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平成31年版
地方財政白書
(平成29年度決算)

8 東日本大震災の影響

(1)普通会計

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、死者19,667人、行方不明者2,566人(平成30年9月7日、総務省消防庁発表)、被害総額(推計)約16兆9千億円(平成23年6月24日、内閣府(防災担当)発表)にのぼる被害をもたらすとともに、全国的にも生産、消費、物流等の経済活動に大きな影響を与えた。

政府は、東日本大震災発生直後から、被災者の生活の支援や被災地の復旧・復興対策に当たってきており、平成29年度においても前年度に引き続き、被災地の地方公共団体を中心に復旧・復興事業など多額の東日本大震災関連経費が支出されたところであり、その状況は次のとおりである。

ア 東日本大震災分の歳入及び歳出の状況

(ア)歳入[資料編:第136表

東日本大震災分の歳入は2兆8,081億円で、国庫支出金の減少等により、前年度と比べると26.4%減となっている。これを団体種類別にみると、都道府県においては1兆8,277億円で、国庫支出金の減少等により前年度と比べると26.4%減となっており、市町村においては1兆2,162億円で、都道府県支出金の減少等により前年度と比べると28.6%減となっている。

歳入の構成比は、国庫支出金が31.9%(前年度34.0%)、繰入金が25.1%(同26.3%)、一般財源が20.1%(同15.8%)、地方債が1.3%(同3.9%)等となっている。

国庫支出金は8,965億円で、放射線量低減対策特別緊急事業費補助金の減少等により、前年度と比べると30.9%減となっている。

繰入金は7,050億円で、東日本大震災復興関連基金からの繰入金の減少等により、前年度と比べると29.8%減となっている。

一般財源は5,631億円で、震災復興特別交付税の減少等により、前年度と比べると6.5%減となっている。

地方債は370億円で、災害復旧事業等に係る地方債の減少等により、前年度と比べると75.5%減となっている。

(イ)歳出[資料編:第137表第138表

東日本大震災分の歳出は2兆4,918億円で、積立金の減少等により、前年度と比べると26.2%減となっている。これを団体種類別にみると、都道府県においては1兆6,048億円で、積立金の減少等により、前年度と比べると27.6%減となっており、市町村においては1兆931億円で、普通建設事業費の減少等により、前年度と比べると28.5%減となっている。

a 目的別歳出

目的別歳出の構成比は、土木費が31.9%(前年度27.8%)、災害復旧費が15.9%(同14.2%)、民生費が10.8%(同22.0%)等となっている。

土木費は7,947億円で、普通建設事業費の減少等により、前年度と比べると15.4%減となっている。

災害復旧費は3,962億円で、各種災害復旧事業の減少等により、前年度と比べると17.3%減となっている。

民生費は2,701億円で、除染関連基金への積立金の減少等により、前年度と比べると63.6%減となっている。

b 性質別歳出

性質別歳出の構成比は、普通建設事業費が41.7%(前年度39.4%)、積立金が17.1%(同21.9%)、災害復旧事業費が15.9%(同14.2%)、物件費が6.9%(同10.1%)等となっている。

普通建設事業費は1兆385億円で、補助事業費の減少等により、前年度と比べると21.9%減となっている。

積立金は4,271億円で、除染関連基金への積立金の減少等により、前年度と比べると42.1%減となっている。

災害復旧事業費は3,962億円で、補助事業費の減少等により、前年度と比べると17.2%減となっている。

物件費は1,730億円で、除染関連事業の減少等により、前年度と比べると49.3%減となっている。

イ 特定被災地方公共団体等における決算の状況[資料編:第139表

(ア)特定被災県

a 歳入

特定被災県(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号。以下「東日本大震災財特法」という。)第2条第2項に定める特定被災地方公共団体である県をいう。)9県の歳入総額は9兆9,949億円で、前年度と比べると6.5%減(全国では1.4%減)となっている。

このうち通常収支分は8兆1,898億円で、前年度と比べると0.6%減(全国では0.2%減)、東日本大震災分は1兆8,051億円で、前年度と比べると26.3%減(同26.4%減)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が2.8%増(全国では1.4%増)、地方交付税が4.7%減(同4.3%減)、国庫支出金が17.4%減(同6.3%減)等となっている。

b 歳出

特定被災県の歳出総額は9兆5,864億円で、前年度と比べると6.3%減(全国では1.5%減)となっている。

このうち通常収支分は8兆19億円で、前年度と比べると0.5%減(全国では0.3%減)、東日本大震災分は1兆5,845億円で、前年度と比べると27.4%減(同27.6%減)となっている。

