2 累次にわたる経済対策における地域の活性化

(1) 安心実現のための緊急総合対策

 世界的な原油・食糧価格高騰や景気悪化懸念が、国民の生活や農林漁業者、中小企業などに重大な影響を及ぼしつつあり、さらに、年金・医療問題、食品安全問題、格差問題などが国民の不安感につながっていることを踏まえ、そうした国民の「痛み」や「不安」に対策を講じるため、「安心実現のための緊急総合対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議は、平成20年8月29日に「安心実現のための緊急総合対策」(以下「総合対策」という。)を決定した。

 総合対策においては、目標として、(第1の目標)生活者の不安解消、(第2の目標)「持続可能社会」への変革加速、(第3の目標)新価格体系への移行と成長力強化の3つが掲げられ、具体的に8つの対策が示されている。すなわち、(第1の目標)の下に、(1)生活・雇用支援対策、(2)医療・年金・介護強化対策、(3)子育て・教育支援対策、(第2の目標)の下に、(4)低炭素社会実現対策、(5)住まい・防災刷新対策、(6)強い農林水産業創出対策、(第3の目標)の下に、(7)中小企業等活力向上対策、その他として(8)地方公共団体に対する配慮、となっている。

ア 地域活性化・緊急安心実現総合対策交付金

 総合対策の「(8)地方公共団体に対する配慮」においては、「地方公共団体がこの緊急総合対策に取り組むにあたって、地方財政の運営に支障が生じないよう対応する。」とされているところである。

 これを受け、地方公共団体が総合対策に対応して積極的に総合的な対策に取り組み、もって地域活性化に資することができるよう、交付金制度の創設が平成20年度補正予算(第1号)に盛り込まれた。当該補正予算は平成20年10月16日に成立し、「地域活性化・緊急安心実現総合対策交付金」が創設されたところである。

 当該交付金の概要は、以下のとおりである。

(ア) 規模及び配分方法

 配分額は、都道府県に対して15億円程度(概ね1団体当たり1,500万円から5,000万円)、市町村に対して245億円程度(概ね1団体当たり500万円から3,000万円)であり、総額260億円程度となっている。

 交付金は、各地方公共団体の申請に基づき交付するものであり、その交付額の算定に当たっては、地方公共団体が策定する地域活性化・緊急安心実現総合対策実施計画に掲載された事業のうち国庫補助事業(平成20年度補正予算(第1号)に計上された事業のうち法令に基づく国の負担割合が規定されていないものに限る。)の地方負担分と単独事業(平成20年8月30日以降に実施される事業に限る。)の所要経費の合計額に対し、人口、第一次産業就業者比率、高齢者人口比率等の外形基準に基づいて算出される額を上限としている。その際、財政力の弱い小規模団体や原油高騰の影響が特に大きい離島、寒冷地を抱える団体に対して配慮がなされている。

(イ) 対象事業

 交付対象事業は、地域活性化・緊急安心実現総合対策実施計画を作成する地方公共団体がその実施に要する費用を負担する事業としており、総合対策に沿って実施するものとなっている。

イ 安心実現のための緊急総合対策に係る特別交付税措置

 総務省においては、離島・寒冷地での生活支援、学校給食に係る保護者負担の軽減、農林漁業者・中小企業への金融措置等による支援など地方公共団体の自主的な取組み(上記の地域活性化・緊急安心実現総合対策実施計画に掲載された事業等)に要する経費や原油価格の高騰に伴う救急自動車等の燃料費、寒冷地における公共施設の暖房費などの増加分に対し特別交付税措置を講じている。

ウ 地方税等減収補てん臨時交付金

 国及び地方の道路特定財源については、平成19年12月7日に政府・与党間において「道路特定財源の見直しについて」が取りまとめられ、平成20年度以降の10年間暫定税率を維持することとされた。これを踏まえ、平成20年度政府予算、「所得税法等の一部を改正する法律案」及び「地方税法等の一部を改正する法律案」が第169回国会に提出されたが、両法案は未成立のまま平成20年4月1日を迎えることとなり、暫定税率は失効することとなった。

 一方、国民生活等の混乱を回避するため、平成20年3月31日に期限が到来する非課税等特別措置のうち自動車取得税に係るもの(暫定税率を除く。)について、その期限を暫定的に延長することを目的とする「国民生活等の混乱を回避するための地方税法の一部を改正する法律」(平成20年法律第10号。以下「つなぎ法」という。)が制定された。

 その後、「所得税法等の一部を改正する法律案」及び「地方税法等の一部を改正する法律案」は、平成20年4月30日に成立し、同日公布され、暫定税率については5月1日から適用されることとなったため、4月1日から30日までの間は失効した。

