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平成29年版
地方財政白書
(平成27年度決算)

5 社会保障・税一体改革

(1)これまでの経緯

社会保障と税の一体改革は、社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指すものである。

また、消費税率の引上げ分は、全額、社会保障の充実と安定化に使われることとされている。

税制抜本改革については、平成24年8月10日に消費税率を平成26年4月より8%に、平成27年10月より10%に段階的に引上げを行うための「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(平成24年法律第68号)及び「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律」(平成24年法律第69号)が成立した。

社会保障制度改革については、平成24年8月10日に成立した「社会保障制度改革推進法」(平成24年法律第64号)に基づき、内閣に設置された社会保障制度改革国民会議(以下「国民会議」という。)において、議論が重ねられ、平成25年8月6日に報告書が取りまとめられた。

この報告書では、社会保障4分野について、抜本的な改革の方向性が示されるとともに、子育て・医療・介護など社会保障の多くが地方公共団体を通じて国民に提供されていること等を踏まえ、制度改革については、地方公共団体の理解が得られるような改革とし、国と地方がそれぞれ責任を果たしながら、対等な立場で協力し合う関係を築くことが重要とされた。

さらに、社会保障制度改革推進法では、社会保障制度改革については、国民会議における審議の結果等を踏まえて、必要な法制上の措置を講じることとされており、平成25年8月21日に「社会保障制度改革推進法第4条の規定に基づく「法制上の措置」の骨子について」が閣議決定された。

この骨子に基づき、「法制上の措置」として、社会保障制度改革の全体像・進め方を明示するものとして、平成25年12月5日に「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(平成25年法律第112号。以下「プログラム法」という。)が成立した。

プログラム法においては、講ずべき社会保障制度改革の措置として、改革に向けた具体的な検討事項とその実施時期・法案の提出時期の目途について定められたほか、改革推進体制(社会保障制度改革推進本部及び社会保障制度改革推進会議の設置)や地方自治に重要な影響を及ぼす措置に係る協議なども定められた。

(2)関連法の制定

プログラム法での規定を踏まえ、平成26年以降、平成28年までの間に、以下の関連法が成立した。

<1> 「雇用保険法の一部を改正する法律」(平成26年法律第13号。平成26年3月28日成立):育児休業給付の給付率の引上げ(休業開始後6月間につき50%→67%)

<2> 「次代の社会を担う子どもの健全な育成を図るための次世代育成支援対策推進法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第28号。平成26年4月16日成立):「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号)の延長、新たな認定(特例認定)制度の創設

<3> 「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(平成26年法律第83号。平成26年6月18日成立):地域医療介護総合確保基金の創設と医療・介護の連携強化、地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保、地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化

<4> 「難病の患者に対する医療等に関する法律」(平成26年法律第50号)、「児童福祉法の一部を改正する法律」(平成26年法律第47号)(ともに平成26年5月23日成立):難病及び小児慢性特定疾病について、難病に係る都道府県の超過負担の解消を図るとともに、公平かつ安定的な医療費助成の制度を確立するため、対象疾病の拡大、対象患者の認定基準の見直し及び類似の制度との均衡を考慮した自己負担の見直し

<5> 「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第31号。平成27年5月27日成立):平成30年度から都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体となる新制度の施行

<6> 「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律」(平成28年法律第84号。平成28年11月16日成立):年金受給資格期間短縮(25年から10年)の施行期日の改正

<7> 「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第114号。平成28年12月14日成立):短時間労働者への被用者保険の適用拡大の促進、年金額の改定ルールの見直し

(3)これまでの「社会保障の充実」

平成25年8月26日から同年8月31日まで開催された「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」を経て、「消費税率及び地方消費税率の引上げとそれに伴う対応について」(平成25年10月1日閣議決定)において、経済状況等を総合的に勘案した検討の結果、消費税率については、平成26年4月1日に5%から8%へ引き上げることが確認された。

これを受けて、平成26年度においては、消費税率の引上げによる増収額は5兆円程度とされ、うち「社会保障の充実」には0.5兆円程度(国:0.22兆円程度、地方:0.27兆円程度)が向けられ、内訳としては、子ども・子育て支援分野に0.3兆円程度(国:0.14兆円程度、地方:0.16兆円程度)、医療・介護分野に0.2兆円程度(国:0.08兆円程度、地方:0.11兆円程度)となった。

