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平成27年版
地方財政白書
(平成25年度決算)

2 地方財政の概況

地方公共団体の会計は、一般会計と特別会計に区分して経理されているが、特別会計の中には、一般行政活動に係るものと企業活動に係るものがある。

このため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門と水道、交通、病院等の企業活動部門に分け、前者を「普通会計」、後者を「地方公営事業会計」として区分している。

以下、平成25年度の地方財政について、2から6までと10において普通会計の状況を、7において地方公営事業会計等の状況を、8において東日本大震災の影響を、9において健全化判断比率等の状況を示すとともに、11において公共施設の状況を示す。なお、普通会計決算については、平成23年度から通常収支分(全体の決算額から東日本大震災分を除いたもの)と東日本大震災分(東日本大震災に係る復旧・復興事業及び全国防災事業に係るもの)を区分して整理している。

(1)決算規模[資料編:第1表第5表第10表第73表

地方公共団体(47都道府県、1,719市町村、23特別区、1,236一部事務組合及び112広域連合(以下一部事務組合及び広域連合を「一部事務組合等」という。))の普通会計の純計決算額は、第1表のとおり、歳入101兆998億円(前年度99兆8,429億円)、歳出97兆4,120億円(同96兆4,186億円)で、歳入、歳出いずれも増加している。対前年度比は歳入1.3%増(前年度0.2%減)、歳出1.0%増(同0.6%減)となっている。

第1表 地方公共団体の決算規模(純計)

このうち通常収支分は、歳入96兆2,289億円(前年度93兆8,340億円)、歳出93兆1,665億円(同91兆987億円)で、東日本大震災分は、歳入4兆8,709億円(同6兆89億円)、歳出4兆2,455億円(同5兆3,198億円)となっている。

平成25年度の決算規模が前年度を上回ったのは、歳入においては、東日本大震災分について、東日本大震災復興交付金の減少等による国庫支出金の減少、震災復興特別交付税の減少等による一般財源の減少等により前年度と比べると18.9%減となった一方で、通常収支分について、国の経済対策や普通建設事業費支出金の増加等による国庫支出金の増加、地方税の増加等による一般財源の増加等により2.6%増となったことによるものである。また、歳出においては、東日本大震災分について、積立金の減少等により前年度と比べると20.2%減となった一方で、通常収支分について、普通建設事業費の増加、第三セクター等の経営健全化の取組の推進等に伴う代位弁済の増加等による補助費等の増加等により2.3%増となったことによるものである。

さらに、歳出から公債費及び公営企業繰出金のうち企業債の元利償還に係るものを除いた一般歳出は、72兆6,878億円(前年度71兆1,988億円)となっており、前年度と比べると2.1%増となっている。

決算規模の状況を団体種類別にみると、第2表のとおりである。都道府県の歳入及び歳出は、通常収支分において増加した一方で東日本大震災分において減少し、全体として前年度を上回っている。市町村(特別区及び一部事務組合等を含む。特記がある場合を除き、以下同じ。)の歳入及び歳出は、通常収支分において増加した一方で東日本大震災分において減少し、全体として前年度を上回っている。

第2表 団体種類別決算規模の状況

また、近年の決算規模の推移は、第7図のとおりである。

第7図 決算規模の推移(純計)

(2)決算収支

ア 実質収支[資料編:第7表

実質収支(形式収支(歳入歳出差引額)から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額)の状況は、第3表のとおりである。

第3表 実質収支の状況

平成25年度の実質収支は、1兆9,578億円の黒字(前年度1兆7,675億円の黒字)で、昭和31年度以降黒字となっている。

実質収支を団体種類別にみると、都道府県においては4,285億円の黒字(前年度3,637億円の黒字)であり、平成12年度以降黒字となっている。

また、市町村においては1兆5,293億円の黒字(前年度1兆4,038億円の黒字)であり、昭和31年度以降黒字となっている。

実質収支が赤字である団体数をみると、平成24年度に赤字であった2団体(2一部事務組合)は黒字となったが、4団体(2市町2一部事務組合)が新たに赤字となった結果、赤字団体数は4団体であり、前年度と比べると2団体増加している。

なお、近年の実質収支及び赤字団体の赤字額の推移は、第8図のとおりである。

第8図 実質収支の推移

標準財政規模に対する実質収支額の割合である実質収支比率の推移は、第9図のとおりであり、平成25年度の実質収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は0.3ポイント上昇の3.1%となっている。

第9図 実質収支比率の推移

実質収支比率を団体種類別にみると、都道府県は0.3ポイント上昇の1.6%、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。)は0.4ポイント上昇の4.7%となっている。

イ 単年度収支及び実質単年度収支[資料編:第7表

平成25年度の単年度収支(実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額)は、1,909億円の黒字(前年度281億円の赤字)となっている。

単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては648億円の黒字(前年度175億円の黒字)、市町村においては1,261億円の黒字(同456億円の赤字)となっている。

また、実質単年度収支(単年度収支に財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた額)は、7,637億円の黒字(前年度4,378億円の黒字)となっている。

実質単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては2,896億円の黒字(前年度876億円の黒字)、市町村においては4,741億円の黒字(同3,502億円の黒字)となっている。

なお、実質収支、単年度収支及び実質単年度収支の赤字団体数の状況は、第4表のとおりである。

第4表 赤字の団体数の状況

(3)歳入[資料編:第10表

歳入純計決算額は101兆998億円で、前年度と比べると1兆2,570億円増加(1.3%増)している。このうち通常収支分は、96兆2,289億円で、前年度と比べると2兆3,949億円増加(2.6%増)しており、東日本大震災分は4兆8,709億円で、前年度と比べると1兆1,379億円減少(18.9%減)している。

