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2 地方財政の概況

地方公共団体の会計は、一般会計と特別会計に区分して経理されているが、特別会計の中には、一般行政活動に係るものと企業活動に係るものがある。

このため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門と水道、交通、病院等の企業活動部門に分け、前者を「普通会計」、後者を「地方公営事業会計」として区分している。

以下、平成23年度の地方財政について、2から6までと10において普通会計の状況を、7において地方公営事業会計等の状況を、8において東日本大震災の影響を、9において健全化判断比率等の状況を示すとともに、11において公共施設の状況を示す。なお、普通会計決算については、平成23年度から通常収支分(全体の決算額から東日本大震災分を除いたもの)と東日本大震災分(東日本大震災に係る復旧・復興事業及び緊急防災・減災事業に係るもの)を区分して整理している。

(1)決算規模[資料編:第1表第5表第10表第73表

地方公共団体(47都道府県、1,719市町村、23特別区、1,260一部事務組合及び112広域連合(以下一部事務組合及び広域連合を「一部事務組合等」という。))の普通会計の純計決算額は、第1表のとおり、歳入100兆696億円(前年度97兆5,115億円)、歳出97兆26億円(同94兆7,750億円)で、歳入、歳出いずれも増加している。対前年度比は歳入2.6%増(前年度0.9%減)、歳出2.4%増(同1.4%減)となっている。

第1表 地方公共団体の決算規模(純計)

このうち東日本大震災分は、歳入5兆345億円、歳出4兆4,910億円で、東日本大震災分を除いた通常収支分は、歳入95兆351億円、歳出92兆5,117億円となっている。

平成23年度の決算規模が前年度を上回ったのは、歳入においては、通常収支分について、地方税の減少、臨時財政対策債の減少等による地方債の減少、平成21年度に国の経済対策の実施等の影響で増加した国庫支出金の減少があったものの、東日本大震災分について、復旧・復興に対応した特別交付税の増額及び震災復興特別交付税の創設や国庫支出金の計上があったこと等によるものである。歳出においては、通常収支分について平成21年度に国の経済対策の実施等の影響で増加した普通建設事業費の減少があったものの、子ども手当や生活保護費の増加等により扶助費が増加していることに加え、東日本大震災分について普通建設事業費、災害復旧事業費、積立金が計上されたこと等によるものである。

さらに、歳出から公債費及び公営企業繰出金のうち企業債の元利償還に係るものを除いた一般歳出は、71兆2,311億円(前年度70兆2,326億円)となっており、前年度と比べると1.4%増となっている。

決算規模の状況を団体種類別にみると、第2表のとおりである。都道府県及び市町村(特別区及び一部事務組合等を含む。特記がある場合を除き、以下同じ。)において、歳入、歳出ともに前年度を上回っている。

第2表 団体種類別決算規模の状況

また、近年の決算規模の推移は、第7図のとおりである。

第7図 決算規模の推移(純計)

(2)決算収支

ア 実質収支[資料編:第7表

実質収支(形式収支(歳入歳出差引額)から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額)の状況は、第3表のとおりである。

第3表 実質収支の状況

平成23年度の実質収支は、1兆7,953億円の黒字(前年度1兆6,702億円の黒字)で、昭和31年度以降黒字となっている。

実質収支を団体種類別にみると、都道府県においては3,461億円の黒字(前年度3,546億円の黒字)であり、平成12年度以降黒字となっている。

また、市町村においては1兆4,492億円の黒字(前年度1兆3,156億円の黒字)であり、昭和31年度以降黒字となっている。

実質収支が赤字である団体数をみると、平成22年度に赤字であった8団体(8市町村)のうち2団体(2市町)が引き続き赤字であり、1団体(1一部事務組合)が新たに赤字となった結果、赤字団体数は3団体であり、前年度と比べると5団体減少している。

なお、近年の実質収支及び赤字団体の赤字額の推移は、第8図のとおりである。

第8図 実質収支の推移

標準財政規模に対する実質収支額の割合である実質収支比率の推移は、第9図のとおりであり、平成23年度の実質収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は0.2ポイント上昇の2.9%となっている。

第9図 実質収支比率の推移

実質収支比率を団体種類別にみると、都道府県は前年度と同率の1.3%、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。)は0.4ポイント上昇の4.5%となっている。

イ 単年度収支及び実質単年度収支[資料編:第7表

平成23年度の単年度収支(実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額)は、1,255億円の黒字(前年度2,258億円の黒字)となっている。

単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては85億円の赤字(前年度909億円の黒字)、市町村においては1,341億円の黒字(同1,350億円の黒字)となっている。

また、実質単年度収支(単年度収支に財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた額)は、4,372億円の黒字(前年度1兆395億円の黒字)となっている。

実質単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては245億円の赤字(前年度4,133億円の黒字)、市町村においては4,617億円の黒字(同6,263億円の黒字)となっている。

なお、実質収支、単年度収支及び実質単年度収支の赤字団体数の状況は、第4表のとおりである。

第4表 赤字の団体数の状況

(3)歳入[資料編:第10表

歳入純計決算額は100兆696億円で、前年度と比べると2兆5,581億円増加(2.6%増)している。このうち、東日本大震災分は5兆345億円で、通常収支分は、95兆351億円となっており、前年度と比べると2兆4,764億円減少(2.5%減)している。

歳入総額の主な内訳をみると、第5表のとおりである。

第5表 歳入純計決算額の状況

地方税は、法人関係二税の増加や道府県たばこ税及び市町村たばこ税の増加等があったが、東日本大震災に係る被災地方公共団体における減免等による個人住民税の減少等により、前年度と比べると1,449億円減少(0.4%減)している。

地方譲与税は、地方法人特別譲与税の増加等により、前年度と比べると1,007億円増加(4.9%増)し、3年連続で増加している。

地方特例交付金は、児童手当及び子ども手当特例交付金の減少等により、前年度と比べると192億円減少(5.0%減)している。

地方交付税は、復旧・復興に対応した特別交付税の増額及び震災復興特別交付税の創設等により、前年度と比べると1兆5,587億円増加(9.1%増)し、4年連続で増加している。また、地方交付税に臨時財政対策債を加えた額は、前年度と比べると3,140億円増加(1.3%増)している。

一般財源は、地方交付税の増加等により、前年度と比べると1兆4,954億円増加(2.8%増)し、2年連続で増加している。なお、一般財源に臨時財政対策債を加えた額は、前年度と比べると2,506億円増加(0.4%増)し、2年連続で増加している。

国庫支出金は、通常収支分において減少したが、東日本大震災分が計上されたことにより、前年度と比べると1兆7,252億円増加(12.1%増)している。

地方債は、臨時財政対策債の減少等により、前年度と比べると1兆2,092億円減少(9.3%減)している。

歳入純計決算額の構成比の推移は、第10図のとおりである。

第10図 歳入純計決算額の構成比の推移

地方税の構成比は、税源移譲等により、平成19年度には歳入総額の44.2%を占めるまで上昇したが、その後、景気の悪化や地方法人特別税の創設等に伴って低下し、23年度は歳入総額の増加の影響等もあり、前年度と比べると1.1ポイント低下の34.1%と、4年連続で低下している。

