5 地方経費の構造
地方公共団体の経費を経済的な性質に着目して分類すると、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別されるが、これらの状況をみると、次のとおりである。
(1) 義務的経費［第74表］
人件費、扶助費及び公債費からなる義務的経費の決算額は46兆4,359億円で、前年度と比べると0.6％増（前年度1.5％減）となっている。
また、義務的経費の歳出総額に占める割合は52.1％で、前年度と比べると0.3ポイントの上昇となっている。
義務的経費の内訳をみると、人件費が25兆2,563億円で、義務的経費に占める割合は54.4％（前年度54.4％）、公債費が12兆9,990億円で、義務的経費に占める割合は28.0％（同28.7％）、扶助費が8兆1,806億円で、義務的経費に占める割合は17.6％（同16.9％）となっている。
ア 人件費［第77表〜第79表］
人件費は、職員給、地方公務員共済組合等負担金、退職金、委員等報酬、議員報酬手当等からなっている。
人件費の決算額は25兆2,563億円（対前年度比0.5％増）で、団塊世代の職員の退職に伴い退職金が増加したことから、8年ぶりに増加している。
人件費の歳出総額に占める割合及び人件費に充当された一般財源の一般財源総額に占める割合の推移は、第52図のとおりである。
人件費の歳出総額に占める割合は前年度と比べると0.1ポイント上昇の28.3％となっている。
人件費の歳出総額に占める割合を団体種類別にみると、都道府県（31.8％）が、市町村立義務教育諸学校教職員の給与を負担していることなどから市町村（21.1％）を上回っている。
また、国家公務員の給与水準を100としたときの、地方公務員の給与水準を指すラスパイレス指数の推移は、第53図のとおり、昭和49年の110.6をピークとして低下の傾向にあり、平成19年4月1日現在のラスパイレス指数は98.5となっている。
ラスパイレス指数を団体区分別にみると、平成19年4月1日現在、都道府県99.6、政令指定都市101.0、都市（中核市、特例市を含む。）97.9、町村93.9となっている。
人件費の費目別の主な内訳をみると、第54図のとおりであり、職員給が71.1％を占め、以下、地方公務員共済組合等負担金（人件費総額の13.1％）、退職金（同11.2％）の順となっている。
各費目の決算額を前年度と比べると、職員給が1.5％減（前年度1.9％減）、地方公務員共済組合等負担金が0.5％減（前年度1.6％減）、退職金が17.8％増（同18.2％増）となっている。
人件費に充当された財源の内訳をみると、第55図のとおりであり、一般財源等が最も大きな割合（人件費総額の87.4％）を占め、以下、国庫支出金（同7.1％）、使用料・手数料（同2.6％）の順となっている。
財源の内訳を団体種類別にみると、一般財源等の構成比は、市町村（90.7％）が都道府県（83.1％）を上回っているのに対し、国庫支出金の構成比は、都道府県（11.5％）が市町村（0.5％）を大幅に上回っている。
これは、都道府県が負担している市町村立義務教育諸学校教職員の人件費について、国庫負担制度（義務教育費国庫負担金）が設けられていること等によるものである。
（ア） 職員給［第77表〜第78表］
職員給の決算額は17兆9,606億円で、前年度と比べると1.5％減（前年度1.9％減）となっており、9年連続して減少している。
職員給の主な内訳をみると、基本給が最も大きな割合（職員給総額の64.9％）を占め、次いでその他の手当（同35.0％）となっている。
また、職員給の主な内訳の決算額を前年度と比べると、基本給が1.9％減（前年度1.9％減）、その他の手当が0.8％減（同1.9％減）となっている。
職員給の部門別構成比は、第56図のとおりであり、教育関係が最も大きな割合（職員給総額の46.3％）を占め、以下、警察関係（同11.9％）、議会・総務関係（同11.8％）、民生関係（同8.6％）、消防関係（同6.3％）、衛生関係（同5.8％）の順となっている。