 この結果、地方公共団体においては、暫定税率が一時的に失効したこと及びつなぎ法で延長された非課税等特別措置が平成20年度税制改正による見直しを反映していないことにより、約656億円の減収が生じることとなった。

 この減収については、総合対策の「(8)地方公共団体に対する配慮」の中に「道路特定財源の1ヵ月分の地方税収減の影響については、政府において適切に財源措置する。」と明記されたことを踏まえ、平成20年度補正予算(第1号)に減収相当分を盛り込むとともに、当該補正予算と併せて「地方税等減収補てん臨時交付金に関する法律」(平成20年法律第84号)が制定され、地方公共団体に対して、地方税等減収補てん臨時交付金(以下「臨時交付金」という。)を交付することとしたところである。

 なお、臨時交付金は、各地方公共団体の減収見込額に応じて交付し、その使途については、道路に関する費用に充てることとしている。

 臨時交付金の総額は656億1,900万円であり、その内訳は次のとおりである。

(1) 自動車取得税の収入の減少に伴う都道府県及び市町村の減収を補てんするために交付する自動車取得税減収補てん臨時交付金(116億8,500万円)

(2) 軽油引取税の収入の減少に伴う都道府県及び政令指定都市の減収を補てんするために交付する軽油引取税減収補てん臨時交付金(493億3,900万円)

(3) 地方道路税の収入の減少に伴う都道府県及び市町村の減収を補てんするために交付する地方道路譲与税減収補てん臨時交付金(45億9,500万円)

(2) 生活対策

 金融経済情勢の悪化の影響により、暮らしの安心が脅かされている「生活者」、資金繰りに苦しむ「中小・小規模企業」、都市部との格差に悩む「地方」といった弱者に対し、セーフティネットをより一層強力に張り巡らせ、手厚い支援を行うことによって、緊急の備えを万全とするため、新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議は、平成20年10月30日に「生活対策」を決定した。

 生活対策においては、最終的な目的を「国民生活と日本経済を守る」ことに置き、次の5つを基本視点として政策展開を行うこととしている。

(1) 3段階(当面は「景気対策」、中期的には「財政再建」、中長期的には「改革による経済成長」)の経済財政政策により、日本経済立て直しに取り組む

(2) 最優先課題として、「金融資本市場の安定確保」に向けて万全の措置をとる

(3) 3つの重点分野を位置づけ、その中で「生活者」を一番に置く

(4) 一過性の需要創出対策ではなく、自律的な「内需主導型経済成長」への移行を後押しする

(5) 経済成長と財政健全化の両立に向けて取り組む

 また、これらの基本視点を踏まえ、具体的な施策として、以下のとおり、3つの重点分野が掲げられ、その下に9つの対策が明示されている。

(第1の重点分野)生活者の暮らしの安心

(1)家計緊急支援対策、(2)雇用セーフティネット強化対策、(3)生活安心確保対策

(第2の重点分野)金融・経済の安定強化

(4)金融資本市場安定対策、(5)中小・小規模企業等支援対策、(6)成長力強化対策

(第3の重点分野)地方の底力の発揮

(7)地域活性化対策、(8)住宅投資・防災強化対策、(9)地方公共団体支援策

 上記「(9)地方公共団体支援策」においては、「地方公共団体が地域の活性化に積極的に取り組むことができるよう、必要な財政支援措置を講じる。」とされており、その具体的施策としては、以下の4点が明示されたところである。

○道路特定財源の一般財源化に際し、1兆円を地方の実情に応じて使用する新たな仕組みを作る

○地方自治体(一般会計)に長期・低利の資金を融通できる、地方共同の金融機構の創設について検討する

○地域活性化等に資するきめ細かなインフラ整備などを進めるため、「地域活性化・生活対策臨時交付金」(仮称)を交付する

○景気後退や本対策に伴う地方税や地方交付税の原資となる国税5税の減収等について、地方公共団体への適切な財政措置を講じる

 なお、これらの施策の具体化のため、以下に詳述するとおり、平成20年度第2次補正予算案、平成21年度予算案及び関係法案が第171回国会に提出された。

ア 道路特定財源の一般財源化に際しての1兆円を地方の実情に応じて使用する新たな仕組み

 道路特定財源(揮発油税等の道路整備費に充当することが義務付けられている歳入)制度については、これまでにも見直しが行われてきたところであるが、揮発油税等に係る暫定税率の期限の到来に当たり、「道路特定財源の見直しについて」(平成19年12月7日政府・与党合意)に基づき、具体的な措置を講じるための関連法案を国会に提出することとした。

