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平成29年版
地方財政白書
(平成27年度決算)

7 地方公営企業等の状況

(1)地方公営企業

ア 概況

(ア)事業数[資料編:第114表

平成27年度末において、地方公営企業を経営している団体数は1,785団体(企業団・一部事務組合等でのみ地方公営企業を経営している5団体及び特別区を含む。)であり、その内訳は47都道府県、20政令指定都市、1,718市区町村(政令指定都市を除く。)となっている(地方公営企業の経営に携っていない団体は3団体)。

これらの団体が経営している地方公営企業の事業数は8,614事業で、前年度末と比べると48事業減少している。これを事業別にみると、第79図のとおりであり、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業(簡易水道事業を含む。以下同じ。)、病院事業の順となっている。

(イ)業務の状況

地方公営企業は、住民の生活水準の向上を図る上で大きな役割を果たしている。各事業全体の中で地方公営企業が占める割合は、第20表のとおりである。

平成27年度における主要な事業の業務の状況についてみると、次のとおりとなっている。

a 水道事業

水道事業(用水供給事業を除く。)においては、配水能力6,921万9千m3/日、導送配水管75万2,164kmを有し、年間151億m3(対前年度比0.2%減)の配水を行っている。また、給水人口は平成27年度末で1億2,445万7千人で、全国人口に対する割合は97.2%に達している。

b 工業用水道事業

工業用水道事業においては、配水能力2,162万m3/日、導送配水管8,752kmを有し、年間43億36百万m3(対前年度比0.3%減)の配水を行っている。また、契約水量は1,660万4千m3/日(同0.4%減)となっている。

c 都市高速鉄道事業

都市高速鉄道事業においては、車両4,640両、営業路線554kmを有している。また、年間輸送人員は31億95百万人(対前年度比3.3%増)となっている。

d バス事業

バス事業においては、車両7,640両、営業路線7,397kmを有している。また、年間輸送人員は9億39百万人(対前年度比0.9%増)となっている。

e 病院事業

病院事業においては、812病院、病床18万5,305床を有している。また、年延患者数は1億3,089万人(対前年度比1.0%減)であり、14年連続の減少となっている。

f 下水道事業

下水道事業においては、現在晴天時処理能力6,204万m3/日、下水管布設延長51万7,244kmを有している。また、年間有収水量(流域下水道分は除く。)は111億m3(対前年度比0.8%増)となっている。

(ウ)職員数[資料編:第115表

平成27年度末における地方公営企業に従事する職員の数は34万3,272人で、前年度末と比べると0.1%増となっている。

これを事業別にみると、第80図のとおりであり、病院事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、下水道事業、交通事業の順となっており、これら4事業で職員数全体の94.2%を占めている。また、行政改革の推進による定員管理の適正化等により、水道事業、下水道事業等において職員数が減少している。

(エ)決算規模[資料編:第116表

決算規模は17兆882億円で、前年度と比べると1兆6,908億円減少(9.0%減)しており、普通会計歳出決算額の17.4%(前年度19.1%)に相当する規模となっている。平成26年度は、地方公営企業会計基準の見直しに伴う総費用の増加等により決算規模が拡大したが、平成27年度は、平成25年度までと同水準となっている。

これを事業別にみると、第81図のとおりであり、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、病院事業、水道事業、交通事業の順となっている。

(オ)全体の経営状況

法適用企業と法非適用企業を合わせた全体の経営状況をみると、第21表のとおりであり、黒字事業数は全体の89.9%(前年度85.5%)、赤字事業数は10.1%(同14.5%)で、全体としては7,316億円の黒字(同5,252億円の赤字)となっている。また、赤字額は2,151億円で、前年度と比べると1兆76億円減少(82.4%減)しているが、その主な理由は、平成26年度に地方公営企業会計基準の見直しに伴う特別損失(退職給付引当金不足額等)の計上による総費用の増加等があったためである。

(カ)料金収入

料金収入は8兆9,178億円で、前年度と比べると149億円増加(0.2%増)している。これを事業別にみると、第82図のとおりであり、病院事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、下水道事業、交通事業の順となっている。

(キ)建設投資額の推移

建設投資額の推移は、第83図のとおりであり、平成27年度の額は3兆8,101億円で、前年度と比べると682億円増加(1.8%増)しており、4年連続で増加している。これは、普通会計の普通建設事業費の26.9%(前年度25.3%)に相当する規模となっている。

これを事業別にみると、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、病院事業、交通事業の順となっている。建設投資額が前年度より増加した主な事業は、市場事業(対前年度比658億円増加、89.4%増)、水道事業(同363億円増加、3.1%増)、交通事業(同94億円増加、5.7%増)、宅地造成事業(同55億円増加、3.7%増)、工業用水道事業(同29億円増加、6.4%増)となっている。

(ク)企業債の状況

資本的支出に充当された企業債の発行額の状況は、第84図のとおりであり、発行額は2兆2,911億円で、前年度と比べると977億円減少(4.1%減)している。

これを事業別にみると、下水道事業が最も大きな割合を占め、以下、水道事業、病院事業、宅地造成事業の順となっている。

企業債借入先別現在高の推移は、第85図のとおりであり、企業債現在高の平成27年度末の総額は45兆3,939億円で、前年度末と比べると1兆4,357億円減少(3.1%減)している。これを借入先別にみると、政府資金が最も大きな割合を占め、以下、地方公共団体金融機構、市場公募の順となっている。

(ケ)他会計繰入金の状況

他会計からの繰入金は3兆884億円で、前年度と比べると270億円減少(0.9%減)している。

この内訳をみると、収益的収入として1兆9,950億円(収益的収入に対する割合15.6%)、資本的収入として1兆934億円(資本的収入に対する割合24.2%)となっている。

これを事業別にみると、下水道事業の繰入額が最も大きな割合(繰入額全体の58.1%)を占め、以下、病院事業(同22.5%)、水道事業(同6.6%)、宅地造成事業(同4.1%)の順となっている。

(コ)法適用企業の経営状況[資料編:第117表

a 損益計算書、貸借対照表

損益計算書は、第86図のとおりであり、平成27年度は、総収益が総費用を上回り、総収支は黒字となっている。なお、平成26年度は、会計基準の見直しに伴う退職給付引当金等により特別損失が大幅に増額となり総収支は赤字となったが、経常収支(営業収支及び営業外収支)は平成26年度においても黒字であった。

