西暦2000年問題に関する郵政省の取組み
「郵政省内の推進体制」 「郵政事業における西暦2000年問題」
「情報通信における西暦2000年問題」 「税制等による支援」
郵政省内の推進体制
「コンピュータ西暦2000年問題」は、21世紀における高度情報通信社会の構築に向けた信任を揺るがす大きな、かつ対応期限が明瞭な緊急性を要する問題です。
これまで、郵政省は郵政事業におけるコンピュータシステムなどへの対応を着実に実施するとともに、通信・放送事業者に対する周知・徹底を図ってきました。
本問題の重要性、緊急性にかんがみ、具体的な政府の行動計画を早急に策定し、実施に移す必要があることから、平成10年8月21日の閣僚懇談会において、内閣総理大臣から関係各大臣の一致協力と適切な対応を行う旨の指示があったところです。
そこで、政府の「行動計画」の策定と、これに基づいた西暦2000年問題への取組をより一層推進するため、郵政省としての対応を検討し、進捗管理等を行っていくために、8月30日、野田郵政大臣の指示によって省内に「コンピュータ西暦2000年問題対策推進本部」が設置されました。
【「コンピュータ西暦2000年問題対策推進本部」の構成員】
本部長 :事務次官
本部員 :官房長、官房総務審議官、官房技術総括審議官、官房財務部長
通信政策局長、電気通信局長、放送行政局長
主 査 :官房企画課長
郵政事業における西暦2000年問題
郵政事業関係のシステムは、郵便貯金オンラインシステムのような超大型システムから内部事務処理用のミニシステムまで大小のシステムがありますが、これまでにハード・ソフト両面から総点検を行い、計画的に取り組んできているところです。
西暦2000年問題への取組は、それぞれシステム更改等に併せて対応を行っており、現時点では大半のシステムが対応を完了しております。
なかでも、国民の皆さまに密着したシステムである、郵便貯金及び簡易保険オンラインシステムについては、平成8年度(1996年度)に対応を終了しています。
なお、郵便貯金においては、給与預入、自動払込等のデータを磁気媒体で持ち込む全ての事業所の方々に対して、西暦2000年問題への対応について現在照会をさせていただいております。
各事業所の方々にはご迷惑をおかけしますが、西暦2000年に向けて万全の対策をとるため、ご協力の程お願いいたします。
また、一部、システム更改の時期の関係で現在対応中の内部業務処理用のシステムがありますが、これらのシステムも遅くとも平成11年(1999年)秋には完了する計画となっております。
以上のとおり、郵政事業においては「2000年問題」についてお客様サービスや事務処理に支障がでないよう、万全の取り組みを行っているところです。
情報通信における西暦2000年問題
電気通信事業に使用されるネットワークには、コンピュータ機能が全面的に導入されているため、いわゆる西暦2000年問題は非常に重要な課題です。
このため、郵政省では「情報通信ネットワークの安全・信頼性に関する研究会」(座長:土居範久慶應義塾大学教授)において、電気通信事業のために運用するネットワークにおける西暦2000年問題に関する諸問題と具体的な対応方策の検討を行い平成9年3月に報告書としてとりまとめました。
この報告では、通信に関する各種機能に着目して、西暦2000年問題の影響を評価し、基本的な通信機能については問題がないものの、付加サービスその他、通信をサポートする機能では日付データを取り扱っており、事業者の対応が必要なことを示しました。
なお、実際のシステムでは、必ずしも機能毎にシステムが独立していないケースも想定されることから、実際のシステム毎に、より詳細な確認が必要です。
郵政省としては、引き続き、西暦2000年問題に活用できる既存の金融支援及び税制支援制度の活用や、関係者への指導、啓発に積極的に取り組んでまいります。
〜情報通信ネットワークの安全・信頼性に関する研究会中間報告書の概要〜
現在使われている各種コンピュータには、年月日の年数を西暦年の下2桁で処理しているものがある。このため、西暦2000年以降年号を処理する際、西暦2000年代のはずのものを西暦1900年代と判断したりするなど、誤った処理結果を生じる可能性があり、これによって様々な問題が発生するおそれがあるといわれている。
- 情報通信における西暦2000年問題の捉え方
次のような情報通信ネットワークの特性を踏まえて検討。
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多種多様な情報システムで多くのコンピュータを使用
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・ |
ソフトウェア依存性
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・ |
相互接続の進展
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- 電気通信事業者における取組状況
約97%の事業者は問題認識があり、約43%の事業者が具体的な作業に着手(作業に着手していないが検討中の事業者も含めると約76%)。
