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平成31年版
地方財政白書
(平成29年度決算)

第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題への対応

1 人づくり革命の実現に向けた取組

我が国は、健康寿命が世界一の長寿社会を迎えており、今後の更なる健康寿命の延伸も期待される。10年前に我が国で生まれた子供たちの半分は、107歳まで生きるという研究もある。こうした人生100年時代に、高齢者から若者まで、全ての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくるためには、幼児教育から小・中・高等学校教育、高等教育、更には社会人の学び直しに至るまで、生涯を通じて切れ目なく、質の高い教育が用意され、いつでも有用なスキルを身につけられる学び直しの場が、安定的な財源の下で提供される必要があるほか、高齢者向けの給付が中心となっている我が国の社会保障制度を、子供・若者から高齢者まで誰もが安心できる「全世代型の社会保障」へ大きく転換していく必要がある。

その重要な鍵を握るのが「人づくり革命」、人材への投資である。「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)では、「人づくり革命」を断行し、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入することで、社会保障制度をお年寄りも若者も安心できる全世代型へと改革し、子育て、介護などの現役世代の不安を解消し、希望出生率1.8、介護離職ゼロの実現を目指すとされ、「基本方針2018」では、「人づくり革命」により、人生100年時代を見据え、誰もがいくつになっても活躍することができる社会を構築するとされた。

「人づくり革命」では、幼児教育の無償化、待機児童の解消、高等教育の無償化、私立高等学校の授業料の実質無償化、介護人材の処遇改善等の施策を推進するとされており、施策を推進するための安定財源として、平成31年10月からの消費税率8%から10%への引上げによる増収分のうち1.7兆円程度を、幼児教育の無償化、「子育て安心プラン」の前倒しによる待機児童の解消、保育士の処遇改善、高等教育の無償化、介護人材の処遇改善に充てるとされている。また、事業主が拠出する子ども・子育て拠出金を0.3兆円増額し、平成30年度から実施する「子育て安心プラン」の実現に必要な企業主導型保育事業と保育の運営費(0歳〜2歳児相当分)に充てるとされている。

平成31年度におけるこれらの施策に係る所要額については、国・地方合計で0.48兆円程度(国:0.44兆円程度、地方:0.05兆円程度)となっている。内訳としては、幼児教育の無償化が0.39兆円程度(全額国費※)、待機児童の解消・保育士の処遇改善が0.05兆円程度(国:0.03兆円程度、地方:0.03兆円程度)、介護士の処遇改善が0.04兆円程度(国:0.02兆円程度、地方0.02兆円程度)となっている。

※幼児教育の無償化に係る初年度の経費を全額国負担とすることに伴う子ども・子育て支援臨時交付金0.23兆円程度を含む。

(1)幼児教育の無償化

幼児教育の無償化については、「新しい経済政策パッケージ」及び「基本方針2018」の内容を基本としつつ、国と地方の協議を経て、平成30年12月28日に「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」が関係閣僚間で合意された。

合意された具体的な内容のうち、主なものについては、以下のとおりである。

ア 対象者・対象範囲

対象者:3歳から5歳の全ての子ども及び0歳から2歳の住民税非課税世帯の子ども

対象範囲:認定こども園、幼稚園、保育所、認可外保育施設、預かり保育、一時預かり、病児保育等の利用料を無償化

イ 財源

(ア)負担割合

国1/2、都道府県1/4、市町村1/4。ただし、公立施設(幼稚園、保育所及び認定こども園)は市町村等10/10。

(イ)財政措置等

  • 初年度の取扱い:初年度(平成31年度)に要する経費を全額国費で負担。
  • 事務費:初年度と2年目を全額国費。認可外保育施設等の5年間の経過措置期間に係る費用相当額を全額国費で負担するべく措置。
  • システム改修費:平成30年度・平成31年度予算を活用して対応。

ウ その他

  • 国と地方公共団体のハイレベルによる協議の場を設置。
  • 引き続き、地方公共団体の事務負担軽減等に向けて検討。

この方針に基づき、平成31年10月1日からの無償化の実施に向け、第198回通常国会に「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案」が提出された。

また、平成31年度においては、無償化に係る地方負担分(0.23兆円程度)を措置する臨時交付金(子ども・子育て支援臨時交付金)を創設し、全額国費により対応することとしており、同法案にこの臨時交付金に係る規定が設けられている。

(2)待機児童の解消・保育士の処遇改善

ア 未就学児

近年の女性就業率が年々上昇していることに伴い、保育の申込者数も年々増加しており、平成30年4月1日時点の申込者数は約271.2万人、待機児童数は19,895人となっている。