また、法非適用企業の公営企業会計の適用の拡大により、経常収益(営業収益及び営業外収益)、経常費用(営業費用及び営業外費用)ともに増加している。

貸借対照表は、第87図のとおりであり、法非適用企業の公営企業会計の適用の拡大により、資産の総額は増加している。平成26年度に増加した利益剰余金の一部を平成27年度に資本金に組み入れたことを主な要因として、利益剰余金が3兆718億円減額となり、資本金が4兆2,978億円増額となっている。(平成26年度は、会計基準の見直しによる移行処理により、みなし償却を行っていなかった償却資産の平成25年度以前の減価償却累計額の相当額を資本剰余金(補助金等)から利益剰余金に振り替えたことにより、利益剰余金が増加した。)

b 損益収支

法適用企業の経営状況を表すものには、純損益、経常損益、総収支比率、経常収支比率等がある。純損益とは、総収益から総費用を差し引いた額をいい、当該年度の総合的な収支状況を表し、総収益が総費用を上回る場合の差額が純利益であり、逆に総費用が総収益を上回る場合の差額が純損失である。

経常損益とは、純損益から固定資産売却益等の臨時的な収益(特別利益)や、固定資産売却損等の臨時的な費用(特別損失)を除いたものをいい、当該年度の経営活動の結果を表し、経常収益が経常費用を上回る場合の差額が経常利益であり、逆に経常費用が経常収益を上回る場合の差額が経常損失である。

総収支比率とは総費用に対する総収益の割合、経常収支比率とは経常費用に対する経常収益の割合であり、それぞれ100%を下回ると費用が収益を上回っている状態を意味することになる。

法適用企業の総収益(経常収益+特別利益)は11兆206億円、総費用(経常費用+特別損失)は10兆4,071億円となっている。この結果、純損益は6,135億円の黒字となっており、総収支比率は105.9%と前年度より11.2ポイント上昇している。また、経常収益(営業収益+営業外収益)は10兆9,240億円、経常費用(営業費用+営業外費用)は10兆2,584億円となっている。この結果、経常損益は6,657億円の黒字となっており、経常収支比率は106.5%と前年度より0.2ポイント上昇している。

経常収支比率の推移をみると、平成3年度以降100%を下回る状況が続いていたが、平成15年度からは13年連続で100%を上回っている。なお、純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第22表のとおりである。

c 資本収支

建設投資や企業債の償還金等の支出である資本的支出は5兆6,599億円で、前年度と比べると1,243億円減少(2.1%減)している。これに対する財源は、企業債等の外部資金が2兆8,462億円、損益勘定留保資金等の内部資金が2兆7,428億円、資本的収入額が資本的支出額に不足する額である財源不足額は709億円となっている。

資本的支出のうち建設改良費は2兆8,788億円で、前年度と比べると914億円増加(3.3%増)している。建設改良費が大きい事業は、水道事業(建設改良費全体の38.5%)、下水道事業(同31.3%)、病院事業(同15.3%)である。

d 資本不足

負債総額が資産総額を上回る状態である資本不足となっている事業は204事業(建設中を除く法適用企業の全体の6.6%)あり、前年度と比べると11事業減少(5.1%減)している。また、返済義務のない負債である長期前受金を負債から控除した場合、資本不足となっている事業は94事業(同3.0%)あり、前年度と比べると15事業減少(13.8%減)している。

これを事業別にみると、病院事業が103事業(全体の50.5%)と最も多く、次いで下水道事業が62事業(同30.4%)となっている。

e 累積欠損金

過去の年度から通算した純損益における損失の累積額である累積欠損金は4兆3,536億円で、前年度と比べると2,057億円減少(4.5%減)している。また、累積欠損金合計額に占める割合が大きい事業は、交通事業(累積欠損金合計額の42.3%)、病院事業(同40.5%)である。

f 不良債務

貸借対照表日現在において、流動負債の額(建設改良費等の財源に充てるための企業債等を除く。)が流動資産の額(翌年度へ繰り越される支出の財源充当額を除く。)を上回る場合の当該超過額である不良債務は1,845億円で、前年度と比べると78億円減少(4.1%減)している。不良債務の大きい事業は、交通事業(不良債務全体の75.2%)、下水道事業(同10.2%)、病院事業(同9.4%)である。

(サ)法非適用企業の経営状況[資料編:第119表

法非適用企業の実質収支をみると、黒字事業数は法非適用企業全体の98.2%、赤字事業数は1.8%を占めており、全体では1,181億円の黒字(前年度971億円の黒字)となっている。

イ 事業別状況[資料編:第114表第119表

(ア)水道事業

a 事業数

(a) 上水道事業

地方公共団体が経営する上水道事業で、平成27年度決算対象となるものは、1,344事業であり、このうち、末端給水事業は1,273事業、用水供給事業は71事業(うち建設中2事業)である。これを経営主体別にみると、末端給水事業は、都県営が4事業、政令指定都市営が19事業、市営が686事業、町村営が515事業、企業団営等が49事業であり、用水供給事業は、府県営が22事業、政令指定都市営が1事業、市営が1事業、企業団営等が47事業となっている。

(b) 簡易水道事業

地方公共団体が経営する簡易水道事業で、平成27年度決算対象となるものは、737事業(うち法適用26事業)である。これを経営主体別にみると、町村営が486事業(うち建設中1事業)で全体の65.9%を占め、以下、市営が244事業、政令指定都市営が4事業、一部事務組合等営が2事業、県営が1事業となっている。

b 業務の状況

水道事業の給水人口(用水供給事業を除く。)は、平成27年度末で1億24百万人(上水道事業1億21百万人、簡易水道事業3百万人)であり、前年度と比べると微増となっている。また、平成27年度の年間総有収水量(用水供給事業を含む。)は180億92百万m3(前年度181億6百万m3)、給水人口1人当たり1日平均有収水量(用水供給事業を除く。)は297l(同298l)となっている。

c 経営状況

(a) 法適用企業

(i) 損益収支

水道事業の総収益は3兆1,810億円、総費用は2兆8,235億円となっており、この結果、純損益は3,575億円の黒字(前年度1,762億円の黒字)、総収支比率は112.7%となっている。また、経常収益は3兆1,535億円、経常費用は2兆7,782億円となっており、この結果、経常損益は3,753億円の黒字、経常収支比率は113.5%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第23表のとおりである。

資本不足となっている事業は2事業(建設中を除く法適用企業の全体の0.1%)あり、前年度同数となっている。また、返済義務のない負債である長期前受金を負債から控除した場合、資本不足となっている事業はなく、前年度同数となっている。