地方交付税の構成比は、平成8年度から12年度までは上昇し、13年度以降は、地方財政対策に当たり、交付税特別会計の借入金方式に代えて臨時財政対策債を発行し、基準財政需要額の一部を振り替えることとしたことや三位一体の改革に伴う地方交付税の改革等から総じて低下の傾向にあったが、22年度は上昇に転じ、また、23年度においては、復旧・復興に対応した特別交付税の増額及び震災復興特別交付税の創設等により、前年度と比べると1.1ポイント上昇の18.7%と、2年連続で上昇している。

国庫支出金の構成比は、平成15年度以降、三位一体の改革による国庫補助負担金の一般財源化、普通建設事業費支出金の減少等により低下していたが、20年度、21年度は国の経済対策の実施等により2年連続で上昇した。平成22年度は再び低下したが、23年度においては、東日本大震災分における計上の影響等により前年度と比べると1.3ポイント上昇の16.0%となっている。

地方債の構成比は、普通建設事業費の減少や平成16年度以降臨時財政対策債の発行額が減少したこと等により低下していたが、20年度以降、臨時財政対策債の増加等により上昇に転じている。平成23年度においては、臨時財政対策債の減少等により、前年度と比べると1.5ポイント低下の11.8%となっている。なお、臨時財政対策債の発行額を除いた構成比は、前年度と比べると0.1ポイント低下の5.9%となっている。

一般財源の構成比は、平成18年度には62.3%であったが、その後、国庫支出金、地方債等の増加に加え、地方税及び地方特例交付金等の減少などにより低下していた。その後、平成22年度に上昇に転じ、23年度においては地方交付税の増加等により、前年度と比べると0.1ポイント上昇の55.4%と、2年連続で上昇している。なお、一般財源に臨時財政対策債を加えた額の構成比は、前年度と比べると1.3ポイント低下の61.3%となっている。

歳入決算額の構成比を団体種類別にみると、第11図のとおりである。

第11図 歳入決算額の構成比

都道府県においては地方税が最も大きな割合(30.2%)を占め、以下、地方交付税(18.6%)、国庫支出金(15.0%)の順となっている。

市町村においても都道府県と同様に地方税が最も大きな割合(33.7%)を占め、以下、地方交付税(16.5%)、国庫支出金(15.0%)の順となっている。

(4)歳出

歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と経費の経済的な性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、次のとおりである。

ア 目的別歳出

(ア)目的別歳出[資料編:第34表

地方公共団体の経費は、その行政目的によって、議会費、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、消防費、警察費、教育費、災害復旧費、公債費等に大別することができる。

歳出純計決算額は97兆26億円で、前年度と比べると2兆2,276億円増加(2.4%増)している。このうち、東日本大震災分は4兆4,910億円で、通常収支分は92兆5,117億円となっており、前年度と比べると2兆2,633億円減少(2.4%減)している。

歳出総額の目的別歳出の構成比は、第6表のとおりであり、民生費(23.9%)、教育費(16.7%)、公債費(13.4%)、土木費(11.6%)、総務費(9.6%)の順となっている。

第6表 目的別歳出純計決算額の状況

民生費は、通常収支分において子ども手当を含む児童福祉費等が増加したことに加え、東日本大震災分において災害救助費等が計上されたことにより、前年度と比べると1兆8,662億円増加(8.8%増)している。

教育費は、前年度と比べると2,699億円減少(1.6%減)している。

公債費は、前年度と比べると196億円減少(0.2%減)している。

土木費は、前年度と比べると6,743億円減少(5.6%減)している。

総務費は、前年度と比べると6,538億円減少(6.5%減)している。

目的別歳出の構成比の推移は、第7表のとおりである。民生費の構成比が平成12年度以降上昇している一方、農林水産業費、土木費及び教育費の構成比は低下の傾向にある。

第7表 目的別歳出純計決算額の構成比の推移

目的別歳出の構成比を団体種類別にみると、第12図のとおりである。

第12図 目的別歳出決算額の構成比

都道府県においては、市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等により教育費が最も大きな割合(21.5%)を占め、以下、民生費(14.7%)、公債費(13.4%)、土木費(10.6%)、商工費(8.9%)の順となっている。

また、市町村においては、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉事務の比重が高いこと等により民生費が最も大きな割合(34.2%)を占め、以下、総務費(12.4%)、公債費(11.7%)、土木費(11.4%)、教育費(10.0%)の順となっている。

(イ)一般財源の充当状況[資料編:第36表

一般財源の目的別歳出に対する充当状況は、第8表のとおりである。

第8表 一般財源の目的別歳出充当状況

一般財源総額(55兆4,576億円)に占める目的別歳出の割合をみると、民生費が最も大きな割合(21.0%)を占め、以下、公債費(18.6%)、教育費(18.4%)、総務費(11.3%)、土木費(7.9%)の順となっている。

一般財源充当額の目的別構成比の推移は、第13図のとおりである。近年、民生費に充当された一般財源の構成比が上昇の傾向にあり、土木費に充当された一般財源の構成比が低下の傾向にある。

第13図 一般財源充当額の目的別構成比の推移

イ 性質別歳出

(ア)性質別歳出[資料編:第73表

地方公共団体の経費は、その経済的な性質によって、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別することができる。

義務的経費は、職員給与費等の人件費のほか、生活保護費等の扶助費及び地方債の元利償還金等の公債費からなっており、そのうち人件費が48.5%を占めている。また、投資的経費は、道路、橋りょう、公園、公営住宅、学校の建設等に要する普通建設事業費のほか、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっており、そのうち普通建設事業費が94.3%を占めている。

歳出純計決算額の主な性質別内訳をみると、第9表のとおりである。

第9表 性質別歳出純計決算額の状況

義務的経費は、前年度と比べると6,149億円増加(1.3%増)している。これは、通常収支分における子ども手当の増加等に伴う児童福祉費の増加等や東日本大震災分における災害救助費の計上等により扶助費が7,191億円増加(6.4%増)した一方で、各地方公共団体の歳出削減努力に伴い人件費が877億円減少(0.4%減)、地方債元利償還金の減少に伴い公債費が164億円減少(0.1%減)したことによるものである。

投資的経費は、前年度と比べると1,972億円減少(1.5%減)している。これは、東日本大震災分において、復旧・復興事業のため普通建設事業費や災害復旧事業費が計上された一方で、通常収支分において、平成21年度に国の経済対策の実施等の影響で増加した普通建設事業費が減少してきていること等により、普通建設事業費が7,982億円減少(6.0%減)し、災害復旧事業費が6,034億円増加(377.4%増)したこと等によるものである。