平成29年6月に策定された「子育て安心プラン」においては、平成30年度から34年度末までの5年間で女性就業率80%に対応できる約32万人分の受け皿整備を行うこととされていたが、「新しい経済政策パッケージ」において、同プランをより速く実現させるため、平成32年度末までに約32万人分の受け皿整備を行うこととされた。

同プランについて、約32万人分の受け皿整備のうち企業主導型保育による拡大量である約6万人分を除いた約26万人分が市区町村による保育の受け皿拡大量であり、平成30年度第二次補正予算及び平成31年度予算案においては、平成31年度中の市区町村による保育の受け皿拡大7万人分に対応するための整備費用等が計上されている。

また、「新しい経済政策パッケージ」では、保育士の確保や他産業との賃金格差を踏まえ、平成31年4月から更に1%(月3,000円相当)の賃金引上げを行うこととされている。これに加え、平成30年度の人事院勧告に伴う賃金引上げについても、平成31年度予算に反映されている。

イ 就学児童

近年の女性の就業率上昇や共働き世帯の増加等により、就学前だけでなく就学児童についても、保護者が労働等によりいない間の生活の場のニーズが増加している。

政府としては、「放課後子ども総合プラン」に基づき、共働き家庭等の「小1の壁」を打破するとともに、次代を担う人材を育成するため、全ての就学児童が放課後等を安全・安心に過ごせるよう、放課後児童クラブの計画的な整備を進めてきたが、放課後児童クラブの整備数が伸びる一方で、近年のニーズ増加により待機児童は17,279人(平成30年5月1日時点)にも及んでおり、更なる整備の推進が必要となってきた。

こうした状況を受け「基本方針2018」において、平成35年度末までに放課後児童クラブの約30万人分の更なる受け皿整備を図る新たな放課後対策のプランを平成30年の夏までに策定することが記載され、政府として放課後児童対策を強化していく方針が示された。

これを受け、平成30年9月14日に策定された「新・放課後子ども総合プラン」では、放課後児童クラブについて、平成33年度末までに約25万人分を整備して待機児童を解消し、その後も女性就業率の上昇を踏まえ、平成35年度末までに合計約30万人分の受け皿を整備することとされている。

(3)高等教育の無償化

高等教育の無償化については、幼児教育の無償化と同様、平成30年12月28日に制度の具体化に向けた方針が関係閣僚間で合意されており、合意された具体的な内容のうち、主なものについては、以下のとおりである。

ア 授業料等の減免措置及び給付型奨学金の対象者・対象範囲等

住民税非課税世帯の学生とし、全体として支援の崖・谷間が生じないよう、住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生についても、住民税非課税世帯の学生に対する支援措置に準じた支援を段階的に実施。

【授業料等の減免措置】

  • 国公立大学等は、入学金・授業料ともに、国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(平成16年文部科学省令第16号)で規定されている国立の学校種ごとの標準額までを減免。
  • 私立大学等は、入学金については、私立の入学金の平均額まで減免し、授業料については、国立大学の標準額に、各学校種の私立学校の平均授業料と国立大学の標準額との差額の2分の1を加算した額までを減免。

【給付型奨学金】

  • 学生生活を送るのに必要な生活費を賄えるよう措置を講じる。

イ 国と地方の役割分担・費用負担

【授業料等の減免措置】

  • 国公立大学等は、設置者である国又は地方公共団体が全額を負担し、各学校に交付。
  • 私立大学・短期大学・高等専門学校は、所轄庁である国が全額を負担し、各学校に交付。
  • 私立専門学校は、国と都道府県が1/2ずつ負担し、所轄庁である都道府県が各学校に交付。

【給付型奨学金】

国が全額を負担し、日本学生支援機構が学生に直接支給。

【事務費等】

国において、授業料減免に係る費用の交付事務や機関要件の確認事務に係る具体的な指針を策定するとともに、私立専門学校に係る都道府県の事務費について、制度開始の平成32年度までの2年間は全額国費により措置。

この方針に基づき、平成32年4月1日からの無償化の実施に向け、第198回通常国会に「大学等における修学の支援に関する法律案」が提出された。

(4)介護人材の処遇改善

「新しい経済政策パッケージ」において、介護人材確保のための取組をより一層進めるため、経験・技能のある職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を進めるとされている。

具体的には、他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めることを前提に、介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1,000億円程度を投じ、処遇改善を行うとされ、消費税率の引上げに伴う報酬改定において対応し、平成31年10月から実施するとされている。

また、障害福祉人材についても、介護人材と同様の処遇改善を行うとされている。

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