その後、平成27年10月の消費税率の10%への引上げが平成29年4月まで1年半延期されたことを受けて、平成27年度の「社会保障の充実」は、消費税率8%への引上げによる増収分及びプログラム法等に基づく重点化・効率化による財政効果を活用し、国・地方合計で1.36兆円程度(国:0.68兆円程度、地方:0.68兆円程度)となった。内訳としては、子ども・子育て支援分野に0.52兆円程度(国:0.24兆円程度、地方:0.28兆円程度)、医療・介護分野に0.84兆円程度(国:0.44兆円程度、地方:0.40兆円程度)となった。

平成28年度の「社会保障の充実」は、消費税率8%への引上げによる増収分及びプログラム法等に基づく重点化・効率化による財政効果を活用し、国・地方合計で1.53兆円程度(国:0.80兆円程度、地方:0.73兆円程度)となった。内訳としては、子ども・子育て支援分野に0.60兆円程度(国:0.27兆円程度、地方:0.33兆円程度)、医療・介護分野に0.93兆円程度(国:0.52兆円程度、地方:0.41兆円程度)となった。

(4)平成29年度の「社会保障の充実」

平成28年6月1日の内閣総理大臣記者会見において、平成29年4月の消費税率の10%への引上げを平成31年10月まで2年半延期する旨の方針が示された。この方針に基づき、平成28年8月24日に「消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置」が閣議決定され、平成28年第192回臨時国会では、消費税率引上げ延期等を内容とする「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律」(平成28年法律第85号)及び「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律」(平成28年法律第86号)が平成28年11月18日に成立した。

その際、同会見及び臨時国会での審議において、内閣総理大臣から、「社会保障の充実」については、赤字国債を財源とすることなく、保育・介護の受け皿整備や年金の受給資格期間の短縮を実施する旨の方針が示された。

これらを踏まえ、平成29年度の「社会保障の充実」は、消費税率8%への引上げによる増収分及びプログラム法等に基づく重点化・効率化による財政効果を活用し、国・地方合計で1.84兆円程度(国:1.05兆円程度、地方:0.79兆円程度)となっている。内訳としては、子ども・子育て支援分野に0.70兆円程度(国:0.32兆円程度、地方:0.38兆円程度)、医療・介護分野に1.11兆円程度(国:0.70兆円程度、地方:0.41兆円程度)、年金分野に0.03兆円程度となっている。主な事業については、以下のとおりとなっている。

  • 子ども・子育て支援の充実:子ども・子育て支援新制度の実施(量的拡充及び質の向上)
  • 医療・介護サービス提供体制改革:<1>地域医療介護総合確保基金の所要額の確保、<2>介護保険の地域支援事業の完全実施に向けた拡充
  • 国民健康保険への財政支援の拡充:財政安定化基金の積増し
  • 年金受給資格期間の25年から10年への短縮(平成29年8月から実施)

このうち、国民健康保険への財政支援の拡充について、平成30年度から都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体となるに当たり、「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議」において取りまとめられた「国民健康保険の見直しについて(議論のとりまとめ)」(平成27年2月12日)の中で、財政安定化基金を創設し、2,000億円規模とするとされていたところ、平成29年度の財政安定化基金は、これまでの積立分と合わせて1,700億円規模となっている。これについては、地方側との協議を経て、平成30年度からの新制度の円滑な運営ができるよう、「今後の社会保障改革の実施について」により、以下の対応方針により進めていくこととされた。

<1> 平成30年度以降、国保改革(都道府県単位化)と併せて実施される保険者努力支援制度等の実施のために必要となる約1,700億円を確保する。このため、平成32年度に消費税収(国分)が満年度化することも踏まえ、平成30年度及び平成31年度において、財政安定化基金の一部を活用する。

<2> 平成29年度予算においては、都道府県が保険料の激変緩和を目的として市町村に資金を交付するための約300億円及び上記<1>による活用も念頭に置いた約500億円を別途財政安定化基金の積立てに措置する。

<3> 上記<2>による積立分を除く財政安定化基金については、平成29年度はこれまでの積立分と合わせて1,700億円規模を確保し、平成32年度末までに、新制度の運営状況を踏まえながら、速やかに必要な積増しを行い、2,000億円規模を確保する。

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