累積欠損金は893億円で、前年度と比べると3.4%増となっている。なお、不良債務は1億円(前年度0.1億円)である。

(ii) 資本収支

資本的支出は、第88図のとおりであり、平成27年度の額は1兆7,396億円で、前年度と比べると1.4%増となっている。これに対する財源は、外部資金が5,644億円、内部資金が1兆1,713億円で、資本的収入額が資本的支出額に不足する額である財源不足額は39億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1兆1,081億円で、前年度と比べると3.8%増、企業債償還金は5,650億円で、前年度と比べると1.6%減となっている。

(iii) 給水原価と料金

有収水量1m3当たりの給水原価(用水供給事業を除く。)は163.85円で、前年度と比べると0.3%減となっている。給水原価の内訳をみると、資本費が56.27円、職員給与費が21.32円、受水費が29.59円、その他の経費が56.67円となっている。これに対して1m3当たりの供給単価(用水供給事業を除く。)は171.92円であり、給水原価が供給単価を8.07円下回る状態となっている。

また、平成27年度中に料金改定を実施した水道事業(用水供給事業を含む。)は73事業(前年度1,130事業)で、営業中の事業の5.3%となっている。

(b) 法非適用企業

簡易水道事業における法非適用企業は711事業(うち建設中1事業)で、実質収支をみると、黒字事業が704事業で60億円の黒字、赤字事業が6事業で1億円の赤字となっており、差引59億円の黒字となっている。

(イ)工業用水道事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営する工業用水道事業で、平成27年度決算対象となるものは、154事業(うち建設中4事業)である。これを経営主体別にみると、都道府県営が40事業、政令指定都市営が9事業、市営が81事業、町村営が15事業、企業団営が9事業となっている。

施設数は258施設、給水先事業所数は5,998箇所、年間総配水量は43億36百万m3となっている。また、施設利用率(1日平均配水量を現在配水能力で除したもの)の平均は54.8%(前年度55.0%)となっている。

b 経営状況

(a) 損益収支

工業用水道事業の総収益は1,533億円、総費用は1,251億円となっており、この結果、純損益は282億円の黒字(前年度254億円の赤字)、総収支比率は122.5%となっている。また、経常収益は1,520億円、経常費用は1,246億円となっており、この結果、経常損益は274億円の黒字、経常収支比率は122.0%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第24表のとおりである。

資本不足となっている事業は4事業(建設中を除く全体の2.7%)あり、前年度と比べると1事業減少(20%減)している。また、返済義務のない負債である長期前受金を負債から控除した場合、資本不足となっている事業は2事業(同1.3%)あり、前年度と比べると1事業減少(33.3%減)している。

累積欠損金は403億円で、前年度と比べると41.6%減となっている。なお、不良債務を有する事業はなく、前年度と比べると皆減となっている。

(b) 資本収支

資本的支出は1,179億円で、前年度と比べると6.9%増となっている。これに対する財源は、外部資金が536億円、内部資金が644億円で、資本的収入額が資本的支出額に不足する額である財源不足額は0.0億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は484億円で、前年度と比べると6.4%増、企業債償還金は579億円で、前年度と比べると28.0%増となっている。

(c) 給水原価と供給単価

有収水量1m3当たりの給水原価は25.96円(資本費11.91円、職員給与費3.26円、その他の経費10.79円)となっており、これに対して1m3当たりの供給単価は30.21円となっている。

これを補助事業と単独事業に分けてみると、補助事業では供給単価(34.05円)が給水原価(29.47円)を4.58円上回っており、単独事業では供給単価(15.13円)が給水原価(12.17円)を2.96円上回っている。

c 経営健全化措置

工業用水道事業の経営健全化措置については、平成14年度から水利権の転用等を伴う未稼動資産等(将来にわたって活用する見込みがない事業用施設等)の整理により、抜本的な経営健全化対策に取り組む地方公共団体を対象として未稼動資産等整理経営健全化対策を講じ、1団体2施設が取組を行っている。

(ウ)交通事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営する交通事業で、平成27年度決算対象となるものは、87事業である。これを事業別にみると、バスが26事業、都市高速鉄道が9事業、路面電車が5事業、モノレール等が2事業、船舶が45事業となっている。

これらによる年間輸送人員は42億5,452万人、1日平均1,163万人(対前年度比2.5%増)である。1日平均輸送人員を事業別にみると、バスが257万人(同0.5%増)、都市高速鉄道が873万人(同3.0%増)、路面電車が14万人(同1.4%増)、その他が19万人(同4.5%増)となっている。

公営交通が国内の旅客輸送機関に占める割合を輸送人員からみると、第89図のとおりであり、バスについては20.6%、鉄道については13.6%となっている。

b 経営状況

(a) 法適用企業

(i) 損益収支

法適用の交通事業の総収益は8,322億円、総費用は7,211億円となっており、この結果、純損益は1,111億円の黒字(前年度1,130億円の赤字)、総収支比率は115.4%となっている。また、経常収益は8,242億円、経常費用は7,154億円となっており、この結果、経常損益は1,088億円の黒字、経常収支比率は115.2%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第25表のとおりである。

資本不足となっている事業は12事業(建設中を除く法適用企業の全体の25.0%)あり、前年度と比べると2事業減少(14.3%減)している。また、返済義務のない負債である長期前受金を負債から控除した場合、資本不足となっている事業は8事業(同16.7%)あり、前年度と比べると1事業減少(11.1%減)している。

累積欠損金は1兆8,407億円で、前年度と比べると4.7%減となっている。また、不良債務は1,388億円で、前年度と比べると2.0%減となっている。

これを事業別にみると、バス事業においては、純損益は78億円の黒字となっており、経常損益は68億円の黒字となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第26表のとおりである。

資本不足となっている事業は6事業(建設中を除く全体の23.1%)あり、前年度と比べると2事業減少(25.0%減)している。また、返済義務のない負債である長期前受金を負債から控除した場合、資本不足となっている事業は6事業(同23.1%)あり、前年度と比べると1事業減少(14.3%減)している。

累積欠損金は1,420億円で、前年度と比べると11.0%減となっている。また、不良債務は259億円で、前年度と比べると5.7%減となっている。

都市高速鉄道事業においては、純損益は1,032億円の黒字となっており、経常損益は1,032億円の黒字となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第27表のとおりである。

資本不足となっている事業は3事業(建設中を除く全体の33.3%)あり、前年度と同数となっている。なお、前年度に引き続き、返済義務のない負債である長期前受金を負債から控除した場合、資本不足となっている事業はない。

