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平成27年版
地方財政白書
(平成25年度決算)

4 地方分権改革の推進

政府では、住民に対する行政サービスの向上や行政の効率化を図るとともに、地方が特色を持った地域づくりや地域に合った行政を展開することができるよう、国と地方の役割分担を見直し、地域の自主性・自立性を高めるため、地方分権改革の推進に取り組んでいる。

地方分権改革は、地域が自らの発想と創意工夫により課題解決を図るための基盤となるものであり、地方創生における極めて重要なテーマである。

(1)概況

地方分権改革については、「地方分権改革推進法」(平成18年法律第111号)による地方分権改革推進委員会の勧告に基づき、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第37号。以下「第1次地方分権一括法」という。)から「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成26年法律第51号。以下「第4次地方分権一括法」という。)までの4次にわたる一括法により、下記のとおり、地方に対する権限移譲及び規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)について、具体的な改革を積み重ねてきた。

平成26年には、地方公共団体等から地方に対する権限移譲及び規制緩和に係る提案を募る提案募集方式を導入し、地方の発意に基づく地方分権改革を推進している。

併せて、国民に地方分権改革の成果を実感してもらうため、情報発信や優良事例の展開等を図っている。

また、政府の地方分権改革の推進体制としては、内閣総理大臣を本部長とする地方分権改革推進本部が政策決定機能を担い、地方分権改革担当大臣の下に開催されている地方分権改革有識者会議が調査審議機能を担っている。さらに、地方分権改革有識者会議の下で、提案募集検討専門部会、農地・農村部会等を開催し、専門的な見地から検討を行っている。

(2)地方に対する権限移譲・規制緩和に係るこれまでの取組

ア 権限移譲

地方分権改革においては、地方公共団体、特に住民に最も身近な行政主体である基礎自治体に事務事業を優先的に配分し、地方公共団体が地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を担うことができるようにすることが必要不可欠である。

国から地方公共団体への事務・権限の移譲等については、第4次地方分権一括法等の成立により、所要の法律の整備が行われた。

都道府県から基礎自治体への事務・権限の移譲等については、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第105号。以下「第2次地方分権一括法」という。)、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成25年法律第44号。以下「第3次地方分権一括法」という。)等の成立により、所要の法律の整備が行われた。

また、都道府県から指定都市への事務・権限の移譲等については、上記の国から地方への事務・権限の移譲等と併せて、第4次地方分権一括法の成立により、所要の法律の整備が行われた。

イ 地方に対する規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)

地方分権を進めるためには、これまで国が一律に決定し地方公共団体に義務付け・枠付けを行ってきた基準、施策等を、地方公共団体が条例の制定等により自ら決定し、実施することができるように改めていく必要がある。

義務付け・枠付けの見直しについては、第1次、第2次及び第3次地方分権一括法等の成立により、所要の法律の整備が行われた。

義務付け・枠付けの見直しにより、これまで法令により全国画一的に定められていた公営住宅の入居・整備基準、道路の構造に関する基準、保育所の設備・運営に関する基準など施設・公物設置管理の基準等を条例に委任することにより、地域の実情や住民のニーズ等を反映した地方独自の基準の制定が進んでいる。

(3)提案募集方式による取組

残された課題であった国から地方への事務・権限の移譲等について第4次地方分権一括法が成立したことにより、地方分権改革推進委員会の勧告事項については一通り検討・対処を行い、地方分権改革は新たなステージを迎えた。

このため、これまでの20年の取組を総括するとともに、地方分権改革の今後の進むべき方向を明らかにするため、地方分権改革有識者会議の審議を経て、内閣府において「個性を活かし自立した地方をつくる〜地方分権改革の総括と展望〜」(平成26年6月)を取りまとめた。

この取りまとめでは、地方分権改革のミッションとして「個性を活かし自立した地方をつくる」ことを掲げ、従来からの課題への取組に加え、地方の「発意」と「多様性」を重視する観点から、地方に対する権限移譲及び規制緩和に係る提案を地方公共団体等から募る「提案募集方式」や、権限移譲について、全国一律の移譲が難しい場合には、希望する地方公共団体に選択的に移譲する「手挙げ方式」の導入を図ることとしている。

提案募集方式については、「地方分権改革に関する提案募集の実施方針」(平成26年4月30日地方分権改革推進本部決定)により導入が決定され、提案が募集された。

地方からの提案については、提案の最大限の実現に向けて、地方分権改革有識者会議提案募集検討専門部会において長時間に及ぶ審議が行われ、更に検討・調整が進められた。

この結果、地方分権改革推進本部及び閣議において、地方からの提案に対する政府としての対応方針を定める「平成26年の地方からの提案等に関する対応方針」(平成27年1月30日閣議決定。以下「対応方針」という。)が決定された。この「対応方針」の内容は、平成26年の地方からの提案等を踏まえ、国から地方公共団体又は都道府県から市町村への事務・権限の移譲、義務付け・枠付けの見直し等を推進するものである。

