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平成31年版
地方財政白書
(平成29年度決算)

10 地方分権改革の推進

政府では、住民に対する行政サービスの向上や行政の効率化を図るとともに、地方が特色を持った地域づくりや地域に合った行政を展開することができるよう、国と地方の役割分担を見直し、地域の自主性・自立性を高めるため、地方分権改革の推進に取り組んでいる。

地方分権改革の推進は、地域が自らの発想と創意工夫により課題解決を図るための基盤となるものであり、地方創生における極めて重要なテーマである。

(1)地方に対する事務・権限の移譲及び規制緩和に係る取組

地方分権改革については、「地方分権改革推進法」(平成18年法律第111号)による地方分権改革推進委員会の勧告に基づき、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第37号。いわゆる「第1次地方分権一括法」。)から「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成26年法律第51号。いわゆる「第4次地方分権一括法」。)までの4次にわたる一括法により、地方に対する事務・権限の移譲及び規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)について、具体的な改革を積み重ねてきた。

平成26年には、これまでの成果を基盤とし、地方の発意に根差した新たな取組を推進することとして、「地方分権改革に関する提案募集の実施方針」(平成26年4月30日地方分権改革推進本部決定。以下「実施方針」という。)により地方分権改革に関する「提案募集方式」を導入し、地方に対する事務・権限移譲や規制緩和に関する地方からの提案を受け付けている。これまで、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成27年法律第50号。いわゆる「第5次地方分権一括法」。)から「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法律第66号。いわゆる「第8次地方分権一括法」。)までの一括法により、地方側の長年の懸案であった農地転用許可の権限移譲や地方版ハローワークの創設をはじめとする更なる事務・権限の移譲等を行うなど、国が選ぶのではなく、地方が選ぶことができる地方分権改革を推進している。

また、政府の地方分権改革の推進体制としては、内閣総理大臣を本部長とする地方分権改革推進本部が政策決定機能を担い、地方分権改革担当大臣の下に開催されている地方分権改革有識者会議が調査審議機能を担っている。さらに、地方分権改革有識者会議の下で、提案募集検討専門部会等を開催し、専門的な見地から検討を行っている。

これまでの地方分権改革における主な取組は以下のとおりである。

ア 事務・権限移譲

地方分権改革においては、地方公共団体、特に住民に最も身近な行政主体である基礎自治体に事務事業を優先的に配分し、地方公共団体が地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を担うことができるようにすることが必要不可欠である。

これまでの地方分権一括法等により、国から地方公共団体への事務・権限の移譲については、看護師など各種資格者の養成施設等の指定・監督等の国(地方厚生局)の事務・権限を都道府県へ移譲する改正や、自家用有償旅客運送の登録、監督等の国(地方運輸局)の事務・権限を希望する市町村へ移譲する改正等が、都道府県から基礎自治体への事務・権限の移譲については、都市計画に関する事務を市町村へ移譲する改正や、県費負担教職員の給与等の負担、定数の決定等に係る権限を、道府県から政令指定都市へ移譲する改正等が行われた。

以上のような事務・権限の移譲により、窓口の一本化等による住民の利便性向上、地域課題の解決に資する独自の取組、総合行政の展開による行政の効果的、効率的な運営が進んでいる。

イ 地方に対する規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)

地方分権を進めるためには、これまで国が一律に決定し地方公共団体に義務付け・枠付けを行ってきた基準、施策等を、地方公共団体が条例の制定等により自ら決定し、実施することができるように改めていく必要がある。

義務付け・枠付けの見直しについては、累次にわたる地方分権一括法等により、これまで法令により全国画一的に定められていた保育所の設備・運営に関する基準など施設・公物設置管理の基準等を条例に委任すること等により、地域の実情や住民のニーズ等を反映した地方独自の基準の制定が進んでいる。

(2)平成30年の地方からの提案等に関する対応方針

平成30年においても、「実施方針」に基づき、引き続き提案募集を行うこととし、事前相談の一層の充実による提案団体への支援の強化を図ったほか、内閣府主催のブロック別説明会や地方公共団体職員向け研修を開催し、新規市町村からの提案の掘り起こしなどを行った。

