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平成30年版
地方財政白書
(平成28年度決算)

2 平成30年度の地方財政

(1)平成30年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

「平成30年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成29年12月19日閣議了解、平成30年1月22日閣議決定された。この中で、以下の平成29年度の経済動向、平成30年度の経済見通し及び平成30年度の経済財政運営の基本的態度が示された。

(ア)平成29年度の経済動向

平成29年度の我が国経済をみると、アベノミクスの推進により、雇用・所得環境の改善が続く中で、緩やかに回復している。海外経済が回復する下で、輸出や生産の持ち直しが続くとともに、個人消費や民間設備投資が持ち直すなど民需が改善し、経済の好循環が実現しつつある。

政府は、持続的な経済成長の実現に向け、「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として、少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、平成29年12月8日に「新しい経済政策パッケージ」を閣議決定した。あわせて、追加的財政需要に適切に対処するため、平成29年12月22日に平成29年度補正予算を閣議決定した。雇用・所得環境の改善が続く中、各種政策の効果もあって、景気は緩やかな回復が続くことが見込まれる。

物価の動向をみると、原油価格の上昇の影響等により、消費者物価(総合)は前年比で上昇している。

この結果、平成29年度の実質国内総生産(実質GDP)成長率は1.9%程度、名目国内総生産(名目GDP)成長率は2.0%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は0.7%程度の上昇と見込まれる。

(イ)平成30年度の経済見通し

平成30年度の我が国経済は、海外経済の回復が続く下、「平成30年度の経済財政運営の基本的態度」の政策効果もあいまって、雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が更に進展する中で、民需を中心とした景気回復が見込まれる。

物価については、景気回復により、需給が引き締まる中で上昇し、デフレ脱却に向け前進が見込まれる。

この結果、平成30年度の実質GDP成長率は1.8%程度、名目GDP成長率は2.5%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は1.1%程度の上昇と見込まれる。

なお、先行きのリスクとしては、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響等に留意する必要がある。

(ウ)平成30年度の経済財政運営の基本的態度

今後の経済財政運営に当たっては、引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本とし、600兆円経済の実現を目指す。

少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として、2020年に向けて取り組んでいく。世界に胎動する「生産性革命」を牽引し、これを世界に先駆けて実現することを、2020年度までの最重要課題と位置づけ、3年間を集中投資期間として期限を区切り、その実現に取り組む。また、「人づくり革命」は長期的な課題であるが、2020年度までの間に、これまでの制度や慣行にとらわれない新しい仕組みづくりに向けた基礎を築く。

成長と分配の好循環により、国民全体が成長を享受できる。「全世代型」の社会保障制度により、子育てや介護に対する不安なしに、誰にでも活躍の場があり、お年寄りも若者も安心して暮らすことができる社会を目指す。

財政健全化については、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指すという目標を堅持し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。この目標の達成に向け、これまでの経済・財政一体改革の取組を精査した上で、本年の「経済財政運営と改革の基本方針」において、プライマリーバランスの黒字化の達成時期及びその裏付けとなる具体的な計画を示す。平成30年度予算は、「基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」における集中改革期間の最終年度であり、同計画に掲げる歳出改革等を着実に実行する。

日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する。

イ 国の予算

政府は、「平成30年度予算編成の基本方針」(平成29年12月8日閣議決定)及び「平成30年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に基づいて平成29年12月22日、平成30年度予算政府案を閣議決定した。

平成30年度予算は、以下のような基本的な考え方により編成された。

(ア)平成30年度予算の基本的な考え方

a 安倍内閣は、長く続いたデフレからの脱却を目指し、経済の再生を最優先課題と位置付け、アベノミクス「三本の矢」を推進してきた。平成27年10月からはアベノミクスの第2ステージに移り、一億総活躍社会の実現を目指し、「三本の矢」を強化して「新・三本の矢」(戦後最大の名目GDP600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロ)を放ち、少子高齢化という構造問題に正面から立ち向かい、成長と分配の好循環の実現に向け取り組んでいる。

b これまでのアベノミクスによる施策の実施により、政権発足前に比べ、GDPは名目、実質ともに増加しており、企業収益は過去最高を記録するとともに、就業者数の増加、賃上げなど、雇用・所得環境は大きく改善し、経済の好循環が実現しつつある。

