2 社会保障・税一体改革
平成24年2月17日に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」においては、社会保障の機能強化を確実に実施するとともに社会保障全体の持続可能性の確保を図ることにより、全世代を通じた国民生活の安心を確保する「全世代対応型」社会保障制度の構築を目指すとされた。また、社会保障は、子育て、医療、介護などの多くが地方公共団体を通じて国民に提供されており、地方公共団体の役割も極めて大きいことから、国と地方が一体となって、安定的に実施していくことが重要であり、今回の改革は、国・地方双方が協力しながら推進していく必要があることが示された。
大綱の閣議決定後、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」及び「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案」(以下「税制抜本改革法案」という。)を含む、いわゆる社会保障・税一体改革関連法案が平成24年3月30日(「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案」は同年4月13日)に閣議決定され、国会に提出された。
税制抜本改革法案において、地方財政に関連する内容は次のとおりである。
(1)消費税率(国・地方)は、平成26年4月より8%へ、平成27年10月より10%へ段階的に引上げを行う。
(2)地方消費税の現行の税率100分の25(消費税率換算1%)を、平成26年4月より63分の17(同1.7%)へ、平成27年10月より78分の22(同2.2%)へ引き上げる。
(3)消費税に係る現行の地方交付税率29.5%(消費税率換算1.18%)を、平成26年度から22.3%(同1.40%)、平成27年度から20.8%(同1.47%)、平成28年度から19.5%(同1.52%)とする。
(4)引上げ分の地方消費税(市町村交付金を含む。)については、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費その他社会保障施策に要する経費に充てるものとする。
(5)引上げ分の地方消費税に係る市町村交付金については、上記(4)のとおり社会保障財源化されることを踏まえ、全額人口により按分して交付する。なお、現行分の地方消費税に係る市町村交付金の交付基準(人口:従業者数=1:1により按分)は変更しない。
(6)消費税率(国・地方)の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、デフレ状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講じる。
(7)法律の公布後、消費税率(国・地方)の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、消費税率(国・地方)の引上げに係る改正規定のそれぞれ施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、上記(6)の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講じる。
また、税制抜本改革法案とあわせて国会に提出された社会保障改革関係の関連法案は、次のとおりである。
- 子ども・子育て支援法案
- 総合こども園法案
- 子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案
- 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案
- 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案
提出された社会保障・税一体改革関連法案は衆議院に設置された「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会」において一括審議された。その後、民主党・自由民主党・公明党の3党による協議が行われ、6月15日に法案に関する修正等について3党間で合意された。
このうち税制抜本改革法案については、衆議院で修正が行われた。地方消費税に関係する部分としては、税率の引上げに当たっての措置(上記(6)及び(7))として、「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、地方消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。」という規定が追加された。
また、社会保障改革関連法案については、「総合こども園法案」が事実上取下げとなり、議員提案により「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「認定こども園法改正法案」という。)が提出されるとともに、その他の4法案については衆議院で修正が行われた。さらに、社会保障制度改革の基本的事項及び社会保障制度改革国民会議の設置等を定めた「社会保障制度改革推進法案」が議員提案により国会へ提出された。
修正された税制抜本改革法案及び社会保障改革関連の4法案に、「社会保障制度改革推進法案」と「認定こども園法改正法案」を加えた8法案は、6月26日に衆議院で可決された後、参議院での審議を経て、8月10日に可決成立した。
今後の社会保障制度改革については、「社会保障制度改革推進法」において、法律の施行後1年(平成25年8月21日)以内に、社会保障制度改革国民会議の審議の結果等を踏まえて、必要な法制上の措置を講じることとされている。