6 透明性の向上

 地方分権の進展に伴い地方公共団体の行政の自己決定権・自己責任が拡大されることに対応し、総力を挙げて行財政改革に取り組むだけでなく、行政手続の公正を確保するとともに透明性の向上を図り、適切に説明責任を果たしていくことが求められている。

 とりわけ、近年一部の地方公共団体における不適切な支出が住民の厳しい批判を受ける中で、適正な財政運営に資するためにも、財政状況に関して的確にその実情を伝え、住民の理解と協力を得ることの重要性が高まっている。また、地方債の引受けや購入により資金を提供している住民や引受機関に対しても、財政状況の開示に係る透明性を確保することが求められている。このような観点から、政府は近年、毎年度行っている地方の財政状況に関する調査の結果を迅速にかつ分かりやすく公表する取組を行っている。

 財政状況の迅速な開示については、平成15年度決算(平成16年度実施の地方財政状況調査)に関して、平成16年8月以降順次速報値を公表し、平成16年12月に確定値を公表するなど、公表時期を前倒ししたところであるが、平成16年度決算(平成17年度実施の地方財政状況調査)に関しても平成17年9月末までに速報値を公表するとともに、平成17年11月末までに確定値を公表するなど、更なる公表時期の前倒しに努めたところである。

 財政状況の分かりやすい開示については、平成16年10月に、平成13年度以降の決算について、全都道府県及び市町村(一部事務組合等を除く。以下、この章において同じ。)の決算収支の状況や主要財政指標等を取りまとめた「決算カード」を公表し、個別の地方公共団体の財政状況が一目でわかるよう配意したところである。また、平成17年4月には、経常収支比率、起債制限比率、財政力指数及びラスパイレス指数の4つの指標を個別の地方公共団体ごとに一覧できるようにした「主要財政指標一覧」を取りまとめ、公表している。さらに、平成17年度中に、「団体間で比較可能な財政情報の開示について」(平成17年6月22日付け総務省自治財政局長通知)に基づき、都道府県及び市町村の協力を得て、態様の類似する地方公共団体間で主要財政指標等の比較分析を行い住民にわかりやすく開示する方途の一つとしての「財政比較分析表」を作成し公表することとしている。平成18年度以降においても、このような取組を通じて、財政状況の分かりやすい開示を促進することが必要である。

 一方、地方公共団体においても、事業実施後における事業効果等の分析・評価等に努めるとともに、住民に分かりやすいような工夫、情報化に対応した手段の活用等、周知・公表方法の一層の改善を図り、説明責任を十分に果たすことが必要である。財政状況の公表、分析の一手法として資産及び負債の状況を把握する普通会計バランスシートや減価償却費などの非現金支出を含めた行政活動にかかるコストを把握するための行政コスト計算書の作成に取り組む団体も着実に増加しており、平成17年3月31日現在、平成15年度版の普通会計バランスシートを作成済みの団体は、都道府県47団体(全団体)、市区町村1,443団体(全団体のうち56.7%)、平成15年度版の行政コスト計算書を作成済みの団体は、都道府県45団体(同95.7%)、市区町村833団体(同32.7%)となっている。

 さらに、「基本方針2005」を受け、都道府県及び大都市に対して、地方独立行政法人、一部事務組合等、地方三公社及び第三セクターを含めた連結バランスシートの作成・公表を要請しているところである。

 他方、「小さくて効率的な政府」に向けた取組の一環として、国・地方の徹底した行政改革や公務員の総人件費改革が求められる中で、地方公務員の給与及び定員管理の状況についても、適切に情報開示を図る必要がある。このような観点から、給与及び定員管理の状況について、地方公共団体間の比較分析を可能とする公表システムの運用を平成18年3月に開始することとしており、「『地方公共団体における職員給与等の公表について』の全部改正について」(平成17年8月29日付け総務事務次官通知)に沿って、公表することとしているところである。

 これらの取組に加えて、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(平成11年法律第42号)の趣旨を踏まえ、行政運営に関する情報や公文書の公開を目的とする情報公開条例等の制定及びその充実を図り、行政情報の一層の公開、住民との情報の共有化を進めることが必要である。なお、情報公開条例は、すべての都道府県、大都市及び特別区において制定済みであり、市町村(大都市及び特別区を除く。)では、平成17年4月1日現在で2,296団体、96.4%の団体で条例又は要綱等を制定済みである。

 また、住民の意見を立案段階において反映させる機会を確保するため、総合的な計画や住民の生活に広く影響を与える方針等の案、その趣旨、内容等を住民に公表し、その提出された意見を考慮して意思決定を行うとともに、意見に対する地方公共団体の考え方を明らかにするパブリックコメント制度については、これまでも多くの地方公共団体で導入されている(平成17年4月末現在で、パブリックコメント制度を制定している都道府県は43団体(91.5%)、大都市は10団体(71.4%)、中核市は24団体(68.6%)、特例市は22団体(55.0%))。

 平成17年6月には、行政手続法の一部を改正する法律(平成17年法律第73号)により、国の行政機関が政省令などの命令等を制定しようとする場合には意見公募手続等を行うこととされ、また、地方公共団体の機関が行う命令等の行為は適用除外とされ、努力義務規定が設けられたところである。各地方公共団体においては、この制度改正の趣旨を踏まえて、パブリックコメント手続の積極的な導入に取り組む必要がある。