事業者の西暦2000年問題への取組は、必ずしも進んでいるとはいえない状況であり、早急な取組の開始が必要。(平成8年12月のアンケート実施結果(230社からの回答))
- 情報通信ネットワークにおける西暦2000年問題の考え方の整理
情報通信ネットワークにおいて、下図のとおり西暦2000年問題を以下の観点から検討、整理。
・ |
情報通信システムの内部処理における西暦2000年問題の影響
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・ |
ネットワーク内の情報通信システムの接続における西暦2000年問題の影響
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・ |
ネットワーク間の相互接続における西暦2000年問題の影響
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情報通信ネットワークの構成概要
- 情報通信システムの内部処理における西暦2000年問題
(1) |
情報通信システムの機能の分類
- 「通信路設定機能」
- ユーザーの操作あるいはサービス制御機能からの指示により与えられる情報に従って通信路を設定する。必要に応じサービス制御機能に、通信路の設定のための情報の問い合わせを行う。また、運用管理機能に対し、通信路の設定、解放を通知する。
与えられる情報の例としては、通信の開始/終了情報、接続先を決定するための番号情報がある。
- 「サービス制御機能」
- 通信サービスの提供のために必要な処理を行い、通信路設定機能に必要な指示を行う。
例として、フリーフォン、短縮ダイヤルサービスにおける番号情報変換、ファクシミリ蓄積通信サービスなどの日時指定サービスにおける時間管理などがある。
- 「運用管理機能」
- 通信システムの運用状況に関する情報を収集し、分析・整理を行う機能。
例として、通信の開始、終了に伴う通信記録、料金計算、各システムの運用監視・通知などがある。
各機能の相互関係
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(2) |
情報通信システムの各機能における西暦2000年問題発生の可能性
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通信路設定機能においては、年号を含む情報が処理されないので、西暦2000年問題が発生する可能性はない。
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西暦2000年問題が発生する可能性があるのは、各システムのサービス制御機能及び運用管理機能のうち年号情報の処理を行う場合のみである。これらにおいて西暦2000年問題を原因とする異常処理が生じた場合にも、通信路設定機能に影響が及び異常処理が生じることはない。
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主な情報通信システムが持つ機能と各機能における西暦2000年問題の発生の可能性の例は以下の表のとおり。
表 情報通信システムの各機能における西暦2000年問題発生の可能性
機 能
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情報通信システム
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年号処理の有無
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想定される事象
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ユーザーへの影響
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通信路設定 |
呼の開始・終了の検出 |
交換機、PBX |
なし |
なし |
なし |
番号認識 |
交換機、PBX |
なし |
なし |
なし |
通信路の設定 等 |
交換機、信号中継交換機、PBX、ルータ、付加サービスシステム、監視制御システム、料金処理システム |
なし |
なし |
なし |
サービス制御 |
番号情報管理・変換 |
交換機、付加サービスシステム |
なし |
なし |
なし |
情報蓄積・変換 等 |
付加サービスシステム |
なし |
なし |
なし |
時間管理・制御 |
交換機、付加サービスシステム、監視制御システム、回線切替装置 |
指定された日付による通信、保守作業の開始判断 |
通信サービス、保守作業の日時指定予約ができない、指定日時に通信、保守作業ができない |
通信サービスについてはユーザーの通信に影響 |
運用管理 |
通信記録、通信時間計算、料金計算 |
交換機、PBX、料金処理システム |
通信時間等の記録、料金計算、請求書発行 |
料金が誤請求、請求不能、明細書の異常表示 |
通信以外でユーザーに影響 |
故障表示、アラーム情報通知・蓄積・管理、トラヒック管理 |