累積欠損金は1兆6,323億円で、前年度と比べると4.3%減となっている。また、不良債務は741億円で、前年度と比べると2.0%減となっている。

(ii) 資本収支

資本的支出は4,872億円(うちバス事業242億円、都市高速鉄道事業4,470億円)で、前年度と比べると2.3%増となっている。これに対する財源は、外部資金が2,258億円、内部資金が2,268億円で、資本的収入額が資本的支出額に不足する額である財源不足額は346億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1,687億円(うちバス事業115億円、都市高速鉄道事業1,431億円)で、前年度と比べると5.2%増、企業債償還金は2,793億円(うちバス事業111億円、都市高速鉄道事業2,665億円)で、前年度と比べると1.1%増となっている。

(b) 法非適用企業

交通事業における法非適用企業は船舶運航事業の39事業で、実質収支をみると、黒字事業が38事業で6億円の黒字、赤字事業は1事業で0.1億円の赤字となっている。

c 地下鉄事業の経営健全化措置

地下鉄事業の経営健全化措置については、不良債務の計画的な解消及びその発生の抑制を図ること等を目的に、資金不足額について一般会計からの繰出し(一般会計出資)分を起債できることとする地下鉄事業経営健全化対策を講じており、平成27年度末現在において1団体が取組を行っている。

(エ)電気事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営する電気事業で、平成27年度決算対象となるものは、92事業(うち建設中1事業)であり、法適用企業が28事業、法非適用企業が64事業である。これを経営主体別にみると、都道府県営が26事業、政令指定都市営が4事業、市営が32事業、町村営が26事業、一部事務組合等営が4事業となっている。施設数は468施設で、最大出力の合計は271万kW(建設中を含む。)、年間発電電力量は88億87百万kWh、年間売電電力量は84億86百万kWhとなっている。

上記のうち、各発電型式における稼働中の施設数、最大出力、年間発電電力量、年間売電電力量は第28表のとおりである。

b 経営状況

(a) 法適用企業

(i) 損益収支

法適用の電気事業の総収益は900億円、総費用は669億円となっており、この結果、純損益は231億円の黒字(前年度135億円の黒字)、総収支比率は134.6%となっている。また、経常収益は862億円、経常費用は665億円となっており、この結果、経常損益は197億円の黒字、経常収支比率は129.7%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第29表のとおりである。

資本不足となっている事業はなく、累積欠損金は17億円で、前年度と比べると37.5%減となっている。なお、不良債務を有する事業はない。

(ii) 資本収支

資本的支出は460億円で、前年度と比べると16.9%減となっている。これに対する財源は、外部資金が74億円、内部資金が385億円で、資本的収入額が資本的支出額に不足する額である財源不足額はない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は266億円で、前年度と比べると15.5%減、企業債償還金は101億円で、前年度と比べると7.1%減となっている。

(b) 法非適用企業

電気事業における法非適用企業は、水力発電事業、ごみ発電事業、スーパーごみ発電事業、風力発電事業及び太陽光発電事業の64事業(うち建設中1事業)で、実質収支をみると建設中を除く全ての事業において黒字であり、黒字額は38億円となっている。

(オ)ガス事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営するガス事業で、平成27年度決算対象となるものは、26事業である。これを経営主体別にみると、政令指定都市営が1事業、市営が19事業、町村営が6事業となっている。公営ガス事業の供給戸数(契約数)は83万戸(対前年度比0.1%減)で、供給区域内戸数に対する普及率は67.1%となっている。また、販売量は339億68百万MJ(メガジュール)で、前年度と比べると3.1%減となっている。

ガス事業全体に占める公営ガス事業の割合をみると、事業数で12.6%、供給戸数で2.8%、販売量で2.2%となっている。なお、民間大手3社を除いた割合では、供給戸数で8.9%、販売量で7.6%となっている。

b 経営状況

(a) 損益収支

ガス事業の総収益は957億円、総費用は901億円となっており、この結果、純損益は56億円の黒字(前年度66億円の黒字)、総収支比率は106.2%となっている。また、経常収益は945億円、経常費用は896億円となっており、この結果、経常損益は48億円の黒字、経常収支比率は105.4%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第30表のとおりである。

資本不足となっている事業は6事業(建設中を除く全体の23.1%)あり、前年度と比べると2事業減少(25.0%減)している。また、返済義務のない負債である長期前受金を負債から控除した場合、資本不足となっている事業は5事業(同19.2%)あり、前年度と比べると1事業減少(16.7%減)している。

累積欠損金は277億円で、前年度と比べると26.8%減となっている。なお、不良債務を有する事業はない。

(b) 資本収支

資本的支出は258億円で、前年度と比べると5.4%減となっている。これに対する財源は、外部資金が76億円、内部資金が183億円で、資本的収入額が資本的支出額に不足する額である財源不足額はない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は121億円で、前年度と比べると4.4%増、企業債償還金は112億円で、前年度と比べると1.1%増となっている。

(カ)病院事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営する病院事業(地方公営企業法を適用する病院事業)で、平成27年度決算対象となるものは、637事業(うち建設中2事業)であり、これらの事業が有する病院(以下「自治体病院」という。)数は812病院である。これを経営主体別にみると、都道府県立が152病院(37都道府県)、政令指定都市立が27病院(14政令指定都市)、市立が355病院(301市)、町村立が169病院(163町村)及び一部事務組合等立が109病院(79組合)となっている。

一般病院(注)780病院のうち病床数300床以上の病院は、31.4%に当たる245病院となっており、地域における基幹病院、中核病院として地域医療を支えている。

一方、病床数が150床未満であり、直近の一般病院までの移動距離が15キロメートル以上となる位置に所在している等の条件下にある「不採算地区病院」は、一般病院の37.9%に当たる296病院となっており、民間医療機関による診療が期待できない離島、山間地等のへき地における医療の確保のため、重要な役割を果たしている。

さらに、自治体病院全体の85.6%に当たる695病院が救急病院として告示を受けており、地域の救急医療を担っている。

平成27年度末における病床数は18万5千床で、前年度と比べると1.4%減となり、入院、外来延患者数は1億3千万人で、前年度と比べると1.0%減となっている。

また、病床利用率は72.7%(前年度72.8%)、外来入院患者比率(年延外来患者数を年延入院患者数で除したもの)は167.1%(前年度167.0%)となっている。なお、全国の病院に占める自治体病院の数及び病床数の推移は、第90図のとおりである。

b 経営状況

(a) 損益収支

病院事業の総収益は4兆542億円、総費用は4兆1,244億円となっており、この結果、純損益は703億円の赤字(前年度4,852億円の赤字)、総収支比率は98.3%となっている。また、経常収益は4兆108億円、経常費用は4兆656億円となっており、この結果、経常損益は548億円の赤字、経常収支比率は98.7%となっている。純損益、経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第31表のとおりである。

