4 行政改革の推進

 地方公共団体においては、これまでも積極的に行政改革に取り組んできたところである。しかし、地域経済の厳しい状況等を背景に、その進捗状況に対して国民から向けられる視線は依然として厳しいものがある。

 地方分権を一層推進し、分権型社会を確実なものとしていくためにも、地方公共団体がこの時期をとらえ、総力を挙げて改革に取り組むとともに、国民に対して適切に説明責任を果たし、その取組状況を比較可能な形で分かりやすく示すなど、国民・住民の理解と信頼を得ることが重要である。

 このため、各地方公共団体においては、「今後の行政改革の方針」(平成16年12月24日閣議決定)の趣旨を踏まえて策定された「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」(以下「新地方行革指針」という。)に基づき、平成17年度中の「集中改革プラン」(平成17年度を起点として概ね21年度までの具体的な取組(民間委託等の推進、定員管理・給与の適正化等)を住民にわかりやすく明示した計画)の公表をはじめ、積極的に行政改革に取り組むことが求められている。

 また、「小さくて効率的な政府」への道筋を確かなものとするために策定された「行政改革の重要方針」においては、更に推進すべき行政改革の重要課題について、総人件費改革等、具体的な改革方針が取りまとめられている。

 これらの状況を踏まえて、地方公共団体においては、行政改革推進のためのPDCAサイクル(Plan→Do→Check→Actionのサイクル)を確立し、事業の要否及び主体について仕分けを行うなど、不断の行政改革に取り組む必要がある。

 なお、集中改革プラン等に基づき数値目標を設定・公表して計画的に行政改革を推進し、財政の健全化に取り組んでいる地方公共団体については、通常の地方債に加え、行政改革の取組により将来の財政負担の軽減が見込まれる範囲内において、更に行政改革推進債を充当できることとされている。

(1) 民間委託等の推進及び指定管理者制度の活用

 「民間にできることは民間に」という考え方の下、民間委託等を積極的に推進しながら、行政自らが担う役割を重点化するとともに、重点化された役割を着実に果たしていくことが必要である。

 特に、公の施設の管理については、「地方自治法の一部を改正する法律」(平成15年法律第81号)により、地方公共団体の指定を受けた「指定管理者」に管理を行わせることが可能となったところであるが、この指定管理者制度の活用により、公の施設の更なる効果的・効率的な管理運営を行うことが求められている。

 このため、各地方公共団体においては、「新地方行革指針」において「行政改革推進上の主要事項」として掲げられた「民間委託等の推進」及び「指定管理者制度の活用」に係る具体的な取組方針を示すとともに、各地方公共団体が平成17年度から21年度までにおける民間委託等の推進及び指定管理者制度の活用に係る具体的な取組目標を明示した集中改革プランを公表し、これに基づき、積極的な取組を行うことが重要である。

(2) 定員管理、給与の適正化等

 定員及び給与については、定員管理及び給与水準等の適正化を図り、給与関係経費を抑制するとともに、公務の能率的運営を推進する必要がある。

 定員管理については、平成17年4月1日現在における地方公務員総数は304万2,122人(対前年同期比41,475人純減)であり、平成7年から11年連続して純減し、その純減累積は24万370人となっている。「行政改革の重要方針」における総人件費改革の実行計画において、「基本方針2005」で要請した4.6%以上の純減確保に向けた各地方公共団体の真摯な取組及び国による定員関係の基準の見直しにより、一層の純減の上積みが確保されるよう取り組むこととされており、これを踏まえた取組を集中改革プランに反映し、適切な定員管理に努める必要がある。

 具体的には、抜本的な事務・事業の整理、市町村合併の進展を踏まえた組織の合理化に努めるとともに、積極的な民間委託等の推進、任期付職員制度の活用、ICT化の推進等の取り組みにより、適正な定員管理を一層推進し、集中改革プランにおいて公表する定員管理の数値目標の達成に向け、定員の純減に努める必要がある。また、国の法令による定員配置の基準を超えて職員配置をしている場合にあっては、当該法令の趣旨等を踏まえて、定員の適正化を図るなど、適切に対処することが必要である。なお、いわゆる「団塊の世代」の大量定年退職等に伴う退職手当の大幅な増加に対処しつつ、地方公務員の総人件費削減を進めるため、平年度ベースを上回る退職手当額がある団体で、将来の職員数や給与の適正化等に関する計画を定め、総人件費の削減に取り組む団体については、平成18年度以降10年間の特例措置として、許可により、定年退職者等の退職手当の財源に充てるための地方債(退職手当債)の発行を拡充する措置を講じることとしている。