また、職員給の部門別構成比を団体種類別にみると、都道府県においては市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していることから、教育関係が最も大きな割合（64.3％）を占め、警察関係（19.3％）と合わせて全体の83.6％を占めている。
一方、市町村においては議会・総務関係が最も大きな割合（24.2％）を占めており、以下、民生関係（19.5％）、教育関係（17.3％）、消防関係（14.1％）、衛生関係（11.7％）の順となっている。
次に、平成19年4月1日現在における地方公務員（普通会計分）1人当たりの平均給料月額を主な職種別及び団体種類別にみると、第57図のとおりである。職種により平均給料月額に差があるのは、主として、職種別の年齢構成、給料表の構造等の違いによるものである。
（イ） 地方公務員の数［第79表］
地方公共団体の職員数（普通会計分）は、平成元年以降増加してきたが、行政改革が積極的に推進され、事務事業の見直し、組織の合理化、民間委託等の取組が行われたことなどから、平成7年以降13年連続して減少しており、平成19年4月1日現在の職員数は255万1,663人で、前年同期と比べると3万6,854人減少（1.4％減）している。
職員の部門別構成比は、第58図のとおりであり、教育関係職員が最も大きな割合（全地方公務員数の43.6％）を占め、以下、一般行政関係職員（同39.3％）、警察関係職員（同11.0％）、消防関係職員（同6.2％）の順となっている。なお、職員構成比を団体種類別にみると、都道府県においては教育関係職員が62.3％、一般行政関係職員が17.7％を占め、市町村においては一般行政関係職員が69.6％、教育関係職員が17.3％を占めている。
部門別職員数を前年同期と比べると、治安対策等のため警察関係職員が2,598人増加、消防関係職員が575人増加となる一方、一般行政関係職員が2万3,018人減少、教育関係職員が1万7,009人減少している。一般行政関係職員の増減の内訳をみると、議会・総務関係職員が4,694人減少、民生関係職員が4,619人減少、土木関係職員が4,458人減少、衛生関係職員が4,058人減少、農林水産関係職員が3,283人減少、税務関係職員が1,073人減少、商工関係職員が510人減少、労働関係職員が323人減少している。
また、部門別職員数の推移は、第59図のとおりであり、近年は、一般行政関係職員、教育関係職員が減少傾向にあり、消防関係職員、警察関係職員が増加傾向にある。
さらに、10年前（平成9年4月1日現在）と比較した一般行政関係職員の部門別、団体種類別増減状況は、第60図のとおりである。
（ウ） 地方議会議員の数
都道府県議会議員の定数は、平成19年12月31日現在で2,784人（対前年度同期比90人減少、同3.1％減）となっている。
また、市町村議会議員の定数は、36,399人（対前年度同期比4,943人減少、同12.0％減）となっている。
イ 扶助費［第82表］
扶助費は、社会保障制度の一環として、生活困窮者、児童、老人、心身障害者等を援助するために要する経費である。
この扶助費の決算額は8兆1,806億円であり、前年度と比べると5.0％増（前年度1.6％増）となっている。
また、扶助費の歳出総額に占める割合は、前年度と比べると0.5ポイント上昇の9.2％となっている。介護保険制度の実施に伴い平成12年度は前年度と比べると0.6ポイント低下したものの、自然増及び制度改正等により13年度以降は上昇している。
扶助費の目的別の内訳をみると、児童福祉費が3兆1,804億円で最も大きな割合（扶助費総額の38.9％）を占め、以下、生活保護費の2兆6,594億円（同32.5％）、社会福祉費の1兆6,402億円（同20.0％）、老人福祉費の2,340億円（同2.9％）の順となっている。
各費目の決算額を前年度と比べると、児童手当制度の拡充等により児童福祉費が7.5％増（前年度7.1％増）、生活保護受給者に係る人工透析費用を自立支援医療の対象としたこと等により生活保護費が0.6％減（同1.4％増）、障害者自立支援法の本格施行等により社会福祉費が18.7％増（同2.4％減）、老人福祉費が6.4％減（同15.1％減）となっている。老人福祉費については、介護保険制度の実施に伴い関連経費が介護保険事業会計から保険給付費として支出されることとなったため、平成12年度以降減少が続いている。