c 他方、経済の先行きについては、緩やかに回復していくことが期待されるものの、海外経済の不確実性や、金融資本市場の変動の影響等に留意する必要がある。あわせて、アベノミクスの成果を十分に実感できていない地域の隅々までその効果を波及させ、経済の好循環を更に加速させるように、施策を実施していく必要がある。

d また、我が国財政は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれ、また、国債費が毎年度の一般会計歳出総額の2割以上を占めるなど、引き続き、厳しい状況にある。

e 政府は、引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本とし、600兆円経済の実現を目指す。このため、「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として少子高齢化という最大の壁に立ち向かっていく。「新しい経済政策パッケージ」を推進するとともに、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指すという目標を堅持し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。この目標の達成に向け、これまでの経済・財政一体改革の取組を精査した上で、プライマリーバランスの黒字化の達成時期及びその裏付けとなる具体的な計画を併せて示す。

f 誰もが生きがいを持って充実した生活を送ることができる一億総活躍社会の実現に向け、アベノミクス「新・三本の矢」に沿った施策を推進する。

第一の矢である「戦後最大の名目GDP600兆円」に向けては、地方創生、国土強靱化、女性の活躍、働き方改革も含め、あらゆる政策を総動員することにより、デフレ脱却を確実なものとしつつ、経済の好循環をより確かなものとする。第二の矢である「希望出生率1.8」、第三の矢である「介護離職ゼロ」に向けては、子育て・介護の環境整備等の取組を進め、国民一人ひとりの希望の実現を支え、将来不安を払拭し、少子高齢化社会を乗り越えるための潜在成長率を向上させる。

g 「新・三本の矢」はそれぞれ相互に密接に関連しており、それらを一体的に推進することで、成長と分配の好循環を確立し、日本経済全体の持続的拡大均衡を目指す。

(イ)平成30年度予算の編成についての考え方

a 平成30年度予算編成に向けては、これまでにも増して、構造改革は無論として、金融政策に成長指向の財政政策をうまく組み合わせることに留意する必要がある。

財政健全化への着実な取組を進める一方、上記の基本的考え方に沿って、「子育て安心プラン」を踏まえた保育の受け皿整備など「人づくり革命」の推進や「生産性革命」の実現に向けた企業による設備や人材への力強い投資、研究開発・イノベーションの促進など重要な政策課題について、必要な予算措置を講じるなど、メリハリの効いた予算編成を目指す。

b 誰もが自分の夢を追求できる、誰もが自分の能力を伸ばしていく、誰にも居場所があって頑張っていける、そういう気持ちになれる日本を創りあげるため、アベノミクス「新・三本の矢」に沿って、一億総活躍社会実現の取組を加速する。

また、東日本大震災、熊本地震をはじめ、各地の災害からの復興や防災対応の強化を着実に進める。

c 平成30年度予算は、「経済・財政再生計画」における集中改革期間の最終年度であり、同計画に掲げる歳出改革等を着実に実行する。改革工程表を十分踏まえて歳出改革を着実に推進するとの基本的考え方に立ち、その取組を的確に予算に反映する。

また、予算編成に当たっては、我が国財政の厳しい状況を踏まえ、引き続き、歳出全般にわたり、聖域なき徹底した見直しを推進する。地方においても、国の取組と基調を合わせ徹底した見直しを進める。

d 歳出改革は、経済再生と財政健全化に資するよう、政策効果が乏しい歳出は徹底して削減し、政策効果の高い歳出に転換する考え方に立って、「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」、IT化などの「公共サービスのイノベーション」という3つの取組を中心に着実に推進する。引き続き、行政事業レビュー等を通じて各府省の取組を後押しするとともに、地方自治体も含めた「見える化」の徹底・拡大や優良事例の全国展開に取り組む。また、PDCAサイクル(計画(Plan)―実施(Do)―点検・評価(Check)―施策の改善(Action)のサイクル)の実効性を高めるため、証拠に基づく政策立案(EBPM,Evidence-based Policymaking)の視点を踏まえ、点検、評価自体の質を高める取組が重要であり、指標や分析のオープンデータ化を積極的に進めるとともに、政策効果の測定につながる統計等の充実や早期公表に努める。経済・財政一体改革推進委員会においては、改革工程表に沿った諸改革の進捗状況を検証する。

