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平成29年版
地方財政白書
(平成27年度決算)

第2部 平成28年度及び平成29年度の地方財政

1 平成28年度の地方財政

(1)平成28年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

「平成28年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成27年12月22日閣議了解、平成28年1月22日閣議決定された。この中で、以下の平成27年度の経済動向、平成28年度の経済見通し及び平成28年度の経済財政運営の基本的態度が示された。

(ア)平成27年度の経済動向

平成27年度の我が国経済をみると、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を柱とする経済財政政策の推進により、雇用・所得環境が改善し、原油価格の低下等により交易条件が改善する中で、緩やかな回復基調が続いている。ただし、年度前半には中国をはじめとする新興国経済の景気減速の影響等もあり、輸出が弱含み、個人消費及び民間設備投資の回復に遅れがみられた。

政府は、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の実現に向け、「緊急対策」を取りまとめた。雇用・所得環境が改善する中、緊急対策等の効果もあって、景気は緩やかな回復に向かうことが見込まれる。

物価の動向をみると、原油価格等の下落の影響があるものの、経済の好循環が進展する中で、物価の基調は緩やかに上昇している。

この結果、平成27年度の実質国内総生産(実質GDP)成長率は1.2%程度、名目国内総生産(名目GDP)成長率は交易条件の改善もあって2.7%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は0.4%程度の上昇と見込まれる。

(イ)平成28年度の経済見通し

平成28年度の我が国経済は、「緊急対策」など、「平成28年度の経済財政運営の基本的態度」に示された政策の推進等により、雇用・所得環境が引き続き改善し、経済の好循環が更に進展するとともに、交易条件が緩やかに改善する中で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれる。

物価については、経済の好循環の進展により、需給が引き締まっていく中で上昇し、デフレ脱却に向け更なる前進が見込まれる。

この結果、平成28年度の実質GDP成長率は1.7%程度、名目GDP成長率は3.1%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は1.2%程度の上昇と見込まれる。

なお、先行きのリスクとしては、アメリカの金融政策の正常化が進む中、中国をはじめとする新興国等の景気の下振れ、金融資本・商品市場の動向、地政学的な不確実性等に留意する必要がある。

(ウ)平成28年度の経済財政運営の基本的態度

今後の経済財政運営に当たっては、これまでのアベノミクスの成果の上に、「デフレ脱却・経済再生」と「財政健全化」を双方共に更に前進させる。

デフレ脱却・経済再生については、アベノミクス第二ステージにおいて、戦後最大の名目GDP600兆円を2020年(平成32年)頃に達成することを目標とし、これまでの三本の矢を束ねて一層強化した新たな第一の矢である「希望を生み出す強い経済」を推進していく。その成長の果実を活用して、第二の矢の「夢をつむぐ子育て支援」、第三の矢の「安心につながる社会保障」を推進し、地方創生、国土強靱化、女性の活躍などの取組とあいまって、第二、第三の矢が「強い経済」にも寄与するメカニズムを通じて、新・三本の矢が一体となって成長と分配の好循環を強固なものとしていく。

一億総活躍社会の実現に向け最優先で推進する必要のある「緊急対策」に取り組むことにより、民間の取組ともあいまって、投資促進・生産性革命の実現や、賃金・最低賃金引上げを通じた消費の喚起等を推進し、名目GDP600兆円経済実現に向けた動きを加速するとともに、デフレ脱却への歩みを確実なものとし、足元の景気をしっかり下支えする。

加えて、「総合的なTPP関連政策大綱」を踏まえ、我が国産業の海外展開・事業拡大や生産性向上、農林水産業の競争力の強化など、将来の成長、発展を視野に入れた取組を進める。

また、未来投資による生産性革命とローカル・アベノミクスを推進するため、「『日本再興戦略』改訂2015」(平成27年6月30日閣議決定)を着実に実施する。

財政健全化については、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定。以下「基本方針2015」という。)に盛り込まれた「経済・財政再生計画」に沿って、2020年度(平成32年度)の財政健全化目標を堅持し、計画期間の当初3年間(2016〜2018年度(平成28〜30年度))を「集中改革期間」と位置付け、2018年度(平成30年度)の国・地方のPB赤字の対GDP比マイナス1%程度を目安として、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」の3本柱の改革を一体として推進する。平成28年度は、「経済・財政再生計画」の初年度に当たることから、「デフレ脱却・経済再生」への取組を加速させるとともに、「経済・財政再生アクション・プログラム」(平成27年12月24日経済財政諮問会議決定)を十分踏まえた上で、歳出改革・歳入改革を着実に推進する。