次に、扶助費のうち地方公共団体の単独施策分をみると、その額は1兆4,747億円で、前年度と比べると2.3％増（前年度2.1％増）となっている。
単独施策分を団体種類別にみると、都道府県においては976億円（都道府県の扶助費総額の11.6％）、市町村においては1兆3,772億円（市町村の扶助費総額の18.8％）となっている。
また、目的別の内訳をみると、児童福祉費が6,549億円で最も大きな割合（単独施策分総額の44.4％）を占め、以下、社会福祉費の4,295億円（同29.1％）、老人福祉費の2,225億円（同15.1％）の順となっている。
なお、扶助費に充当された財源の内訳をみると、一般財源等が4兆854億円（同49.9％）、次いで生活保護費負担金及び児童保護費負担金等の国庫支出金が3兆7,642億円（扶助費総額の46.0％）となっている。
ウ 公債費［第99表〜第100表］
公債費は、地方債元利償還金及び一時借入金利子の支払いに要する経費である。
公債費の決算額は12兆9,990億円で、前年度と比べると1.9％減（前年度4.8％減）となっている。なお、歳出総額に占める公債費の割合は、前年度と比べると0.3ポイント低下の14.6％となっている。
公債費の内訳をみると、地方債元金償還金が10兆4,449億円で最も大きな割合（公債費総額の80.4％）を占め、以下、地方債利子が2兆5,414億円（同19.6％）、一時借入金利子が127億円（同0.1％）となっている。
各費目の決算額を前年度と比べると、地方債元金償還金が1.2％減（前年度4.1％減）、地方債利子が4.7％減（同7.6％減）となっている。また、一時借入金利子は52.9％増（同45.7％増）となっている。
公債費を団体種類別にみると、都道府県においては前年度と比べると4.2％減（前年度4.8％減）、市町村においては前年度と比べると0.5％増（同4.9％減）となっている。
また、歳出総額に占める割合は、都道府県においては前年度と比べると0.6ポイント低下の13.9％となっており、市町村においては前年度と同率の13.5％となっている。
なお、公債費に充当された財源の内訳をみると、一般財源等が12兆3,671億円（公債費総額の95.1％）となっており、使用料、手数料等の特定財源が6,319億円（同4.9％）となっている。
(2) 投資的経費［第74表］
投資的経費は、道路・橋りょう、公園、学校、公営住宅の建設等社会資本の整備に要する経費であり、普通建設事業費、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっている。
近年、社会資本の整備水準は着実に向上しつつあるが、地方公共団体は、地方分権の推進に伴う地方公共団体の役割の増大、地域の活性化や住民に身近な社会資本整備の必要性等を勘案し、生活関連基盤の整備や地域経済の振興等に必要な社会資本整備を重点的、効果的に実施することが求められている。
投資的経費の決算額は13兆8,821億円で、前年度と比べると6.2％減（前年度6.5％減）となっている。
投資的経費の歳出総額に占める割合を前年度と比べると、1.0ポイント低下の15.6％となっている。
投資的経費の内訳をみると、普通建設事業費が97.4％を占め、以下、災害復旧事業費（2.6％）、失業対策事業費（0.0％）の順となっている。
ア 普通建設事業費［第84表］
普通建設事業費は、道路・橋りょう、学校、庁舎等公共又は公用施設の新増設等の建設事業に要する経費である。
この普通建設事業費の決算額は13兆5,243億円であり、前年度と比べると5.3％減（前年度5.4％減）となっている。これは、厳しい財政状況を反映した単独事業の重点化や公共投資の減少等が主な要因である。
普通建設事業費の内訳は、単独事業費（50.0％）、補助事業費（40.8％）、国直轄事業負担金（9.3％）の順となっている。