交換機、PBX、ルータ、付加サービスシステム、監視制御システム |
アラーム発生日時の記録 |
通信設備の障害状況は確認できるが、アラーム発生年が正常に表示できない |
なし (注) |
試験 |
交換機、PBX
試験システム |
なし |
なし |
なし |
遠隔制御 |
監視制御システム
回線切替装置 |
なし |
なし |
なし |
(注) |
その後、必ずしも影響がないとは言い切れないとの指摘もあるため、注意が必要である。
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- ネットワーク内の情報通信システムの接続における西暦2000年問題
通信路設定機能においては、年号を含む情報が処理されないので、西暦2000年問題が発生する可能性はない。したがって、西暦2000年問題を原因として、各事業者のネットワーク内の情報通信システム間の接続に支障が生じることはない。
- ネットワーク間の相互接続における西暦2000年問題
通信路設定機能においては年号情報を処理しないので、相互接続されている異なる事業者のネットワーク間において、西暦2000年問題を原因として相互接続に支障が生じることはない。
これより、各事業者は、相互接続された他の事業者の西暦2000年問題への対応と独立して、サービス制御機能、運用管理機能の年号情報を処理するソフトウェアについて、自網での西暦2000年問題への対応を進めることができる。
- まとめ
・ |
情報通信ネットワークの基本的な接続サービスを利用してユーザ間で通信を行う場合には、年号を含む情報が処理されないので、西暦2000年問題により特段の支障が生じることはない。
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・ |
ファクシミリの日時指定送信サービス等、ネットワーク内での年号情報の処理を伴う一部の付加サービス機能を利用する場合、西暦2000年問題が発生すると、指定どおりの日時に通信サービスが提供されないといった問題が発生する可能性がある。しかしながら、この場合にも、付加サービス機能での異常処理が影響してネットワークの接続にまで支障が生じることはない。
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・ |
料金精算は、年号処理を伴うため、西暦2000年問題が発生すると誤請求等の問題が発生する。料金はユーザへの影響が大きいため、事業者における確実な対応が望まれる。
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・ |
ネットワークの監視制御システムにおいて西暦2000年問題が発生すると、障害発生時の記録の年号表示が異常となるが、障害状況は運用管理者に通知されるため、特段の支障が生じることはない。(注)
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(注) |
その後、表示が正常に行われない場合、運用上、異常への対処が遅れる等の形で影響の出る恐れが出る可能性も指摘されている。
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西暦2000年問題への対応の基本的な取組の流れは以下のとおり。分析・計画及び対処・移行の2つの段階に分けて、具体的な取組方法を整理。
- 周知啓蒙の推進
・ |
早急な取組の必要性について、電気通信事業者及びベンダに対し、積極的な周知啓蒙を行うことが重要。特に、経営層に対し西暦2000年問題の取組について理解を得られるような周知啓蒙が重要。
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・ |
関係団体等により、あらゆる機会を捉えて関係者への周知啓蒙を図ることが重要。
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- 意見交換・情報交換の推進
関係団体等により、電気通信事業者が相互に西暦2000年問題への対策に関する情報交換等を行うことができる環境整備が有効。
- 支援方策
既存の融資制度及び税制上の優遇措置の活用について周知に努めることが重要。
税制等による支援
西暦2000年問題対応で活用できる税制及び財政投融資制度は以下のとおりです。
【1.税制】
中小企業新技術体化投資促進税制(メカトロ税制) |
2000年対応での電子計算機の入れ替え時に利用可能。
◆概要 |
中小企業が電子計算機を導入した場合、次の税額控除又は特別償却を認める。
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○税額控除・・・ |
資本金3,000万円以下の中小法人及び個人に限り、対象設備の取得価額の7%の税額控除
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○税額控除(リースの場合)・・・ |
リース費用総額の60%について7%の税額控除