日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する。

イ 国の予算

政府は、「平成28年度予算編成の基本方針」(平成27年11月27日閣議決定)及び「平成28年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に基づいて平成27年12月24日、平成28年度予算政府案を閣議決定した。

平成28年度予算は、「平成28年度予算編成の基本方針」の次のような基本的考え方により編成された。

(ア)平成28年度予算の基本的な考え方

a 「経済・財政再生計画」の着実な推進

(a) 「経済再生なくして財政健全化なし」。これは、経済財政運営における安倍内閣の基本哲学であり、2020年度(平成32年度)の財政健全化目標の達成に向けた今後5年間の基本方針でもある。我々が目指すのは経済再生と財政健全化の二兎を得る道である。

(b) 我が国経済は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を柱とする経済財政政策を推進してきた結果、雇用・所得環境の改善傾向が続く中で、2015年度(平成27年度)のPB赤字対GDP比半減目標も達成見込みである。この成果の上に、「デフレ脱却・経済再生」と「財政健全化」を双方共に更に前進させる。

(c) 政府の経済財政運営の根幹である「基本方針2015」は、経済再生と財政健全化を共に達成しつつ、中長期的に持続する成長メカニズムの構築を目指す取組である。すなわち、経済再生については、消費や投資の拡大に結び付く経済の好循環の拡大、イノベーション等を通じた生産性の向上や供給面の取組による潜在的な供給力の強化、人口減少と地域経済の縮小の悪循環の連鎖に歯止めをかける、まち・ひと・しごとの創生を目指すものである。

こうした中、緩やかな回復基調にある我が国の経済は、いまだ個人消費の回復に地域間でのばらつきや生産活動が弱含むところもあり、地方によっては経済環境に厳しさがある。このため、ローカル・アベノミクスの浸透を更に図ることが重要である。

政府としては、今後とも、中国経済の減速などの足元の経済情勢のリスク要因を注視しつつ、「基本方針2015」に沿って経済財政運営を進めていく。

(d) 「基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」においては、2020年度(平成32年度)の財政健全化目標を堅持し、計画期間の当初3年間(2016〜2018年度(平成28〜30年度))を「集中改革期間」と位置付け、集中改革期間における改革努力のメルクマールとして、2018年度(平成30年度)のPB赤字の対GDP比マイナス1%程度を目安としている。

そのための取組として、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」を3本柱とし、そのうち、「歳出改革」については、「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」、「公共サービスのイノベーション」という3つの取組を中心に着実に推進する。

歳出改革については、経済財政諮問会議の下に設置された経済・財政一体改革推進委員会において、主要歳出分野ごとの成果指標(KPI)設定や改革工程表の策定、誰もが活用できる形での情報開示(見える化)の徹底など、計画の具体化を進め、今後、改革工程表に沿って、着実に実行する。また、同委員会において、改革の進捗管理、点検、評価を行う。

b 「一億総活躍社会」の実現とTPP(環太平洋パートナーシップ)を踏まえた対応

(a) アベノミクスの第二ステージで掲げた新・三本の矢の第一の矢「希望を生み出す強い経済」は、これまでの三本の矢を束ねて一層強化したものであり、具体的な目標は戦後最大の名目GDP600兆円を2020年(平成32年)頃に達成することである。その成長の果実を活用して、第二の矢の「夢をつむぐ子育て支援」、第三の矢の「安心につながる社会保障」を推進し、地方創生、国土強靱化、女性の活躍などの取組とあいまって、第二、第三の矢が「強い経済」にも寄与するメカニズムを通じて、新・三本の矢が一体となって成長と分配の好循環を強固なものとしていく。

政府は、誰もが生きがいをもって、充実した生活を送ることができる「一億総活躍社会」の実現を目指し、「一億総活躍国民会議」を発足させ、平成27年11月26日に緊急に実施すべき対策が取りまとめられたところである。

この緊急対策に取り組むことにより、名目GDP600兆円経済実現に向けた動きを加速するとともに、デフレ脱却を確実なものとし、足元の景気をしっかり下支えする。

(b) TPP協定についても、平成27年10月に大筋合意に達したことから、TPPを真に我が国の経済再生、地方創生に直結するものとするため、平成27年11月25日に決定した「総合的なTPP関連政策大綱」を踏まえ、我が国産業の海外展開・事業拡大や生産性向上、農林水産業の競争力の強化など、将来の成長、発展を視野に入れた取組を進める。