また、各費目の決算額を前年度と比べると、単独事業費は6.4％減（前年度5.8％減）、補助事業費は5.1％減（同6.0％減）、国直轄事業負担金は0.4％減（同0.4％減）となっている。
平成9年度以降における普通建設事業費の推移は、第17表のとおりである。
また、近年の普通建設事業費の内訳の推移は、第62図のとおりである。
補助事業費については、経済対策が行われた平成4年度以降、決算規模が拡大し、10兆円を超える規模で推移してきたが、13年度以降は10兆円を下回っており、19年度においては、国の公共投資関係費の減少等に伴い、6兆円を下回る規模となっている。
単独事業費については、昭和62年度から平成4年度まで、決算規模の伸び率が10％を超えるペースで増加していたが、6年度以降は減少傾向にあり、19年度においても前年度を下回る規模となっている。
さらに、補助事業費と単独事業費を比較すると、単独事業費の決算額は、昭和63年度に補助事業費の決算額を上回り、その後両者の決算額の差が拡大していたが、平成8年度の1.4倍をピークに徐々にその差が縮小し、19年度においては、単独事業費は補助事業費の約1.2倍の規模となっている。
また、これを団体種類別にみると、都道府県においては単独事業費が補助事業費の約0.9倍の規模となっており、市町村においては約1.7倍の規模となっている。
（ア） 普通建設事業費の目的別内訳［第84表〜第88表］
普通建設事業費の目的別の内訳をみると、第63図のとおりであり、土木費が最も大きな割合（普通建設事業費総額の59.6％）を占め、以下、農林水産業費（同13.3％）、教育費（同10.9％）の順となっている。
さらに、これらの費目を内訳別にみると、土木費のうちの道路橋りょう費が最も大きな割合（普通建設事業費総額の25.3％）を占め、以下、都市計画費（同18.1％）、河川海岸費（同9.9％）の順となっている。
また、これを団体種類別にみると、都道府県においては道路橋りょう費（普通建設事業費総額の30.5％）、河川海岸費（同16.3％）、農地費（同12.4％）、都市計画費（同10.9％）、林業費（同5.0％）の順となっており、市町村においては都市計画費（同25.7％）、道路橋りょう費（同17.6％）、小学校費（同7.2％）、清掃費（同5.3％）、中学校費（同4.4％）の順となっている。
次に、補助事業費及び単独事業費の構成比をみると、総務費、民生費、衛生費、労働費、商工費、土木費、消防費及び教育費においては単独事業費が補助事業費の割合を上回っているのに対し、農林水産業費において補助事業費が単独事業費の割合を上回っている。
主な費目をその内訳別にさらに詳細にみると、土木費では、道路橋りょう費及び都市計画費は単独事業費が補助事業費の割合を上回っているのに対し、河川海岸費、港湾費及び住宅費は、補助事業費が単独事業費の割合を上回っている。
また、教育費では高等学校費、社会教育費、保健体育費及び大学費で、民生費では社会福祉費、老人福祉費及び児童福祉費で、衛生費では清掃費で、単独事業費が補助事業費の割合を上回っている。一方、農林水産業費では、農業費、農地費、林業費及び水産業費で、補助事業費が単独事業費の割合を上回っている。
なお、普通建設事業費の目的別内訳の10年前（平成9年度）の決算額との比較については、第64図のとおりである。
（イ） 補助事業費［第85表］
補助事業費は、地方公共団体が国からの負担金又は補助金を受けて実施する事業に要する経費である。
補助事業費の決算額は5兆5,136億円で、前年度と比べると5.1％減（前年度6.0％減）となっている。
これを団体種類別にみると、都道府県においては8.7％減（前年度10.1％減）、市町村においては0.5％減（同0.1％減）となっている。
補助事業費の目的別の内訳をみると、第65図のとおりであり、土木費が最も大きな割合（補助事業費総額の58.4％）を占め、以下、農林水産業費（同21.7％）、教育費（同10.2％）、衛生費（同3.4％）の順となっている。
さらに、これらの費目を内訳別にみると、都市計画費が最も大きな割合（補助事業費総額の17.2％）を占め、以下、道路橋りょう費（同16.6％）、河川海岸費（同14.7％）の順となっている。
