世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

Republic of Chile チリ(最終更新:令和4年度)

市場の動向

インターネット・ブロードバンド市場

固定ブロードバンド市場は、ケーブルテレビ大手VTRと通信大手テレフォニカ・チリの2強状態が続いており、Subtelによると、2022年6月現在、それぞれ29.8%と27.0%の市場シェアを占めている。

近年は、広帯域化への設備投資が進み、テレフォニカ・チリやエンテル・チリ、Grupo GTD、クラロ・チリといった事業者がVDSLやFTTx、HFC方式を利用した高速インターネット接続サービスを大都市圏で提供開始しており、新規加入者を増やしている。

2012年に100万以上の加入数があったADSLは、2022年6月には約9万にまで減少した。対照的に、FTTxの加入数は2017年ごろから急激に増加し、2022年6月現在はケーブル・モデムの約146万を抜いて約270万に達した。Subtelによると、2022年6月末現在、接続技術別の加入者シェアはFTTxが61.2%、ケーブル・モデムが33.2%、ADSLが2.2%となっている。

固定ブロードバンド加入数及び加入率(2017-2021年)

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
固定BB加入数(千) 3,062 3,251 3,430 3,764 4,280
固定BB加入率 16.7% 17.4% 18.0% 19.5% 22.0%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

移動電話市場

テレフォニカ系のモビスター・チリ、エンテルPCS(親会社エンテル・チリ)、クラロ・チリ、英国投資会社Novatorの傘下であるWOM(「Word of Mouth」の略語、旧ネクステル・チリ)の4社で市場シェアの9割以上を独占している。Subtelによると、2022年6月末現在、各社の市場シェアは、エンテルPCSが32.0%、モビスター・チリが24.8%、クラロ・チリが20.5%、WOMが20.1%となっている。

2021年2月には、5G周波数オークションが実施され、WOM、エンテル・チリ、モビスター・チリが免許を落札した。2021年12月までに国内初の5Gサービスをエンテル・チリとモビスター・チリが開始し、2022年3月にWOMが5Gサービスの提供を開始した。

移動電話加入数及び加入率(2017-2021年)

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
移動電話加入数(千) 23,013 25,179 25,052 25,068 26,572
移動電話加入率 125.3% 134.6% 131.6% 129.9% 136.3%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

固定電話市場

移動体通信サービスの普及拡大により、固定電話(PSTN)離れが加速している。700MHz帯を活用したLTEサービスのカバレッジが拡大したことにより、特に固定系の通信サービスが行き届いていない地域では、移動体通信事業者が4G網を通じて固定電話の代替サービスを提供し始めている。また、VoIPの普及拡大も固定電話離れの要因の一つに挙げられ、全国に約120万の加入者がいる。

市内電話事業者は大小合わせて数十社存在するが、テレフォニカ・チリと米メディア大手リバティ・グローバル傘下のケーブルテレビ事業者であるVTR、エンテル・チリの3社寡占状態が続いている。Subtelによると、2022年6月現在、テレフォニカ・チリが35.1%、VTRが21.6%、エンテル・チリが18.4%の市場シェアを占めている。

固定電話加入数及び加入率(2017-2021年)

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
固定電話加入数(千) 3,200 2,997 2,750 2,568 2,511
固定電話加入率 17.4% 16.0% 14.4% 13.3% 12.9%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

放送市場

地上放送

7社が全国放送を実施。チリ国営放送(TVN)、メガビジョン、チリビジョン、Channel 13の四つの放送局が最も視聴されている。TVNは政府から財政的に独立しており、運営資金の約95%は広告収入によるものである。

有料放送

Subtelによると、2022年6月現在、有料放送サービス加入数は約337万で、加入率は17.0%である。衛星放送の加入数が約117万で、有料放送サービス加入数全体の34.9%を占める。ケーブルテレビの加入数は約219万で、有料放送サービス加入数の65.1%を占める。

重要政策動向

2021年5月、「国家衛星システム」の開発計画が発表された。米国実業家のイーロン・マスク氏率いる宇宙開発ベンチャー企業スペースXが開発を進める衛星ブロードバンド・プロジェクト「スターリンク」の拠点として、チリ国内の2か所(コキンボ州カレタ・シエラとロス・ラゴス州ソトモ)がラテンアメリカ初の国として選ばれたことが背景にある。

このプロジェクトでは、2024年までに10基の小型人工衛星が打ち上げられる。人工衛星はチリで製造され、2022年には人工衛星を監視する国立宇宙センターが設立される予定。2021年9月よりベータ版が提供されており、2022年第4四半期までに本格的なサービス提供を開始した。

基礎データ集

国の基礎データ

政体
立憲共和制
面積
75万6,626㎢
人口
1,949万人
首都
サンティアゴ
公用語
スペイン語

経済関連データ

通貨単位
1チリ・ペソ(CLP)=0.15円(2022年9月末)
会計年度
1月から1年間
GDP
3,170億5,851万 USD(2021年)

出所:World Bank, World Development Indicators Database

法律

通信 1982年電気通信法
放送 1982年電気通信法

監督機関

通信 運輸通信省/通信次官官房
放送 運輸通信省/通信次官官房、国家テレビ委員会