資本不足となっている事業は103事業(建設中を除く全体の16.2%)あり、前年度と比べると2事業増加(2.0%増)している。また、返済義務のない負債である長期前受金を負債から控除した場合、資本不足となっている事業は57事業(同9.0%)あり、前年度と比べると6事業減少(9.5%減)している。

累積欠損金は1兆7,624億円で、前年度と比べると1.6%減となっている。また、不良債務は174億円で、前年度と比べると7.7%減となっている。

また、医業費用に対する医業収益の割合である医業収支比率は89.5%(前年度89.9%)となっており、これを病院の種別にみると、一般病院が90.0%(同90.4%)、精神科病院が68.0%(同67.4%)となっている。

(b) 資本収支

資本的支出は7,868億円で、前年度と比べると1.7%減となっている。これに対する財源は、外部資金が5,496億円、内部資金が2,252億円で、資本的収入額が資本的支出額に不足する額である財源不足額は119億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は4,407億円で、前年度と比べると5.6%減、企業債償還金は3,148億円で、前年度と比べると2.6%増となっている。

(注)精神科病院以外の病院をいう。

(キ)下水道事業

a 事業数及び業務の状況

地方公共団体が経営する下水道事業で、平成27年度決算対象となるものは、3,639事業(うち建設中13事業)であり、法適用企業が640事業、法非適用企業が2,999事業である。これを経営主体別にみると、都道府県営が81事業、政令指定都市営が50事業、市営が1,893事業、町村営が1,589事業、一部事務組合等営が26事業となっている。

下水道事業の平成27年度末における現在処理区域内人口は1億360万人、現在処理区域面積は508万haとなっている。また、年間総処理水量(雨水処理水量と汚水処理水量の合計。ただし、流域下水道分は流域関連公共下水道として水量を計上しているため除く。)は152億m3で、前年度と比べると1.5%増となっており、年間有収水量は111億m3で、前年度と比べると0.8%増となっている。

b 経営状況

(a) 法適用企業

(i) 損益収支

法適用企業の下水道事業の総収益は2兆3,377億円で、前年度と比べると2.1%増となっている。その内訳をみると、料金収入が1兆108億円(総収益に占める割合43.2%)、他会計繰入金(雨水処理負担金を含む。)が7,407億円(同31.7%)等となっている。一方、総費用は2兆1,765億円で、前年度と比べると1.2%増となっており、うち地方債利息が3,097億円(総費用に占める割合14.2%)となっている。この結果、純損益は1,612億円の黒字(前年度1,389億円の黒字)、総収支比率は107.4%となっている。また、経常収益は2兆3,278億円、経常費用は2兆1,640億円となっており、この結果、経常損益は1,638億円の黒字、経常収支比率は107.6%となっている。純損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第32表のとおりである。

資本不足となっている事業は62事業(建設中を除く法適用企業の全体の9.7%)あり、前年度と比べると2事業減少(3.1%減)している。また、返済義務のない負債である長期前受金を負債から控除した場合、資本不足となっている事業は7事業(同1.1%)あり、前年度と比べると1事業減少(12.5%減)している。

累積欠損金は1,055億円で、前年度と比べると7.7%減となっている。また、不良債務は188億円で、7.0%減となっている。

(ii) 資本収支

資本的支出は2兆1,102億円で、前年度と比べると1.8%増となっている。これに対する財源は、外部資金が1兆1,976億円、内部資金が8,999億円で、資本的収入額が資本的支出額に不足する額である財源不足額は127億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は8,999億円で、前年度と比べると2.5%増、企業債償還金は1兆1,975億円で、前年度と比べると5.3%増となっている。

(b) 法非適用企業

下水道事業における法非適用企業の総収益は1兆2,765億円で、前年度と比べると4.0%減となっている。その内訳をみると、料金収入が5,210億円(総収益に占める割合40.8%)、他会計繰入金(雨水処理負担金を含む。)が5,548億円(同43.5%)等となっている。一方、総費用は8,504億円で、前年度と比べると5.6%減となっており、うち地方債利息が2,432億円(総費用に占める割合28.6%)となっている。

資本的支出は1兆4,715億円で、前年度と比べると4.4%減となっている。その内訳をみると、建設改良費は6,575億円で、前年度と比べると5.9%減、地方債償還金は8,062億円で、前年度と比べると2.5%減となっている。

実質収支をみると、黒字事業が2,954事業で795億円の黒字、赤字事業が35事業で116億円の赤字となっており、差引678億円の黒字となっている(第32表)。

(c) 全体の経営状況

法適用企業と法非適用企業を合計した下水道事業の黒字額は2,515億円、赤字額は225億円となっており、この結果、全体の収支(法適用企業の純損益と法非適用企業の実質収支の合計)は2,290億円の黒字となっている。

汚水処理原価(汚水処理費を年間有収水量で除したもの)は、148.02円/m3(維持管理費76.18円/m3、資本費71.84円/m3)で、前年度と比べると1.7%減となっており、使用料単価(使用料収入を年間有収水量で除したもの)は、138.94円/m3で、前年度と比べると0.2%増となっている。

その結果、経費回収率(使用料単価を汚水処理原価で除したもの)は93.9%となっており、前年度と比べると1.8ポイント上昇している。回収率が上昇した要因としては、企業債利子の減少や料金収入の増加等があるが、適正な回収率に達していない事業は依然として多いため、引き続き経営の健全化に向けた取組を進めていく必要がある。

法適用企業と法非適用企業を合計した下水道事業の建設改良費は1兆5,573億円で、前年度と比べると1.2%減となっている。

(ク)その他の地方公営企業

a 事業数

地方公共団体は、以上の事業のほかにも各種の事業を経営している。これを事業別にみると、平成27年度決算対象となるものは、港湾整備事業が97事業、市場事業が163事業、と畜場事業が59事業、観光施設事業が304事業、宅地造成事業が435事業、有料道路事業が1事業、駐車場整備事業が223事業、介護サービス事業が573事業、その他事業(廃棄物等処理施設、診療所等)が46事業となっている。

b 経営状況

その他の地方公営企業の純損益、経常損益、実質収支における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第33表のとおりである。このうち、観光施設事業については、全体の収支(法適用企業の純損益と法非適用企業の実質収支の合計)が32億円の黒字であり、法適用企業の累積欠損金は前年度と比べると23.8%減の206億円と改善されているものの、経営状況が悪化している事業については、施設そのものの必要性及び公営企業で運営することの適否について十分検討する必要がある。また、宅地造成事業については、全体の収支は176億円の黒字であり、法適用企業の累積欠損金は前年度と比べると7.4%減の3,955億円と改善されているものの、販売用土地の時価評価額が当該土地の地方債残高を下回っている会計が全体(地方債償還が終了した会計を除く。)の5割以上を占めている。厳しい経営状況にある事業については、対応を先延ばしにすることなく、早期かつ計画的に経営の健全化を図る必要がある。