歳入総額の主な内訳をみると、第5表のとおりである。

第5表 歳入純計決算額の状況

地方税は、個人住民税の増加、法人関係二税(住民税の法人分及び法人事業税)の増加等により、前年度と比べると9,135億円増加(2.7%増)している。

地方譲与税は、地方法人特別譲与税の増加等により、前年度と比べると2,874億円増加(12.7%増)している。

地方特例交付金は、前年度と比べると19億円減少(1.5%減)している。

地方交付税は、前年度と比べると6,944億円減少(3.8%減)している。また、地方交付税に臨時財政対策債を加えた額は、前年度と比べると5,722億円減少(2.4%減)している。

一般財源は、地方税、地方譲与税の増加等により、前年度と比べると5,046億円増加(0.9%増)している。なお、一般財源に臨時財政対策債を加えた額は、前年度と比べると6,267億円増加(1.0%増)している。

国庫支出金は、国の経済対策や普通建設事業費支出金の増加等により、前年度と比べると9,847億円増加(6.3%増)している。

地方債は、旧緊急防災・減災事業債の減少等により、前年度と比べると531億円減少(0.4%減)している。

歳入純計決算額の構成比の推移は、第10図のとおりである。

第10図 歳入純計決算額の構成比の推移

地方税の構成比は、税源移譲等により、平成19年度には歳入総額の44.2%を占めるまで上昇し、その後、景気の悪化や地方法人特別税の創設等に伴って低下していたが、24年度に上昇に転じ、25年度においては、前年度と比べると0.5ポイント上昇の35.0%となり、2年連続で上昇している。

地方交付税の構成比は、平成8年度から12年度までは上昇し、13年度以降は、地方財政対策に当たり、交付税特別会計の借入金方式に代えて臨時財政対策債を発行し、基準財政需要額の一部を振り替えることとしたことや三位一体の改革に伴う地方交付税の改革等から総じて低下の傾向にあったが、22年度は上昇に転じた。平成25年度においては、前年度と比べると0.9ポイント低下の17.4%と、2年連続で低下している。

国庫支出金の構成比は、平成15年度以降、三位一体の改革による国庫補助負担金の一般財源化、普通建設事業費支出金の減少等により低下していたが、20年度以降、国の経済対策の実施、東日本大震災への対応の影響等で総じて上昇の傾向にある。平成25年度においては、前年度と比べると0.7ポイント上昇の16.3%となっている。

地方債の構成比は、平成20年度以降、臨時財政対策債の増加等により総じて上昇の傾向にあったが、25年度においては、前年度と比べると0.2ポイント低下の12.2%となっている。なお、臨時財政対策債を除いた構成比は、前年度と比べると0.2ポイント低下の6.2%となっている。

一般財源の構成比は、平成18年度には62.3%であったが、19年度以降国庫支出金、地方債等の増加に加え、地方税及び地方特例交付金等の減少などにより低下していた。平成22年度に上昇に転じたが、24年度に再び低下し、25年度においては、前年度と比べると0.2ポイント低下の55.0%となっている。なお、一般財源に臨時財政対策債を加えた額の構成比は、前年度と比べると0.2ポイント低下の61.0%となっている。

歳入決算額の構成比を団体種類別にみると、第11図のとおりである。

第11図 歳入決算額の構成比

都道府県においては地方税が最も大きな割合(32.6%)を占め、以下、地方交付税(17.2%)、国庫支出金(14.3%)の順となっている。

市町村においても都道府県と同様に地方税が最も大きな割合(32.6%)を占め、以下、国庫支出金(16.0%)、地方交付税(15.3%)の順となっている。

(4)歳出

歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と経費の経済的な性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、次のとおりである。

ア 目的別歳出

(ア)目的別歳出[資料編:第34表

地方公共団体の経費は、その行政目的によって、議会費、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、消防費、警察費、教育費、災害復旧費、公債費等に大別することができる。

歳出純計決算額は97兆4,120億円で、前年度と比べると9,935億円増加(1.0%増)している。このうち、通常収支分は93兆1,665億円で、前年度と比べると2兆678億円増加(2.3%増)しており、東日本大震災分は4兆2,455億円で、前年度と比べると1兆743億円減少(20.2%減)している。

歳出総額の目的別歳出の構成比は、第6表のとおりであり、民生費(24.1%)、教育費(16.5%)、公債費(13.5%)、土木費(12.4%)、総務費(10.3%)の順となっている。

第6表 目的別歳出純計決算額の状況

民生費は、社会福祉費、生活保護費、災害救助費が増加したこと等により、前年度と比べると3,110億円増加(1.3%増)している。

教育費は、人件費の減少等により、前年度と比べると602億円減少(0.4%減)している。

公債費は、前年度と比べると1,184億円増加(0.9%増)している。

土木費は、普通建設事業費の増加等により、前年度と比べると8,829億円増加(7.9%増)している。

総務費は、第三セクター等の経営健全化の取組の推進等に伴う代位弁済の増加等により、前年度と比べると387億円増加(0.4%増)している。

目的別歳出の構成比の推移は、第7表のとおりである。民生費の構成比は、社会保障関係費の増加を背景に上昇しており、平成19年度以降最も大きな割合を占めている一方で、農林水産業費、土木費及び教育費の構成比は低下の傾向にある。

第7表 目的別歳出純計決算額の構成比の推移

目的別歳出の構成比を団体種類別にみると、第12図のとおりである。

第12図 目的別歳出決算額の構成比

都道府県においては、市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等により教育費が最も大きな割合(21.2%)を占め、以下、民生費(15.0%)、公債費(14.3%)、土木費(11.3%)、商工費(8.2%)の順となっている。

また、市町村においては、児童福祉、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉事務の比重が高いこと等により民生費が最も大きな割合(34.3%)を占め、以下、総務費(13.1%)、土木費(12.2%)、公債費(11.0%)、教育費(10.2%)の順となっている。

(イ)一般財源の充当状況[資料編:第36表

一般財源の目的別歳出に対する充当状況は、第8表のとおりである。

第8表 一般財源の目的別歳出充当状況

一般財源総額(55兆6,541億円)に占める目的別歳出の割合をみると、民生費が最も大きな割合(21.7%)を占め、以下、公債費(18.6%)、教育費(17.8%)、総務費(11.7%)、土木費(7.8%)の順となっている。