このような方針に基づいて編成された平成30年度の一般会計予算案の規模は97兆7,128億円で、前年度当初予算と比べると2,581億円増加(0.3%増)となっており、基礎的財政収支対象経費は74兆4,108億円で、前年度当初予算と比べると4,846億円増加(0.7%増)となっている。

また、東日本大震災復興特別会計の予算規模は2兆3,593億円で、前年度当初予算(2兆6,896億円)と比べると3,303億円減少(12.3%減)となっている。

財政投融資計画の規模は14兆4,631億円で、前年度計画額と比べると6,651億円減少(4.4%減)となっている。

(2)地方財政計画

平成30年度においては、通常収支分について、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、子ども・子育て支援や地方創生、公共施設等の適正管理に対応するために必要な経費を計上するとともに、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行う一方、国の取組と基調を合わせた歳出改革を行うこととしている。また、歳入面においては、「基本方針2015」で示された「経済・財政再生計画」を踏まえ、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、平成29年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとしている。

また、東日本大震災分については、復旧・復興事業及び全国防災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとしている。

なお、地方財政審議会からは、平成29年5月31日に「未来につながる地域社会に向けた地方税財政改革についての意見」(以下「平成29年5月地財審意見」という。)及び平成29年12月12日に「今後目指すべき地方財政の姿と平成30年度の地方財政への対応についての意見」(以下「平成29年12月地財審意見(地方財政関係)」という。)(附属資料参照)が述べられている。

以上を踏まえ、次の方針に基づき平成30年度地方団体の歳入歳出総額の見込額を策定している。

ア 通常収支分

(ア)地方税制については、平成30年度地方税制改正では、地方消費税の清算基準について抜本的な見直しを行うほか、土地に係る固定資産税等の負担調整措置の延長、個人住民税の基礎控除等の見直し、たばこ税の税率の引上げ等の税制上の措置を講ずることとしている。また、わが国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るため、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、森林環境税(仮称)及び森林環境譲与税(仮称)の創設を決定している。

(イ)地方財源不足見込額については、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

a 財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等により対処することとした残余については、平成29年度に講じた平成31年度までの制度改正に基づき、国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については、地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

b これに基づき、平成30年度の財源不足見込額6兆1,783億円については、次により補填する。

(a)地方交付税については、平成28年度分の精算による2,245億円の減額を繰り延べるほか、国の一般会計加算により7,022億円(地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額3,367億円、平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)及び平成28年12月19日付け総務・財務両大臣覚書第8項に定める平成30年度における「乖離是正分加算額」2,000億円並びに臨時財政対策特例加算額1,655億円)増額する。

また、交付税特別会計剰余金750億円を活用するとともに、地方公共団体金融機構法附則第14条の規定により財政投融資特別会計に帰属させる地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金4,000億円を財政投融資特別会計から交付税特別会計に繰り入れる。

(b)地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を3兆9,865億円発行する。

(c)建設地方債(財源対策債)を7,900億円増発する。

c 上記の結果、平成30年度の地方交付税については、16兆85億円(前年度比3,213億円、2.0%減)を確保する。

d 交付税特別会計の借入金については、特別会計に関する法律附則第4条第1項に基づき、4,000億円の償還を実施する。

(ウ)地方債については、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方財源の不足に対処するための措置を講じ、また、地方団体が公共施設等の適正管理、防災・減災対策及び地域の活性化への取組を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

この結果、地方債計画(通常収支分)の規模は、11兆6,456億円(普通会計分9兆2,186億円及び公営企業会計等分2兆4,270億円)とする。

なお、地方公共団体金融機構資金については、地方公共団体金融機構法附則第25条に基づく地方公共団体金融機構の業務の在り方全般に関する検討の結果を踏まえ、現行制度に係る同機構の枠組みの下で、引き続き所要額を確保することとしている。