「対応方針」に盛り込んだ見直し事項のうち、主なものは以下のとおりである。

ア これまでの懸案が実現したもの

  • 農地の総量確保のための仕組みの充実及び農地転用許可の権限移譲等
  • 都道府県内で水利調整が完結する水道事業等の認可権限等の国から都道府県への移譲(手挙げ方式による移譲)
  • 事務処理特例制度により開発許可権限を有する市町村に係る都道府県開発審査会の運用見直し

イ 地域の具体的事例に基づくもの

  • 道の駅における電気自動車の充電インフラ整備に関する道路占用許可基準の明確化
  • マイナンバー利用事務の拡大(特定優良賃貸住宅に係る事務を追加)
  • 都市公園の廃止が可能である「公益上特別の必要がある場合」の明確化
  • 麻薬小売業者間の医療用麻薬の譲渡に係る許可権限の都道府県への移譲

ウ 地方創生、人口減少対策に資するもの

  • 国際ビジネス機の受入れに係るCIQ業務の臨機応変な対応
  • 医薬品製造販売等の地方承認権限の範囲拡大
  • 三大都市圏の一部に限り、待機児童解消までの一時的措置として、保育所の居室面積に関する基準に係る規定を「標準」としている措置を平成31年度末まで5年間延長
  • 企業立地促進のための基本計画の同意に係る事前審査・事前協議の原則廃止等
  • 水素ステーションの設置(都道府県知事の許可等)に係る規制改革

エ 委員会勧告において対象としていなかったもの

(ア)手挙げ方式による権限移譲

  • 消費者安全法に基づく事業者に対する報告徴収・立入調査等の対象区域の拡大

(イ)政省令、通知等に基づく義務付け・枠付けの見直し

  • 介護認定審査会委員の任期の条例委任

「対応方針」に盛り込んだ事項のうち、法律改正事項については、第5次地方分権一括法案等を平成27年通常国会に提出することを基本とするとともに、現行規定で対応可能な提案については、地方公共団体に対する通知等により明確化することとしている。また、引き続き検討を進めるものについては、内閣府において適切にフォローアップを行い、検討結果について、逐次、地方分権改革有識者会議に報告することとしている。

加えて、地方公共団体において、移譲された事務・権限を円滑に執行することができるよう、地方税、地方交付税や国庫補助負担金等により、確実な財源措置を講ずるとともに、マニュアルの整備や技術的助言、研修や職員の派遣などの必要な支援を実施することとしている。

(4)地方税財源の充実確保

自らの発想で特色を持った地域づくりができるよう、地方分権を推進し、その基盤となる地方税の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系を構築することが重要である。また、インフラ整備や治安、社会保障など、行政サービスの多くは地方公共団体が直接の担い手となっていることに鑑みれば、公共サービスの対価を広く公平に分かち合うという地方税の応益課税を強化することが重要である。

なお、地方財政審議会からは、「平成26年6月地財審意見」及び平成26年12月19日に地方税の充実確保や法人税改革などを含む「平成27年度地方税制改正等に関する地方財政審議会意見」(附属資料参照)が述べられている。

このような観点から、地方税制において以下の改正を行うこととしている。

ア 消費税率(国・地方)10%への引上げ時期の変更等

経済再生と財政健全化を両立するため、平成27年10月1日に予定されていた消費税率(国・地方)10%(地方消費税率は消費税率換算で2.2%)への引上げ等の施行日を平成29年4月1日とするとともに「税制抜本改革法(地方)」附則第19条第3項を削除することとされている。なお、「税制抜本改革法(国)」附則第18条第3項についても、同様に削除することとされている。

また、「平成27年度税制改正大綱」(平成26年12月30日 自由民主党・公明党)において、平成26年度与党税制改正大綱等における消費税率(国・地方)10%段階の車体課税の見直し及び地方法人課税の偏在是正については、平成28年度以後の税制改正において具体的な結論を得るとされている。

イ 法人税改革(法人事業税の所得割の税率引下げ及び外形標準課税の拡大等)

法人課税を成長志向型の構造に変える法人税改革の一環として、法人事業税において資本金1億円超の普通法人に導入されている外形標準課税(付加価値割、資本割)を、2年間で、現行の4分の1から2分の1に段階的に拡大し、見合いの所得割を引き下げることとしている。

この結果、国税の法人税の税率引下げとあわせ、法人実効税率を現行の34.62%から31.33%(平成28年度)に引き下げることとしている。

ウ ふるさと納税の拡充

ふるさと納税制度について、地方創生を推進するため、

  • 特例控除額の上限を、個人住民税所得割額の1割から2割に拡充
  • 申告手続の簡素化として「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設

を行いつつ、併せて、返礼品送付について寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応を地方団体に要請することとしている。

エ 固定資産税

土地に係る固定資産税の負担調整措置については、商業地等の据置特例の対象土地における税負担の不均衡や、現行の一般市街化区域農地の負担調整措置により生じている不均衡等の課題がある一方、現下の最優先の政策課題はデフレ脱却であること等から、平成27年度から平成29年度までの間、条例減額制度を含め、現行の負担調整措置の仕組みを継続することとし、次期評価替えまでの間において、デフレ脱却の動向を見極めつつ、これらの課題への対処について検討を進めることとされている。

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