一般財源充当額の目的別構成比の推移は、第13図のとおりである。近年、民生費充当分が上昇の傾向にある一方で、教育費充当分が低下の傾向にある。

第13図 一般財源充当額の目的別構成比の推移

イ 性質別歳出

(ア)性質別歳出[資料編:第73表

地方公共団体の経費は、その経済的な性質によって、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別することができる。

義務的経費は、職員給与費等の人件費のほか、生活保護費等の扶助費及び地方債の元利償還金等の公債費からなっており、そのうち人件費が46.7%を占めている。また、投資的経費は、道路、橋りょう、公園、公営住宅、学校の建設等に要する普通建設事業費のほか、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっており、そのうち普通建設事業費が94.1%を占めている。

歳出純計決算額の主な性質別内訳をみると、第9表のとおりである。

第9表 性質別歳出純計決算額の状況

義務的経費は、前年度と比べると5,525億円減少(1.2%減)している。これは、扶助費が、社会保障関係費の増加を背景に1,711億円増加(1.4%増)した一方で、人件費が、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」(平成25年1月24日閣議決定)に基づく各地方公共団体における国家公務員の給与減額支給措置に準じた取組等により8,397億円減少(3.6%減)したこと等によるものである。なお、公債費は、前年度と比べると1,161億円増加(0.9%増)している。

投資的経費は、前年度と比べると1兆6,532億円増加(12.3%増)している。これは、災害復旧事業費が893億円減少(9.2%減)した一方で、普通建設事業費が1兆7,425億円増加(14.0%増)したこと等によるものである。

また、その他の経費は、前年度と比べると1,072億円減少(0.3%減)している。これは、社会保障関係費の増加等を背景に補助費等が3,010億円増加(3.3%増)した一方で、貸付金が4,307億円減少(7.4%減)、繰出金が243億円減少(0.5%減)したこと等によるものである。

平成15年度以降のこれらの経費の増減額の推移は、第14図のとおりである。

第14図 義務的経費、投資的経費等の増減額の推移

次に、性質別歳出の構成比の推移は、第15図のとおりである。

第15図 性質別歳出純計決算額の構成比の推移

義務的経費の構成比は、平成7年度以降上昇の傾向にあり19年度には52.1%となったが、20年度に低下に転じた。平成22年度においては子ども手当の創設に伴う扶助費の増加等により上昇したが、23年度においてはその他の経費の増加等の影響により低下し、25年度においては前年度と比べると1.1ポイント低下の48.7%となっている。義務的経費の構成比の内訳を見ると、人件費は、平成19年度以降減少の傾向にあり、25年度においては前年度と比べると1.1ポイント低下の22.8%となっている。扶助費は、社会保障関係費の増加を背景に総じて増加の傾向にあり、平成25年度においては前年度と同率の12.5%となっている。公債費は、平成17年度以降総じて減少の傾向にあり、25年度においては前年度と比べると0.1ポイント低下の13.4%となっている。

投資的経費の構成比は、平成23年度まで総じて低下の傾向にあるが、平成24年度上昇に転じ、25年度においては普通建設事業費の増加等により前年度と比べると1.6ポイント上昇の15.5%となっている。

その他の経費の構成比は、補助費等、繰出金の増加等により平成23年度まで総じて上昇の傾向にあるが、平成24年度低下に転じ、25年度においては前年度と比べると0.5ポイント低下の35.8%となっている。

性質別歳出決算額の構成比を団体種類別にみると、第16図のとおりである。

第16図 性質別歳出決算額の構成比

人件費の構成比は、都道府県において市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等から、都道府県(26.7%)が、市町村(16.1%)を上回っている。また、扶助費の構成比は、市町村において、児童手当の支給、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉関係事務が行われていること等から、市町村(20.4%)が、都道府県(2.0%)を上回っている。

普通建設事業費のうち、補助事業費の構成比は、都道府県(8.6%)が市町村(7.0%)を上回る一方、単独事業費の構成比は、市町村(6.6%)が都道府県(4.4%)を上回っている。

その他の経費のうち、補助費等の構成比は、都道府県(24.0%)が市町村(7.5%)を上回る一方、繰出金の構成比は、市町村(9.0%)が都道府県(0.4%)を上回っている。

(イ)一般財源の充当状況[資料編:第75表

一般財源の性質別歳出に対する充当状況は、第10表のとおりである。

第10表 一般財源の性質別歳出充当状況

一般財源総額(55兆6,541億円)に占める性質別歳出の割合をみると、義務的経費が最も大きな割合(55.2%)を占め、以下、その他の経費(34.5%)、投資的経費(5.6%)の順となっている。なお、その他の経費の中では、補助費等が最も大きな割合(11.5%)を占めている。

一般財源充当額の性質別構成比の推移は、第17図のとおりである。

第17図 一般財源充当額の性質別構成比の推移

義務的経費充当分は、平成18年度までは、人件費充当分が低下の傾向にある一方で、扶助費充当分及び公債費充当分が上昇の傾向にあったことから、総じて上昇の傾向にあり、19年度以降は、公債費充当分が低下の傾向に転じたことから、総じて低下の傾向にあった。平成23年度は再び上昇に転じるが、25年度は、前年度と比べると1.9ポイント低下の55.2%となっている。

投資的経費に充当された一般財源の構成比は、総じて低下の傾向にあるが、25年度においては前年度と比べると0.8ポイント上昇の5.6%となっている。

その他の経費充当分は、総じて上昇の傾向にあり、平成25年度においては前年度と比べると1.0ポイント上昇の34.5%となっている。

(5)財政構造の弾力性

ア 経常収支比率[資料編:第8表

地方公共団体が社会経済や行政需要の変化に適切に対応していくためには、財政構造の弾力性が確保されなければならない。財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つとして、経常収支比率が用いられている。

経常収支比率は、経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費等のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源)が、経常一般財源(一般財源総額のうち地方税、普通交付税のように毎年度経常的に収入される一般財源)、減収補填債特例分及び臨時財政対策債の合計額に対し、どの程度の割合となっているかをみることにより財政構造の弾力性を判断するものである。