また、その他の経費は、前年度と比べると1兆8,099億円増加(5.4%増)している。これは、東日本大震災分における災害救助費の計上等により物件費が7,624億円増加(9.5%増)したことや、東日本大震災復興関連基金への積立等により積立金が1兆4,814億円増加(47.2%増)したこと等によるものである。

平成14年度以降のこれらの経費の増減額の推移は、第14図のとおりである。

第14図 義務的経費、投資的経費等の増減額の推移

次に、性質別歳出の構成比の推移は、第15図のとおりである。

第15図 性質別歳出純計決算額の構成比の推移

投資的経費の構成比は、平成7年度以降低下しており、21年度は国の経済対策の実施等の影響で上昇したものの、22年度からは再び低下に転じ、23年度においては前年度と比べると0.5ポイント低下の13.7%となっている。

義務的経費の構成比は、平成7年度以降上昇の傾向にあり19年度には52.1%となったが、20年度に低下に転じた。平成22年度は上昇したが、23年度においては東日本大震災分の影響等でその他の経費が歳出総額の増加率を上回って増加したこと等から、前年度に比べると0.6ポイント低下の49.8%となっている。

性質別歳出決算額の構成比を団体種類別にみると、第16図のとおりである。

第16図 性質別歳出決算額の構成比

人件費の構成比は、都道府県において市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等から、都道府県(27.6%)が、市町村(17.7%)を上回っている。また、扶助費の構成比は、市町村において、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉関係事務が行われていること等から、市町村(20.5%)が、都道府県(2.2%)を上回っている。

さらに、普通建設事業費のうち、補助事業費の構成比は、都道府県(7.2%)が市町村(5.0%)を上回る一方、単独事業費の構成比は、市町村(6.5%)が都道府県(4.9%)を上回っている。

(イ)一般財源の充当状況[資料編:第75表

一般財源の性質別歳出に対する充当状況は、第10表のとおりである。

第10表 一般財源の性質別歳出充当状況

一般財源総額(55兆4,576億円)に占める性質別歳出の割合をみると、義務的経費が最も大きな割合(57.0%)を占め、以下、その他の経費(33.5%)、投資的経費(5.4%)の順となっている。

一般財源充当額の性質別構成比の推移は、第17図のとおりである。

第17図 一般財源充当額の性質別構成比の推移

義務的経費に充当された一般財源の構成比は、平成3年度以降上昇の傾向にあり、19年度以降低下に転じたが、23年度は再び上昇し、前年度と比べると0.7ポイント上昇の57.0%となっている。

投資的経費に充当された一般財源の構成比は、平成3年度以降低下の傾向にあり、21年度は上昇したものの、22年度は再び低下に転じ、23年度においては前年度と比べると1.2ポイント低下の5.4%となっている。

(5)財政構造の弾力性

ア 経常収支比率[資料編:第8表

地方公共団体が社会経済や行政需要の変化に適切に対応していくためには、財政構造の弾力性が確保されなければならない。財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つとして、経常収支比率が用いられている。

経常収支比率は、経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源)が、経常一般財源(一般財源総額のうち地方税、普通交付税のように毎年度経常的に収入される一般財源)、減収補填債特例分及び臨時財政対策債の合計額に対し、どの程度の割合となっているかをみることにより財政構造の弾力性を判断するものである。

平成23年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度と比べると2.1ポイント上昇の92.6%となり、第11表のように、8年連続で90%を上回っている。主な内訳をみると、人件費充当分が33.4%(前年度32.9%)、公債費充当分が21.1%(同20.7%)となっている。なお、減収補填債特例分及び臨時財政対策債の発行額を経常収支比率算出上の分母から除いた場合の経常収支比率は、103.4%(前年度103.4%)となっている。

第11表 経常収支比率の推移

また、第18図(その1)のように、分子である経常経費充当一般財源については、人件費、公債費が減少したものの、補助費等、扶助費の増加等により分子全体としては増加している。一方、分母である経常一般財源等については、地方税や臨時財政対策債の減少等により分母全体として減少している。

経常収支比率を団体種類別にみると、都道府県は前年度と比べると3.0ポイント上昇の94.9%、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。以下この項において同じ。)は前年度と比べると1.1ポイント上昇の90.3%となっている。

第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の増減状況(その1 合計)
第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の増減状況(その2 都道府県)
第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の増減状況(その3 市町村)

経常収支比率の段階別分布状況をみると、第12表のとおりである。経常収支比率が80%以上の団体数は、都道府県においては47団体の全ての団体(前年度同数)、市町村においては全体の88.0%を占める1,512団体(同1,393団体)となっている。

第12表 経常収支比率の段階別分布状況

イ 実質公債費比率及び公債費負担比率[資料編:第8表

地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性をみる場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費による負担度合いを判断するための指標として、実質公債費比率及び公債費負担比率が用いられている。

実質公債費比率は、地方債の元利償還金(繰上償還等を除く。)や公営企業債に対する繰出金などの公債費に準ずるものを含めた実質的な公債費相当額から、これに充当された特定財源及び一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除いたものが、標準財政規模(普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く。)に対し、どの程度の割合となっているかをみるものである。なお、実質公債費比率は、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(平成19年法律第94号。以下「地方公共団体財政健全化法」という。)において、健全化判断比率の一つとして位置付けられている。

平成23年度の実質公債費比率(全団体の加重平均)は、前年度と比べると0.2ポイント低下の11.8%となっている。

公債費負担比率は、公債費充当一般財源(地方債の元利償還金等の公債費に充当された一般財源)が一般財源総額に対し、どの程度の割合となっているかを示す指標であり、公債費がどの程度一般財源の使途の自由度を制約しているかをみることにより、財政構造の弾力性を判断するものである。

平成23年度の公債費負担比率(全団体の加重平均)は、前年度と比べると0.2ポイント上昇の18.6%となっている。

近年の公債費負担比率の推移は、第19図のとおりである。

第19図 公債費充当一般財源及び公債費負担比率の推移

公債費負担比率は、平成3年度以降上昇し、15年度に19.4%に達した後、概ね横ばいの傾向にあり、21年度に低下に転じたものの、23年度は再び上昇している。

(6)将来の財政負担

地方公共団体の財政状況をみるには、単年度の収支状況のみでなく、地方債、債務負担行為等のように将来の財政負担となるものや、財政調整基金等の積立金のように年度間の財源調整を図り将来における弾力的な財政運営に資するために財源を留保するものの状況についても、併せて把握する必要がある。これらの状況は、次のとおりである。

ア 地方債現在高[資料編:第100表

平成23年度末における地方債現在高は143兆1,926億円で、前年度末と比べると0.8%増(前年度末1.7%増)となっている。

地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、第20図のとおりである。

第20図 地方債現在高の歳入総額等に対する割合の推移

地方債現在高は、昭和50年度末では歳入総額の0.44倍、一般財源総額の0.88倍であったが、地方税収等の落込みや減税に伴う減収の補填、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことに伴い、それぞれの割合は平成4年度末以降急増し、また、13年度からの臨時財政対策債の発行等があったことにより、依然として高い水準で推移している。平成23年度末では歳入総額の1.43倍、一般財源総額の2.58倍となっている。