これを団体種類別にみると、都道府県においては河川海岸費（補助事業費総額の23.1％）、道路橋りょう費（同21.3％）、農地費（同19.0％）の順となっており、市町村においては都市計画費（同30.0％）、小学校費（同10.5％）、道路橋りょう費（同8.9％）の順となっている。
（ウ） 単独事業費［第87表］
単独事業は、地方公共団体が国の補助等を受けずに自主的・主体的に地域の実情等に応じて実施する事業である。
単独事業に要する経費である単独事業費の決算額は6兆7,569億円で、前年度と比べると6.4％減（前年度5.8％減）となっている。
これを団体種類別にみると、都道府県においては7.4％減（前年度2.5％減）、市町村においては5.6％減（同8.3％減）となっている。
単独事業費の目的別の内訳をみると、第66図のとおりであり、土木費が最も大きな割合（単独事業費総額の56.9％）を占め、以下、教育費（同13.5％）、総務費（同7.1％）の順となっている。
さらに、これらの費目を内訳別にみると、道路橋りょう費が最も大きな割合（単独事業費総額の27.5％）を占め、以下、都市計画費（同22.0％）、河川海岸費（同3.8％）の順となっている。
また、これを団体種類別にみると、都道府県においては道路橋りょう費（単独事業費総額の33.3％）、都市計画費（同18.7％）、河川海岸費（同6.1％）の順となっており、市町村においては都市計画費（同23.8％）、道路橋りょう費（同21.9％）、小学校費（同5.7％）の順となっている。
（エ） 国直轄事業負担金［第86表］
国直轄事業負担金は、国が道路、河川、砂防、港湾等の土木事業等を直轄で実施する場合において、法令の規定により地方公共団体がその一部を負担する経費である。
国直轄事業負担金の決算額は1兆2,539億円で、前年度と比べると0.4％減（前年度0.4％減）となっている。
国直轄事業負担金の目的別の主な内訳をみると、土木費が80.1％、農林水産業費が19.9％となっている。
さらに、これらの費目を内訳別にみると、道路橋りょう費が最も大きな割合（国直轄事業負担金総額の51.1％）を占め、以下、河川海岸費（同21.5％）、農地費（同18.9％）の順となっている。
（オ） 普通建設事業費の充当財源［第84表〜第87表］
普通建設事業費に充当された主な財源の内訳をみると、地方債が最も大きな割合（普通建設事業費総額の41.0％）を占めており、以下、一般財源等（同29.5％）、国庫支出金（同20.6％）の順となっている。
普通建設事業費に充当された主な財源の決算額の構成比を前年度と比べると、地方債は1.1ポイントの上昇、一般財源等は0.6ポイントの低下、国庫支出金は0.2ポイントの低下となっている。
また、これを補助事業費及び単独事業費に分けてみると、補助事業費については、国庫支出金が50.6％、地方債が36.0％、一般財源等が7.6％となっており、単独事業費については、一般財源等が48.6％、地方債が39.7％となっている。
普通建設事業費に充当された主な財源の内訳の推移は、第67図のとおりである。
また、地方債の構成比は、平成5年度以降、充当財源の中で最も大きな割合を占め、4割程度で推移している。
（カ） 用地取得費［第89表〜第91表］
地方公共団体が道路、公園、公営住宅、学校の建設等社会資本整備を推進するための用地取得に要する経費である用地取得費の決算額は1兆8,828億円で、前年度と比べて6.4％減（前年度6.8％減）となっており、9年連続して減少している。
これを団体種類別にみると、都道府県においては7,848億円で7.9％減（前年度9.0％減）、市町村においては1兆980億円で5.3％減（同5.1％減）となっており、都道府県、市町村ともに9年連続して減少している。
用地取得費の目的別の主な内訳をみると、第68図のとおりであり、土木関係が用地取得費総額の中で最も大きな割合（用地取得費総額の80.4％）を占め、次いで、教育関係（同5.3％）となっている。