平成25年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度と比べると1.1ポイント低下の91.6%となり、第11表のように、10年連続で90%を上回っている。主な内訳をみると、人件費充当分が31.1%(前年度32.6%)、公債費充当分が21.1%(同20.9%)となっている。なお、減収補填債特例分及び臨時財政対策債を経常収支比率算出上の分母から除いた場合の経常収支比率は、102.4%(前年度103.6%)となっている。

第11表 経常収支比率の推移

また、経常収支比率を構成する分子及び分母の状況は次のとおりである。分子である経常経費充当一般財源は、人件費が減少した一方で、物件費が増加したことにより、前年度と比べると0.3%増となっている。分母である経常一般財源等は、地方税、地方譲与税の増加等により、前年度と比べると1.5%増となっている。

分子及び分母の推移は第18図のとおりである。分子である経常経費充当一般財源については、人件費が総じて減少の傾向にある一方で、公債費、補助費等が増加の傾向にあり、また公債費が高止まりしており、分子全体としては増加の傾向にある。分母である経常一般財源等については、年度間で増減を繰り返しているが、平成20年度以降、総じて減少の傾向にあった地方税が24年度において増額に転じ、臨時財政対策債は総じて増加の傾向にあること等により、分母全体としては増加の傾向にある。なお、分子及び分母を10年前(平成15年度)と比べるとそれぞれ7.9%増、4.9%増となっており、分子の増加率が分母の増加率を上回っている。

第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の推移 その1 合計
第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の推移 その2 都道府県
第18図 経常収支比率を構成する分子及び分母の推移 その3 市町村

経常収支比率を団体種類別にみると、都道府県は前年度と比べると1.6ポイント低下の93.0%、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。以下この項において同じ。)は前年度と比べると0.5ポイント低下の90.2%となっている。

経常収支比率の段階別分布状況をみると、第12表のとおりである。経常収支比率が80%以上の団体数は、都道府県においては47団体の全ての団体(前年度同数)、市町村においては全体の85.9%を占める1,476団体(同1,478団体)となっている。

第12表 経常収支比率の段階別分布状況

イ 実質公債費比率及び公債費負担比率[資料編:第8表

地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性をみる場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費による負担度合いを判断するための指標として、実質公債費比率及び公債費負担比率が用いられている。

実質公債費比率は、地方債の元利償還金(繰上償還等を除く。)や公営企業債に対する繰出金などの公債費に準ずるものを含めた実質的な公債費相当額から、これに充当された特定財源及び一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除いたものが、標準財政規模(普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く。)に対し、どの程度の割合となっているかをみるものである。なお、実質公債費比率は、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(平成19年法律第94号。以下「地方公共団体財政健全化法」という。)において、健全化判断比率の一つとして位置付けられている。

平成25年度の実質公債費比率(全団体の加重平均)は、前年度と比べると0.4ポイント低下の10.9%となっている。

公債費負担比率は、公債費充当一般財源(地方債の元利償還金等の公債費に充当された一般財源)が一般財源総額に対し、どの程度の割合となっているかを示す指標であり、公債費がどの程度一般財源の使途の自由度を制約しているかをみることにより、財政構造の弾力性を判断するものである。

平成25年度の公債費負担比率(全団体の加重平均)は、前年度と比べると0.1ポイント低下の18.5%となっている。

近年の実質公債費比率及び公債費負担比率の推移は、第19図のとおりである。

第19図 公債費負担比率及び実質公債費比率の推移

実質公債費比率は、初めて算定された平成17年度以降低下している。

公債費負担比率は、平成3年度以降上昇し、15年度に19.4%に達した後、おおむね横ばいの傾向にあり、21年度に低下に転じた後、再び横ばいの傾向にある。

(6)将来の財政負担

地方公共団体の財政状況をみるには、単年度の収支状況のみでなく、地方債、債務負担行為等のように将来の財政負担となるものや、財政調整基金等の積立金のように年度間の財源調整を図り将来における弾力的な財政運営に資するために財源を留保するものの状況についても、併せて把握する必要がある。これらの状況は、次のとおりである。

ア 地方債現在高[資料編:第100表

平成25年度末における地方債現在高は145兆9,171億円で、前年度末と比べると0.8%増(前年度末1.0%増)となっている。また、平成25年度末における臨時財政対策債を除いた地方債現在高は100兆9,523億円で、前年度末と比べると3.0%減(前年度末2.9%減)となっている。

地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、第20図のとおりである。

第20図 地方債現在高の歳入総額等に対する割合の推移

地方債現在高は、昭和50年度末では歳入総額の0.44倍、一般財源総額の0.88倍であったが、地方税収等の落込みや減税に伴う減収の補填、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことに伴い、それぞれの割合は平成4年度末以降急増し、また、13年度からの臨時財政対策債の発行等があったことにより、依然として高い水準で推移している。平成25年度末では歳入総額の1.44倍、一般財源総額の2.62倍となっている。

近年の地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移は、第21図のとおりである。地方債現在高の目的別構成比は、臨時財政対策債(30.8%)、一般単独事業債(27.4%)の順となっている。前年度末の割合と比べると、一般単独事業債が1.1ポイント低下する一方、臨時財政対策債が2.7ポイント上昇しており、平成13年度以降、臨時財政対策債の構成比が上昇の傾向にある。地方債現在高の借入先別の構成比は、市場公募債(30.7%)、市中銀行資金(25.1%)、政府資金(23.9%)の順となっている。前年度末の割合と比べると、近年の公的資金の縮減及び市場における地方債資金の調達の推進等に伴い、政府資金が0.5ポイント低下する一方、市場公募債は0.4ポイント上昇している。

第21図 地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移

地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては89兆7,301億円、市町村においては56兆1,869億円で、前年度末と比べるとそれぞれ1.0%増(前年度末1.7%増)、0.5%増(同0.0%減)となっている。また、臨時財政対策債を除いた地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては62兆3,489億円、市町村においては38兆6,034億円で、前年度末と比べるとそれぞれ3.2%減(前年度末2.4%減)、2.8%減(同3.6%減)となっている。