近年の地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移は、第21図のとおりである。地方債現在高の目的別構成比は、一般単独事業債(29.8%)、臨時財政対策債(25.2%)の順となっている。前年度末の割合と比べると、一般単独事業債が1.2ポイント低下する一方、臨時財政対策債が3.1ポイント上昇しており、平成13年度以降、臨時財政対策債の構成比が上昇の傾向にある。地方債現在高の借入先別の構成比は、市場公募債(28.9%)、政府資金(25.1%)、市中銀行資金(25.1%)の順となっている。前年度末の割合と比べると、近年の公的資金の縮減及び市場における地方債資金の調達の推進等に伴い、政府資金が0.7ポイント低下する一方、市場公募債は1.1ポイント上昇している。

第21図 地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移

地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては87兆2,875億円、市町村においては55兆9,051億円で、前年度末と比べるとそれぞれ1.8%増(前年度末2.9%増)、0.9%減(同0.2%減)となっている。

イ 債務負担行為額[資料編:第101表

地方公共団体は、将来の支出を約束するために、債務負担行為を行うことができる。

この債務負担行為は、数年度にわたる建設工事、土地の購入等の場合のように翌年度以降の経費支出が予定されているものと、債務保証又は損失補償のように債務不履行等の一定の事実が発生したときに支出されるものとに大別することができる。

これらの債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額をみると、平成23年度末では13兆381億円で、前年度末と比べると6.2%増(前年度末0.9%増)となっている。

翌年度以降支出予定額を目的別にみると、第22図のとおりである。

第22図 債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額の目的別構成比の推移

翌年度以降支出予定額を団体種類別にみると、都道府県においては5兆5,835億円、市町村においては7兆4,546億円で、前年度末と比べるとそれぞれ5.6%増(前年度末1.8%減)、6.6%増(同3.0%増)となっている。

ウ 積立金現在高[資料編:第102表

地方公共団体の積立金現在高の状況は、第13表のとおりである。

第13表 積立金現在高の状況

平成23年度末における積立金現在高は19兆5,191億円で、前年度末と比べると9.2%増(前年度末4.0%増)となっている。

積立金現在高の内訳をみると、年度間の財源調整を行うために積み立てられている財政調整基金は前年度末と比べると7.0%増(前年度末17.0%増)となっている。地方債の将来の償還費に充てるために積み立てられている減債基金は前年度末と比べると9.2%増(同22.9%増)となっている。将来の特定の財政需要に備えて積み立てられているその他特定目的基金は前年度末と比べると10.4%増(同4.2%減)となっている。

積立金現在高を団体種類別にみると、都道府県においては7兆6,226億円、市町村においては11兆8,966億円で、前年度末と比べるとそれぞれ9.8%増(前年度末2.5%減)、8.9%増(同8.6%増)となっている。

エ 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担[資料編:第100表第102表

地方債現在高に債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担の推移は、第23図のとおりである。

第23図 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担の推移

平成23年度末における地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担は136兆7,115億円で、前年度末と比べると0.1%増(前年度末1.3%増)となっている。

団体種類別にみると、都道府県においては85兆2,484億円、市町村においては51兆4,632億円で、前年度末と比べるとそれぞれ1.4%増(前年度末3.1%増)、1.9%減(同1.4%減)となっている。

オ 普通会計が負担すべき借入金残高[資料編:第100表

普通会計が将来にわたって負担すべき借入金という観点からは、地方債現在高のほか、交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「交付税特別会計」という。)借入金及び地方公営企業において償還する企業債のうち、経費負担区分の原則等に基づき、普通会計がその償還財源を負担するものについても併せて考慮する必要がある。

この観点から、交付税特別会計借入金残高と企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものを地方債現在高に加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第24図のとおりである。

第24図 普通会計が負担すべき借入金残高の推移

これをみると、平成23年度末には、普通会計が負担すべき借入金残高は200兆3,557億円で、前年度末と比べると0.3%増(前年度末0.6%増)となっている。

また、その内訳は、地方債現在高が143兆1,926億円、交付税特別会計借入金残高が33兆5,173億円、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものが23兆6,458億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.8%増(前年度末1.7%増)、0.3%減(同増減なし)、1.9%減(同4.7%減)となっている。

(7)決算の背景

ア 平成23年度の経済見通しと国の予算

(ア)経済見通しと経済財政運営の基本的態度

「平成23年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成22年12月22日に閣議了解、23年1月24日に閣議決定された。この中で、平成22年度の我が国経済は、リーマンショック後の経済危機を克服し、外需や政策の需要創出・雇用下支え効果により持ち直していたものの、急速な円高の進行や海外経済の減速懸念により、22年夏以降、先行きの不透明感が強まり、同年秋から足踏み状態にあるとした上で、こうした厳しい経済情勢の中、「3段構えの経済対策」に基づき、予備費を活用したステップ1(「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」(平成22年9月10日閣議決定)における「緊急的な対応」)、補正予算によるステップ2(「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」(平成22年10月8日閣議決定))を策定し、景気・雇用の両面から経済の下支えを図ってきたところであり、23年度の経済財政運営の基本的態度として、これら経済対策の着実な推進を図るとともに、「成長と雇用」に重点を置いた23年度の予算・税制等からなるステップ3に「切れ目なく」つなぎ、「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)が目指すデフレ脱却と雇用を起点とした経済成長の実現を確かなものとしていくこと等が掲げられた。

以上のような経済財政運営を前提として、雇用・所得環境の改善が民間需要に波及する動きが徐々に強まることから、景気は持ち直し、経済成長の好循環に向けた動きが進むことが見込まれた。こうした結果、平成23年度の我が国経済は、国内総生産の実質成長率が1.5%程度、名目成長率は1.0%程度と、それぞれ2年連続でプラス成長になると見込まれた。

(イ)国の予算

政府は、平成22年12月16日に「平成23年度予算編成の基本方針」を閣議決定した。その概要は以下のとおりである。

a 平成23年度予算編成の基本理念

予算編成の基本理念として、「経済成長」、「財政健全化」、「社会保障改革」を一体的に実現し、元気な日本を復活させるための礎を築く必要があるとした上で、「「成長と雇用」の実現、デフレ脱却への道筋」「国民の生活を第一に」「確固たる戦略に基づく予算編成」を掲げ、こうした理念の下、「新成長戦略」を着実に推進すると同時に、「財政運営戦略」(平成22年6月22日閣議決定)に定めた財政規律の下に、成長と雇用拡大を実現することを基本方針とした。

b 重点分野の基本的方向性

重点分野の基本的方向性として、「新成長戦略の実現へ向けて」と「マニフェスト主要事項等の重要な政策課題(子ども・子育て支援、農業予算、一括交付金、雇用対策)」が掲げられた。

