9 市町村の規模別財政状況

 市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。以下この節において同じ。)を団体規模別(政令指定都市、中核市、特例市、中都市(人口10万人以上の市)、小都市(人口10万人未満の市)、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村)にグループ化を行い、財政状況を分析すると以下のとおりである。

(1)市町村合併の進展に伴う団体規模別団体数の構成の変化

 市町村合併の進展に伴い、団体規模別の団体数の構成が大きく変わってきている。そこで、団体数や人口、決算規模について、団体規模別に比較分析してみると、次のとおりである。

ア 団体数及び人口の状況

 団体規模別の団体数の推移については、第44表のとおりである。

 また、団体規模別の団体数構成比については、第107図のとおりである。市については、人口増や市町村合併により要件を満たした団体が、各区分に移行してきたことに伴い、割合が上昇してきている。一方で、町村数の割合は低下しており、平成13年度末には8割に近かった町村数は、22年度末には6割を下回る水準まで低下している。平成22年度末の割合は、政令指定都市が1.1%(前年度末1.0%)、中核市が2.3%(同2.4%)、特例市が2.4%(同2.4%)、中都市が9.8%(同9.7%)、小都市が29.9%(同30.1%)、人口1万人以上の町村が27.0%(同27.3%)、人口1万人未満の町村が27.5%(同27.2%)となっている。

 次に、団体規模別の人口の推移をみると、第45表のとおりである。

 また、団体規模別の人口構成比の推移をみると、第108図のとおりである。団体数の割合と同様に、市については団体規模の移動があるものの、全体として上昇している一方、町村については低下しており、平成22年度末には、政令指定都市が21.8%(同21.1%)、中核市が13.9%(同14.5%)、特例市が9.3%(同9.2%)、中都市が21.8%(同21.6%)、小都市が23.1%(同23.3%)、人口1万人以上の町村が8.1%(同8.2%)、人口1万人未満の町村が2.1%(同2.0%)となっている。

イ 決算規模[資料編:第11表第35表第74表

 団体規模別の決算規模の割合をみると、歳入総額については、政令指定都市が23.9%(前年度23.9%)、中核市が12.3%(同12.8%)、特例市が7.6%(同7.6%)、中都市が18.9%(同18.7%)、小都市が24.3%(同24.3%)、人口1万人以上の町村が8.6%(同8.5%)、人口1万人未満の町村が4.4%(同4.1%)となっている。

 また、歳出総額については、政令指定都市が24.3%(同24.3%)、中核市が12.4%(同12.8%)、特例市が7.6%(同7.6%)、中都市が18.9%(同18.7%)、小都市が24.1%(同24.1%)、人口1万人以上の町村が8.4%(同8.4%)、人口1万人未満の町村が4.3%(同4.1%)となっている。

 団体規模別の決算規模の割合について、平成13年度からの推移は、第109図のとおりである。平成15年度から17年度にかけては、570件の新設・編入合併が実施されたことから、市の占める割合が大きく上昇する一方、町村の占める割合は大きく低下した。平成22年度においては、新設・編入合併が無かったことから、市及び町村のそれぞれの割合は、ほぼ横ばいとなっている。

(2)人口1人当たりの財政状況等

 団体規模別の財政状況について、人口1人当たり平均の決算額等を中心に分析してみると、次のとおりである。

ア 決算規模等[資料編:第3表第5表

 1市町村当たり平均の歳入歳出決算額、人口(住民基本台帳登載人口(注))1人当たり平均の歳入歳出決算額をみると、第46表のとおりである。

 人口1人当たり平均の決算額は、歳入については、政令指定都市が464千円(前年度474千円)、中核市が374千円(同371千円)、特例市が346千円(同345千円)、中都市が367千円(同363千円)、小都市が446千円(同436千円)、人口1万人以上の町村が449千円(同439千円)、人口1万人未満の町村が896千円(同848千円)となっており、歳出については、政令指定都市が458千円(同469千円)、中核市が364千円(同362千円)、特例市が335千円(同336千円)、中都市が355千円(同353千円)、小都市が428千円(同421千円)、人口1万人以上の町村が428千円(同420千円)、人口1万人未満の町村が850千円(同809千円)となっている。

(注)公共施設状況調査による。

 これをみると、政令指定都市、中核市及び特例市については行政権能の差異が人口1人当たり決算額に影響を与えている。その他の市町村については規模が小さな団体ほど人口1人当たり決算額が大きくなる傾向がある。

 次に、財政力指数の単純平均及び実質収支比率を団体規模別にみると、第47表のとおりである。

 財政力指数の高い順にみると、特例市(0.88)、政令指定都市(0.87)、中都市(0.82)、中核市(0.80)、小都市(0.58)、人口1万人以上の町村(0.54)、人口1万人未満の町村(0.29)となっており、政令指定都市及び中核市以外の市町村については規模が大きいほど財政力指数が高くなっている。

 さらに、実質収支比率の高い順にみると、人口1万人未満の町村(6.5%)、人口1万人以上の町村(5.9%)、小都市(5.4%)、中都市(4.6%)、特例市(4.3%)、中核市(3.4%)、政令指定都市(1.0%)となっており、規模が小さいほど実質収支比率が高くなっている。

