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平成30年版
地方財政白書
(平成28年度決算)

3 公共施設等の適正管理の推進

(1)公共施設等総合管理計画及び個別施設計画の策定

我が国においては、高度経済成長期に大量の公共施設等が建設されており、今後、それらの公共施設等が一斉に更新時期を迎えることが見込まれている。一方、地方財政は依然として厳しい状況にあり、各地方公共団体において、所有している全ての公共施設等の維持補修・更新財源を確保していくことは、一層困難となる可能性がある。また、人口減少や少子高齢化等により、公共施設等の利用需要が変化していくことが見込まれるため、各地方公共団体は、地域における公共施設等の最適配置の実現に向けて取り組んでいく必要がある。

国においては、平成24年12月の笹子トンネル事故を契機に、社会インフラの老朽化対策が国・地方公共団体・民間事業者を挙げた喫緊の課題として強く認識されるようになり、平成25年11月には、「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議」において、「インフラ長寿命化基本計画」が策定された。同計画において、各インフラの管理者は、インフラの維持管理・更新等を着実に推進するための中期的な取組の方向性を明らかにする「インフラ長寿命化計画(行動計画)」を平成28年度までに策定すること、さらに、行動計画に基づき個別施設ごとの具体的な対応方針を定める「個別施設毎の長寿命化計画(個別施設計画)」を32年度までに策定することとされている。

総務省においては、平成26年4月に総務大臣通知により、各地方公共団体に対し、地方公共団体の行動計画に当たる公共施設等総合管理計画(以下「総合管理計画」という。)を策定し、公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進するよう要請した。平成29年9月30日時点の調査によれば、都道府県及び政令指定都市では100%、市区町村でも99.4%の団体において、総合管理計画を策定している。

総合管理計画は、公共施設等の現況や将来見通しを基に公共施設等の総合的かつ計画的な管理に関する基本的な方針を定めるものである。総合管理計画を策定した地方公共団体においては、これに基づき、各施設について、集約化・複合化を行い新たな施設として活用していくか、現在の施設を引き続き有効活用していくかなど、今後の在り方を十分に検討し、個別施設計画の策定を着実に進める必要がある。

なお、「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議」において取りまとめた個別施設計画の策定状況のうち、主なものは、第52表のとおりである。

(2)公共施設等総合管理計画の充実と推進

前述のとおり、ほとんどの地方公共団体が総合管理計画を策定したところであるが、今後は、総合管理計画に基づく公共施設等の適正管理の具体的な取組を進めるとともに、総合管理計画策定後に新たに得られた情報を基に、総合管理計画の充実を図っていく必要がある。

総合管理計画に記載することとされている公共施設等の維持管理・修繕・更新等に係る中長期的な経費の見込みについて、地方公会計の固定資産台帳により得られる情報や個別施設計画の策定過程で得られる点検・診断の結果、対策費用等を反映させるとともに、これらの経費に充当可能な財源として、地方債や基金等を的確に見込んでいくことが必要である。さらに、これらの経費の見込みについては、経年や団体間の比較可能性を高めることで、効果的な公共施設マネジメントに取り組んでいくことが重要である。

また、各地方公共団体においては、総合管理計画において設定した数値目標の達成状況や個別施設計画の策定状況の進捗管理を含め、全庁的な推進体制を構築することが重要である。

併せて、地方公共団体において、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、公共施設等の適正管理を行う中でユニバーサルデザイン化を進める観点から、総合管理計画にユニバーサルデザイン化の推進方針を位置付けることが求められる。

総務省では、これらについて、平成30年2月に「公共施設等総合管理計画の策定にあたっての指針」(平成26年4月22日)を改訂し、地方公共団体に通知したところであり、地方公共団体においては、同指針に基づき総合管理計画の不断の見直しを行うことにより、公共施設等の総合的かつ計画的な管理に取り組むことが求められる。

また、水道・下水道をはじめとする公営企業についても、人口減少等に伴う料金収入の減少や施設の老朽化に伴う更新需要の増大などの厳しい経営環境を踏まえ、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を図りつつ、計画的な施設管理を行うことが必要である。

(3)公共施設等の適正管理の推進に係る具体的な取組

平成27年度以降、総合管理計画に基づいて実施される既存の公共施設の集約化・複合化事業や転用事業を支援していくため、公共施設最適化事業債や転用事業に係る地域活性化事業債といった地方財政措置が講じられてきた。

今後は、個別施設計画に基づく施設の維持管理・更新等に係る取組が本格化することが見込まれていることから、総務省においては、地方公共団体における公共施設等の適正管理の取組を支援するため、平成29年度から、「公共施設最適化事業債」、転用事業に係る「地域活性化事業債」及び除却事業に対する地方債措置を再編し、既存施設をより長く活用するための「長寿命化事業」、コンパクトシティの形成に向けたまちづくりを進めるための「立地適正化事業」及び熊本地震の被害状況を踏まえ、災害時の市町村の庁舎機能を確保するための「市町村役場機能緊急保全事業」を追加するなど内容を拡充し、「公共施設等適正管理推進事業債」として地方財政措置を講じている。

さらに、平成30年度からは、公共施設等の老朽化対策等に備えた基金の積立てが増加していることなどを踏まえ、各団体がより積極的に老朽化対策に取り組めるよう、公共施設等適正管理推進事業債の内容を拡充することとしている。具体的には、従来、道路、農業水利施設を対象としていた「長寿命化事業」の対象施設として河川、港湾等を加え、また、「公共施設等適正管理推進事業債」の対象事業として地方公共団体の実施する「ユニバーサルデザイン化事業」を新たに加えることとしている。また、財政力の弱い団体においても、必要な事業を着実に実施できるよう、長寿命化、転用、立地適正化及びユニバーサルデザイン化事業については、財政力に応じて地方債の元利償還金に対する交付税措置率を引き上げることとしている。

各地方公共団体においては、この地方財政措置や基金などの財源を活用しながら、公共施設等の適正管理に係る取組を積極的に進めていくことが求められる。

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