(エ) 地方創生の推進、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 「まち・ひと・しごと創生事業費」については、引き続き1兆円(前年度同額)を計上する。

b 投資的経費に係る地方単独事業費については、公共施設等の老朽化対策をはじめ適正管理を推進するため、「公共施設等適正管理推進事業費」について、内容を拡充し4,800億円(前年度比1,300億円増)に増額するとともに、引き続き喫緊の課題である防災・減災対策に取り組めるよう「緊急防災・減災事業費」を5,000億円(前年度同額)確保することとし、全体で前年度に比し3.2%増額し、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

c 「重点課題対応分」については、引き続き2,500億円(前年度同額)を計上する。

d 社会保障・税一体改革による「社会保障の充実」として、子ども・子育て支援、医療・介護サービスの提供体制改革、医療・介護保険制度改革等に係る措置を講じることとし、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

e 一般行政経費に係る地方単独事業費については、社会保障関係費の増等を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

f 消防力の充実、防災・減災対策等の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策に対し所要の財政措置を講じる。

g 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(オ) 地方公営企業の経営基盤の強化を図るとともに、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(カ) 地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減、事務事業の見直しや民間委託など引き続き行財政運営全般にわたる改革を推進する。

イ 東日本大震災分

(ア)復旧・復興事業

a 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、直轄・補助事業に係る地方負担分等を措置するため、4,227億円を確保する。また、一般財源充当分として77億円を計上する。

b 地方債については、復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

この結果、地方債計画(東日本大震災分)における復旧・復興事業の規模は、53億円(普通会計分32億円及び公営企業会計等分21億円)とする。

c 直轄事業負担金及び補助事業費、地方自治法に基づく職員の派遣、投資単独事業等の地方単独事業費並びに地方税法等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出等について所要の事業費1兆1,079億円を計上する。

(イ)全国防災事業

全国防災事業については、地方税の臨時的な税制上の措置(平成25年度〜平成35年度)による地方税の収入見込額として728億円を計上するとともに、一般財源充当分として306億円を計上する。

以上のような方針に基づいて策定した平成30年度の地方財政計画の規模は、通常収支分は86兆8,973億円で、前年度と比べると2,775億円増加(0.3%増)となり、東日本大震災分は、復旧・復興事業が1兆1,079億円で、前年度と比べると1,763億円減少(13.7%減)、全国防災事業が1,035億円で、前年度と比べると89億円増加(9.4%増)となっている。

通常収支分についてみると、歳入では、地方税は39兆4,294億円で、前年度と比べると3,631億円増加(0.9%増)(道府県税1.7%減、市町村税3.2%増)、地方譲与税は2兆5,754億円で、前年度と比べると390億円増加(1.5%増)、地方特例交付金は1,544億円で、前年度と比べると216億円増加(16.3%増)、地方交付税は16兆85億円で、前年度と比べると3,213億円減少(2.0%減)、国庫支出金は13兆6,512億円で、前年度と比べると1,126億円増加(0.8%増)、地方債(普通会計分)は9兆2,186億円で、前年度と比べると279億円増加(0.3%増)となっている。

歳出では、給与関係経費は20兆3,144億円で、前年度と比べると65億円減少(0.0%減)となっている。なお、地方財政計画における職員数については、84人の純減としている。一般行政経費は37兆522億円で、前年度と比べると4,932億円増加(1.3%増)となり、このうち一般行政経費にかかる地方単独事業費は14兆614億円で、前年度と比べると401億円増加(0.3%増)となっている。公債費は12兆2,064億円で、前年度と比べると3,838億円減少(3.0%減)、投資的経費は11兆6,180億円で、前年度と比べると2,610億円増加(2.3%増)となっている。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は5兆8,076億円で、前年度と比べると1,779億円増加(3.2%増)となっている。

東日本大震災分(復旧・復興事業)についてみると、歳入では、震災復興特別交付税は4,227億円で、前年度と比べると276億円減少(6.1%減)、国庫支出金は6,688億円で、前年度と比べると1,371億円減少(17.0%減)などとなっている。歳出では、一般行政経費は2,950億円で、前年度と比べると1,250億円減少(29.8%減)、投資的経費は7,810億円で、前年度と比べると531億円減少(6.4%減)などとなっている。

東日本大震災分(全国防災事業)についてみると、歳入では地方税は728億円で、前年度と比べると8億円増加(1.1%増)などとなっている。歳出では公債費は1,035億円で、前年度と比べると89億円増加(9.4%増)となっている。

また、平成30年度の地方債計画の規模は、通常収支分が11兆6,456億円(普通会計分9兆2,186億円、公営企業会計等分2兆4,270億円)で、前年度と比べると199億円増加(0.2%増)となっている。東日本大震災分は、復旧・復興事業が53億円(普通会計分32億円、公営企業会計等分21億円)で、前年度と比べると135億円減少(71.8%減)となっている。