さらに、土木関係の内訳をみると、都市計画が最も大きな割合（用地取得費総額の42.6％、都道府県34.6％、市町村48.4％）を占め、次いで、道路橋りょう（同28.0％、同42.5％、同17.6％）となっている。
また、用地取得費のうち用地を取得するために要した移転等の補償費、賠償費は5,313億円で、用地取得費に占める割合は、前年度と比べると0.4ポイント低下の28.2％（都道府県42.6％、市町村17.9％）となっている。
取得用地面積（債務負担行為等に係るものを含む。）は1億494万 1千m2（都道府県3,962万6千m2、市町村6,531万5千m2）であり、前年度と比べると5.8％減となっている。
用地取得費の推移は、第69図のとおりである。
また、普通建設事業費に占める用地取得費の割合の推移は、第18表のとおりであり、平成19年度は13.9％（都道府県10.5％、市町村16.6％）となっている。
地方公共団体（普通会計）の用地取得費を取得先別にみると、第70図のとおりであり、土地開発基金及び土地開発公社からの取得が全体の34.5％を占めている。これを団体種類別にみると、都道府県においては20.1％、市町村においては44.7％となっている。
イ 災害復旧事業費［第92表］
災害復旧事業費は、暴風、洪水、地震その他異常な自然現象等の災害によって被災した施設を原形に復旧するために要する経費である。
この災害復旧事業費の決算額は3,543億円で、前年度と比べると27.8％減（前年度30.7％減）となっている。これは台風等の災害による被害が減少したことによるものである。
災害復旧事業費の内訳をみると、第71図のとおりである。
災害復旧事業費の決算額を前年度と比べると、補助事業費が2,998億円で29.6％減（前年度33.4％減）、単独事業費が428億円で13.4％減（同18.1％減）、国直轄事業負担金が118億円で24.6％減（同76.1％増）となっている。
また、目的別内訳の構成比をみると、道路、河川、海岸、港湾、漁港等の公共土木施設関係（災害復旧事業費総額の74.6％）と農地、農業用施設等の農林水産施設関係（同21.3％）で全体の95.9％を占めている。
さらに、災害復旧事業費に充当された財源の内訳をみると、国庫支出金が最も大きな割合（同62.1％）を占め、次いで地方債（同27.1％）となっており、これらの財源で充当された財源の89.2％を占めている。
ウ 失業対策事業費［第93表］
失業対策事業費は、失業者に就業の機会を与えることを主たる目的として、道路、河川、公園の整備等を行う事業に要する経費である。
この失業対策事業費の決算額は34億円で、特定地域開発就労事業が平成18年度で廃止されたことに伴い、前年度と比べると85.8％減（前年度44.8％増）となっている。
その内訳をみると、補助事業費が29億円（失業対策事業費総額の84.7％）、単独事業費が5億円（同15.3％）となっている。
また、失業対策事業費に充当された財源は、国庫支出金が15億円（失業対策事業費総額の44.2％）、一般財源等が8億円（同22.7％）等となっている。
(3) その他の経費［第74表、第98表］
その他の経費には、物件費、維持補修費、補助費等、繰出金、積立金、投資及び出資金、貸付金並びに前年度繰上充用金があり、その決算額は28兆8,296億円で、前年度と比べると2.1％増（前年度0.8％増）となっている。
その他の経費の内訳をみると、第19表のとおりである。
また、その他の経費の歳出総額に対する割合をみると、物件費が8.5％（前年度8.4％）、補助費等が8.4％（同8.3％）、貸付金が6.2％（同5.9％）、繰出金が5.2％（同5.2％）、積立金が2.4％（同2.3％）の順となっている。
なお、その他の経費のうち地方公営企業会計に対する繰出しの状況についてみると、法適用企業の地方公営企業会計に対する繰出しは1兆9,700億円（補助費等1兆5,981億円、投資及び出資金2,706億円、貸付金1,013億円）、法非適用企業の地方公営企業会計に対する繰出し（繰出金）は1兆4,339億円で、合計3兆4,039億円となっており、これを前年度と比べると3.0％減（前年度3.7％減）となっている。