これらの取組は、いずれも将来の我が国の成長、発展を見据えた重要な政策課題であり、それぞれを着実に、かつ整合的に進めていくことが必要である。

(イ)予算の編成についての考え方

a 「一億総活躍社会」の実現、TPPを踏まえた対応

強い経済を実現するとともに、少子高齢化という構造的な問題について正面から取り組むことにより、将来への安全を確保し、誰もが生きがいを持って充実した生活を送ることができる「一億総活躍社会」の実現に向けた取組や、TPPを真に我が国の経済再生、地方創生に直結するものとするための取組といった喫緊の重要課題への対応に関しては、平成27年度補正予算での対応と併せて、「経済・財政再生計画」の趣旨や施策の優先順位を踏まえ、適切に対処する。

b 「経済・財政再生計画」初年度における歳出改革の推進

(a) 平成28年度は、「経済・財政再生計画」の初年度に当たることから、「デフレ脱却・経済再生」への取組を加速させるとともに、改革工程表を十分踏まえた上で、歳出改革を着実に推進するとの基本的考え方に立ち、改革工程表における取組を的確に予算に反映させる。併せて、同計画における国の一般歳出の水準の目安を十分踏まえた上で、予算編成を行う。

(b) 具体的には、改革工程表に基づき実施する平成28年度の取組が、予算に反映される施策である場合は、予算編成過程における検討を経た上で、平成28年度予算にその取組を反映させる。特に、歳出改革に向けた施策の展開、見える化やPDCAサイクル構築に資するエビデンスの収集などが必要な場合には、有効と考えられるモデル事業、実証実験の取組について、検証スケジュールなど時間軸を明確にした上で、これまでの実績も踏まえ、平成28年度予算にその取組を反映させる。

(c) 歳出改革の実現には、それぞれの施策、事業の実行主体が、責任を持って対応していくことが不可欠となる。こうした観点から、平成28年度歳入歳出概算についての閣議決定時において、予算への反映を含めた「経済・財政再生計画」に沿った取組について、各府省において適切に公表を行う。

こうした取組により、政策効果の見える化やPDCAサイクルの強化を促し、国民参加で更なる改革を推進していく。同時に、経済財政諮問会議における点検・評価や情報発信、行政事業レビュー等を通じて、各府省の取組を後押しする。

(d) 予算編成においては、東日本大震災からの復興を加速するとともに、我が国財政の厳しい状況を踏まえ、歳出全般にわたり、聖域なき徹底した見直しを、引き続き、手を緩めることなく推進する。地方においても、国の取組と基調を合わせ徹底した見直しを進める。

「新しい日本のための優先課題推進枠」については、歳出改革に寄与するものを含め、政策効果が高いと認められるものに絞り込んで措置する。

このような方針に基づいて編成された平成28年度の一般会計予算の規模は、96兆7,218億円(前年度比3,799億円、0.4%増)で、PB対象経費は73兆1,097億円(前年度比2,185億円、0.3%増)となった。

また、東日本大震災復興特別会計の予算規模は3兆2,469億円で、前年度当初予算(3兆9,087億円)と比べると6,618億円減少(16.9%減)となった。

財政投融資計画の規模は、13兆4,811億円(前年度比1兆1,404億円、7.8%減)となった。

なお、平成28年度当初予算は、平成28年1月22日に国会に提出され、3月29日に成立した。

(2)地方財政計画

平成28年度においては、通常収支分について、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、地方創生や地方の重点課題に対応するために必要な経費を計上するとともに、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行う一方、国の取組と基調を合わせた歳出改革を行うこととした。また、歳入面においては、「基本方針2015」で示された「経済・財政再生計画」に沿って、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、平成27年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとした。

また、東日本大震災分については、復旧・復興事業及び全国防災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとした。

なお、地方財政審議会からは、平成27年6月9日に「経済再生と財政健全化の両立に向けた地方税財政改革についての意見」及び平成27年12月18日に「今後目指すべき地方財政の姿と平成28年度の地方財政への対応についての意見」(附属資料参照)が述べられた。

以上を踏まえ、次の方針に基づき平成28年度地方団体の歳入歳出総額の見込額を策定した。

ア 通常収支分

(ア) 地方税制については、平成28年度地方税制改正では、経済の好循環を確実なものとするため、成長志向の法人税改革の一環として法人事業税所得割の税率引下げと外形標準課税の拡大等のための税制上の措置を講ずることとしている。また、地方創生の推進等を図るため地方法人課税の偏在是正に向けた措置等を講ずるとともに、消費税率10%引上げ時の平成29年4月に自動車税及び軽自動車税に環境性能割を導入するなど車体課税の見直し等のための税制上の措置を講ずることとしている。

