7 地方公営企業における民間的経営手法の導入等

(1) 地方公営企業

 「小さくて効率的な政府」を実現し、財政の健全化を図り、行政に対する信頼性を確保することが喫緊かつ最重要課題の一つとなる中で、地方公営企業分野においても、民間的経営手法の積極的な導入を含めた不断の経営改革を通じ、住民に対してより良質のサービスを提供していくことが一層求められている状況にある。

 地方公共団体においては、「地方公営企業の経営の総点検について」(平成16年4月13日付け総務省自治財政局公営企業課長通知)、「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針の策定について」(平成17年3月29日付け総務事務次官通知)等に基づき、以下のとおり積極的な取組を行う必要がある。

・現在地方公営企業が供給しているサービス自体の必要性について検討する。また、サービス自体が必要な場合であっても、地方公営企業として実施する必要性について十分検討し、特に公共性の確保等の意義が薄れている場合には、民間への事業譲渡等について検討する。

・地方公営企業として事業を継続する場合であっても、公の施設の指定管理者制度、地方独立行政法人制度、PFI事業、民間委託等の民間的経営手法の導入を促進する。

・より一層計画性・透明性の高い企業経営を推進するため、中期経営計画の策定、業績評価の実施、積極的な情報開示に取り組む。特に情報開示にあたっては、人件費、料金水準等について類似団体や民間企業の対応するデータを添えるなど、住民が理解、評価しやすいように工夫をこらす。

 平成17年11月1日現在における各地方公共団体の取組状況については、次のとおりとなっている。

ア 民営化・民間譲渡

 地方公営企業における過去5年間(平成13年4月1日〜平成17年11月1日)の民営化・民間譲渡の実施事業数が90事業(都道府県・大都市等14事業、市町村等76事業)となっている。そのうち平成16年度以降のものは60事業(都道府県・大都市等9事業、市町村等51事業)と、それ以前に比べ大幅に増加している。なお、譲渡された主な事業は、介護サービス事業(40事業)、ガス事業(18事業)、交通事業、病院事業(各9事業)であり、上記以外に平成17年度中(平成17年11月2日〜平成18年3月31日)に民営化・民間譲渡を実施する見込みの事業が29事業(都道府県・大都市等7事業、市町村等22事業)ある。

イ 指定管理者制度

 地方公営企業における公の施設の指定管理者制度の導入状況については、導入済事業が77事業(都道府県・大都市等9事業、市町村等68事業)、導入を検討している事業が680事業(都道府県・大都市等106事業、市町村等574事業)であり、前回調査時(平成16年4月1日現在)の導入済23事業(都道府県・大都市等1事業、市町村等22事業)、検討中114事業(都道府県・大都市等17事業、市町村等97事業)から大幅に増加している。なお、導入された主な事業は、介護サービス事業(25事業)、観光施設事業・その他事業(22事業)、駐車場事業(14事業)である。

ウ アウトソーシング(外部委託)

 地方公営企業におけるアウトソーシング(外部委託)の実施状況については、実施率(何らかのアウトソーシングを実施している団体数の割合)が都道府県・大都市等の各事業でほぼ100%に近く、市町村等においても特に水道事業(末端供給)、簡易水道事業、ガス事業、病院事業、下水道事業についてはいずれも100%に近い割合を示している。

 以上のように、地方公営企業の民営化・民間譲渡をはじめとした民間的経営手法の導入が大幅に進展している。より質の高いサービスを効率的に提供するため、民営化・民間譲渡を含む経営改革の取組を一層進めることが求められている。

(2) 国民健康保険事業

 我が国の医療保険の中核として国民健康保険を支える国民健康保険制度については、被保険者の高齢化に伴う医療費の増嵩、保険税(料)負担能力の低い無職者・低所得者の増加、医療費の地域格差から生じる保険者間の不均衡、小規模保険者の増加など、構造的問題を数多く内包している。

 国民健康保険財政の健全化に向けては、これまでにも低所得者を多く抱える保険者を財政的に支援する保険者支援制度の創設や高額医療費共同事業の拡充及び法制度化等の新たな財政的支援を講じてきているところであるが、安定的な保険運営を可能とする上で、国民健康保険制度の抱える構造的な問題の解決が避けて通れないところである。このため、国民健康保険、被用者保険等「医療保険制度を通じた給付の平等、負担の公平を図り、医療保険制度の一元化を目指す」との基本的考え方に立った「医療保険制度体系等に関する基本方針」が平成15年3月28日に閣議決定された。

 これを受け、「安心・信頼の医療の確保と予防の重視、医療費適正化の総合的な推進、超高齢社会を展望した新たな医療保険制度体系の実現」を柱とする「医療制度改革大綱」が平成17年12月1日に決定されたところであり、特に国民健康保険については、保険者支援制度等の国保財政基盤強化策を継続するとともに、保険財政の安定化と保険料平準化を促進する観点から、都道府県内の市町村の拠出により医療費を賄う共同事業の拡充が図られたところである。

(3) 地方公社等

 地方公社等については、その経営の適否が地方公共団体の財政に重大な影響を及ぼす可能性があることから、普通会計のほか公営企業会計及び地方公社等の財政状況を全体として的確に把握し、総合的な行財政運営に努めるとともに、「行政改革の重要方針」の趣旨等を踏まえ、経済環境の変化への対応、経営主体の経営の効率化、地方公共団体の財政運営のより一層の健全化等の観点から、その経営改善等について積極的に取り組む必要がある。

 このうち、土地開発公社については、新たな土地の取得にあたり、土地利用計画等を慎重に検討するとともに、現に保有している土地については事業計画の見直し等を含めて処分の促進に努め、土地取得手続の適正化や金利の低減を図るとともに、積極的な情報公開等に努める必要がある。土地開発公社の近年の土地保有総額の推移は、第119図のとおりであり、平成16年度末における土地保有総額は、5兆8,644億円で、前年度と比べると7.7%減となっており、8年連続して減少している。このうち、5年以上保有している土地は微減であるが、10年以上保有している土地は増加していることから、特に、保有期間が長期にわたる土地については、処分を積極的に行う必要がある。

 また、「土地開発公社経営健全化対策について」(平成16年12月27日付け総務事務次官通知)により、公社経営健全化計画の策定対象団体を大幅に拡充するとともに、当該計画に基づく取組に対して、従来よりも幅広く地方財政措置を講じることとしており、計画的に保有土地を縮減すること等を通じて経営の抜本的な健全化に取り組む必要がある。

 第三セクターに関しては、改定された「第三セクターに関する指針」(平成15年12月12日付け総務省自治財政局長通知)の趣旨を踏まえ、外部の専門家による監査を活用する等監査体制の強化を図り、政策評価の視点も踏まえ、点検評価の充実、強化を図るとともに、積極的かつ分かりやすい情報公開に努めることが求められる。また、完全民営化を含めた既存団体の見直しを一層積極的に進めることが必要である。さらに、経営状況が深刻であると判断される場合には、問題を先送りすることなく、経営悪化の原因を検証し、債権者等関係者とも十分協議しつつ、経営改善策の検討を行い、そのうえで、経営の改善が極めて困難と判断されるものについては、法的整理の実施等について検討することが必要である。

 また、地方独立行政法人、地方公社や第三セクター等の運営にあたっては、「行政改革の重要方針」の趣旨を踏まえ、その人員や給与に関する情報を国民に分かりやすく開示させ、改革の取組を促す必要がある。