(3)地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

(ア)通常収支分

地方公営企業については、経営基盤の強化を図るとともに、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図る必要がある。

このため、平成30年度においては、次のような措置を講じることとしている。

公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆5,584億円(前年度2兆5,256億円)を計上する。

地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆4,270億円(前年度2兆4,350億円)を計上する。

各事業における地方財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

a 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入する。

b 地方公営企業を取り巻く厳しい経営環境を踏まえ、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を図るため、抜本的な改革の検討等については、公営企業の経営に精通した人材を活用した経営支援活動に要する経費について特別交付税措置を講じる。また、経営戦略の策定に要する経費については、平成30年度までを期限として特別交付税措置を講じる。この措置においては、水道事業の広域化等の調査・検討に要する経費について、重点的な支援を講じる。なお、水道事業における高料金対策及び下水道事業における高資本費対策に係る特別交付税措置については、経営戦略を策定していることを要件としている。

また、公営企業会計の適用の推進について、平成31年度までの集中取組期間において、下水道事業及び簡易水道事業を重点事業として公営企業会計の適用が円滑に実施されるよう、適用に要する経費について、地方財政措置を講じる。

c 水道事業については、簡易水道事業の統合推進に要する経費について、地方交付税措置を講じる。また、統合後の上水道事業における経営基盤の強化等を図るため、地方財政措置を講じる。

d 病院事業については再編・ネットワーク化に伴う施設・設備の整備費等について地方財政措置を講じるほか、不採算医療・特殊医療等に対しても地方交付税措置を講じる。

(イ)東日本大震災分

地方公営企業に係る復旧・復興事業については、一般会計から公営企業会計への繰出基準の特例を設け、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととし、当該繰出金に対しては、その全額(復興事業のうち東日本大震災復興交付金(効果促進事業)は95%)を震災復興特別交付税により措置することとしており、地方財政計画において180億円を計上する。また、復旧・復興事業に係る地方債については、地方債計画において公営企業会計等分21億円を計上する。

イ 国民健康保険事業

国民健康保険制度については、「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第31号)に基づき、平成30年度から都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体となるが、国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア)都道府県が、都道府県内の市町村の財政の状況その他の事情に応じた財政調整を行うため、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第72条の2に基づき、一般会計から当該都道府県の国民健康保険に関する特別会計に繰り入れられる都道府県繰入金(給付費等の9%分)については、その所要額(6,469億円)について地方交付税措置を講じる。

(イ)国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部(都道府県3/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(4,494億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用(2,598億円)に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、地方負担(1,299億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)高額医療費負担金(3,683億円)については、都道府県国保に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、都道府県国保1/2)を負担することとし、地方負担(921億円)について地方交付税措置を講じる。

(オ)国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じる。

(カ)国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図ることを目的として、40歳から74歳までの国保被保険者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業(517億円)に対して、国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、都道府県国保1/3)を負担することとし、地方負担(172億円)について地方交付税措置を講じる。

ウ 後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度については、実施主体である広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア)保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図る(均等割2割・5割・7割軽減)とともに、元被扶養者の保険料軽減を行う(均等割5割軽減)ため、都道府県及び市町村が負担(都道府県3/4、市町村1/4)することとし、その所要額(3,089億円)について地方交付税措置を講じる。

なお、「今後の社会保障改革の実施について」(平成28年12月22日社会保障制度改革推進本部決定)により、低所得者に対する所得割の軽減特例措置について、平成30年4月に廃止(低所得者に対する均等割の軽減特例措置については継続)するとともに、元被扶養者に対する均等割の軽減特例措置について、平成30年4月に5割軽減とし、平成31年4月に廃止することとされている。

また、70歳から74歳までの窓口負担軽減措置については、平成26年度から新たに70歳になる者から段階的に法定の負担割合(2割)に見直すこととされており、所要額が平成30年度予算に計上されている。

(イ)高額医療費負担金(3,100億円)については、広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、広域連合1/2)を負担することとし、地方負担(775億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金を設置しその拠出金(193億円)に対して国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、広域連合1/3)を負担することとし、地方負担(64億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)実施主体である広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じる。

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