なお、地方財政状況調査においては、満期一括償還地方債の元金償還に充てるための減債基金への積立額は歳出の公債費に計上するとともに、地方債現在高から当該積立額相当分を控除する扱いとしているが、控除しない場合における地方債現在高は156兆8,487億円となっている。

イ 債務負担行為額[資料編:第101表

地方公共団体は、将来の支出を約束するために、債務負担行為を行うことができる。

この債務負担行為は、数年度にわたる建設工事、土地の購入等の場合のように翌年度以降の経費支出が予定されているものと、債務保証又は損失補償のように債務不履行等の一定の事実が発生したときに支出されるものとに大別することができる。

これらの債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額をみると、平成25年度末では14兆5,303億円で、前年度末と比べると8.3%増(前年度末2.9%増)となっている。

翌年度以降支出予定額を目的別にみると、第22図のとおりである。

第22図 債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額の目的別構成比の推移

翌年度以降支出予定額を団体種類別にみると、都道府県においては5兆4,839億円、市町村においては9兆464億円で、前年度末と比べるとそれぞれ2.3%増(前年度末4.0%減)、12.3%増(同8.1%増)となっている。

ウ 積立金現在高[資料編:第102表

地方公共団体の積立金現在高の状況は、第13表のとおりである。

第13表 積立金現在高の状況

平成25年度末における積立金現在高は22兆3,803億円で、前年度末と比べると6.4%増(前年度末7.3%増)となっている。

積立金現在高の内訳をみると、年度間の財源調整を行うために積み立てられている財政調整基金は前年度末と比べると9.8%増(前年度末9.6%増)となっている。地方債の将来の償還費に充てるために積み立てられている減債基金(満期一括償還地方債に係るものを除く。)は前年度末と比べると5.5%増(同0.6%増)となっている。将来の特定の財政需要に備えて積み立てられているその他特定目的基金は前年度末と比べると4.9%増(同7.6%増)となっている。

積立金現在高を団体種類別にみると、都道府県においては7兆8,486億円、市町村においては14兆5,317億円で、前年度末と比べるとそれぞれ5.7%増(前年度末3.1%減)、6.8%増(同14.1%増)となっている。

エ 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担[資料編:第100表第102表

地方債現在高に債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担の推移は、第23図のとおりである。

第23図 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担の推移

平成25年度末における地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担は138兆670億円で、前年度末と比べると0.7%増(前年度末0.3%増)となっている。

団体種類別にみると、都道府県においては87兆3,654億円、市町村においては50兆7,016億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.7%増(前年度末1.8%増)、0.7%増(同2.1%減)となっている。

オ 普通会計が負担すべき借入金残高[資料編:第100表

普通会計が将来にわたって負担すべき借入金という観点からは、地方債現在高のほか、交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「交付税特別会計」という。)借入金及び地方公営企業において償還する企業債のうち、経費負担区分の原則等に基づき、普通会計がその償還財源を負担するものについても併せて考慮する必要がある。

この観点から、交付税特別会計借入金残高と企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものを地方債現在高に加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第24図のとおりである。

第24図 普通会計が負担すべき借入金残高の推移

これをみると、平成25年度末には、普通会計が負担すべき借入金残高は201兆3,599億円で、前年度末と比べると0.2%増(前年度末0.3%増)となっている。

また、その内訳は、地方債現在高が145兆9,171億円、交付税特別会計借入金残高が33兆3,173億円、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものが22兆1,255億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.8%増(前年度末1.0%増)、3.5%減(同0.3%減)、1.5%減(同3.0%減)となっている。

(7)決算の背景

ア 平成25年度の経済見通しと国の予算

(ア)経済見通しと経済財政運営の基本的態度

「平成25年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成25年1月28日に閣議了解、25年2月28日に閣議決定された。その主な内容は、以下のとおりである。

a 平成24年度の経済動向

平成24年度の我が国経済は、東日本大震災からの復興需要や政策効果の発現等により、夏場にかけて回復に向けた動きが見られた。しかしその後、世界経済の減速等を背景として輸出や生産が減少するなど、景気は弱い動きとなり、底割れが懸念される状況となった。

こうした状況に対し、政府は、平成25年1月に「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を策定した。本対策による政策効果に加え、世界経済の緩やかな持ち直しが期待されることから、我が国経済は緩やかに回復していくと見込まれる。

物価の動向を見ると、緩やかなデフレ状況が続いている。消費者物価は4年連続の下落となる。

平成24年度の国内総生産の実質成長率は、復興需要による景気の下支え等があったものの、夏以降の世界経済の減速等により外需が減少したことから、1.0%程度と見込まれる。また、名目成長率は0.3%程度と見込まれる。

b 平成25年度の経済財政運営の基本的態度

日本経済再生に向けて、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」により、長引く円高・デフレ不況から脱却し、雇用や所得の拡大を目指す。

このための取組の第一弾として取りまとめた緊急経済対策を速やかに実施し、景気の底割れを回避し、持続的成長を生み出す成長戦略につなげる。

(財政政策)

機動的・弾力的な経済財政運営を行い、景気の底割れを回避する。このため、いわゆる「15ヶ月予算」の考え方で、緊急経済対策を実行するための平成24年度補正予算(平成25年1月15日概算閣議決定)と平成25年度予算(平成25年1月29日概算閣議決定)を合わせ、景気の下支えを行いつつ、切れ目のない経済対策を実行する。平成25年度予算については、財政状況の悪化を防ぐため、歳出の無駄を最大限縮減しつつ、中身を大胆に重点化する。その際、東日本大震災からの復興の加速はもとより、持続的成長に貢献する分野や日本を支える将来性のある分野に重点を置く。