 これを受け、「道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案」をはじめとする関係法案を第169回国会に提出したところであり、この改正により、当該年度の揮発油税等の予算額等が、同年度の道路整備費の予算額を超える場合には、当該超える額については、一般財源として活用することとされた。

 その後、「道路特定財源等に関する基本方針」が閣議決定され(平成20年5月13日閣議決定)、その中で、「2.道路特定財源制度は今年の税制抜本改革時に廃止し21年度から一般財源化する。その際、地方財政に影響を及ばさないように措置する。また、必要と判断される道路は着実に整備する。一般財源化の法改正により、道路整備費の財源等の特例に関する法律案における道路特定財源制度の規定は21年度から適用されないこととなる。」とされ、道路特定財源の一般財源化の方針が示された。

 道路特定財源の一般財源化等についての具体的な内容としては、地方からの要望等も踏まえ、「道路特定財源の一般財源化等について」(平成20年12月8日政府・与党)において、次の措置等を講じることとした。

・「2.道路特定財源制度の廃止」

 平成21年度予算において道路特定財源制度を廃止することとし、道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律第3条の規定を削除するとともに、地方税法などの所要の改正を行う。

 また、特定財源制度を前提とし、社会資本整備事業特別会計に直入されている地方道路整備臨時交付金を廃止する。

・「4.地域の基盤整備」

 地方からの要望を踏まえ、地方の道路整備や財政の状況に配慮し、地方道路整備臨時交付金に代わるものとして、道路を中心に関連する他のインフラ整備や関連するソフト事業も含め、地方の実情に応じて使用できる1兆円程度の「地域活力基盤創造交付金(仮称)」を平成21年度予算において創設する。その際、これまで道路特定財源が充てられていた道路整備費等の見直しにより財源を捻出する。

 また、地方道路整備臨時貸付金制度については、引き続き維持する。

 また、「附記」として「地方交付税は予算編成過程で増額。」とされた。

 これらを受け、以下のような所要の措置を講じることとし、平成21年度予算案及び「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案」をはじめとする関係法案を第171回国会に提出したところである。

(ア) 道路特定財源制度を廃止し、揮発油税、軽油引取税等をすべて一般財源化。

(イ) 揮発油税収の予算額の4分の1に相当する額が特別会計に直入されている地方道路整備臨時交付金を廃止。

(ウ) 地方道路整備臨時交付金に代わるものとして、地方の実情に応じて、道路を中心に関連する他のインフラ整備やソフト事業にも使える9,400億円の地域活力基盤創造交付金を創設(一般会計に計上)。

 なお、平成21年度予算案においては、社会保障財源へ600億円を拠出することとされたところである。

イ 地方公共団体金融機構の創設

 生活対策において地方公共団体支援策の一つとして、「地方自治体(一般会計)に長期・低利の資金を融通できる、地方共同の金融機構の創設」が盛り込まれたことを踏まえ、地方財政審議会において、地方公共団体関係者及び地方財政関係の有識者を加えた検討会を開催し、当該検討会の報告書に基づき意見が取りまとめられた。

 これを踏まえ、地方共同の金融機構の創設については、次のとおり地方公営企業等金融機構(以下「現機構」という。)を改組することによりその実現を図ることとし、「地方交付税法等の一部を改正する法律案」を第171回国会に提出したところである。

(ア) 一般会計への長期・低利の資金の貸付け

(1) 現機構の業務を見直し、貸付対象に一般会計を含めることにより、地方公共団体の資金ニーズに適時・適切に対応できるものとする。

(2) 現機構の名称を地方公共団体金融機構に改める。

(3) 今回の見直しに際し、国及び地方公共団体に対して、新たな出資・政府保証は求めない。

(4) 地方公共団体のニーズを踏まえ、貸付対象、貸付期間、利率設定方式等について柔軟に対処する。

(5) 内外の金融秩序の混乱、経済事情の変動等に伴う地方財源不足の対処のため発行する地方債の資金調達について、弾力的に補完できる仕組みとする。

(イ) 平成21年度の貸付け

(1) 一般会計については、地方公共団体が自主的・主体的に実施する一般単独事業について、平成20年度までの貸付対象である臨時3事業(地方道・河川・高等学校)見合い分等に加え、合併特例、防災対策、地域活性化事業を対象とし、5,121億円を貸し付ける。

(2) 公営企業会計については、平成21年度の事業量を勘案し、8,209億円を貸し付ける。

(3) 臨時財政対策債の急増に対処し、長期の資金調達が困難な市町村分を中心に、5,000億円を貸し付ける。

ウ 地域活性化・生活対策臨時交付金

 生活対策の「(9)地方公共団体支援策」における具体的施策の一つとして、「地域活性化等に資するきめ細かなインフラ整備などを進めるため、「地域活性化・生活対策臨時交付金」(仮称)を交付する」と明示されたところである。