このうち、「新成長戦略の実現へ向けて」においては、急速な円高の進行等の厳しい経済情勢にスピード感を持って対応し、デフレ脱却と景気の自律的回復に向けた道筋を確かなものとしていくために、「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」のステップ3として、平成23年度予算における新成長戦略の本格実施を図ることとされた。

c 徹底した予算の組替えと無駄の削減

徹底した予算の組替えと無駄の削減として、「元気な日本復活特別枠の配分基本方針」等が掲げられた。

d 財政運営戦略の着実な実現

平成23年度予算は、財政運営戦略及び中期財政フレームの下で編成される最初の本予算であり、財政健全化へ向けた日本政府の姿勢を示すものとして、内外の市場関係者も注視しており、市場の信認を確保していくため、財政運営戦略・中期財政フレームに定めた規律の下に、財政健全化目標達成へ向けた第一歩とするとした上で、23年度当初予算における新規国債発行額は、過去最高の水準である22年度当初予算の水準を上回らないものとするよう、全力をあげることとされた。

また、基礎的財政収支対象経費については、中期財政フレームに定めるとおり、平成22年度当初予算の水準である約71兆円(「歳出の大枠」)を上回らないものとすることとされ、これを達成するため、特別枠への要望額の相当程度の絞り込みや、マニフェスト施策財源見合検討事項についての調整を行うことを検討することとされた。

平成23年度予算は、以上のような方針により編成され、平成23年1月24日に第177回国会に提出され、3月29日に成立した。

これによると、平成23年度の一般会計予算の規模は92兆4,116億円で、前年度当初予算と比べると1,124億円増加(0.1%増)となっており、基礎的財政収支対象経費は70兆8,625億円で、前年度当初予算と比べると694億円減少(0.1%減)となった。なお、公債の発行予定額は44兆2,980億円で、前年度当初発行予定額と比べると50億円減少(0.0%減)となっており、公債依存度は47.9%となった。

また、財政投融資計画の規模は14兆9,059億円で、前年度計画額と比べると3兆4,510億円減少(18.8%減)となった。

イ 地方財政計画

平成23年度においては、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、経費全般について徹底した節減合理化に努める一方、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うとともに、地域活性化・雇用・子育て施策等に取り組むために必要な経費を計上するほか、歳入面においては、「財政運営戦略」に基づき、交付団体始め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、実質的に平成22年度の水準を下回らないよう確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとし、次の方針に基づき平成23年度地方公共団体の歳入歳出総額の見込額を策定した。

(ア)地方税制については、地域主権改革を推進する中で、地方がその役割を十分に果たすため、地方税を充実し、税源の偏在性が少なく、税収が安定的な地方税体系を構築していく。平成23年度税制改正では、個人住民税の諸控除や税負担軽減措置等の見直し等を行うほか、法人実効税率の引下げに当たっては、全体として地方の税収に極力影響を与えないよう配慮するとともに、航空機燃料税の税率引下げに伴い地方に減収が生じないよう、航空機燃料譲与税の譲与割合を引き上げることとし、所要の措置を講じる。

(イ)地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、「地方交付税法」(昭和25年法律第211号)第6条の3第2項に基づく制度改正を講じることとし、次の措置について所要の法律改正を行う。

a 平成23年度から平成25年度までの間は、平成22年度までと同様、財源不足が建設地方債(財源対策債)の増発等によってもなお残る場合には、この残余を国と地方が折半して補填することとし、国負担分については国の一般会計からの加算により、地方負担分については、「地方財政法」(昭和23年法律第109号)第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

b これに基づき、平成23年度の財源不足見込額14兆2,452億円については、次により補填する。

(a)地方交付税については、国の一般会計加算により5兆8,866億円(うち地方の財源不足の状況等を踏まえた別枠の加算額1兆500億円、地域活性化・雇用等対策費の上乗せ分に対応した別枠の加算額2,150億円、「地方交付税法」附則第4条の2第2項の加算額867億円、同条第3項の加算額6,695億円、平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)に定める平成23年度における「乖離是正分加算額」500億円及び臨時財政対策特例加算額3兆8,154億円)増額する。また、平成23年度に予定されていた交付税特別会計借入金の償還7,593億円を後年度へ繰り延べるとともに、交付税特別会計剰余金5,000億円を活用する。

(b)「地方財政法」第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)については、地方財政の健全化の視点も踏まえ、地方交付税の増額により一般財源総額を適切に確保した上で、大幅に縮減(1兆5,476億円)し、6兆1,593億円発行する。なお、臨時財政対策債の配分方法については、不交付団体を含む全団体に配分する方式(各団体の人口を基礎として算出)を廃止し、平成22年度に一部導入された、不交付団体には配分しない方式(各団体の財源不足額を基礎として算出)に移行する。

(c)建設地方債(財源対策債)を9,400億円増発する。

c 地方財政の健全化を図る観点から、交付税特別会計借入金33兆6,173億円について平成23年度から平成62年度までの償還計画を新たに作成した上で、以下のとおり着実な償還を行う。

(a)平成23年度から平成25年度までの間は、交付税特別会計借入金利払費の縮減により確保された財源等を活用し、各年度1,000億円を償還する。

(b)平成26年度以降平成32年度までの間は、償還額を毎年度1,000億円増額する。

(c)平成33年度以降は、財政運営戦略を踏まえた国の公債等残高の縮減の取組と歩調を合わせて償還する(30年間各年度1兆円の償還を基本)。

d 上記の結果、平成23年度の地方交付税については、17兆3,734億円(前年度に比し4,799億円、2.8%の増)を確保する。

e なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等1,103億円については、法律の定めるところにより平成29年度以降の地方交付税の総額に加算する。

(ウ)地方債については、極めて厳しい地方財政の状況の下で、地域に必要なサービスを確実に提供できるよう地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、地方公共団体が、必要性の高い分野への重点的な投資を行えるよう、公的資金の重点化と市場における地方債資金の調達を引き続き推進しつつ、所要の地方債資金を確保する。

(エ)地域主権改革に沿って、地域経済の振興や雇用創出を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 平成22年度の歳出の特別枠「地域活性化・雇用等臨時特例費」(9,850億円)に代えて、子どもに対する現物給付等の子育て施策、住民生活に光をそそぐ事業、地球温暖化対策暫定事業等を勘案した2,150億円を上乗せした歳出の特別枠「地域活性化・雇用等対策費」1兆2,000億円を計上する。

b 投資的経費に係る地方単独事業費については、これまで単独事業費に計上してきた社会資本整備総合交付金を活用した道路事業を、公共事業費へ移し替えることとするとともに、国の公共投資関係費の取扱い等も勘案しつつ、前年度に比し5.0%減額(移替え影響除き)することとする一方で、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

c 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体における行政改革の状況等を踏まえ行政経費の縮減を行う一方、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

d 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

e 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(オ)平成24年度までの3年間で1.1兆円規模の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金及び旧公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、高金利の地方債の公債費負担を軽減する措置を講じる。

(カ)地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行う。

(キ)地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減等に取り組むとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

