世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

Republic of Indonesia インドネシア(最終更新:令和5年度)

市場の動向

インターネット・ブロードバンド市場

2001年からADSLの商用サービスを開始し、Telekomunikasi Indonesia(Telkom)やケーブルテレビ事業者が、首都圏や大都市を中心にIP化、光化を進行させている。2019年以降、固定ブロードバンドの加入者数は、減少が続いている。2020年2月には、PT Supra Primatama Nusantar(ブランド名Biznet)が自社光ファイバー網を使ったIPTVサービスを開始した。

2010年からWiMAXで順次商用サービスが開始され、移動体通信事業者も4G網を使って、様々な無線ブロードバンド・サービスを提供している。無線ブロードバンドの高速化により、様々な関連のサービスが展開されている。そのため、政府が積極的に関与してインターネット関連企業を育成しようとしている。ジャカルタ特別州政府が、2020年9月より無料Wi-Fiサービスを提供するといった取り組みもある。

固定ブロードバンド加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
固定BB加入数(千) 8,874 10,284 11,722 12,419 13,444
固定BB加入率 3.3% 3.8% 4.3% 4.5% 4.9%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

移動電話市場

主要事業者はTelekomunikasi Selular(Telkomsel)、Indosat Ooredoo Hutchison(旧Indosat OoredooとHutchison 3(Tri)2022年合併)、XLアシアタである。3社で3億5,000万以上の加入があり、市場シェアの約90%を占める。

2014年にTelkomselから4Gの商用提供を開始した。2021年末時点で、国内の85%の村落については4Gでカバーされている。5Gについては、2021年に、TelkomselとIndosat Ooredoo Hutchison、XLアシアタが、ジャカルタ首都圏と主要都市で商用提供を開始した。2023年9月時点では、49都市で5Gネットワークが展開されており、MCIはさらなる普及を目指して、導入のためのインセンティブを準備することを発表している。さらに、5Gネットワークの導入において、世界第10位を目指している旨も発表している。

移動電話加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
移動電話加入数(千) 319,435 341,278 355,620 365,873 316,553
移動電話加入率 119.6% 126.6% 130.8% 133.7% 114.9%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

固定電話市場

Telkomを中心に市内電話サービスが提供されている。FWAによる固定電話の供給によって、加入者数が拡大した時期があったが、移動体通信網の高速化に伴い、加入者もTelkomに集中し、各事業者は厳しい状況にある。

島嶼国であるため、1976年以来、衛星を保有して電気通信サービスを提供している。パラパ・リングを中心とした光ファイバー網の整備も進行しつつあり、2019年に全県・市レベルでの接続が完成した。2020年9月に、フランス衛星会社タレス・アレーニア・スペース(Thales Alenia Space:TAS)と通信衛星「サトリア(Satellite Republic of Indonesia:SATRIA)」の共同開発を始めることで合意書を交わし、2023年6月に打ち上げに成功している。同衛星の通信容量は150Gbpとされており、現在の衛星では対応できていない地方の教育・医療等、国内14万5,000か所の公共施設のインターネット接続が可能とされている。

固定電話加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
固定電話加入数(千) 8,304 9,662 9,662 9,019 8,424
固定電話加入率 3.1% 3.6% 3.6% 3.3% 3.1%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

放送市場

地上放送

1962年にTelevisi Republik Indonesia(TVRI)が国営放送を開始、1989年からは商業放送事業者がサービスを開始した。規制緩和が進行したことで2016年には13のメディア・グループが競争するまでになり、放送局間の競争が激化し、グループの再編等が行われている。大手商業放送事業者にSurya Citra Televisi Indonesi(SCTV)、Rajawali Citra Televisi Indonesia(RCTI)、Indosiar Visual Mandiri(Indosiar)、Media Nusantara Citra(MNCTV)がある。

地上デジタル放送については、2010年にTVRIが、ジャカルタ、バンドン、スラバヤ、バタム島で開始し、2012年に民間事業者による地上デジタル放送が開始され、2021年末の人口カバー率は70.67%である。段階的なアナログ停波の完全実施を2024年に設定していたが、2020年成立の「雇用創出法」の影響を受けてアナログ停波の時期が2022年11月に前倒しされ、全国一斉にデジタル地上放送への移行を行われたが、家庭用変換機などの準備不足により、結果として、国内514地域のうち222地域で実施され、292地域でアナログ放送が継続となった。

有料放送

直接衛星放送については、MNC Vision(旧Indovision)が1994年にサービスを開始し、TransVision等もサービスを提供している。ケーブルテレビについては、First Media傘下のHomeCable(旧Kabelvision)、Transvision(旧Telkomvision)の2社が市場を主導しているが、提供地域は限定されている。IPTVの普及によって、高速インターネットとのバンドル・サービスが増加している。

重要政策動向

情報通信基盤の整備

2003年度よりユニバーサル・サービス基金制度を導入し、ルーラル地域での整備を進め、2006年に開始された全国を結ぶパラパ・リングが、2019年に完成し、3万5,280kmの海底ケーブルと2万1,807kmの陸上ケーブルの完工が発表された。また、遠隔、辺境、条件不利地における基地局の整備には、基金が規制改正によって積極的に活用されており、2021年には全国で約4,200基を整備した。

2014年以来「インドネシア・ブロードバンド計画」によって、eラーニング、eヘルス、電子調達、電子政府、eロジスティックスを開発の中心に据え、それを支えるためのブロードバンド基盤を構築してきた。また、デジタル化のロードマップとして「インドネシア・デジタル2021-2024」を用意し、デジタル・インフラ、デジタル行政、デジタル経済、デジタル・コミュニティの四つを戦略分野とした。具体的には、SATRIA-1衛星の2023年運用開始や5G網の拡充等を含む通信インフラの整備、国家データセンターの運用開始等の関連技術の開発、デジタル人材の育成、関連規制の整備と海外との協力推進が実施されている。

外国からの直接投資の自由化

投資活動を活発化させ、雇用を促進するために、2021年に大統領規程で外国投資ネガティブリストが350分野から46分野に大幅に緩和された。情報通信分野でも、これまで上限が定められていた電子商取引関連等の関連サービスのみならず、電気通信網事業や電気通信サービス事業に対する外資の制限が廃止された。開放に条件が付いている事業は、民間放送機関、サブスクリプション放送機関等である。

基礎データ集

国の基礎データ

政体
大統領制、共和制
面積
191万6,907㎢
人口
2億7,870万人(2022年)
首都
ジャカルタ
公用語
インドネシア語

経済関連データ

通貨単位
1インドネシア・ルピア(IDR)=0.0085円(2023年9月末)
会計年度
1月から1年間
GDP
1兆3,191億USDドル(2022年)

出所:World Bank, World Development Indicators Database

法律

通信 1999年法第36号電気通信法 等
放送 2002年法第32号改正放送法 等

監督機関

通信 通信情報省、電気通信規制委員会、国家サイバー暗号庁
放送 通信情報省、インドネシア放送委員会