(イ) 地方財源不足見込額については、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

a 財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等により対処することとした残余については、平成26年度に講じた平成28年度までの制度改正に基づき、国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については、地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

b これに基づき、平成28年度の財源不足見込額5兆6,063億円については、次により補填する。

(a) 地方交付税については、国の一般会計加算により8,283億円(うち地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額3,436億円、平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)及び平成27年1月12日付け総務・財務両大臣覚書第7項に定める平成28年度における「乖離是正分加算額」2,100億円並びに臨時財政対策特例加算額2,747億円)増額する。

また、地方公共団体金融機構法附則第14条の規定により財政投融資特別会計に帰属させる地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金2,000億円を財政投融資特別会計から交付税特別会計に繰り入れる。

(b) 地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を3兆7,880億円発行する。

(c) 建設地方債(財源対策債)を7,900億円増発する。

c 上記の結果、平成28年度の地方交付税については、16兆7,003億円(前年度比546億円、0.3%減)を確保する。

d 交付税特別会計の借入金については、特別会計に関する法律附則第4条第1項に基づき、4,000億円の償還を実施する。

(ウ) 地方債については、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方財源の不足に対処するための措置を講じ、また、地方団体が防災・減災対策、公共施設の老朽化対策及び地域の活性化への取組を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

(エ) 地域経済の基盤強化や雇用創出を図りつつ、地方創生の推進、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 地方の重点課題に取り組むために必要な経費として、一般行政経費に新たに「重点課題対応分」を2,500億円計上することとしている。

b 平成27年度に創設した「まち・ひと・しごと創生事業費」については、引き続き1兆円(前年度同額)計上することとしている。

c 投資的経費に係る地方単独事業費については、公共施設等総合管理計画の策定団体数が増加していることなどを踏まえ、「公共施設等最適化事業費」を2,000億円(前年度比1,000億円増)に増額し、引き続き喫緊の課題である防災・減災対策に取り組めるよう「緊急防災・減災事業費」を5,000億円(前年度同額)確保することとし、全体で前年度に比し3.0%増額し、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

d 消費税・地方消費税の引上げによる増収分等を活用した社会保障の充実として、子ども・子育て支援、医療・介護サービスの提供体制改革、医療・介護保険制度改革及び難病等に係る公平かつ安定的な制度の確立に係る措置を講じることとしており、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

e 一般行政経費に係る地方単独事業費については、社会保障の充実分等を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

f 消防力の充実、防災・減災対策等の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

g 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(オ) 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(カ) 地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減、事務事業の見直しや民間委託など引き続き行財政運営全般にわたる改革を推進する。

イ 東日本大震災分

(ア)復旧・復興事業

a 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、直轄・補助事業に係る地方負担分等を措置するため、4,802億円を確保する。また、一般財源充当分として79億円を計上する。

b 地方債については、復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

c 直轄事業負担金及び補助事業費、地方自治法に基づく職員の派遣、投資単独事業等の地方単独事業費及び地方税法等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出等について所要の事業費を計上する。

(イ)全国防災事業

全国防災事業については、地方税の臨時的な税制上の措置(平成25年度〜平成35年度)による地方税の収入見込額として720億円を計上するとともに、一般財源充当分として589億円を計上する。

以上のような方針に基づいて策定した平成28年度の地方財政計画の規模は、通常収支分は85兆7,593億円で、前年度と比べると4,883億円増加(0.6%増)となり、東日本大震災分は、復旧・復興事業が1兆7,799億円で、前年度と比べると2,261億円減少(11.3%減)、全国防災事業が1,310億円で、前年度と比べると3,595億円減少(73.3%減)となった。

通常収支分についてみると、歳入では、地方税は38兆7,022億円で、前年度と比べると1兆2,103億円増加(3.2%増)(道府県税6.1%増、市町村税0.8%増)、地方譲与税は2兆4,322億円で、前年度と比べると2,532億円減少(9.4%減)、地方特例交付金は1,233億円で、前年度と比べると44億円増加(3.7%増)、地方交付税は16兆7,003億円で、前年度と比べると546億円減少(0.3%減)、国庫支出金は13兆2,184億円で、前年度と比べると1,451億円増加(1.1%増)、地方債(普通会計分)は8兆8,607億円で、前年度と比べると6,402億円減少(6.7%減)となった。

歳出では、給与関係経費は20兆3,274億円で、前年度と比べると77億円減少(0.0%減)となった。なお、地方財政計画における職員数については、4,900人の純減としている。一般行政経費は35兆7,931億円で、前年度と比べると7,342億円増加(2.1%増)となり、このうち一般行政経費に係る地方単独事業費は14兆374億円で、前年度と比べると410億円増加(0.3%増)となっている。公債費は12兆8,051億円で、前年度と比べると1,461億円減少(1.1%減)、投資的経費は11兆2,046億円で、前年度と比べると2,036億円増加(1.9%増)となった。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は5兆4,341億円で、前年度と比べると1,583億円増加(3.0%増)となった。