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○特別償却・・・対象設備の取得価額の30%を初年度特別償却
◆対象設備
○ |
1台または1基の取得価額が160万円以上のコンピュータまたは100万円以下のコンピュータを複数台購入し、総額100万円以上のもの(複数のコンピュータを相互に接続し、データ交換を行うものである等一定の要件を満たすもの)。
ただし、リースの場合は費用総額が210万円以上。
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○ |
デジタル交換機(課金機能、付加サービス関連機能)、付帯設備(監視装置等)
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電気通信ネットワーク高度化税制(デジタル化税制) |
◆概要 |
第一種電気通信事業者に対し、固定資産税について取得後5年度分の課税標準を9/10とする。
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◆対象設備
デジタル交換機(課金機能、付加サービス関連設備)、デジタルファクシミリ
情報通信ベンチャー機械投資促進税制 |
2000年対応での電子計算機の入れ替え時に利用可能。
◆概要 |
中小企業が取得する1設備230万円以上の投資(パソコン、ファクシミリ等の備品については、100万円以上のまとめ買い)について税額控除又は特別償却を認める。
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○税額控除・・・ |
資本金3,000万円以下の中小法人及び個人に限り、対象設備の取得価額の7%の税額控除
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○税額控除(リースの場合)・・・ |
対象設備の取得価額の7%を税額控除
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○特別償却・・・対象設備の取得価額の30%を初年度特別償却
◆対象設備
○全ての機械装置 : |
1設備230万円以上(リースの場合は費用総額300万円以上)
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○特定の器具及び備品: |
1設備又は同一種類の複数設備の合計100万円以上(リースの場合は費用総額140万以上)
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【特定の器具等】
電子計算機(パソコン)、 デジタル複写機、 ファクシミリ、 デジタル構内交換設備、 デジタルボタン電話、 電子ファイリング設備、 マイクロファイル設備、 ICカード利用設備、 冷房用又は暖房用機器 |
2000年対応のプログラム修正費用の税務上の取扱 |
2000年対応のためのプログラムの修正に要する費用については、原則、修繕費として支出時の損金として取り扱う。
【2.財政投融資】
≪設備の取得により2000年問題に対応する場合に活用できる主な融資制度≫
※金利は主な金利を表示してあります。
第一種電気通信事業者が、電気通信サービスを提供するための施設・設備等を整備するための資金に対する融資制度です。(特利5)
【担当機関:日本開発銀行、沖縄振興開発金融公庫。ただし、県域内を業務区域とする無線呼出しの役務の提供を行う者は北海道東北開発公庫を含む】
第二種電気通信事業者が、電気通信サービスを提供するために交換設備や電源設備等を整備するための資金に対する融資制度です。(基準金利又は特利4)
【担当機関:県域を超えて電気通信役務の提供を行う者は、日本開発銀行、沖縄振興開発金融公庫。ただし、県域内で電気通信役務の提供を行う者は北海道東北開発公庫を含む】
CATV事業を行うために伝送路設備、センター設備等を整備するための資金に対する融資制度です。(特利4)
【担当機関:日本開発銀行、北海道東北開発公庫、沖縄振興開発金融公庫】
コミュニティ放送を実施するために必要な放送設備、中継局設備等を整備するための資金に対する融資制度です。(特利3)
【担当機関:日本開発銀行、北海道東北開発公庫、沖縄振興開発金融公庫】
※なお、融資の詳細については審査等も必要となりますので各政策金融機関にお問い合わせ下さい。
【問合せ先】
日本開発銀行本店情報通信部 |
03−3244−1660
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北海道東北開発公庫本店営業部 |
03−3270−1653
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沖縄振興開発金融公庫本店 |
098−867−6614
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東京本部 |
03−3581−3243
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