イ 歳入

 歳入決算の主な内訳は、第110図のとおりである。

 地方税の構成比の高い順にみると特例市(43.1%)、中核市(40.0%)、政令指定都市(39.9%)、中都市(39.4%)、小都市(28.1%)、人口1万人以上の町村(26.7%)、人口1万人未満の町村(13.9%)となっており、政令指定都市及び中核市以外の市町村については規模が小さいほど地方税の歳入総額に占める割合が低くなっている。

 また、地方税の歳入総額に占める割合の分布状況を団体規模別にみると、第111図のとおりであり、町村においては地方税の歳入総額に占める割合が低い団体の構成比が大きくなっている。なお、主な税目の1人当たりの額は、第112図のとおりである。

 一方、地方交付税の構成比の高い順にみると、人口1万人未満の町村(41.3%)、人口1万人以上の町村(29.6%)、小都市(26.4%)、中都市(13.6%)、中核市(12.1%)、特例市(9.4%)、政令指定都市(5.4%)となっており、特例市以外の市町村については規模が小さいほど地方交付税の歳入総額に占める割合が高くなっている。

 また、国庫支出金(国有提供施設等所在市町村助成交付金を含み、交通安全対策特別交付金を除く。)の構成比の高い順にみると、政令指定都市(16.6%)、中核市(16.6%)、特例市(14.8%)、中都市(14.5%)、人口1万人未満の町村(13.5%)、小都市(13.4%)、人口1万人以上の町村(12.0%)となっている。

 一方、都道府県支出金の構成比の高い順にみると、人口1万人未満の町村(7.0%)、人口1万人以上の町村(6.7%)、中都市(6.7%)、小都市(6.4%)、特例市(5.9%)、中核市(4.9%)、政令指定都市(3.4%)となっており、中都市以外の市町村については規模が小さいほど都道府県支出金の歳入総額に占める割合が高くなっている。

 地方債の構成比(地方債依存度)の高い順にみると、政令指定都市(11.4%)、中核市(10.3%)、小都市(10.3%)、中都市(9.3%)、人口1万人以上の町村(9.3%)、特例市(9.1%)、人口1万人未満の町村(9.1%)となっている。

ウ 歳出

 目的別歳出決算額の主な内訳は、第113図のとおりである。

 それぞれの団体規模ごとに構成比が高い費目をみると、政令指定都市及び中核市においては民生費、土木費、公債費の順、特例市においては民生費、土木費、総務費の順、中都市においては民生費、総務費、土木費の順、小都市においては民生費、総務費、公債費の順、人口1万人以上の町村においては民生費、総務費、教育費の順、人口1万人未満の町村においては総務費、民生費、公債費の順となっている。

 性質別歳出決算額における主な費目の構成比は、第114図のとおりである。

 それぞれの団体規模ごとに構成比が高い費目をみると、政令指定都市においては扶助費、人件費、公債費の順、中核市及び特例市においては扶助費、人件費、普通建設事業費の順、中都市においては扶助費、人件費、物件費の順、小都市においては人件費、扶助費、普通建設事業費の順、人口1万人以上の町村においては人件費、普通建設事業費、物件費の順、人口1万人未満の町村においては普通建設事業費、人件費、公債費の順となっている。

 扶助費の構成比については、町村における生活保護費等を都道府県が負担していることなどから、町村が低くなっている。

エ 財政構造の弾力性

(ア)経常収支比率

 経常収支比率は、第48表のとおりである。経常収支比率の高い順にみると、政令指定都市(95.4%)、中核市(89.5%)、特例市(89.0%)、中都市(88.6%)、小都市(87.5%)、人口1万人以上の町村(84.3%)、人口1万人未満の町村(80.3%)となっており、規模が大きいほど比率も高くなっている。

 なお、団体規模別の分布状況をみると、第115図のとおりである。政令指定都市の経常収支比率が高いのは、経常経費に占める公債費の割合が大きいことなどによる。また、町村の経常収支比率が比較的低いのは、主として生活保護費等を都道府県が負担していること等により、経常経費に占める扶助費の割合が小さいことなどによるものである。

 また、これを財政力指数段階別にみると、第116図のとおりである。

(イ)実質公債費比率

 実質公債費比率の団体規模別の分布状況は、第117図のとおりであり、10%以上18%未満の団体の割合が大きくなっている。

 次に、実質公債費比率を財政力指数段階別にみると、第118図のとおりであり、財政力指数が低いほど実質公債費比率が高くなる傾向にある。

オ 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担

 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担の状況については、第119図のとおりである。団体規模別に前年度と比較すると、政令指定都市1.5%増(前年度1.6%増)、中核市3.5%減(同3.7%増)、特例市0.5%減(同11.1%減)、中都市0.6%増(同0.5%増)、小都市3.9%減(同1.9%減)、人口1万人以上の町村5.2%減(同9.7%減)、人口1万人未満の町村11.7%減(同13.5%減)となっている。