 これを受け、地方公共団体が積極的に地域活性化等に取り組むことができるよう、交付金制度の創設が平成20年度補正予算(第2号)に盛り込まれた。当該補正予算は平成21年1月27日に成立し、「地域活性化・生活対策臨時交付金」が創設されたところである。

 当該交付金の概要は、以下のとおりである。

(ア) 規模及び配分方法

 総額は約6,000億円であり、都道府県分を2,500億円程度、市町村分を3,500億円程度としている。

 交付金は、各地方公共団体の申請に基づき交付するものであり、地方公共団体が策定する地域活性化・生活対策実施計画に掲載された事業のうち国庫補助事業(平成20年度補正予算(第2号)に計上された事業のうち法令に基づく国の負担割合が規定されていないものに限る。)の地方負担分と単独事業(平成20年10月31日以降に実施される事業に限る。)の所要一般財源の合計額に対し、一定の上限の範囲内で交付することとしている。

(イ) 対象事業

・「地方再生戦略」(平成19年11月30日地域活性化統合本部会合了承、平成20年12月19日改定)に沿った事業

・「生活対策」に沿った事業

(ウ) 交付限度額

 上記(ア)における一定の上限とは、平成20年度における地方交付税法附則第5条の2の規定に基づく地方再生対策費の算定額を基本とし、財政力指数等の外形基準に基づいて設定される交付限度額である。また、当該交付限度額の算定に当たっては、地域経済の疲弊が著しい団体や財政力の弱い団体、離島や過疎等の条件不利地域、定住自立圏構想に係る先行実施団体の中心市に配慮して定めることとされている。

(エ) 財源

 交付金の財源は、国費3,000億円と併せ、地方公営企業等金融機構が旧公営企業金融公庫から承継した公庫債権金利変動準備金等のうち3,000億円の地方還元によることとしている。

エ 定額給付金

 総合対策では、所得税・住民税の特別減税及びこれに関連する臨時福祉特別給付金を年度内に実施することが予定され、年末の税制抜本改革の議論に併せて引き続き検討するとされていた。

 その後、生活対策において、家計への緊急支援としての効果をより迅速に実現し、かつ、低所得者層にも広く公平に行き渡らせるためには、給付方式によることがより適切であるとされ、景気後退下での生活者の不安に対応するため、家計への緊急支援として総額2兆円を限度として定額給付金を実施することとなった。

 これを受け、平成20年11月11日に総務省に「定額給付金実施本部」が設置され、また、翌12日には、一人当たりの額(12,000円、65歳以上、18歳以下には8,000円を加算)等についての与党合意がなされた。その後、具体的な事業実施方法等について、案を地方公共団体に示してその意見も聞きながら、実施主体である市町村の事務負担が少ない、できる限りシンプルな仕組みの検討が進められた。

 定額給付金を含む平成20年度補正予算(第2号)は平成21年1月27日に成立し、これを受け、1月28日には、給付金及び事務費のそれぞれの補助金交付要綱が国において定められ、地方公共団体に通知された。

 定額給付金事業の概要は、以下のとおりである。

(ア) 目的等

 景気後退下での住民の不安に対処するため、住民への生活支援を行うことを目的とし、あわせて、住民に広く給付することにより、地域の経済対策に資する。

(イ) 事業費等

 事業費の総額は2兆395億13百万円(給付金額1兆9,570億円、給付に要する事務費825億13百万円)となっている。

 実施主体は市町村(特別区を含む。以下同じ。)であり、実施に要する経費(給付費及び事務費)については、国が補助(補助率:10分の10)をすることとしている。

(ウ) 給付対象者

 給付対象者は、基準日(平成21年2月1日)において、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する者としている。

(1) 住民基本台帳に記録されている者

※基準日時点でいずれの市町村の住民基本台帳にも記録されていない者についての特例あり。

(2) 外国人登録原票に登録されている者(不法滞在者及び短期滞在者のみ対象外)

 また、申請・受給者は、原則として給付対象者の属する世帯の世帯主(外国人については、各給付対象者)としている。

(エ) 給付額

 給付額は、給付対象者1人につき12,000円としている。ただし、基準日において65歳以上の者と18歳以下の者については20,000円としている。

(オ) 給付申請受付開始日及び申請期限

 できる限り速やかに開始するものとし、具体的な給付申請受付開始日は、市町村において決定する。また、申請期限は、各市町村における給付申請受付開始日から6月とする。

(3) 生活防衛のための緊急対策

 現下の厳しい経済金融情勢に対応し、平成20年度からの3年間のうちに景気回復を最優先で実現するとともに、雇用問題及び企業の資金繰り確保を最重要課題として万全を期すため、経済対策閣僚会議は、平成20年12月19日に「生活防衛のための緊急対策」(以下「緊急対策」という。)を決定した。