 給与についても、「行政改革の重要方針」における総人件費改革の実行計画及び「地方公務員の給与改定に関する取扱い等について」(平成17年9月28日付け総務事務次官通知)に基づき、地域民間給与の適切な反映、年功的な給与上昇の抑制、勤務実績の給与への反映を内容とする国家公務員の給与構造改革を踏まえた給与構造の見直しを速やかに実施する必要がある。また、一部の地方公共団体に見られる不適正な給与制度・運用等については、速やかに是正する必要がある。なお、全地方公共団体平均の地方公務員の給与水準(ラスパイレス指数)については、全体としてみれば適正化が図られてきており、平成17年4月1日現在において98.0、指数100未満の団体は全地方公共団体の約9割の2,266団体となっている。また、平成17年4月現在において財政的な事情を理由とした給与の特別減額・抑制措置を実施している団体は、都道府県・大都市59団体、市町村1,314団体の計1,373団体であり、抑制額は1,451億円となっている。

 また、退職手当についても、「職員の退職手当に関する条例(案)の一部を改正する条例(案)等について」(平成18年1月18日付け総務省自治行政局公務員部長通知)を参考にしつつ、速やかに条例等の見直しを行うとともに、最高支給率が国を上回っている地方公共団体や退職時の特別昇給を廃止していない地方公共団体については、早急に是正措置を講じる必要がある。

 他方、職員に対する福利厚生事業については、住民の理解が得られるものとなるよう点検・見直しを行い、事業の適正化を図る必要がある。

 さらに、近年の厳しい地域経済事情を背景に、地方公務員の給与が地域民間賃金等の状況からかい離しているのではないかとの指摘を踏まえ、地域の民間給与の状況をより的確に反映するための人事委員会機能の強化等について、「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」において有識者により幅広い観点から検討しており、その報告等を踏まえた対応を行う必要がある。

(3) 人材育成、組織・機構の簡素・効率化等

 地方分権の進展等に対応した質の高い行政サービスを効率的・安定的に提供するために、職員の意識改革を進めるとともに、時代の変化に対応し新たな課題に適切に対処できる人材の育成・確保が必要である。職員の人材育成については、能力・実績を重視した新しい人事評価システムの導入が求められており、公正かつ客観的な人事評価システムを構築することが期待される。併せて、研修内容の充実、人事管理制度の適切な運用等に取り組む必要がある。

 組織・機構については、時代の変化に即応した全般的な見直しを行い、事務事業を円滑に遂行できる簡素で効率的なものとすることが必要であり、公社等の外郭団体についても経営状況の点検・評価、運営改善を積極的に推進するとともに、一部事務組合においても同一地域内の複数の一部事務組合の整理・統合を促進する等、行政改革を一層推進する必要がある。

(4) 行政評価の推進等

 行政評価は、行政の施策、事務事業の成果などを客観的基準に基づいて把握し、不断に見直す仕組みを通じて、継続的に施策、事務事業を改善し、成果達成に有効な施策などに重点的かつ効果的に経営資源(予算・定数)を配分することに資するとともに、住民に対する説明責任を果たし、透明性の高い行政を実現することを趣旨として導入されるものである。平成16年7月末現在、46の都道府県、すべての大都市及び732の市町村(大都市及び一部事務組合等を除く。)において、行政評価が導入又は試行されているが、引き続き、その導入推進やより効率的な活用を図る必要がある。

 地方公共団体は、簡素かつ公正を旨とした行政運営と法規に則った適正な予算執行に一層努めるよう要請されているところであり、各地方公共団体においては、経費支出の点検や必要な改善措置を実施し、適正かつ厳正なる予算執行に努める必要がある。また、適正な予算執行の確保を図る観点等から、監査委員制度の適正な運用と監査の徹底に努めるとともに、外部監査制度の積極的な活用を図ることが重要である。

(5) 公共工事の見直し等

 公共工事については、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律第127号)により公表や通知が義務づけられている事項(指名競争入札基準の公表、談合と疑うに足りる事実の公正取引委員会への通知等)について早期に完全実施するとともに、同法に基づく指針に従い必要な措置を講じることが必要である。また、「公共工事の入札及び契約の適正化の推進について」(平成16年12月28日付け国土交通省総合政策局長・総務省自治行政局長通知)の趣旨を十分に踏まえ、一般競争入札の適切な実施や多様な入札・契約方法の推進、電子入札の導入等を含めて引き続き公共工事の入札及び契約の適正化を図る必要がある。同時に、「公共工事コスト縮減に対する取組について」(平成12年9月1日付け自治事務次官通知)及び「公共工事コスト構造改革に対する取組について」(平成15年10月24日付け総務事務次官通知)に基づき、より一層のコスト縮減に取り組み、縮減率の公表を推進する必要がある。

 一方、公共工事の品質の確保については、平成17年4月1日に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(平成17年法律第18号)に基づく「公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基本的な方針」(平成17年8月26日閣議決定)を踏まえ、所要の措置を講じる必要がある。