なお、特定被災県の東日本大震災分の歳出は、全国の都道府県における東日本大震災分の歳出の98.7%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が3.9%減(全国では7.4%増)、民生費が除染関連基金への積立金の減少等により21.9%減(同5.6%減)、災害復旧費が15.9%減(同5.9%増)等となっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、普通建設事業費が0.3%増(全国では0.5%減)、災害復旧事業費が15.9%減(同5.9%増)、積立金が43.2%減(同20.0%減)等となっている。

c 決算収支

特定被災県の実質収支は889億円の黒字で、前年度と比べると45億円増加(全国では270億円増加)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災県の地方債現在高は15兆8,941億円で、前年度末と比べると0.6%減(全国では0.7%減)となっている。債務負担行為額は1兆4,407億円で、前年度末と比べると0.8%減(同2.2%増)となっている。積立金現在高は1兆8,379億円で、前年度末と比べると6.1%減(同0.1%減)となっている。

(イ)特定被災市町村等

a 歳入

特定被災市町村等(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令」(平成23年政令第127号)の別表第1に定める特定被災地方公共団体である市町村並びに同令の別表第2及び別表第3に定める市町村のうち特定被災地方公共団体以外のものをいう。)227市町村の歳入総額は7兆6,537億円で、前年度と比べると3.8%減(全国では2.4%増)となっている。

このうち通常収支分は6兆4,802億円で、前年度と比べると1.8%増(全国では3.4%増)、東日本大震災分は1兆1,736億円で、前年度と比べると26.1%減(同28.6%減)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が1.5%増(全国では1.2%増)、地方交付税が4.3%減(同1.0%減)、国庫支出金が1.6%減(同2.7%増)等となっている。

b 歳出

特定被災市町村等の歳出総額は7兆2,660億円で、前年度と比べると3.4%減(全国では2.6%増)となっている。

このうち通常収支分は6兆2,149億円で、前年度と比べると1.8%増(全国では3.4%増)、東日本大震災分は1兆511億円で、前年度と比べると25.7%減(同28.5%減)となっている。

なお、特定被災市町村等の東日本大震災分の歳出は、全国の市町村における東日本大震災分の歳出の96.1%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が7.0%減(全国では0.4%増)、民生費が除染関連事業の減少等により5.4%減(同0.7%増)、災害復旧費が18.7%減(同0.1%減)等となっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、普通建設事業費が補助事業費の減少等により9.7%減(全国では1.0%増)、災害復旧事業費が18.7%減(同0.1%減)、積立金が9.2%減(同6.6%増)等となっている。

c 決算収支

特定被災市町村等の実質収支は2,260億円の黒字で、前年度と比べると87億円減少(全国では504億円増加)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災市町村等の地方債現在高は6兆4,697億円で、前年度末と比べると0.5%増(全国では0.1%増)、債務負担行為額は1兆4,621億円で、前年度末と比べると0.0%減(同6.7%増)、積立金現在高は2兆5,647億円で、前年度末と比べると5.8%減(同0.9%増)となっている。

(2)公営企業会計

地方公営企業については、東日本大震災財特法第2条第2項に定める特定被災地方公共団体である9県及び東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令の別表第1に定める特定被災地方公共団体である178市町村(当該団体が加入する一部事務組合等を含む。以下「特定被災地方団体」という。)を対象として、東日本大震災の災害復旧事業に係る一般会計からの繰出基準の特例等を講じている。

特定被災地方団体における地方公営企業の決算状況は次のとおりである。

ア 特定被災地方団体における経営状況[資料編:第140表

特定被災地方団体における法適用企業と法非適用企業(建設中のものを除く。)を合わせた収支の状況は、黒字事業が824事業(事業数全体の90.9%)で、前年度と比べると1事業増加(0.1%増)しており、黒字額は1,198億円で、前年度と比べると97億円減少(7.5%減)している。また、赤字事業は82事業(事業数全体の9.1%)で、前年度と比べると12事業減少(12.8%減)しており、赤字額は315億円で、前年度と比べると150億円減少(32.2%減)している。