ア 物件費［第80表］
賃金、旅費、役務費、委託料等の経費である物件費の決算額は7兆6,177億円であり、前年度と比べると2.1％増（前年度4.0％減）となっている。
その構成比については、委託料が最も大きな割合（物件費総額の51.9％）を占め、次いで消耗品の取得等に要する需用費（同22.2％）となっており、これらの経費で物件費総額の74.2％を占めている。
なお、物件費の内訳の推移は、第73図のとおりである。
イ 維持補修費［第81表］
地方公共団体が管理する公共用施設等の維持に要する経費である維持補修費の決算額は9,889億円で、前年度と比べると1.4％増（前年度7.9％減）となっている。
維持補修費の内訳を目的別にみると、土木費の6,498億円（維持補修費総額の65.7％）、衛生費の1,168億円（同11.8％）、教育費の1,057億円（同10.7％）の順となっており、道路・橋りょう、公営住宅等の土木関係施設、清掃施設等の衛生関係施設及び小・中学校等の教育関係施設に係るものの合計で維持補修費総額の88.2％を占めている。
ウ 補助費等［第83表］
法適用企業に対する負担金、さまざまな団体等への補助金、報償費、寄附金等の補助費等の決算額は7兆4,708億円で、前年度と比べると0.7％増（前年度2.6％増）となっている。
補助費等の内訳を目的別にみると、民生費が2兆7,179億円で最も大きな割合（補助費等総額の36.4％）を占め、以下、教育費の1兆1,550億円（同15.5％）、衛生費の9,490億円（同12.7％）、土木費の8,433億円（同11.3％）、総務費の7,525億円（同10.1％）、商工費の4,461億円（同6.0％）、農林水産業費の2,860億円（同3.8％）の順となっている。
補助費等のうち、地方公営企業会計（法適用企業）に対する負担金及び補助金は、地方公営企業の性質上一般会計等において負担すべき経費があることから支出されるものであり、その額は1兆5,981億円で、前年度と比べると0.1％減（前年度3.5％減）となっている。
事業別にみると、下水道事業に対するものが6,950億円で最も大きな割合（地方公営企業会計（法適用企業）に対する負担金及び補助金総額の43.5％）を占め、次いで、病院事業の6,067億円（同38.0％）となっており、これら二事業で総額の81.5％を占めている。以下、交通事業の1,722億円（同10.8％）、上水道事業の860億円（同5.4％）の順となっている。
エ 繰出金［第94表］
普通会計から他会計、基金（定額の資金の運用を目的とする基金）に支出する経費である繰出金の決算額は4兆6,109億円で、前年度と比べると0.1％増（前年度0.5％増）となっている。地方公営企業会計（法非適用企業）及び基金に対する繰出金は減少したものの、国民健康保険事業会計、老人保健医療事業会計及び介護保険事業会計への繰出金は増加している。
繰出金の内訳を繰出先別にみると、地方公営企業会計（法非適用企業）に対するものが1兆4,339億円で最も大きな割合（繰出金総額の31.1％）を占めており、以下、国民健康保険事業会計に対するもの1兆2,131億円（同26.3％）、介護保険事業会計に対するもの1兆427億円（同22.6％）、老人保健医療事業会計に対するもの8,629億円（同18.7％）の順となっている。
なお、繰出金のうち、地方公営企業会計（法非適用企業）に対する繰出金は、地方公営企業の性質上一般会計等において負担すべき経費があることから支出されるものであり、その内訳を事業別にみると、下水道事業に対するものが1兆1,449億円で最も大きな割合（地方公営企業会計（法非適用企業）に対する繰出金総額の79.8％）を占めている。
また、その下水道事業に対する繰出金を目的別にみると、公債費財源繰出が8,830億円（対前年度比1.1％減）、建設費繰出が969億円（同14.3％減）で、両者で全体の85.6％を占めている。
オ 積立金［第95表、第103表］
特定の目的のための財産を維持又は資金を積み立てるために設立された基金等に対する経費である積立金（歳計剰余金処分による積立金を含む。）の決算額は2兆3,152億円で、前年度と比べると685億円増加（対前年度比3.1％増）している。
