総務省トップ > 政策 > 白書 > 平成30年版地方財政白書(表紙) > 第3部 > 1 人づくり革命と働き方改革

画像に関するアクセシビリティ対応について
図やグラフなどの画像の内容の詳細については、総務省自治財政局財務調査課にお問い合わせください。
電話番号:03-5253-5111(内線5649)

平成30年版
地方財政白書
(平成28年度決算)

第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題への対応

1 人づくり革命と働き方改革

(1)人づくり革命

我が国は、健康寿命が世界一の長寿社会を迎えており、今後の更なる健康寿命の延伸も期待される。10年前に我が国で生まれた子供たちの半分は、107歳まで生きるという研究もある。こうした人生100年時代に、高齢者から若者まで、全ての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくるためには、幼児教育から小・中・高等学校教育、高等教育、更には社会人の学び直しに至るまで、生涯を通じて切れ目なく、質の高い教育を用意し、いつでも有用なスキルを身につけられる学び直しの場が、安定的な財源の下で提供される必要があるほか、高齢者向けの給付が中心となっている我が国の社会保障制度を、子供・若者から高齢者まで誰もが安心できる「全世代型の社会保障」へ大きく転換していく必要がある。

その重要な鍵を握るのが「人づくり革命」、人材への投資である。「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)では、「人づくり革命」を断行し、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入することで、社会保障制度をお年寄りも若者も安心できる全世代型へと改革し、子育て、介護などの現役世代の不安を解消し、希望出生率1.8、介護離職ゼロの実現を目指すとされた。

ア 幼児教育の無償化

子育て世帯を応援し、社会保障を全世代型へ抜本的に変えるため、幼児教育の無償化を一気に加速する。広く国民が利用している3歳から5歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化する。なお、子ども・子育て支援新制度の対象とならない幼稚園については、公平性の観点から、同制度における利用者負担額を上限として無償化する。

幼稚園、保育所、認定こども園以外の無償化措置の対象範囲等については、専門家の声も反映する検討の場を設け、現場及び関係者の声に丁寧に耳を傾けつつ、保育の必要性及び公平性の観点から、今年夏までに結論を出す。

0歳〜2歳児についても、当面、住民税非課税世帯を対象として無償化を進めることとし、現在は、住民税非課税世帯の第2子以降が無償とされているところ、この範囲を全ての子供に拡大する。

イ 待機児童の解消

待機児童の解消は、待ったなしの課題である。

2018年度から2022年度末までの5年間で、女性就業率80%に対応できる32万人分の保育の受け皿を整備する「子育て安心プラン」を策定したところである。同プランをより速く実現させるため、同プランを前倒しし、2020年度末までに32万人分の受け皿整備を行う。併せて、保育士の確保や他産業との賃金格差を踏まえた処遇改善に更に取り組むこととし、今年度の人事院勧告に伴う賃金引上げに加え、2019年4月から更に1%(月3000円相当)の賃金引上げを行う。

ウ 高等教育の無償化

貧困の連鎖を断ち切り、格差の固定化を防ぐため、どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば専修学校、大学に進学できる社会へと改革する。所得が低い家庭の子供たち、真に必要な子供たちに限って高等教育の無償化を実現する。このため、授業料の減免措置の拡充と併せ、給付型奨学金の支給額を大幅に増やす。

エ 私立高等学校の授業料の実質無償化

家庭の経済状況にかかわらず、幅広く教育を受けられるようにする観点から、年収590万円未満世帯を対象とした私立高等学校授業料の実質無償化を実現する。

オ 介護人材の処遇改善

介護人材確保のための取組をより一層進めるため、経験・技能のある職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を進める。

具体的には、他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めることを前提に、介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1000億円程度を投じ、処遇改善を行う。

また、障害福祉人材についても、介護人材と同様の処遇改善を行う。

カ これらの施策を実現するための安定財源

これらの施策について、安定財源を確保した上で進める。平成31年10月に予定されている消費税率10%への引上げにより5兆円強の税収となるが、この増収分を教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等と、財政再建とに、それぞれ概ね半分ずつ充当する。前者について、新たに生まれる1.7兆円程度を、幼児教育の無償化、「子育て安心プラン」の前倒しによる待機児童の解消、保育士の処遇改善、高等教育の無償化、介護人材の処遇改善に充てる。

また、事業主が拠出する子ども・子育て拠出金を0.3兆円増額し、平成30年度から実施する「子育て安心プラン」の実現に必要な企業主導型保育事業と保育の運営費(0歳〜2歳児相当分)に充てることとしている。

(2)働き方改革

「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)を踏まえて策定された「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)では、日本経済再生に向けた最大のチャレンジは働き方改革であるとし、働く人の視点に立って、労働制度の抜本改革を行うこととされた。

働き方改革の実現に向けて、各項目について示された具体的な対応策に取り組んでいくこととしている。

<1>非正規雇用の処遇改善:同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備、非正規雇用労働者の正社員化などキャリアアップの推進

<2>賃金引上げと労働生産性向上:企業への賃上げの働きかけや取引条件改善・生産性向上支援など賃上げしやすい環境の整備

<3>長時間労働の是正:法改正による時間外労働の上限規制の導入、勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備、健康で働きやすい職場環境の整備

<4>柔軟な働き方がしやすい環境整備:雇用型テレワークのガイドライン刷新と導入支援、非雇用型テレワークのガイドライン刷新と働き手への支援、副業・兼業の推進に向けたガイドライン策定やモデル就業規則改定などの環境整備

<5>病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進:治療と仕事の両立に向けたトライアングル型支援などの推進、子育て・介護と仕事の両立支援策の充実・活用促進、障害者等の希望や能力を活かした就労支援の推進

<6>外国人材の受入れ:外国人材受入れの環境整備

<7>女性・若者が活躍しやすい環境整備:女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援や職業訓練などの充実、パートタイム女性が就業調整を意識しない環境整備や正社員女性の復職など多様な女性活躍の推進、就職氷河期世代や若者の活躍に向けた支援・環境整備の推進

<8>雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実:女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援や職業訓練などの充実、転職・再就職者の採用機会拡大に向けた指針策定・受入れ企業支援と職業能力・職業情報の見える化、給付型奨学金の創設など誰にでもチャンスのある教育環境の整備

<9>高齢者の就業促進:継続雇用延長・定年延長の支援と高齢者のマッチング支援

なお、働き方改革は全国的に取り組むべき課題であるとともに、各地域で地域の実情に応じて対応をしていくことも重要である。

また、地方公共団体における働き方改革も重要な課題であり、「働き方改革実行計画」の工程表においては、地方公務員について、時間外勤務縮減、「ゆう活」やテレワークの活用など柔軟な働き方、男性職員の育児休業取得促進に係る先進事例の横展開等を通じ、地方公共団体における働き方改革の取組に対して支援を行うこととしている。

ページトップへ戻る