以上のような方針に基づいて策定した平成23年度の地方財政計画(平成23年1月28日閣議決定、同日国会に提出)の規模は、82兆5,054億円で、前年度と比べると3,786億円増加(0.5%増)となった。

歳入についてみると、地方税は33兆4,037億円で、前年度と比べると8,941億円増加(2.8%増)(道府県税4.4%増、市町村税1.6%増)、地方譲与税は2兆1,749億円で、前年度と比べると2,578億円増加(13.4%増)、地方特例交付金は3,877億円で、前年度と比べると45億円増加(1.2%増)、地方交付税は17兆3,734億円で、前年度と比べると4,799億円増加(2.8%増)、国庫支出金は12兆1,745億円で、前年度と比べると6,082億円増加(5.3%増)、地方債(普通会計分)は11兆4,772億円で、前年度と比べると2兆167億円減少(14.9%減)となった。

一方、歳出についてみると、給与関係経費は21兆2,694億円で、前年度と比べると4,170億円減少(1.9%減)となった。なお、地方財政計画における職員数については、25,623人の純減としている。一般行政経費は30兆8,226億円で、前年度と比べると1兆3,895億円増加(4.7%増)となり、一般行政経費にかかる地方単独事業費は13兆8,601億円で、前年度と比べると316億円増加(0.2%増)となった。公債費は13兆2,423億円で、前年度と比べると1,602億円減少(1.2%減)、投資的経費は11兆3,032億円で、前年度と比べると6,042億円減少(5.1%減)となった。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は5兆3,558億円で、前年度と比べると1兆5,125億円減少(22.0%減)となった。

なお、平成23年度の地方債計画の規模は13兆7,340億円で、前年度と比べると2兆1,636億円減少(13.6%減)となった。

ウ 財政運営の経過

平成23年度においては、平成23年3月11日に東日本大震災が発生したこと等を受けて、東日本大震災からの復興施策を含む累次の補正予算が編成された。

(ア)平成23年度補正予算(第1号)

a 補正予算(第1号)

東日本大震災からの早期復旧に向けて編成された、平成23年度補正予算(第1号)は、平成23年4月22日に閣議決定、4月28日に国会に提出され、5月2日に成立した。

同補正予算においては、東日本大震災からの早期復旧に向け、年度内に必要と見込まれる経費を計上し、歳出面で、東日本大震災関係経費4兆153億円等を計上したほか、既定経費の減額3兆7,107億円を計上した。また、歳入面で、税外収入3,051億円を増額計上した。

この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成23年度当初予算に対し、3,051億円増加し92兆7,167億円となった。

また、補正予算(第1号)とともに、東日本大震災に対処するため、地方公共団体等に対する特別の財政援助等について定める「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(以下「東日本大震災財特法」という。)が平成23年5月2日に成立し(平成23年法律第40号)、東日本大震災では大規模な地震・津波による被害が甚大かつ広範囲に及んでおり、また、被災した地方公共団体の財政基盤が総じて脆弱であることなどを踏まえ、対象となる地方公共団体について「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(昭和37年法律第150号)等の指定基準に比べ、より広い範囲の地方公共団体が特定被災地方公共団体等として指定され、併せて国庫補助対象となる事業が拡大されるとともに、4月27日に成立した「地方税法の一部を改正する法律」(平成23年法律第30号)等による地方税の減収額を埋める等のため、地方債の特例として歳入欠かん等債が発行できること等とされた。

b 補正予算(第1号)等に係る地方財政措置

補正予算(第1号)においては、東日本大震災関係経費の追加に伴う地方負担が生じること、また、東日本大震災により被害を受けた地方公共団体等において地方税等の減収が見込まれたことから、これらに関連して以下のとおり地方財政措置を講じた。

(a)特別交付税の増額

東日本大震災による被害状況は極めて甚大であり、補正予算(第1号)に係る災害弔慰金の地方負担額、行政機能の維持や被災者支援に係る応急対応経費及び被災地域の応援に要する経費等について多額の経費が見込まれたことから、これらの特別の財政需要に対応するため、平成23年度分の地方交付税の総額に1,200億円を加算し、その全額を特例として特別交付税とする措置を講じる。

以上の措置を講じるための、「平成23年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律」が平成23年5月2日に成立した(平成23年法律第41号)。

(b)追加の財政需要等に係る財政措置

(1) 追加の投資的経費等に係る財政措置

補正予算(第1号)により平成23年度に追加される災害復旧事業等投資的経費に係る地方負担額等については、地方負担額の100%まで地方債(災害復旧事業債及び補正予算債)を充当できることとし、後年度においてその元利償還金について地方交付税により措置する。

(2) 地方税等の減収に係る財政措置

東日本大震災に伴う地方税等の減免及び地方税法の一部改正等による地方税等の減収額を埋めるために発行する歳入欠かん債については、後年度においてその元利償還金について地方交付税により措置する。

(3) 地方債の対象とならない経費に係る財政措置

地方債の対象とならない経費については、特別交付税により適切に対処する。

(c)地方公営企業に係る財政措置

東日本大震災に係る地方公営企業の災害復旧事業については、「東日本大震災財特法」等により国の特別の補助等を行うこととされたが、これに併せて、当該施設の早期復旧を図るとともに企業経営の安定を図るため、東日本大震災に係る一般会計からの繰出基準の特例を設けることとし、当該繰出金について災害復旧事業債を充当可能とする。具体的には、通常の建設改良について一般会計で負担することとされている部分に、残余の部分の1/2を加え、復旧事業に係る企業負担が当該地方公営企業の収益に比し1/2を超える場合は、さらに嵩上げを行った額を加えたものを一般会計からの繰出し対象とする。

また、東日本大震災により被害を受けた地方公営企業における資金不足額については、資金手当のための公営企業債を充当できることとするとともに、これに係る利子の1/2の額に一般会計からの繰出しを認め、当該繰出金について特別交付税により措置する。

(イ)平成23年度補正予算(第2号)

a 補正予算(第2号)

平成23年度補正予算(第2号)は、平成23年7月5日に閣議決定、7月15日に国会に提出され、7月25日に成立した。

同補正予算においては、歳出面で、東日本大震災の当面の復旧対策に万全を期すため、原子力損害賠償法等関係経費2,754億円、被災者支援関係経費3,774億円、東日本大震災復旧・復興予備費8,000億円、地方交付税交付金5,455億円等を追加計上した。また、歳入面で、前年度剰余金受入1兆9,988億円を追加計上した。なお、被災者支援関係経費のうち3,000億円は被災者生活再建支援金補助金であるが、これは「被災者生活再建支援法」(平成10年法律第66号)に基づいて支給される被災者生活再建支援金について、東日本大震災に限った特例措置として国の補助率が2分の1から10分の8に引き上げられたこと等によるものである。

この結果、一般会計予算の規模は歳入歳出とも平成23年度の補正予算(第1号)による補正後予算に対し、1兆9,988億円増加し、94兆7,155億円となった。

b 補正予算(第2号)に係る地方財政措置

補正予算(第2号)においては、平成22年度の国税決算に伴う剰余金の法定率分の地方交付税の増が見込まれるとともに、歳出の追加に伴う地方負担が生じることなどから、これらに関連して以下のとおり地方財政措置を講じた。