東日本大震災分(復旧・復興事業)についてみると、歳入では、震災復興特別交付税は4,802億円で、前年度と比べると1,096億円減少(18.6%減)、国庫支出金は1兆2,528億円で、前年度と比べると1,189億円減少(8.7%減)などとなった。歳出では、一般行政経費は5,464億円で、前年度と比べると259億円減少(4.5%減)、投資的経費は1兆2,024億円で、前年度と比べると1,850億円減少(13.3%減)などとなった。

東日本大震災分(全国防災事業)についてみると、歳入では地方税は720億円で、前年度と比べると12億円増加(1.7%増)などとなった。歳出では公債費は1,310億円で、前年度と比べると327億円増加(33.3%増)となった。

また、平成28年度の地方債計画の規模は、通常収支分が11兆2,082億円(普通会計分8兆8,607億円、公営企業会計等分2兆3,475億円)で、前年度と比べると7,160億円減少(6.0%減)となった。東日本大震災分は、復旧・復興事業が380億円(普通会計分331億円、公営企業会計等分49億円)で、前年度と比べると45億円減少(10.6%減)となり、全国防災事業は皆減(2,397億円減少)となった。

(3)平成28年度補正予算

ア 平成28年度補正予算(第1号)

平成28年度補正予算(第1号)は、平成28年5月13日に閣議決定、同日に第190回国会に提出され、5月17日に成立した。

この補正予算においては、歳出面では災害救助等関係経費780億円、熊本地震復旧等予備費7,000億円を追加計上するほか、既定経費の減額7,780億円の修正減少額が計上された。

イ 平成28年度補正予算(第1号)に係る財政措置等

(ア)通常収支分

この補正予算により追加される熊本地震による災害への対応に伴う地方負担に対しては、以下のとおり財政措置を講じることとした。

a 災害救助費

災害救助に要する経費の40%(地方負担額を限度)に対して、特別交付税措置を講じる。

b 災害弔慰金

災害弔慰金に要する経費に対して、所要の特別交付税措置を講じる。

c 災害援護貸付金

災害援護貸付金に要する経費に対して、資金手当として地方負担額の100%まで地方債(一般事業債)を充当できる。(協議等の事業区分及び同意等の基準については、通常の例による。)

(イ)東日本大震災分

地方負担は生じない。

ウ 平成28年度補正予算(第1号)により創設された一般会計熊本地震復旧等予備費の使用に係る財政措置等

平成28年度補正予算(第1号)により創設された一般会計熊本地震復旧等予備費について、平成28年5月31日に1,023億円、6月14日に590億円、6月28日に210億円及び7月26日に654億円の使用を閣議決定した。

これらの使用においては、歳出の追加に伴う地方負担が生じることから、以下のとおり財政措置を講じることとした。

(ア) 一般会計熊本地震復旧等予備費の使用により追加されることとなる投資的経費に係る地方負担額については、地方負担額の100%まで地方債を充当でき、後年度においてその元利償還金について以下のとおり地方交付税により措置する。

a 災害復旧事業債

(a) 補助災害復旧事業債

補助災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(b) 災害対策債

中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び災害廃棄物処理事業に係る災害対策債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

なお、災害対策債の発行要件を満たさない地方公共団体については、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び災害廃棄物処理事業に係る地方負担額の95%を特別交付税により措置する。

(c) 一般単独災害復旧事業債

一般単独災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、地方公共団体の財政力に応じ、その47.5〜85.5%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

b 補正予算債

補正予算債の後年度における元利償還金については、その80%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(イ) 一般会計熊本地震復旧等予備費の使用により追加されることとなる地方債の対象とならない経費については、以下のとおり措置する。

a 国宝重要文化財等保存整備事業

地方負担額の80%を特別交付税により措置する。

b 被災農業者向け経営体育成支援事業

地方負担額の70%(施設の撤去に係るものについては80%)を特別交付税により措置する。

エ 平成28年度補正予算(第2号)