2015年度までに国・地方のプライマリーバランスの赤字の対GDP比を2010年度の水準から半減し、2020年度までに国・地方のプライマリーバランスを黒字化するとの財政健全化目標を実現する必要がある。このため、平成25年度予算についても、財政健全化目標を踏まえたものとするとともに、国債に対する信認を確保するため、公債発行額をできる限り抑制し、中長期的に持続可能な財政構造を目指す。

c 平成25年度の経済見通し

平成25年度の我が国経済は、世界経済の緩やかな回復が期待される中で、「平成25年度の経済財政運営の基本的態度」に示された施策の推進等により、着実な需要の発現と雇用創出が見込まれ、国内需要主導で回復が進む。

物価については、消費者物価上昇率は0.5%程度になると見込まれる。GDPデフレーターはプラスになると見込まれる。完全失業率は、雇用者数が増加することから低下することが見込まれる。

こうした結果、平成25年度の国内総生産の実質成長率は2.5%程度(名目成長率は2.7%程度)になると見込まれる。

なお、先行きのリスクとしては、欧州の政府債務問題等、海外経済を巡る不確実性、為替市場の動向、電力供給の制約等があることに留意する必要がある。

(イ)国の予算

政府は、「平成25年度予算編成の基本方針」(平成25年1月24日閣議決定)及び「平成25年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に基づいて平成25年1月29日、平成25年度予算政府案を閣議決定した。

平成25年度予算は、以下のような基本的考え方により編成された。

a 平成25年度予算編成の基本的な考え方

(a) 緊急経済対策との一体的な編成

平成25年度予算は、緊急経済対策に基づく大型補正予算と一体的なものとして、いわゆる「15ヶ月予算」として編成する。

これにより、切れ目のない経済対策を実行し、景気の底割れの回避とデフレからの早期脱却及び成長力の強化を図る。

(b) 経済再生の実現に向けた効果的・効率的な予算編成

景気の底割れを防ぎ、デフレから脱却するには、平成25年度予算の速やかな編成が必要である。

編成に当たっては、平成24年12月26日、27日の内閣総理大臣指示に従って、財政状況の悪化を防ぐため、歳出の無駄を最大限縮減しつつ、中身を大胆に重点化する。

その際、東日本大震災からの復興の加速はもとより、持続的成長に貢献する分野や日本を支える将来性のある分野に重点を置く。

(c) 財政に対する信認の確保

財政赤字が拡大を続け、債務残高が増大した場合、国債費の増加による政策の自由度の低下、世代間の不公平の拡大など、様々な要因を通じて、経済、財政、国民生活に重大な影響を与えかねない。

したがって、2015年度までに国・地方のプライマリーバランスの赤字の対GDP比を2010年度の水準から半減し、2020年度までに国・地方のプライマリーバランスを黒字化するとの財政健全化目標を実現する必要がある。平成25年度予算についても、上記の内閣総理大臣指示に沿って、財政健全化目標を踏まえたものとするとともに、国債に対する信認を確保するため、公債発行額をできる限り抑制し、中長期的に持続可能な財政構造を目指す。

財政健全化と日本経済再生の双方を実現する道筋については、今後、経済財政諮問会議において検討を進める。

b 予算の重点化についての基本的な考え方

平成25年度予算においては、「復興・防災対策」、「成長による富の創出」、「暮らしの安心・地域活性化」の3分野に重点化するとの方針に基づいて、日本経済再生の実現に向けた取組に重点的な配分を行う。

また、過年度の予算に計上された項目であっても聖域化することなく、必要性等につき、内容を十分に精査する。

(a) 復興・防災対策

被災地の復興の加速を最優先として、加速策を具体化し、各種制度等への被災地からの批判、要望に真摯に耳を傾け、きめ細やかな復興施策を実施するとともに、福島の再生のため原子力災害等からの迅速な再生を推進する。

(b) 成長による富の創出

「成長による富の創出」を実現していくため、規制改革や金融・税制面の措置等により民間の潜在力を最大限発揮しつつ、民間投資の喚起を図るための施策や低炭素社会の創出等に資する省エネルギー・再生可能エネルギー等の導入、研究開発、イノベーションの基盤強化、資源・海洋開発などを推進する。

(c) 暮らしの安心・地域活性化

安全・安心な生活空間と環境を整備するとともに、国民の暮らしと命を守るための能力を強化し安心を確保する。さらに台風等の災害からの復旧等を行う。

社会保障制度の持続可能性を確保するとともに、社会的に弱い立場にある人たちが社会で活躍できる環境を整備する。

平成25年度予算は、以上のような方針により編成され、平成25年2月28日に国会に提出され、5月15日に成立した。

これによると、平成25年度の一般会計予算の規模は92兆6,115億円で、前年度当初予算と比べると2兆2,776億円増加(2.5%増)となっており、基礎的財政収支対象経費は70兆3,700億円で、前年度当初予算と比べると1兆9,803億円増加(2.9%増)となった。なお、公債の発行予定額は42兆8,510億円で、前年度当初発行予定額と比べると1兆3,930億円減少(3.1%減)となっており、公債依存度は46.3%となった。

また、東日本大震災復興特別会計予算の規模は4兆3,840億円となった。歳入については、復興特別税1兆2,240億円、一般会計からの繰入1兆2,462億円、復興債1兆9,026億円等となっている。歳出については、東日本大震災復興経費3兆7,178億円、復興加速化・福島再生予備費6,000億円等となっている。主な東日本大震災復興経費として、災害救助関係経費837億円、災害廃棄物処理事業費1,266億円、復興関係公共事業等8,793億円、災害関連融資関係経費963億円、東日本大震災復興交付金5,918億円、除染や汚染廃棄物処理等の原子力災害復興関係経費7,094億円等にあわせて、震災復興特別交付税の財源として地方交付税交付金6,053億円が計上された。

なお、財政投融資計画の規模は18兆3,896億円で、前年度計画額と比べると7,414億円増加(4.2%増)となった。

イ 地方財政計画

平成25年度においては、通常収支分について、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、経費全般について徹底した節減合理化に努める一方、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うとともに、給与関係経費について国家公務員の給与減額支給措置と同様の削減を行うことと併せて、防災・減災事業や地域の活性化等の緊急課題に対応するために必要な経費を計上するほか、歳入面においては、地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、平成24年度地方財政計画と同水準を確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとした。