(a)地方交付税の追加等

平成23年度分の地方交付税の増5,455億円(平成22年度清算分)については、補正予算(第1号)による補正後の予算における普通交付税の総額と「地方交付税法」第10条第2項本文の規定による普通交付税の算定額の合計額との差額分を除き、同法第6条の3第1項の規定に基づき、同補正予算による補正後の特別交付税総額に加算(4,571億円)する。なお、この加算額は10月26日に行った普通交付税の再算定の結果、4,573億円となった。

(b)追加の財政需要等に対する財政措置

(1) 補正予算(第2号)により追加された災害復旧事業等投資的経費に係る地方負担額については、地方負担額の100%まで地方債(補助災害復旧事業債及び補正予算債)を充当できることとし、後年度においてその元利償還金について地方交付税により措置する。

(2) 被災者生活再建支援金について国の補助率を10分の8とする特例措置の地方負担に対処するための都道府県による被災者生活再建支援基金への追加拠出分(342億円)についてはその全額を特別交付税により措置するとともに、今後の災害に備えて基金規模を維持するために積み戻すこととした額(538億円)についてはその95%を特別交付税により措置することとしたほか、地方債の対象とならない経費については、特別交付税により適切に対処する。

(ウ)復興の基本方針と復興財源の確保

a 東日本大震災からの復興の基本方針等

平成23年4月に復興に向けた指針策定のための復興構想について幅広く議論するために設置された東日本大震災復興構想会議が、6月25日に「復興への提言〜悲惨の中の希望〜」を取りまとめ、また、6月20日に、東日本大震災からの復興についての基本理念、復興のための資金の確保、復興特別区域制度の整備等を定めた「東日本大震災復興基本法」が成立した(平成23年法律第76号)。

平成23年7月29日、東日本大震災復興対策本部(本部長:内閣総理大臣)は、上記提言を踏まえ、「東日本大震災復興基本法」第3条に基づき、「東日本大震災からの復興の基本方針」を決定した。このうち、地方財政に関わる主なものは以下のとおりである。

(a)被災各県の計画を踏まえ、阪神・淡路大震災の例も参考としつつ、復興期間は10年間とし、復興需要が高まる当初の5年間を「集中復興期間」と位置付ける。

(b)平成27年度末までの5年間の「集中復興期間」に実施すると見込まれる施策・事業(平成23年度補正予算(第1号)等及び補正予算(第2号)を含む)の事業規模については、国・地方(公費分)合わせて、少なくとも19兆円程度と、また、10年間の復旧・復興対策の規模(国・地方の公費分)については、少なくとも23兆円程度と見込まれる。

(c)5年間の「集中復興期間」中の復旧・復興事業に充てる財源は、平成23年度補正予算(第1号)等及び補正予算(第2号)における財源に加え、歳出の削減、国有財産売却のほか、特別会計、公務員人件費等の見直しや更なる税外収入の確保及び時限的な税制措置により13兆円程度を確保する。

(d)先行する復旧・復興需要を賄う一時的なつなぎとして発行する復興債については、その発行のあり方について十分検討するとともに、従来の国債とは区分して管理する。その償還期間は、集中復興期間及び復興期間を踏まえ、今後検討する。

(e)平成23年度第3次補正予算の編成に合わせ復興債の発行及び税制措置の法案を策定し国会に提出する。税制措置の具体的内容については、8月以降、税制調査会において検討し、具体的な税目、年度毎の規模等を組み合わせた複数の選択肢を東日本大震災復興対策本部に報告した上で、政府・与党において改めて検討を行い、同本部において決定する。

(f)以上のとおり、国・地方(公費分)合わせて少なくとも19兆円規模の施策・事業に充てる財源を確保するとともに、地方負担分について地方交付税の加算を行う等により確実に地方の復興財源の手当てを行う。

(g)地方公共団体が、自ら策定する復興プランの下、復興に必要な各種施策が展開できる、使い勝手のよい自由度の高い交付金を創設する。地域において、基金設置等により、制度の隙間を埋めて必要な事業の柔軟な実施が可能となる資金を確保できるよう、必要な支援を実施する。

b 復興財源等の確保

復興財源等の確保に関しては、平成23年10月7日、「平成23年度第3次補正予算及び復興財源の基本的方針」が閣議決定された。主な内容は以下のとおりである。

(a)平成23年度第3次補正予算については、総額概ね12兆円程度の歳出の追加を行う。このうち、東日本大震災関係経費(年金臨時財源の補填のための経費を除く)は、概ね9兆円程度となる。

(b)具体的には、東日本大震災からの本格的な復興に資するため、復興対策等事業費、災害関連融資関係経費、全国防災対策費、除染等経費、地方交付税の加算、年金臨時財源の補填のための経費について、東日本大震災関連経費として概ね11兆円台半ばの金額を計上する。これらの歳出を賄うため、復興財源となる歳出削減等を図るほか、復興債を発行する。

(c)5年間の集中復興期間における残り13兆円程度の財源確保については、歳出削減及び税外収入による財源確保額が5兆円程度であることを前提に時限的な税制措置を講じる。

以上により、集中復興期間中に実施すると見込まれる施策・事業の事業規模19兆円程度に充てる財源は、平成23年度補正予算(第1号)等及び補正予算(第2号)における財源(6兆円程度)、歳出削減及び税外収入の確保(5兆円程度)並びに時限的な税制措置(8兆円程度)とされ、税制措置の総額としては、年金臨時財源の補填分(2.5兆円程度)及びB型肝炎対策のための財源(0.7兆円程度)を加えた11.2兆円程度(なお、10年間トータルの税外収入等は段階を経て7兆円になり、結果として増税額は9.2兆円)とされた。このうち、全国の地方公共団体で行われることが予定されている緊急防災・減災事業の地方負担分0.8兆円程度(推計)については、地方税において税制上の措置を講じることとされた。

これらの措置を講ずるため、国税における時限的な税制措置、復興債の発行等を内容とする「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案」及び地方税における時限的な税制措置を内容とする「東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源の確保に係る地方税の臨時特例に関する法律案」が国会に提出され、衆議院での修正を経て、平成23年11月30日に成立し(国税関係が平成23年法律第117号、地方税関係が平成23年法律第118号)、国税については、復興特別所得税(25年間)及び復興特別法人税(3年間)により9.7兆円程度を、地方税については、個人住民税の均等割の標準税率の引上げ(10年間)及び平成23年度税制改正事項(個人住民税の退職所得10%税額控除廃止)により0.8兆円程度を確保することとされた。また、復興債の償還期限は平成49年度とされた。

(エ)平成23年度補正予算(第3号)

a 補正予算(第3号)