特定被災地方団体における地方公営企業の総収支は883億円の黒字で、前年度と比べると52億円増加(6.3%増)している。

前年度に比べ収支が改善した事業は9事業あり、宅地造成事業で62億円(対前年度比105.1%増)と最も大きく改善し、次いで水道事業で16億円(同2.8%増)、交通事業で11億円(同28.5%増)改善している。一方、前年度に比べ収支が悪化した事業は6事業あり、工業用水道事業で23億円(対前年度比33.4%減)と最も大きく悪化し、次いで下水道事業で21億円(同8.4%減)悪化している。

また、前年度に比べ黒字額が減少し、赤字額が増加した事業は4事業あり、工業用水道事業においては、黒字額が14億円減少、赤字額が8億円増加している。

イ 特定被災地方団体における料金収入[資料編:第141表

料金収入は1兆586億円で、前年度と比べると100億円減少(0.9%減)している。

前年度に比べ料金収入が増加した事業は9事業あり、病院事業で92億円(対前年度比2.3%増)と最も大きく増加し、次いでガス事業で27億円(同7.8%増)、下水道事業で22億円(同1.6%増)増加している。一方、前年度に比べ料金収入が減少した事業は6事業あり、宅地造成事業で254億円(対前年度比32.8%減)と最も大きく減少している。

ウ 特定被災地方団体における他会計繰入金[資料編:第142表

他会計からの繰入金は3,954億円で、前年度と比べると909億円増加(0.2%増)している。

この内訳をみると、収益的収入として2,315億円(収益的収入に対する繰入金の割合14.8%)、資本的収入として1,639億円(資本的収入に対する繰入金の割合29.9%)となっており、前年度に比べ収益的収入への繰入れは39億円減少(1.6%減)し、資本的収入への繰入れは48億円増加(3.0%増)している。

前年度に比べ他会計繰入金が増加した事業は4事業あり、病院事業で82億円(対前年度比7.3%増)と最も大きく増加している。一方、前年度に比べ他会計繰入金が減少した事業は11事業あり、交通事業で111億円(対前年度比62.3%減)と最も大きく減少し、次いで市場事業で16億円(同32.4%減)減少している。

エ 特定被災地方団体における法適用企業の経営状況[資料編:第143表

特定被災地方団体における法適用企業の純損益の状況をみると、黒字事業は264事業(対前年度比11事業増加、4.3%増)で、全事業数(建設中のものを除く。)の76.7%となっており、赤字事業は80事業(同8事業減少、9.1%減)で、同23.3%となっている。

総収益(経常収益+特別利益)は1兆2,946億円で、前年度と比べると235億円増加(1.8%増)、総費用(経常費用+特別損失)は1兆2,288億円で、前年度と比べると177億円増加(1.5%増)で、この結果、純損益は658億円の黒字となっており、前年度と比べると57億円増加(9.6%増)している。また、総収支比率は105.4%と前年度と比べると0.4ポイント上昇している。

なお、総収益に占める料金収入の割合は73.7%(前年度73.5%)と前年度と比べると0.2ポイント上昇している。

経常損益(純損益―特別損益)の状況をみると、経常利益を生じた事業数は266事業(対前年度比14事業増加、5.6%増)で、経常損失を生じた事業数は78事業(同11事業減少、12.4%減)となっている。経常損失を生じた事業数の全事業数(建設中のものを除く。)に占める割合は22.7%と前年度と比べると3.4ポイント低下している。

経常収益(営業収益+営業外収益)は1兆2,803億円で、前年度と比べると293億円増加(2.3%増)しており、経常費用(営業費用+営業外費用)は1兆2,144億円で、前年度と比べると245億円増加(2.1%増)している。なお、経常損益は659億円の黒字で、前年度と比べると48億円増加(7.8%増)している。また、経常収支比率は105.4%と前年度と比べると0.3ポイント上昇している。

オ 特定被災地方団体における法非適用企業の経営状況[資料編:第144表

特定被災地方団体における法非適用企業全体の形式収支(歳入歳出差引額)は542億円の黒字であり、前年度と比べると104億円減少(16.0%減)している。また、この額から翌年度への繰越財源を控除した実質収支は225億円の黒字であり、前年度と比べると5億円減少(2.3%減)している。

実質収支で黒字を生じた事業は560事業で、全事業数(建設中のものを除く。)の99.6%、赤字を生じた事業は2事業で、同0.4%となっている。黒字事業の実質黒字額は226億円で、前年度と比べると11億円減少(4.5%減)している。また、赤字事業の実質赤字額は0億円で、前年度と比べると5億円減少(91.7%減)しており、営業収益(受託工事収益を除く。)に対する実質赤字額(赤字比率)は0.0%(前年度0.3%)となっている。

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