また、東日本大震災分については、復旧・復興事業及び全国防災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとした。

以上を踏まえ、次の方針に基づき平成25年度地方公共団体の歳入歳出総額の見込額を策定した。

(ア)通常収支分

a 地方税制については、平成25年度税制改正では、日本経済再生に向けた緊急経済対策関連の税制措置や金融所得課税の一体化等の措置を講じるとともに、個人住民税における住宅ローン控除の延長・拡充、東日本大震災からの復興を支援するための税制上の措置等を講じる。

b 地方財源不足見込額については、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じる。

(a) 財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発、別枠加算、地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金の活用等により対処することとした残余については、平成23年度に講じた平成25年度までの制度改正に基づき、国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については、「地方財政法」第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度の地方交付税の基準財政需要額に算入する。

(b) これに基づき、平成25年度の財源不足見込額13兆2,808億円については、次により補填する。

<1> 地方交付税については、国の一般会計加算により5兆4,176億円(うち「地方交付税法」(昭和25年法律第211号)附則第4条の2第2項の加算額2,150億円、同条第3項の加算額5,581億円、平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)に定める平成25年度における「乖離是正分加算額」500億円、地方の財源不足の状況を踏まえた別枠の加算額9,900億円及び臨時財政対策特例加算額3兆6,045億円)増額する。

また、交付税特別会計剰余金2,000億円を活用するとともに、「地方公共団体金融機構法」(平成19年法律第64号)附則第14条の規定により財政投融資特別会計に帰属させる地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金6,500億円を財政投融資特別会計から交付税特別会計に繰り入れる。

<2> 「地方財政法」第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を6兆2,132億円発行する。

<3> 建設地方債(財源対策債)を8,000億円増発する。

(c) 上記の結果、平成25年度の地方交付税については、17兆624億円(前年度比3,921億円、2.2%減)を確保する。

(d) 交付税特別会計の借入金については、「特別会計に関する法律」(平成19年法律第23号)附則第4条第1項に基づき、1,000億円の償還を実施する。

(e) なお、平成4年度までの国庫補助負担率の引下げ措置(投資的経費)に伴い一般会計から交付税特別会計に繰入れを予定していた額等172億円については、法律の定めるところにより平成31年度以降の地方交付税の総額に加算する。

c 地方債については、極めて厳しい地方財政の状況の下で、地方財源の不足に対処するための措置を講じ、また、地方公共団体が防災・減災対策の強化や地域の活性化への取組を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

d 地域経済の基盤強化や雇用創出を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

(a) 「公務員の給与改定に関する取扱いについて」において、「平成25年度における地方公務員の給与については、「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」(平成24年法律第2号)に基づく国家公務員の給与減額支給措置を踏まえ、各地方公共団体において速やかに国に準じて必要な措置を講ずるよう要請する」こととされたことを踏まえ、平成25年7月から国家公務員と同様の給与削減を実施することを前提とした給与関係経費の削減を行う。

これに併せて、防災・減災事業や地域の活性化等の緊急の課題に対処する観点から、給与削減額に見合った事業費を計上することとし、通常収支分において特別枠「給与の臨時特例対応分」を創設し、緊急防災・減災事業費(4,550億円)及び地域の元気づくり事業費(3,000億円)を合算した7,550億円を計上するとともに、東日本大震災分(全国防災事業)の投資的経費(直轄・補助)の地方負担分として973億円を計上する。

(b) 投資的経費に係る地方単独事業費については、国の公共投資関係費や平成24年度までの緊急防災・減災事業の地方負担分の取扱いを勘案しつつ、前年度に比し3.1%減額することとする一方で、引き続き地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

(c) 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体における行政改革の状況等を踏まえ行政経費の縮減を行う一方、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

(d) 消防力の充実、防災・減災対策等の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

(e) 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

e 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し、所要の繰出しを行うこととする。

f 地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減、事務事業の見直しや民間委託など引き続き行財政運営全般にわたる改革を推進する。

(イ)東日本大震災分

a 復旧・復興事業

(a) 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、以下に掲げる地方負担分等の全額を措置するため、6,198億円を確保する。

・ 直轄・補助事業に係る地方負担分4,083億円

・ 地方単独事業分1,220億円

・ 税制上の臨時的特例措置等に伴う減収分895億円

(b) 地方債については、復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

(c) 直轄事業負担金及び補助事業費、「地方自治法」(昭和22年法律第67号)に基づく職員の派遣、投資単独事業等の地方単独事業費及び「地方税法」(昭和25年法律第226号)等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出等について所要の事業費を計上する。

b 全国防災事業

(a) 地方税の臨時的な税制上の措置(平成25年度から平成35年度)による地方税の収入見込額として123億円を計上するとともに、一般財源充当分として130億円を計上する。

(b) 地方債については、全国防災事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

(c) 国の全国防災対策費に係る直轄事業負担金及び補助事業費等について、所要の事業費を計上する。

以上のような方針に基づいて策定した平成25年度の地方財政計画の規模は、通常収支分は81兆9,154億円で、前年度と比べると507億円増加(0.1%増)となり、東日本大震災分は、復旧・復興事業が2兆3,347億円で、前年度と比べると5,559億円増加(31.3%増)、全国防災事業が2,031億円で、前年度と比べると4,298億円減少(67.9%減)となった。

通常収支分についてみると、歳入では、地方税は34兆175億円で、前年度と比べると3,606億円増加(1.1%増)(道府県税0.3%増、市町村税1.6%増)、地方譲与税は2兆3,470億円で、前年度と比べると855億円増加(3.8%増)、地方特例交付金は1,255億円で、前年度と比べると20億円減少(1.6%減)、地方交付税は17兆624億円で、前年度と比べると3,921億円減少(2.2%減)、国庫支出金は11兆8,503億円で、前年度と比べると899億円増加(0.8%増)、地方債(普通会計分)は11兆1,517億円で、前年度と比べると137億円減少(0.1%減)となった。