平成28年度補正予算(第2号)は、平成28年8月24日に閣議決定、9月26日に第192回国会に提出され、10月11日に成立した。

この補正予算においては、歳出面で、「未来への投資を実現する経済対策」(平成28年8月2日閣議決定。以下「経済対策」という。)に沿って、一億総活躍社会の実現の加速7,119億円、21世紀型のインフラ整備1兆4,056億円、英国のEU離脱に伴う不安定性などのリスクへの対応並びに中小企業・小規模事業者及び地方の支援4,307億円、熊本地震や東日本大震災からの復興や安全・安心、防災対応の強化1兆4,389億円等を追加計上するほか、既定経費の減額4,175億円、熊本地震復旧等予備費の減額4,100億円の修正減少額が計上された。また、歳入面で、税外収入2,844億円、公債費2兆7,500億円、前年度剰余金受入2,525億円が追加計上された。

この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成28年度補正予算(第1号)による補正後予算に対し、3兆2,869億円増加し、100兆87億円となった。

オ 平成28年度補正予算(第2号)に係る財政措置等

(ア)通常収支分

この補正予算においては、歳出の追加に伴う地方負担額が生じることからそれに対応するとともに、熊本地震による災害に係る復興基金の創設を支援するため、以下のとおり財政措置を講じることとした。

a 追加の財政需要に係る財政措置

(a) この補正予算により平成28年度に追加されることとなる投資的経費に係る地方負担額については、その100%まで地方債を充当できることとし、以下に掲げるものを除き、後年度における元利償還金の50%を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、単位費用により措置する。

i 災害復旧事業債

(i) 補助災害復旧事業債

補助災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(ii) 災害対策債

中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び災害廃棄物処理事業に係る災害対策債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

なお、災害対策債の発行要件を満たさない地方公共団体については、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び災害廃棄物処理事業に係る地方負担額の95%を特別交付税により措置する。

(iii) 一般単独災害復旧事業債

一般単独災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、地方公共団体の財政力に応じ、その47.5%〜85.5%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(iv) 地方公営企業災害復旧事業債

地方公営企業災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、一般会計からの繰出額に応じ、その最大50%までを特別交付税により措置する。

ii 熊本地震による災害の復興事業に係る補正予算債

熊本地震による災害の復興事業に係る補正予算債の後年度における元利償還金については、その80%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

iii 公営企業債

当初における一般会計からの繰出額の一部に対する算定と同様の方式により措置する。

(b) この補正予算により平成28年度に追加されることとなる地方債の対象とならない経費については、地方財政計画に計上された追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応する。

b 特別交付税の増額

熊本地震により被害を受けた地方公共団体が、地域の実情に応じて実施する様々な事業について、単年度予算の枠に縛られずに弾力的に対処できる資金として、復興基金の創設を支援するため、平成28年度分の地方交付税の総額に510億円を加算し、特例としてその全額を特別交付税とする措置を講じる。

(イ)東日本大震災分

この補正予算により平成28年度に追加されることとなる東日本大震災に係る復旧・復興事業に係る地方負担額については、平成28年度分の震災復興特別交付税の総額に165億円を加算したうえで措置する。

カ 平成28年度補正予算(第3号)

平成28年度補正予算(第3号)は、平成28年12月22日に閣議決定、平成29年1月20日に第193回国会に提出され、1月31日に成立した。

この補正予算においては、歳出面で、災害対策費1,955億円、国際分担金及び拠出金等1,685億円、自衛隊の安定的な運用態勢の確保等1,706億円等を追加計上するほか、既定経費の減額4,164億円等の修正減少額が計上された。また、歳入面で、税収を1兆7,440億円減額計上する一方、税外収入1,047億円、公債費1兆8,526億円(建設公債1,014億円及び特例公債1兆7,512億円)が追加計上された。

この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成28年度補正予算(第2号)による補正後予算に対し、2,133億円増加し、100兆2,220億円となった。

キ 平成28年度補正予算(第3号)に係る財政措置等

(ア)通常収支分

この補正予算においては、国税の減額補正に伴い地方交付税が減額されるとともに、歳出の追加に伴う地方負担の増加が生じることから、以下のとおり財政措置を講じることとした。

a 地方交付税

この補正予算においては、平成28年度の国税の減収に伴い地方交付税が5,437億円の減額となったところであるが、これについては、平成28年度当初における地方財政対策に準じ、以下のとおり措置することとしており、この結果、平成28年度当初予算の地方交付税の総額が確保されるものである。

(a) 地方交付税の減5,437億円については、全額を国の一般会計からの加算により措置する。

(b) (a)の加算のうち2分の1の国負担分については臨時財政対策加算とし、2分の1の地方負担分については臨時財政対策債を発行することに代えて措置するものであることを踏まえ、後年度精算する。

b 追加の財政需要

(a) この補正予算により平成28年度に追加されることとなる投資的経費に係る地方負担額については、その100%まで地方債を充当できることとし、以下に掲げるものを除き、後年度における元利償還金の50%を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、単位費用により措置する。

i 災害復旧事業債

(i) 補助災害復旧事業債

補助災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(ii) 災害対策債

中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び熊本地震による災害の災害廃棄物処理事業に係る災害対策債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