(2)国民健康保険事業[資料編:第120表

平成27年度末において国民健康保険事業会計を有する市町村は、1,744団体(20政令指定都市、45中核市、39施行時特例市、686都市、927町村、4一部事務組合等、23特別区)で、前年度末と同数となっている。また、直営診療所を設置している団体は359団体(2政令指定都市、8中核市、12施行時特例市、147都市、188町村、2一部事務組合)で、前年度末と比べると3団体減少している。

被保険者数は3,182万人であり、加入世帯数は1,941万世帯となっている。これらを前年度末と比べると、被保険者数は121万人減少、加入世帯数は40万世帯減少している。

なお、退職者医療制度の被保険者数及び被扶養者数は96万人で、前年度末と比べると43万人減少(30.9%減)している。

ア 事業勘定

(ア)歳入

事業勘定の歳入決算額は16兆3,883億円で、前年度と比べると1兆9,774億円増加(13.7%増)している。

歳入の内訳をみると、第91図のとおりであり、国民健康保険税(料)及び国庫支出金の合計で歳入総額の38.3%を占め、前年度(44.2%)と比べると5.9ポイント低下している。

それぞれの決算額をみると、国民健康保険税(料)は2兆9,536億円で、前年度と比べると1,067億円減少(3.5%減)、国庫支出金は3兆3,241億円で、前年度と比べると152億円増加(0.5%増)している。国庫支出金の主な内訳としては、療養給付費等負担金が2兆4,341億円、財政調整交付金等が8,900億円で、前年度と比べるとそれぞれ271億円減少(1.1%減)、424億円増加(5.0%増)している。

また、都道府県支出金は7,837億円で、前年度と比べると52億円増加(0.7%増)している。

さらに、他会計繰入金は1兆4,217億円で、前年度と比べると1,720億円増加(13.8%増)している。この内訳をみると、財源補填的な繰入金が3,628億円(対前年度比5.3%増)、国民健康保険の財政基盤の安定を図るための保険基盤安定制度による繰入金が5,181億円(同0.1%減)等となっている。

なお、前期高齢者交付金は、3兆4,787億円で、前年度と比べると1,249億円増加(3.7%増)している。

(イ)歳出

歳出決算額は16兆2,002億円で、前年度と比べると2兆297億円増加(14.3%増)している。

歳出の内訳をみると、第92図のとおりであり、保険給付費は9兆5,529億円で、前年度と比べると1,940億円増加(2.1%増)している。

保険給付費の主な内訳をみると、療養諸費等が9兆3,849億円で、前年度と比べると1,981億円増加(2.2%増)、その他の給付費が1,446億円で、前年度と比べると46億円減少(3.1%減)している。

また、後期高齢者支援金等は1兆7,868億円で、前年度と比べると230億円減少(1.3%減)している。

(ウ)収支

実質収支は1,873億円の黒字(前年度2,390億円の黒字)であり、昭和40年度以降黒字傾向が続いている。

しかし、実質収支から財源補填的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支については、2,780億円の赤字(前年度2,040億円の赤字)となっており、22年連続して赤字となっている。

再差引収支を団体規模別にみると、政令指定都市が1,249億円の赤字(前年度1,024億円の赤字)、中核市が492億円の赤字(同288億円の赤字)、施行時特例市が262億円の赤字(同272億円の赤字)、都市が920億円の赤字(同671億円の赤字)となる一方、町村が31億円の黒字(同71億円の黒字)、一部事務組合等が9億円の黒字(同7億円の黒字)、特別区が103億円の黒字(同137億円の黒字)となっている。

再差引収支を黒字・赤字の団体別にみると、黒字の団体数は前年度と比べると84団体減の892団体で、その黒字額は293億円減の1,345億円となっている。

一方、赤字の団体数は前年度と比べると84団体増の852団体で、その赤字額は447億円増の4,125億円となっている。

赤字の団体が占める割合を団体規模別にみると、政令指定都市が90.0%、中核市が77.8%、施行時特例市が66.7%、都市が56.9%、町村が41.0%、特別区が8.7%となっており、特に政令指定都市、中核市及び施行時特例市においては、厳しい財政運営が続いている。

イ 直診勘定

直診勘定の歳入決算額は594億円で、前年度と比べると33億円減少(5.3%減)している。

このうち、診療収入は349億円で、前年度と比べると17億円減少(4.7%減)しており、歳入総額に占める割合は58.8%(前年度58.4%)となっている。他会計繰入金は130億円で、前年度と比べると8億円減少(5.8%減)しており、歳入総額に占める割合は21.9%(前年度22.0%)となっている。

直診勘定の歳出決算額は571億円で、前年度と比べると30億円減少(5.0%減)している。

このうち、総務費は347億円で、前年度と比べると6億円減少(1.6%減)している。また、医業費は172億円で、前年度と比べると11億円減少(5.8%減)しており、歳出総額に占める割合は30.2%(前年度30.4%)となっている。なお、医業費の診療収入に対する割合は49.3%で、前年度と比べて0.6ポイント低下している。

実質収支は22億円の黒字(前年度26億円の黒字)となっているが、この実質収支から他会計繰入金を控除し、繰出金を加えた再差引収支は、105億円の赤字(同109億円の赤字)となっている。

(3)後期高齢者医療事業[資料編:第121表

後期高齢者医療事業では、保険料の徴収や後期高齢者医療広域連合へ保険料等の納付を行う市町村(1,739団体(20政令指定都市、45中核市、39施行時特例市、686都市、925町村、1広域連合、23特別区))及び後期高齢者医療事業を実施する都道府県区域ごとの後期高齢者医療広域連合(47団体)に特別会計が設けられている。

ア 市町村

市町村の特別会計の歳入決算額は1兆5,331億円で、前年度と比べると492億円増加(3.3%増)している。このうち、被保険者が支払う後期高齢者医療保険料は1兆691億円で、前年度と比べると34億円増加(0.3%増)しており、歳入総額に占める割合は69.7%(前年度71.8%)となっている。

歳出決算額は1兆5,055億円で、前年度と比べると476億円増加(3.3%増)している。このうち、後期高齢者医療広域連合への納付金が、1兆4,215億円で、前年度と比べると432億円増加(3.1%増)しており、歳出総額に占める割合は94.4%(前年度94.5%)となっている。