歳出では、給与関係経費は19兆7,479億円で、前年度と比べると1兆2,281億円減少(5.9%減)となった。なお、地方財政計画における職員数については、12,843人の純減としている。一般行政経費は31兆8,257億円で、前年度と比べると6,851億円増加(2.2%増)となり、このうち一般行政経費にかかる地方単独事業費は13兆9,993億円で、前年度と比べると1,898億円増加(1.4%増)となった。公債費は13兆1,078億円で、前年度と比べると288億円増加(0.2%増)、投資的経費は10兆6,698億円で、前年度と比べると2,286億円減少(2.1%減)となった。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は5兆30億円で、前年度と比べると1,600億円減少(3.1%減)となった。

東日本大震災分(復旧・復興事業)についてみると、歳入では、震災復興特別交付税は6,198億円で、前年度と比べると657億円減少(9.6%減)、国庫支出金は1兆6,895億円で、前年度と比べると6,123億円増加(56.8%増)などとなった。歳出では、一般行政経費は6,829億円で、前年度と比べると2,667億円減少(28.1%減)、投資的経費は1兆6,255億円で、前年度と比べると8,164億円増加(100.9%増)などとなった。

東日本大震災分(全国防災事業)についてみると、歳入では国庫支出金は800億円で、前年度と比べると1,259億円減少(61.1%減)、地方債は973億円で、前年度と比べると3,200億円減少(76.7%減)などとなった。歳出では公債費は258億円で、前年度と比べると228億円増加(760.0%増)、投資的経費は1,773億円で、前年度と比べると3,970億円減少(69.1%減)などとなった。

また、平成25年度の地方債計画の規模は、通常収支分が13兆3,708億円(普通会計分11兆1,517億円、公営企業会計等分2兆2,191億円)で、前年度と比べると1,688億円減少(1.2%減)となった。東日本大震災分は、復旧・復興事業が2,197億円(普通会計分233億円、一般会計債に係る特定被災地方公共団体借換債280億円、公営企業会計等分1,684億円)で、前年度と比べると1,838億円増加(512.0%増)となり、全国防災事業が973億円(普通会計分)で、前年度と比べると3,573億円減少(78.6%減)となった。

ウ 財政運営の経過

(ア)平成25年度補正予算(第1号)

平成25年度補正予算(第1号)は、平成25年12月12日に閣議決定、平成26年1月24日に第186回国会に提出され、2月6日に成立した。

この補正予算においては、歳出面で、「好循環実現のための経済対策」(平成25年12月5日閣議決定)に沿って、競争力強化策関連経費1兆3,980億円、女性・若者・高齢者・障害者向け施策関連経費3,005億円、防災・安全対策の加速関連経費1兆1,958億円等を追加計上するほか、既定経費の減額1兆5,334億円の修正減少額が計上された。また、歳入面で、税収2兆2,580億円、税外収入3,659億円、前年度剰余金受入9,108億円等が追加計上された。

この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成25年度当初予算に対し、5兆4,654億円増加し、98兆770億円となった。

(イ)平成25年度補正予算(第1号)に係る財政措置等

a 通常収支分

この補正予算においては、国税の増収見込み等に伴い地方交付税の増が見込まれるとともに、歳出の追加に伴う地方負担が生じること等から、以下のとおり財政措置を講じた。

(a) 地方交付税

この補正予算において、「地方交付税法」第6条第2項の規定に基づき増額される平成25年度分の地方交付税の額1兆1,608億円(平成24年度精算分4,176億円、平成25年度国税五税の自然増に伴うもの7,432億円)については、平成25年度において普通交付税の調整額の復活に要する額259億円を交付することとしたうえで、残余の額1兆1,349億円について平成26年度分として交付すべき地方交付税の総額に加算して交付する措置を講じる。

(b) 追加の財政需要

<1> この補正予算により平成25年度に追加される投資的経費に係る地方負担額については、原則として、地方負担額の100%まで地方債を充当できることとし、後年度における元利償還金の50%(当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては当初の算入率)を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、原則として、単位費用により措置する。

<2> 地方債の対象とならない経費については、地方財政計画に計上された追加財政需要額(4,700億円)の一部により対応する。

(c) がんばる地域交付金(地域活性化・効果実感臨時交付金)

経済対策において、アベノミクス効果の全国への波及が求められる中で、景気回復が波及していない財政力の弱い市町村が行う地域活性化に向けた事業に対して、「がんばる地域交付金(地域活性化・効果実感臨時交付金)」を交付することとされている。

がんばる地域交付金の総額は、870億円とされており、各市町村への交付限度額は、この補正予算に計上された公共事業等の地方負担額等に応じて算定される。

がんばる地域交付金の充当対象は、各市町村が策定するがんばる地域交付金に係る実施計画に掲載された事業のうち、地方単独事業の所要経費、国庫補助事業(法令に国の補助負担割合が規定されていないものに限る。)の地方負担分としており、各市町村の申請に基づいて、交付限度額を上限として交付額が決定される。

b 東日本大震災分

東日本大震災に係る復旧・復興事業や全国防災事業に係る地方負担額については、以下のとおり財政措置を講じた。

(a) 復旧・復興事業

<1> 東日本大震災復興交付金事業等(公営住宅建設事業を除く。)に必要な経費に係る地方負担額については、震災復興特別交付税により全額を措置する。

<2> 上記<1>以外の事業(公営住宅建設事業及び災害援護貸付金を受けて実施する事業)に係る地方負担額については、通常どおりの扱いとする。

(b) 全国防災事業

防災対策推進学校施設環境改善交付金事業に係る地方負担額については、その100%まで地方債(全国防災事業)を充当できることとし、後年度における元利償還金の80%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

以上に掲げる措置を講じる等のための「地方交付税法の一部を改正する法律」が平成26年2月17日に成立した(平成26年法律第2号)。

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