平成23年度補正予算(第3号)は、平成23年10月21日に閣議決定、10月28日に国会に提出され、11月21日に成立した。

同補正予算においては、歳出面で、東日本大震災・原子力災害からの本格的な復興予算として、「東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき、真に復興に資する施策を重点的に措置する等のため、災害救助等関係経費941億円、災害廃棄物処理事業費3,860億円、公共事業等の追加1兆4,734億円、災害関連融資関係経費6,716億円、地方交付税交付金1兆6,635億円、東日本大震災復興交付金1兆5,612億円、原子力災害復興関係経費3,558億円、全国防災対策費5,752億円、その他の東日本大震災関係経費2兆4,631億円、年金臨時財源の補填2兆4,897億円、台風第12号等に係る災害対策費3,203億円、B型肝炎関係経費480億円等を追加計上したほか、既定経費の減額1,850億円、東日本大震災復旧・復興予備費の減額2,343億円の修正減少額を計上した。また、歳入面で、復興債11兆5,500億円、税外収入1,332億円を追加計上等した。

以上の結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成23年度の補正予算(第2号)による補正後予算に対し、11兆6,832億円増加し、106兆3,987億円となった。

なお、東日本大震災復興交付金は、著しい被害を受けた地域における被災地方公共団体による復興地域づくりを支援することを目的として、「東日本大震災復興特別区域法」(平成23年法律第122号)に基づき創設されたものであり、その概要は、以下のとおりである。

(a)被災地方公共団体の復興地域づくりに必要な公共事業等を基幹事業(5省40事業)として幅広く一括化するとともに、地方公共団体の負担を軽減するため、当該事業に係る地方負担額の50%をさらに国費により措置する。

(b)基幹事業に係る事業費の35%を上限に、その効果を増大させる等復興のために基幹事業と関連する事業を効果促進事業等として実施できることとし、その経費の80%を国費により措置する。

b 補正予算(第3号)に係る地方財政措置等

補正予算(第3号)においては、東日本大震災の復旧・復興に当たって時限的な税制措置を講ずることなどにより特別に財源を確保した上で対処することとされたことを踏まえ、東日本大震災に係る復旧・復興事業等に係る地方負担額等について、震災復興特別交付税を創設(1兆6,635億円)して措置するとともに、全国的に緊急に実施する防災・減災事業に係る地方負担額等について、以下のとおり地方財政措置等を講じた。

(a)震災復興特別交付税の創設

東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税により、補正予算(第3号)並びに補正予算(第1号及び第2号)等に係る地方負担額等及び「地方税法」の改正等に伴う地方税の減収分等の全額を措置する。その際、これまで地方債により措置することとしていた地方負担額等についても、地方債に代え、震災復興特別交付税で全額措置する。

以上に掲げる措置を講じる等のための「平成23年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律等の一部を改正する法律」が平成23年11月30日に成立した(平成23年法律第116号)。

(b)全国的に緊急に実施する防災・減災事業に係る措置等

補正予算(第3号)により追加された全国防災対策費に係る地方負担額等(補正予算(第1号)により追加された学校施設環境改善交付金事業に係る地方負担額を含む。)については以下のとおり措置する。

(1) 全国防災対策費のうち投資的経費に係る地方負担額については、その100%まで地方債(緊急防災・減災事業(補助・直轄))を充当できることとし、後年度における元利償還金の80%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(2) 上記(1)に準ずる地方単独事業のうち投資的経費に係る起債対象事業費については、その100%まで地方債(緊急防災・減災事業(単独))を充当できることとし、後年度における元利償還金の70%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(3) 地方債の対象とならない経費については、特別交付税により適切に対処する。

また、上記施策に要する費用に充てるために平成23年度に起こした地方債で総務大臣が指定したものに係る元利償還に要する経費を、平成24年度以降において、普通交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入する。

(c)台風第12号等による災害への対応に係る追加の財政需要に対する財政措置

補正予算(第3号)により追加された台風第12号等による災害への対応に伴う災害復旧事業等投資的経費に係る地方負担額については、地方負担額の100%まで地方債(災害復旧事業債及び補正予算債)を充当できることとし、後年度においてその元利償還金について地方交付税により措置する。

なお、新潟・福島豪雨による災害及び台風第12号等による災害については、激甚災害指定を行い、公共土木施設や農地等の災害復旧事業への国庫補助の嵩上げ措置等を講じる。

(d)地方公営企業に係る財政措置

東日本大震災に係る地方公営企業の災害復旧事業については、一般会計からの繰出基準の特例を設けて、当該繰出金に対して災害復旧事業債を充当できることとしていたが、これらについてはその全額を震災復興特別交付税により措置する。

また、東日本大震災復興交付金を受けて施行する地方公営企業関係の復興事業について、一般会計からの繰出基準の特例を設けて、当該繰出金についてはその全額を震災復興特別交付税により措置する。

さらに、全国的に緊急に実施する地方公営企業関係の防災・減災事業について、一般会計からの繰出基準の特例を設けて、当該繰出金については緊急防災・減災事業債(補助)を充当可能とする。

(オ)平成23年度補正予算(第4号)

a 補正予算(第4号)

平成23年度補正予算(第4号)は、平成23年12月20日に閣議決定、24年1月24日に国会に提出され、2月8日に成立した。

同補正予算においては、歳出面で、災害対策費67億円、生活保護費等負担金等1,339億円、中小企業金融関係経費7,413億円、高齢者医療・子育て・福祉等関係経費4,939億円、環境対応車普及促進対策費3,000億円、国際分担金及び拠出金1,875億円、食と農林漁業の再生に必要な経費1,574億円、地方交付税交付金3,608億円等を追加計上したほか、既定経費の減額1兆4,227億円の修正減少額を計上した。また、歳入面で、税収1兆1,030億円、税外収入88億円等を追加計上等した。

この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成23年度の補正予算(第3号)による補正後予算に対し、1兆1,118億円増加し、107兆5,105億円となった。

b 補正予算(第4号)に係る地方財政措置

補正予算(第4号)においては、国税の増収見込みに伴い地方交付税の増が見込まれるとともに、歳出の追加に伴う地方負担が生じたところであるが、これに対しては以下のとおり地方財政措置を講じた。

(a)地方交付税

補正予算(第4号)により増額された平成23年度分の地方交付税の額3,608億円(23年度国税5税の自然増等に伴うもの)については、その全額を24年度分として交付すべき地方交付税の総額に加算して交付する措置を講じる。

この措置を講じるため、「東日本大震災に対処するための平成23年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律の一部を改正する法律」が平成24年2月8日に成立した(平成24年法律第1号)。

(b)追加の財政需要

(1) 補正予算(第4号)により追加された農業生産基盤保全管理等推進整備費等投資的経費に係る地方負担額については、地方負担額の100%まで地方債を充当できることとし、後年度における元利償還金の50%(当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては、原則として当初の算入率)を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、原則として、単位費用により措置する。

(2) 生活保護費等地方債の対象とならない経費については、地方財政計画に計上された追加財政需要額(4,700億円)の一部により対応する。

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