地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って、地方分権改革有識者会議の提案募集検討専門部会において長時間に及ぶ審議等が行われた結果、地方分権改革推進本部及び閣議において、「平成30年の地方からの提案等に関する対応方針」(平成30年12月25日閣議決定。以下「平成30年対応方針」という。)が決定された。

「平成30年対応方針」は、地方創生や子ども・子育て支援に資する提案をはじめとする、現場の課題に基づく地方からの提案等にきめ細かく対応し、国から地方公共団体又は都道府県から市町村への事務・権限の移譲、規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)等を推進するものである。

平成30年対応方針に盛り込んだ事項のうち、主なものは以下のとおりである。

ア 地方創生・まちづくり ―機動的かつ柔軟な地域づくり―

【観光・地域振興】

  • 公立博物館等について地方公共団体の選択により、教育委員会から首長部局への移管を可能とする見直し
  • 搭乗型移動支援ロボット(セグウェイ等)の公道実証実験における走行に必要な国際運転免許証等の免許区分の明確化

【土地利用】

  • 農地中間管理事業に係る制度の見直し
  • 町村の都市計画に係る都道府県同意の廃止
  • 公立大学法人の所有する土地等の第三者貸付要件の見直し

【ICTの利活用】

  • 電子マネーを利用した公金収納の取扱いの明確化
  • 高等学校におけるオンデマンド教材を使用した授業の実施要件の明確化

【地域公共交通】

  • 鉄道事業者・一般乗合旅客自動車運送事業者に関する情報について地方公共団体に提供する仕組みの構築
  • 自家用有償旅客運送による少量貨物運送の手続・要件の見直し
  • 市街化調整区域において区域運行事業等の用に供する施設を設置する場合の手続の見直し

【災害対策】

  • 被災者の災害援護資金の借受け及び返済の円滑化
  • 災害援護資金の返済方法に係る被災者の選択肢の拡大

イ 子育て・医療・福祉 ―地域の実情に応じたサービス提供―

【地域のニーズや地域事情に合わせたサービスの多様化】

  • 放課後児童クラブに係る「従うべき基準」等の見直し
  • お盆・年末年始等における共同保育の実施
  • へき地における管理薬剤師の兼務許可要件の見直し

【子育て支援の充実】

  • 児童養護施設等の児童指導員の資格要件に幼稚園教諭を追加
  • 幼保連携型認定こども園の保育教諭に係る経過措置規定の延長

【子育て・福祉サービス提供の円滑化】

  • 育児休業等の延長に係る手続の見直し
  • 介護認定に係る調査事務を委託する際の職員の資格要件の見直し

ウ 地方分権改革の取組強化等 ―国・地方の役割分担―

【権限の移譲等】

  • 療育手帳の交付決定権限の都道府県から児童相談所を設置している中核市への移譲
  • 経済産業大臣の登録を受けた登録電気工事事業者等に対する危険等防止命令の都道府県への権限付与

【国への届出等に関する都道府県経由事務の廃止】

  • 建設業の許可申請等に係る都道府県経由事務の廃止
  • 食品の特別用途表示の許可申請に係る都道府県経由事務の廃止

平成30年対応方針に盛り込んだ事項のうち、法律の改正により措置すべき事項については、所要の一括法案等を平成31年通常国会に提出することを基本とするとともに、現行規定で対応可能な提案については、地方公共団体に対する通知等により明確化することとしている。また、引き続き検討を進めるものについては、内閣府において適切にフォローアップを行い、検討結果について、逐次、地方分権改革有識者会議に報告することとしている。

加えて、地方公共団体において、移譲された事務・権限を円滑に執行することができるよう、地方税、地方交付税や国庫補助負担金等により、確実な財源措置を講じるとともに、マニュアルの整備や技術的助言、研修や職員の派遣などの必要な支援を実施することとしている。

今後とも、地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って、地方分権改革を着実かつ強力に進めていくこととしている。