イ 後期高齢者医療広域連合

(ア)歳入

後期高齢者医療広域連合の歳入決算額は14兆9,886億円で、前年度と比べると5,067億円増加(3.5%増)している。

歳入の内訳をみると、第93図のとおりであり、支払基金交付金が5兆8,776億円(歳入に占める割合39.2%)、国庫支出金が4兆7,905億円(同32.0%)、市町村支出金が2兆4,846億円(同16.6%)、都道府県支出金が1兆1,668億円(同7.8%)で、それぞれ前年度と比べると支払基金交付金が2,324億円増加(4.1%増)、国庫支出金が1,530億円増加(3.3%増)、市町村支出金が478億円増加(2.0%増)、都道府県支出金が410億円増加(3.6%増)している。

(イ)歳出

後期高齢者医療広域連合の歳出決算額は14兆5,399億円で、前年度と比べると5,942億円増加(4.3%増)している。

歳出の内訳をみると、第94図のとおりであり、保険給付費は14兆185億円で、前年度と比べると5,895億円増加(4.4%増)しており、歳出総額の96.4%(前年度96.3%)を占めている。

(ウ)収支

実質収支は47団体全て黒字となっており、その黒字額は4,487億円(前年度5,362億円の黒字)となっている。

(4)介護保険事業[資料編:第122表

介護保険制度を実施する保険者である市町村が設ける介護保険事業会計は、第1号被保険者(65歳以上の者)からの保険料や、第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)の介護納付金分に係る支払基金からの交付金である支払基金交付金等を財源として保険給付等を行う保険事業勘定と、介護給付の対象となる居宅サービス及び施設サービス等を実施する介護サービス事業勘定とに区分される。

なお、市町村が実施する指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、老人短期入所施設、老人デイサービスセンター、指定訪問看護ステーションの5施設により介護サービスを提供する事業は介護サービス事業として公営企業会計の対象とされている。

平成27年度末の介護保険事業の保険者は、1,579団体(20政令指定都市、45中核市、37施行時特例市、633都市、782町村、39一部事務組合等、23特別区)で、前年度と同数となっている。また、介護サービス事業勘定を設置している団体は705団体(9政令指定都市、13中核市、11施行時特例市、293都市、359町村、7一部事務組合等、13特別区)で、前年度と比べると20団体減少している。

ア 保険事業勘定

(ア)歳入

保険事業勘定の歳入決算額は9兆9,570億円で、前年度と比べると3,205億円増加(3.3%増)している。

歳入の内訳をみると、第95図のとおりであり、第1号被保険者が支払う保険料が2兆1,416億円(歳入総額に占める割合21.5%)、介護給付費負担金(介護給付及び予防給付に要する費用の額(以下「介護・予防給付額」という。)の100分の20(施設等給付費にあっては100分の15)に相当する額)、調整交付金(介護・予防給付額の100分の5に相当する額)等の国庫支出金が2兆2,216億円(同22.3%)、支払基金交付金(第2号被保険者の介護給付金分に係る社会保険診療報酬支払基金からの交付金)が2兆5,696億円(同25.8%)、都道府県の法定負担(介護・予防給付額の100分の12.5(施設等給付費にあっては100分の17.5)に相当する額)を含む都道府県支出金が1兆3,712億円(同13.8%)、市町村の法定負担分(介護・予防給付額の100分の12.5に相当する額)を含む他会計繰入金が1兆4,576億円(同14.6%)、介護保険制度の円滑な導入のために設置された基金等の取崩し額である基金繰入金が213億円(同0.2%)等となっている。

また、それぞれ前年度と比べると保険料が2,483億円増加(13.1%増)、国庫支出金が625億円増加(2.9%増)、支払基金交付金が344億円減少(1.3%減)、都道府県支出金が276億円増加(2.1%増)、他会計繰入金が592億円増加(4.2%増)、基金繰入金が575億円減少(73.0%減)している。

(イ)歳出

保険事業勘定の歳出決算額は9兆7,484億円で、前年度と比べると2,820億円増加(3.0%増)している。

歳出の内訳をみると、第96図のとおりであり、保険給付費は9兆1,085億円で、前年度と比べると1,971億円増加(2.2%増)しており、歳出総額の93.4%(前年度94.1%)を占めている。

(ウ)収支

実質収支は2,057億円の黒字(前年度1,660億円の黒字)となっており、実質収支から財源補填的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支についても、2,040億円の黒字(同1,631億円の黒字)となっている。

再差引収支を黒字・赤字の団体別にみると、黒字の団体数は前年度と比べると11団体増の1,566団体で、全団体に占める割合は99.2%(前年度98.5%)となっており、その黒字額は406億円増の2,062億円となっている。

一方、赤字の団体数は前年度と比べると11団体減の13団体で、全団体に占める割合は0.8%(前年度1.5%)となっており、その赤字額は2億円減の22億円となっている。

イ 介護サービス事業勘定

介護サービス事業勘定の歳入決算額は278億円で、前年度と比べると14億円減少(4.8%減)している。このうち、利用者の支払う自己負担金を含むサービス収入は114億円(前年度比0.1%減)で、歳入総額に占める割合は41.2%(前年度39.2%)となっている。

普通会計等からの繰入金は139億円で、前年度と比べると13億円減少(8.6%減)しており、歳入総額に占める割合は49.9%(前年度52.0%)となっており、このうち、普通会計からのものが125億円で前年度と比べると13億円減少(9.3%減)している。

歳出決算額は262億円で、前年度と比べると15億円減少(5.4%減)している。このうち、サービス事業費が106億円で、前年度と比べると3億円増加(2.6%増)しており、歳出総額に占める割合は40.5%(前年度37.4%)となっている。

また、公債費の元利償還金は、74億円で、前年度と比べると13億円減少(14.8%減)しており、歳出総額に占める割合は28.1%(前年度31.1%)となっている。

なお、実質収支は14億円の黒字(前年度13億円の黒字)となっており、再差引収支は120億円の赤字(同134億円の赤字)となっている。

(5)その他の事業

ア 収益事業[資料編:第123表

収益事業を実施した地方公共団体の数は延べ287団体で、前年度と比べて2団体減少している。

これを事業別にみると、公営競技についてはモーターボート競走事業を施行した団体が105団体と最も多く、以下、自転車競走事業58団体、競馬事業50団体、小型自動車競走事業7団体の順となっている。

また、宝くじは、47都道府県及び20政令指定都市の67団体で発売されている。

これらを団体種類別にみると、都道府県においては延べ67団体、市町村においては延べ220団体が収益事業を実施している。

(ア)経営状況

収益事業の決算額は、歳入3兆1,714億円、歳出3兆961億円で、前年度と比べると歳入は1,253億円増加(4.1%増)、歳出は820億円増加(2.7%増)している。