なお、災害対策債の発行要件を満たさない地方公共団体については、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び熊本地震による災害の災害廃棄物処理事業に係る地方負担額の95%を特別交付税により措置する。

(iii) 一般単独災害復旧事業債

一般単独災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、地方公共団体の財政力に応じ、その47.5%〜85.5%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(iv) 地方公営企業災害復旧事業債

地方公営企業災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、一般会計からの繰出額に応じ、その最大50%までを特別交付税により措置する。

ii 熊本地震による災害の復興事業に係る補正予算債

熊本地震による災害の復興事業に係る補正予算債の後年度における元利償還金については、その80%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(b) 今回の補正予算により平成28年度に追加されることとなる地方債の対象とならない経費については、地方財政計画に計上された追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応する。

(イ)東日本大震災分

この補正予算においては、東日本大震災に係る復旧・復興事業費の減額に伴う地方負担の減により、平成28年度分の震災復興特別交付税の総額から213億円を減額する。

ク 地方公務員の給与改定

平成28年の国家公務員の給与改定については、平成28年11月24日の国の給与関係法の公布、施行に伴い、その取扱いが決定されたが、地方公務員の給与改定については、地方公務員法の趣旨に沿って適切に対応するよう「地方公務員の給与改定等に関する取扱いについて」(平成28年10月14日付け総務副大臣通知)で通知した。

なお、地方財政計画ベースの所要額は、1,370億円程度、一般財源ベースで1,200億円程度と見込まれたが、当該一般財源所要額については、地方財政計画上の追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応することとし、新たな財源措置は行わないこととした。

(4)地方公共団体の予算

平成28年度の地方公共団体の普通会計予算の総額(都道府県及び市区町村(一部事務組合等を除く。)の単純合計)は、前年度と比べると当初予算では0.6%増、9月補正後予算では1.9%増となっている。

主な内訳をみると、歳入では、

  • 地方税が当初予算、9月補正後予算ともに3.3%増
  • 地方譲与税が当初予算では7.5%減、9月補正後予算では7.6%減
  • 地方交付税が当初予算では0.1%減、9月補正後予算では0.4%減
  • 国庫支出金が当初予算では3.8%増、9月補正後予算では7.5%増
  • 地方債が当初予算では7.8%減、9月補正後予算では5.1%減

となっている。一方、歳出では、

  • 人件費が当初予算、9月補正後予算ともに0.1%減
  • 扶助費が当初予算、9月補正後予算ともに4.4%増
  • 普通建設事業費が当初予算では2.2%減、9月補正後予算では1.3%増

となっている。

詳細は第51表のとおりとなっている。

(5)地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

(ア)通常収支分

地方公営企業については、経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図る必要がある。

このため、平成28年度においては、次のような措置を講じることとした。

公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆5,143億円(前年度2兆5,397億円)を計上する。

地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆3,475億円(前年度2兆4,233億円)を計上する。

各事業における地方財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

a 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入する。

b 公営企業をめぐる経営環境が厳しさを増す中で、計画的かつ合理的な経営を行うことにより収支の改善等を通じた経営基盤の強化等を図るため、経営戦略の策定に要する経費について、所要の地方交付税措置を講じる。特に、持続可能なサービス提供を実現していくためには、地方公共団体の枠組みを超えた取組が有効であることから、広域化に係る調査・検討に要する経費について重点的に支援する。

併せて、地方公共団体における専門的知識・ノウハウを有する外部人材を積極的に活用するため、公営企業の経営支援に係る地方交付税措置を講じる。

c 水道事業については、簡易水道事業の統合を推進するため、高料金対策及び簡易水道の建設改良に係る地方財政措置について、統合後の激変緩和措置を講じる。

d 地方公営企業法を適用していない下水道事業に係る資本費平準化債の発行可能額を適切に算定するため、減価償却費相当額について、資産毎の平均耐用年数を用いて算定する方法に改めるとともに、所要の経過措置を講じる。

e 病院事業については、「新公立病院改革ガイドライン」(平成27年3月総務省自治財政局長通知)に基づき、新公立病院改革プランの策定及びその着実な実施を推進するため、プランの策定経費、再編・ネットワーク化に伴う施設・設備の整備費等について引き続き地方財政措置を講じるほか、特別交付税措置について所要の見直しを行う。