積立金の内訳を基金の種類別にみると、財政調整基金に対するものは7,293億円で、前年度と比べると1,014億円増加（対前年度比16.1％増）、減債基金に対するものは2,336億円で、2,164億円減少（同48.1％減）、その他特定目的基金に対するものは1兆3,523億円で、1,836億円増加（同15.7％増）している。
一方、積立金取崩し額は1兆9,389億円で、前年度と比べると3,185億円増加（対前年度比19.7％増）している。
その内訳をみると、財政調整基金の取崩し額は5,825億円で、前年度と比べると1,508億円増加（対前年度比34.9％増）、減債基金の取崩し額は5,263億円で、1,247億円増加（同31.1％増）、その他特定目的基金の取崩し額は8,301億円で、429億円増加（同5.5％増）している。
なお、平成19年度末における積立金現在高は13兆9,785億円で、前年度末と比べると3,763億円増加（対前年度末比2.8％増）となっている（積立金現在高については、「2 地方財政の概況 （6） 将来の財政負担 ウ 積立金現在高」を参照）。
カ 投資及び出資金［第96表］
国債、地方債の取得や財団法人等への出えん、出資等のための経費である投資及び出資金の決算額は3,849億円で、前年度と比べると0.5％減（前年度11.5％減）となっている。
投資及び出資金の内訳を目的別にみると、土木費に係るものが1,690億円で最も大きな割合（投資及び出資金総額の43.9％）を占め、次いで衛生費に係るものが1,397億円（同36.3％）となっている。
投資及び出資金のうち、地方公営企業会計（法適用企業）に対するものは2,706億円で、前年度と比べると24億円増加（対前年度比0.9％増）している。
事業別にみると、下水道事業に対するものが845億円で、最も大きな割合（地方公営企業会計（法適用企業）に対する投資及び出資金総額の31.2％）を占め、以下、上水道事業の738億円（同27.3％）、病院事業の598億円（同22.1％）、交通事業の449億円（同16.6％）の順となっている。
平成19年度末における投資及び出資金の現在高は13兆5,498億円で、前年度末と比べると3,800億円増加（対前年度末比2.9％増）している。
その内訳をみると、観光・交通関係に係るものが3兆4,872億円で最も大きな割合（投資及び出資金残高の25.7％）を占め、以下、商工関係の1兆1,840億円（同8.7％）、開発関係の1兆1,195億円（同8.3％）の順となっている。
これに、基金の運用による投資及び出資金現在高166億円を加えると、現在高の総計は13兆5,664億円となり、前年度末と比べると3,808億円増加（対前年度末比2.9％増）している。
キ 貸付金［第97表］
地方公共団体がさまざまな行政施策上の目的のために地域の住民、企業に貸し付ける貸付金の決算額は5兆5,526億円で、前年度と比べると5.0％増（前年度4.8％増）となっている。
貸付金の内訳を目的別にみると、商工費に係るものは3兆7,543億円で、前年度と比べると1,757億円増加（対前年度比4.9％増）、土木費に係るものは8,800億円で、340億円減少（同3.7％減）している。
地方公営企業会計（法適用企業）に対する貸付金は1,013億円で、前年度と比べると478億円減少（対前年度比32.0％減）しており、貸付金総額に占める割合は1.8％となっている。
平成19年度末の貸付金の現在高は7兆8,987億円で、前年度末と比べると2,143億円増加（対前年度末比2.8％増）となっている。
その内訳をみると、商工関係に係るものが1兆6,968億円（貸付金現在高の21.5％）、観光・交通関係が1兆3,765億円（同17.4％）、住宅関係が6,534億円（同8.3％）等となっている。
これに定額の資金を運用するための基金による貸付金現在高5,795億円を加えると、貸付金現在高の総計は8兆4,782億円となり、前年度末と比べると1,943億円増加（対前年度末比2.3％増）している。