(3)地方税財源の充実確保

平成30年11月20日に、地方財政審議会から、地方法人課税の偏在是正、車体課税、ふるさと納税を含む「平成31年度地方税制改正等に関する地方財政審議会意見」(附属資料参照)が述べられた。

このような観点から、地方税制において主に以下の事項について改正を行うこととしている。

ア 地方法人課税の偏在是正

地域間の財政力格差の拡大、経済社会構造の変化等を踏まえ、県内総生産の分布状況と比較して大都市に税収が集中する構造的な課題に対処し、都市と地方が支え合い、共に持続可能な形で発展するため、地方法人課税における税源の偏在を是正する新たな措置として、法人事業税の一部を分離して特別法人事業税及び特別法人事業譲与税を創設することとしている。

具体的には、特別法人事業税は国税とし、都道府県が法人事業税と併せて賦課徴収を行うとともに、実質的な地方税源としての性格を明確にするため、その税収の全額を交付税及び譲与税配付金特別会計に直接払い込んだ上で、都道府県に対し、特別法人事業譲与税として譲与することとしている。特別法人事業譲与税の譲与基準は、新たな措置の趣旨・目的に鑑み、「人口」を基準とし、譲与税制度の中で、適切な偏在是正効果を実現するため、交付団体との均衡も考慮し、不交付団体に対する譲与制限の仕組みを設けることとしている。

また、特別法人事業税・譲与税制度は恒久的な措置とし、経済社会情勢の変化に対応できるよう、法の施行後における検討に係る規定を設けることとしている。

イ 車体課税の大幅見直し

消費税率10%への引上げにあわせ、自動車の保有に係る税負担を恒久的に引き下げることにより、自動車ユーザーの負担を軽減し、需要を平準化するとともに、国内自動車市場の活性化と新車代替の促進による燃費性能の優れた自動車や先進安全技術搭載車の普及等を図ることとしている。

なお、恒久減税による地方税の減収については、まずはエコカー減税の見直しやグリーン化特例の重点化、環境性能割の基準見直しにより財源を確保し、なお生じる財源不足額についてはその全額を国費で補てんすることにより、それに見合った地方税財源を確保することとしている。これにより、地方における社会インフラの更新・老朽化対策や防災・減災事業のニーズにしっかりと対応することとしている。

加えて、消費税率引上げに伴う対応として、環境性能割(自動車税・軽自動車税)の税率を1%分軽減することとしている。

ウ ふるさと納税制度の見直し

制度の健全な発展に向けて、一定のルールの中で地方公共団体が創意工夫をすることにより全国各地の地域活性化に繋げるため、過度な返礼品を送付し、制度の趣旨を歪めているような団体については、ふるさと納税(特例控除)の対象外にすることができるよう、制度の見直しを行うこととしている。

具体的には、総務大臣は、地方財政審議会の意見を聴いた上で、次の基準に適合する地方団体をふるさと納税の対象として指定することとしている。

<1>寄附金の募集を適正に実施する地方団体

<2>(<1>の地方団体で)返礼品を送付する場合には、以下のいずれも満たす地方団体

  • 返礼品の返礼割合を3割以下とすること
  • 返礼品を地場産品とすること

エ 森林環境税及び森林環境譲与税の創設

パリ協定の枠組みの下におけるわが国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るため、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、森林環境税及び森林環境譲与税を創設することとしている。

具体的には、森林環境税は国税とし、市町村が個人住民税と併せて賦課徴収を行うとともに、交付税及び譲与税配付金特別会計に直接払い込んだ上で、市町村及び都道府県に対し、森林環境譲与税として譲与することとしている。森林環境譲与税は、総額の9割に相当する額を市町村に対して、1割に相当する額を都道府県に対して、それぞれ私有林人工林面積、林業就業者数及び人口を基準として譲与することとしている。

また、森林環境譲与税の使途について、市町村は間伐や人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の森林整備及びその促進に関する費用に、都道府県は森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用に、それぞれ充てなければならないこととし、インターネットの利用等の方法により使途に関する事項を公表しなければならないこととしている。

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