5 行政改革の推進

(1) 集中改革プラン等の取組状況

ア 集中改革プランの取組状況

 総務省は、「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」(平成17年3月29日付け総務事務次官通知)において、各地方公共団体に対し「集中改革プラン」の公表を要請したところである。これを受け、各地方公共団体は、定員管理の適正化、給与の適正化、民間委託等の推進などを中心に平成17年度を起点とし、おおむね平成21年度までの具体的な取組を住民にわかりやすく明示した計画の策定・公表に取り組んだ。

 平成20年12月1日現在の集中改革プランの公表状況は、都道府県で47団体(全団体)、政令指定都市で17団体(全団体)、市区町村で1,788団体(全団体)となっており、平成20年度中にすべての団体において集中改革プランの作成・公表が達成された。

 同プランに基づく主な取組状況を見ると、定員管理の適正化については、公表済み団体の数値目標の集計値は平成17年4月1日から平成22年4月1日までの間に6.3%純減となっており、「基本方針2006」において求められている5.7%の純減目標を上回っている。また、平成17年4月1日から平成20年4月1日までの3年間の実績は4.7%の純減となっており、5.7%の純減目標に対しては進捗率が80%超となった。

 給与の適正化については、国の給与構造改革の取組を踏まえ、団体の約99%(平成20年7月1日現在)が給料表水準の引き下げ等の改革を実施した。また、ラスパイレス指数を見た場合、地方の給与水準は、4年連続で国の給与水準を下回っている。なお、平成19年における国を100とした場合の地方のラスパイレス指数は98.5となっている。

 民間委託等の推進については、定型的業務等(庁舎の清掃、総務関係事務、公用車運転、ホームページ作成・運営、電話交換など)の民間委託実施比率(単純平均)が、平成20年までに、都道府県で約84%、政令指定都市で約91%、市区町村で約66%となっている。また、平成20年4月1日現在における指定管理者制度導入施設数は、都道府県で6,892施設(61.5%)、政令指定都市で5,816施設(52.9%)となっている。

イ 地方公共団体における行政改革の更なる推進

 「基本方針2006」を踏まえ、総務省は、「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針」(平成18年8月31日付け総務事務次官通知。以下「地方行革新指針」という。)を示し、地方公共団体に対して、総人件費改革、公共サービス改革等のより一層の行政改革の推進を要請したところである。

 総人件費改革については、地域民間給与の更なる反映に向け、人事委員会勧告における公民較差のより一層精確な算定、公民比較対象企業規模の拡大、説明責任の徹底等の推進を図る給与構造改革の実施が求められているが、これについてはすべての都道府県及び政令指定都市において実施しているところである。また、地方公共団体と第三セクター等との随意契約の見直しについては、国の取組(「随意契約の適正化等について」(平成18年6月28日))を踏まえ、住民の目線に立って厳格かつ徹底的な見直しを行い、その適正化に取り組むことが求められているが、その取組状況は、平成20年4月1日現在、都道府県で33団体、政令指定都市で14団体、市区町村で1,133団体が見直し済みとなっている。

 公共サービス改革については、住民に対するサービスの提供その他の公共の利益の増産に資する業務(以下「公共サービス」という。)の見直しに当たって、公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図る観点から、透明かつ公正な競争の下での地方公共団体と民間事業者との間又は民間事業者の間において、これを実施する者を決定するための手続(以下「市場化テスト」という。)の積極的な活用に取り組むことが求められており、平成20年4月1日現在、137団体が市場化テストを導入(一部検討中を含む)している。

 なお、地方公共団体においては、行政支出総点検会議等の議論に基づく国の公益法人向け支出の削減や行政コストの節減・効率化などの取組も踏まえ、事務・事業等について、再度点検・見直しを行う必要がある。

 地方分権を一層推進するためには、国民の理解と信頼を得ることが不可欠であり、地方公共団体においては、今後とも総力を挙げて行財政改革に取り組む必要がある。

(2) 地方公会計改革の推進

 地方公共団体における資産・債務の適切な管理や現金主義では見えにくい費用や資産に関する財務情報の開示といった観点から、発生主義を活用し複式簿記の考え方を導入した公会計の整備は重要な課題である。

 近年、地方公共団体は決算統計の数値に基づく貸借対照表や行政コスト計算書の作成に取り組んできたところであるが、「行政改革推進法」第62条第2項において、「政府は、地方公共団体に対し、(中略)企業会計の慣行を参考とした貸借対照表その他の財務書類の整備に関し必要な情報の提供、助言その他の協力を行うものとする」と規定されたこと等に見られるように、国同様、地方公共団体に対しても発生主義を活用した財務書類の整備が求められているところである。

 総務省では、平成18年5月18日に地方公共団体が参考とすべき財務書類のモデルである基準モデルと総務省方式改訂モデルを提示し、平成19年10月17日には2つのモデルを活用し財務書類を作成する場合に必要となる資産評価の要領や連結の原則、仕訳例等が公表されており、この2つのモデルを活用し地方公共団体は早急に財務書類の整備を行うことが重要である。

 特に、「地方行革新指針」により資産・債務改革の方向性と具体的な施策を平成21年度までに策定することを地方公共団体に対して要請しており、また、「健全化法」により平成20年度決算に基づく健全化判断比率の状況によっては平成21年度に財政健全化計画等の策定が義務付けられることを踏まえると、平成21年度までに一定の資産評価を行った上で財務書類を整備することが重要である。

 当該財務書類の整備が中小規模の地方公共団体においても円滑に進むよう、実務上の課題となっている事項に対する解決方策の検討や財務書類作成のより詳細な手順などの検討を行うため、平成20年6月、総務省に「地方公会計の整備促進に関するワーキンググループ」が設置された。

 ワーキンググループにおいては、資産評価及び連結財務書類の作成に関する実務手引等の内容の検討が行われ、平成21年1月には、「新地方公会計モデルにおける資産評価実務手引」が公表されたところである。今後、これらの手引等を参照し、地方公共団体において、財務書類の整備が進められ、地方公共団体の財政状況の透明性が一段と向上することが期待される。