実質上の収支(歳入歳出差引額から翌年度に繰り越すべき財源、他会計からの繰入金、過去の収益を積み立てた基金からの繰入金及び未払金を控除し、他会計への繰出金及び未収金を加えた額)は4,279億円の黒字(前年度3,965億円の黒字)となっている。

普通会計等への収益金の繰出しについて、事業別にみると、競馬事業が12億円(前年度10億円)、自転車競走事業が50億円(同48億円)、小型自動車競走事業が3億円(同4億円)、モーターボート競走事業が91億円(同100億円)、宝くじ事業が3,782億円(同3,763億円)となっている。

(イ)収益金の使途状況

収益金の大部分は普通会計等に繰り入れられ、道路、教育施設、社会福祉施設等の整備事業などの財源として活用されている。その繰入額は3,938億円で、前年度と比べると13億円増加(0.3%増)している。

収益金繰入額の使途状況を目的別にみると、土木費が1,056億円で最も大きな割合(収益金繰入額に占める割合26.8%)を占め、次いで、民生費の869億円(同22.1%)となっており、これらの費目で繰入総額の48.9%を占めている。このほか、教育費が566億円(同14.4%)、衛生費が138億円(同3.5%)、商工費が173億円(同4.4%)等となっている。

イ 共済事業

(ア)農業共済事業[資料編:第125表

農業共済事業を実施した市町村の数は51団体で、前年度と比べると3団体減少している。

農業共済事業会計の決算額は歳入110億円、歳出104億円で、前年度と比べると歳入は17億円減少(13.0%減)、歳出は17億円減少(14.3%減)している。

なお、実質上の収支(歳入歳出差引額から支払準備金積立額、責任準備金積立額、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は、28億円の赤字(前年度29億円の赤字)となっている。

(イ)交通災害共済事業[資料編:第126表

直営方式により交通災害共済事業を実施した地方公共団体は67団体(31市町村、36一部事務組合等)で、前年度と比べると2団体減少している。

また、加入者は平成27年度末で800万人(前年度末827万人)となっている。

交通災害共済事業会計の決算額は歳入60億円、歳出49億円で、前年度と比べると歳入は0.2億円減少(0.2%減)、歳出は0.2億円増加(0.4%増)している。

なお、実質上の収支(歳入歳出差引額から未経過共済掛金、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は11億円の黒字(前年度12億円の黒字)となっている。

ウ 公立大学附属病院事業[資料編:第124表

公立大学附属病院事業を実施した地方公共団体は1団体である。

公立大学附属病院事業会計の決算額は、収益的収支では総収益21億円、総費用21億円となり、前年度と比べると総収益は1億円増加(6.2%増)し、総費用は1億円増加(4.1%増)となっている。

また、資本的収支では資本的収入3億円、資本的支出3億円となり、前年度と比べると、資本的収入は0.1億円増加(3.3%増)、資本的支出は0.1億円増加(3.3%増)している。

実質収支は1億円の黒字(前年度1億円の黒字)となっている。

(6)第三セクター等

第三セクター等の状況については、平成28年度の「第三セクター等の状況に関する調査」(平成28年3月31日現在)によると次のとおりである。

ア 第三セクター等の定義

第三セクター等とは、次の法人をいう。

(ア)第三セクター

a 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(平成18年法律第48号)等の規定に基づいて設立されている一般社団法人及び一般財団法人(公益社団法人及び公益財団法人を含む。)並びに特例民法法人(以下「社団法人・財団法人」という。)のうち、地方公共団体が出資を行っている法人

b 「会社法」(平成17年法律第86号)の規定に基づいて設立されている株式会社、合名会社、合資会社、合同会社及び特例有限会社(以下「会社法法人」という。)のうち、地方公共団体が出資を行っている法人

(イ)地方住宅供給公社、地方道路公社及び土地開発公社(以下「地方三公社」という。)

(ウ)地方独立行政法人

イ 第三セクター等の数

第三セクター等の数は第34表のとおりであり、法人数の総計は7,532法人で、前年度末(7,604法人)に比べ72法人減少している。

ウ 第三セクター等の経常損益の状況

第三セクター等のうち、(1)地方公共団体等の出資割合が25%以上の社団法人・財団法人及び会社法法人、(2)出資割合が25%未満であるものの財政的支援(注1)を受けている社団法人・財団法人及び会社法法人、(3)地方三公社及び(4)地方独立行政法人の6,298法人から30法人(注2)を除いた6,268法人(以下「経営状況等調査対象法人」という。)の経常損益の状況については第35表のとおりであり、4,043法人(64.5%)が黒字、2,225法人(35.5%)が赤字となっている。

(注1)ここで「財政的支援」とは、補助金、貸付金及び損失補償のことをいう。

(注2)第三セクター等のうち、清算手続中、休眠中、設立後間もない等の理由により財務諸表(損益計算書、正味財産増減計算書)が作成されていない法人。

エ 第三セクター等の純資産又は正味財産の状況

経営状況等調査対象法人の純資産又は正味財産の状況は、第36表のとおりである。

負債が資産を上回っている法人は239法人(3.8%)であり、当該法人の負債が資産を上回っている額の合計は1,839億円となっている。

オ 地方公共団体からの補助金交付額の状況

経営状況等調査対象法人の地方公共団体からの補助金交付額の状況は、第37表のとおりである。

地方公共団体から補助金を交付されている法人は、2,771法人(44.2%)であり、交付総額は5,632億円となっている。

カ 地方公共団体からの借入残高の状況

経営状況等調査対象法人の地方公共団体からの借入残高の状況は、第38表のとおりである。

地方公共団体からの借入残高を有する法人は799法人(12.7%)であり、借入残高は4兆2,599億円となっている。

キ 損失補償・債務保証の状況

経営状況等調査対象法人の損失補償・債務保証の状況は、第39表のとおりである。

地方公共団体以外からの借入残高を有する法人は1,655法人であり、借入残高は6兆6,177億円となっている。また、地方公共団体による損失補償・債務保証が付されている債務残高を有する法人は632法人であり、債務残高は3兆5,328億円となっている。

ク 統廃合等・法的整理の状況

平成27年度中の第三セクター等の統廃合等・法的整理の状況については、第40表のとおりである。

第三セクター等の廃止は74件、統合は16件、出資引揚は32件となっており、統廃合等により122法人減少している。法的整理を申し立てた第三セクター等は6法人となっており、社団法人・財団法人が1法人、会社法法人が5法人となっている。

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