することとしており、地方財政計画において23億円を計上している。また、復旧・復興事業に係る地方債については、地方債計画において公営企業会計等分232億円を計上している。

b 緊急防災・減災事業

 地方公営企業に係る緊急防災・減災事業については、一般会計から公営企業会計への繰出基準の特例を設け、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととし、地方財政計画において436億円を計上している。当該繰出金については緊急防災・減災事業債(補助)を充当することができる。緊急防災・減災事業に係る地方債については、 地方債計画において公営企業会計等分373億円を計上している。

 旧公営企業金融公庫資金(地方公共団体金融機構資金も含む。)によって取得した施設が被災により滅失し繰上償還(補償金が課されない強制繰上償還)を行う場合、地方公共団体金融機構資金により、借換債を発行できることとし、被災施設借換債150億円を計上している。

イ 国民健康保険事業

 国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア) 都道府県の調整機能の強化と市町村国保財政の共同事業の拡大の円滑な推進等のため、国定率負担から都道府県調整交付金へ移す(給付費等の2%分)こととしており、所要額(6,771億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(イ) 国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部(都道府県3/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(4,239億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(ウ) 低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用(986億円)に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(493億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(エ) 高額医療費共同事業(2,956億円)については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)を負担することとし、その所要額(739億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(オ) 国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じることとしている。

(カ) 国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図ることを目的として、40歳から74歳までの国民健康保険加入者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業(523億円)に対して、国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、市町村国保1/3)を負担することとし、その所要額(174億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

ウ 後期高齢者医療制度

 後期高齢者医療制度については、実施主体である広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア) 保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図る(均等割2割・5割・7割軽減)とともに、被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減を行うため、都道府県及び市町村が負担(都道府県3/4、市町村1/4)することとし、その所要額(2,481億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

 なお、平成24年度は、70歳から74歳までの窓口負担軽減措置、低所得者の保険料軽減措置(均等割9割・8.5割、所得割5割軽減)及び被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減措置(均等割9割軽減)について継続することとされている。また、被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減措置に伴う平成24年度分の財政措置については、均等割9割軽減のうち4割分については国費により措置することとして、所要額を平成23年度補正予算に計上するとともに、均等割9割軽減のうち5割分については、引き続き、地方交付税措置を講じることとしている。

(イ) 高額医療費負担金(2,070億円)については、広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、広域連合1/2)を負担することとし、その所要額(518億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(ウ) 財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金(590億円)を設置しその拠出金に対して国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、広域連合1/3)を負担することとし、その所要額(197億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(エ) 不均一保険料助成については、医療給付の実績が低い広域連合内の市町村に対して、平成26年度まで他の市町村とは異なる不均一の保険料を設けることに対して国及び都道府県が負担(国1/2、都道府県1/2)することとし、その所要額(3億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(オ) 実施主体である広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じることとしている。

(4)宝くじの改革

 宝くじは、刑法で発売が禁じられている「富くじ」の特例として、「地方財政法」及び「当せん金付証票法」(昭和23年法律第144号)に基づき、地方財政資金の調達を目的として、総務大臣の許可を受けて、都道府県及び政令市が発売しているものである。

 宝くじは、60年以上にわたり地方公共団体により発売されており、国民に「夢」や「楽しみ」を提供し、国民の健全な娯楽として発展するとともに、地域住民の福祉の向上に寄与し、社会に貢献している。

 しかしながら、近年、宝くじの売上額は、平成17年度の1兆1,047億円をピークに漸減傾向にあり、平成22年度には9,190億円にまで低下している。

 このように宝くじの売上げが低迷していることや販売方法が時代にマッチしていないなどの指摘がなされていること等を踏まえ、宝くじの活性化方策について検討を行う等の目的で、学識経験者、民間企業経営者、地方公共団体の代表者等の構成員からなる宝くじ活性化検討会を平成23年10月に設け、7回に及ぶ検討会の開催を経て、同年12月に宝くじ活性化検討会報告書をとりまとめた。

 同報告書においては、「(ア)消費者の利便性の向上及び販売チャネルの拡充」の観点から、インターネット販売の早期導入、インターネット専用新商品の開発、電磁的記録による当せん金付証票の導入、コンビニエンスストア販売の拡大、既存販売網の充実など、「(イ)運営全般にわたる競争性・効率性の確保」の観点から、発売団体が自ら宝くじの発売等の事務を実施するか又は分割して発注することができる仕組みを導入すること、宝くじの発売許可手続を3ヶ月単位から1年単位にすることなど、「(ウ)宝くじの魅力の向上」の観点から、マーケティング戦略の強化、当せん金の最高金額の倍率制限の緩和、従来よりも当たりやすいくじの発売、収益金使途のPRによる宝くじの公益性や社会貢献的性格の理解の促進などを内容とする活性化方策について提言がなされた。

 報告書の提言を踏まえ、電磁的記録による当せん金付証票の導入、当せん金の最高金額の倍率制限の緩和等を内容とする「当せん金付証票法」の一部改正のための所要の法律案を国会に提出している。

 また、宝くじの発売団体及び受託銀行においても、報告書の提言を踏まえ、顧客ニーズを踏まえた改革や競争性・効率性の発揮に向けた改革に取り組んでいる。