 緊急対策においては、平成20年度補正予算(第2号)及び平成21年度予算において、以下の6つの果断な対策を実施することとしている。

(1)雇用対策、(2)雇用創出等のための地方交付税増額、(3)経済緊急対応予備費の新設、

(4)税制改正、(5)「生活対策」の実現、(6)金融市場・資金繰り対策

ア 雇用創出等のための地方交付税増額

 「道路特定財源の一般財源化等について」(平成20年12月8日政府・与党)の「附記」として「地方交付税は予算編成過程で増額。」とされていたこともあり、緊急対策の「(2)雇用創出等のための地方交付税増額」において、次の具体的な方針が示されたところである。

・地方公共団体が雇用創出等を図るとともに「生活者の暮らしの安心」や「地方の底力の発揮」に向けた事業を実施することができるよう、地方交付税を1兆円(雇用創出につながる地域の実情に応じた事業を実施するための特別枠0.5兆円)増額する。

 これを受けて、既定の加算とは別枠で地方交付税を1兆円増額するとともに、これに合わせて、地方財政計画の歳出を見直して1兆円を追加計上し、地方一般財源の充実・確保を図っている。

 この増額分の地方交付税は、以下の「雇用創出」や「地域の元気回復」のための財源とされている。

(ア) 特別枠「地域雇用創出推進費」の創設(5,000億円)

 「地域雇用創出推進費」は、財政投融資特別会計の金利変動準備金を活用して、平成21年度及び平成22年度にそれぞれ5,000億円を計上することとしており、地域の実情に応じて雇用の創出を推進できるよう、地方交付税の算定を通じて雇用情勢や経済・財政状況の厳しい地域に重点的に配分することとしている。

(イ) 地方財政計画の歳入歳出の見直しを通じた地方財源の充実(5,000億円)

 地方財源を充実するため、次のとおり地方財政計画の歳入歳出の見直しを行う。

(1) 「地域の元気回復」に向けて地方が自主的・主体的に取り組む地域活性化のための財源を確保(一般行政経費)   1,500億円程度

(2) 小児・産科医療をはじめ地域医療の中核となる公立病院に対する財政措置の充実など医療・少子化対策の充実(一般行政経費・公営企業繰出金)   1,500億円程度

(3) 最近の金融情勢を踏まえた地方財政計画上の公債費の償還期限の見直し   2,000億円程度

イ ふるさと雇用再生特別交付金及び緊急雇用創出事業交付金

 雇用情勢が急速に悪化しつつある中で、生活対策に掲げられた「(2)雇用セーフティネット強化対策」及び緊急対策に掲げられた「(1)雇用対策」の具体的施策の一つである「再就職支援対策」として、平成20年度補正予算(第2号)において、「ふるさと雇用再生特別交付金」及び「緊急雇用創出事業交付金」を創設することとされた。

 ふるさと雇用再生特別交付金及び緊急雇用創出事業交付金の総額はそれぞれ2,500億円、1,500億円であり、各都道府県の申請に基づいて、雇用失業情勢等に基づく客観指標により算出される交付限度額を上限として交付される。また、各都道府県においては、交付金を財源として基金を設置して、民間事業者やシルバー人材センターへの委託等により、地域の求職者等を対象にした雇用機会の創出や非正規労働者、中高年齢者等の一時的な雇用機会を創出するための事業を平成23年度までの期間にわたり実施することとされている。なお、ふるさと雇用再生特別交付金及び緊急雇用創出事業交付金は、いずれも地方負担は伴わないものである。

ウ 年末年始等における離職者等への対応に係る特別交付税措置

 ふるさと雇用再生特別交付金及び緊急雇用創出事業交付金による対応が可能となるまでの年末年始等において、離職者等の臨時的な雇用・就業機会を創出するための対策(地方公共団体による直接雇用、離職者等を雇用する民間会社等への委託又は助成等)及び居住の安定確保のための対策(公営住宅の目的外使用による入居、住宅の借り上げによる入居等)など地方公共団体が緊急・臨時的に実施する離職者等の緊急雇用・住居確保のため必要と認められる対策等に要する経費に対し、財政力に応じて5〜8割の特別交付税措置を講じることとしたところである。