(イ)東日本大震災分

a 復旧・復興事業

地方公営企業に係る復旧・復興事業については、一般会計から公営企業会計への繰出基準の特例を設け、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととし、当該繰出金に対しては、その全額(復興事業のうち東日本大震災復興交付金(効果促進事業)は95%)を震災復興特別交付税により措置することとしており、地方財政計画において147億円を計上する。また、復旧・復興事業に係る地方債については、地方債計画において公営企業会計等分49億円を計上する。

b 被災施設借換債

旧公営企業金融公庫資金(地方公共団体金融機構資金も含む。)によって取得した施設が被災により滅失し繰上償還(補償金が課されない強制繰上償還)を行う場合、地方公共団体金融機構資金による借換債を発行可能とし、被災施設借換債4億円を計上する。

イ 国民健康保険事業

国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア) 都道府県が、地域の実情に応じて、都道府県内の市町村間の医療費水準等の不均衡の調整及び市町村国保財政の共同事業拡大の円滑な推進など地域の特別事情への対応のため交付する都道府県調整交付金(給付費等の9%分)については、その所要額(6,685億円)について地方交付税措置を講じる。

(イ) 国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部(都道府県3/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(4,597億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ) 低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用(2,631億円)に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、地方負担(1,316億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ) 高額医療費共同事業(3,363億円)については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)を負担することとし、地方負担(841億円)について地方交付税措置を講じる。

(オ) 国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じる。

(カ) 国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図ることを目的として、40歳から74歳までの国保被保険者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業(517億円)に対して、国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、市町村国保1/3)を負担することとし、地方負担(172億円)について地方交付税措置を講じる。

ウ 後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度については、実施主体である広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア) 保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図る(均等割2割・5割・7割軽減)とともに、被用者保険の被扶養者であった被保険者(以下「元被扶養者」という。)の保険料軽減を行う(均等割5割軽減)ため、都道府県及び市町村が負担(都道府県3/4、市町村1/4)することとし、その所要額(2,771億円)について地方交付税措置を講じる。

なお、平成28年度は、低所得者に対する保険料の軽減特例措置(均等割9割・8.5割、所得割5割軽減)及び元被扶養者に対する保険料の軽減特例措置(均等割9割軽減)が継続され、低所得者に対する保険料の軽減特例措置及び元被扶養者に対する均等割9割軽減のうち4割分については、国費により措置されている。

また、70歳から74歳までの窓口負担軽減措置については、平成26年度から新たに70歳になる者から段階的に法定の負担割合(2割)に見直すこととされており、所要額が平成28年度予算に計上されている。

(イ) 高額医療費負担金(2,748億円)については、広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、広域連合1/2)を負担することとし、地方負担(687億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ) 財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金を設置しその拠出金(189億円)に対して国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、広域連合1/3)を負担することとし、地方負担(63億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ) 実施主体である広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じる。

(6)個別団体における財政健全化

地方公共団体の財政状況は、法人関係二税、地方消費税の増による地方税の増加等により、平成27年度決算における経常収支比率は前年度(92.1%)と比べて0.4ポイント低下の91.7%となったが、児童手当制度の拡充、自立支援給付費の増加等を背景に、児童福祉費及び社会福祉費等の扶助費の増加のほか、借入金残高も累積していること等により、依然として厳しい状況となっている。

各地方公共団体においては、このような状況を踏まえて、地方税等の徴収対策、使用料・手数料の適正化、未利用財産の売払いなどの歳入確保や、事務事業の見直し、組織・機構の簡素効率化、外郭団体の統廃合等、定員管理・給与の適正化、民間委託等の推進、他の地方公共団体との連携、公共施設の最適化などの自主的な行財政改革に取り組んでいる。

各地方公共団体における財政の健全化は一定の推進が見られ、平成27年度において、早期健全化基準以上の団体は、現状、財政再生団体の北海道夕張市のみとなっている。北海道夕張市では、市民生活に直結したサービスを維持しながら、早期の財政の再生に向けた最大限の取組を行っており、個人市民税・固定資産税・軽自動車税の税率の引上げや各種使用料・手数料の引上げなど、住民負担の増加を伴う取組等による徹底した歳入確保と、職員数の削減や職員給与の見直しなど、行政のスリム化等による徹底した歳出削減により、財政状況の改善を図っている。

また、平成27年度決算における資金不足比率が経営健全化基準以上の公営企業は10会計であるが、これらの公営企業では定期的な料金改定の実施等により収入増加を図るとともに、職員数の削減や維持管理経費の削減等により積極的な支出の削減を図っているほか、収益の増加や経費の節減等により資金不足額の減少を図ることとしている。

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